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MBAに通ったのに出世できない残念な人が見逃している「思考法」

プレジデントオンライン / 2021年1月19日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/filo

今、ビジネスの流れが大きく変わろうとしている。これまでは課題に対して、分析的、論理的、理性的な思考を使って解を導いてきたが、それだけでは解決できない問題が次々と出てきている。独立研究家の山口周氏は、このような時代だからこそ「アート思考」が必要であると断言する。

■理性や科学が踏み込めない感性の領域に必要なもの

情報分析や論理思考で目の前の現実を整理して的確な意思決定ができる。これまではそういうビジネスパーソンが優秀だといわれてきました。しかし、いま世界はかつてないほど複雑で曖昧になっています。この傾向は、今後さらに進んでいくでしょう。そうなると過去の経験に基づいたパターン認識では、未来は見通せなくなります。

つまり、ビジネススクールに通ったり、ビジネス書を読んだりしても、もうそれだけでは仕事ができるビジネスパーソンにはなれないのです。

では、何を学べばいいのか。

それは、アートです。

これがあれば快適だ。もっと生活が楽になる。そういう人々の生理的欲求や安全欲求の不満をいかにして解消するかが、従来のビジネスの課題でした。そして、その解を導き出すのに有効なのが、分析的・論理的・理性的な思考だったのです。

ところが、もうそのレイヤーにフロンティアはほとんど残っておらず、世界はモノであふれかえっています。実際、日本を含む先進国では、物質的欲求に対する満足度がほぼ90%にまで達しているのです。

だからといって満たすべき欲望がなくなったわけではありません。マズローの欲求5段階説によれば、どうやら人は生理的や安全に対する欲求が満たされると、その上位にある承認、そして自己実現を欲するようになるといいます。

それを手にすることで気分が高揚し、思わず誰かに自慢したくなる。

インスタグラムにアップしたら「いいね!」がたくさんつきそう。

「そういう何か」ならばお金を払っても手に入れたいと思うのが、新しい消費者の姿なのです。

ビジネスパーソンに求められているのは、まさに「そういう何か」をイメージできる能力だといっていいでしょう。

そういう上位欲求が生まれてくるのは、理性や科学が踏み入れない感性の領域にほかなりません。

そのために、アート思考が有効なのです。

■自分自身の琴線に触れる作品を多く探してみる

これからはアート思考ができるビジネスパーソンの価値が、間違いなく高まります。

山口周氏
山口周氏(撮影=原貴彦)

そういうとまじめな人は受験勉強を行うように、とりあえず世の中で評価されている絵や音楽の知識を頭に詰め込もうとしますが、それはあまり効果的な方法とはいえません。だいいち長続きしないでしょう。

それよりも、できるだけ多くの作品に接することのほうが大事です。

私は子どものころ、祖父母が所有する箱根の山荘に行くと、することがないのでそこにあった集英社の美術全集をずっと見ていました。単に暇つぶしであって、絵の知識など皆無です。それでも、後年は山荘に着くとすぐに美術全集を開いて、お気に入りの絵を探すようになりました。絵の好き嫌いという基準がいつの間にか自分の中に育っていったのです。

クラシック音楽に関しても、家に大量のレコードがあって、それを何気なく耳にしているうちに、気づいたら自分の中にこの作曲家の音楽が心地いいというものができあがっていました。

さまざまな作品を見たり聴いたりしていると、そのうちに「これは肌に合う」「なんだか気持ちがいい」というような、自分の琴線に触れるものがしだいにはっきりしてきます。

アートを学ぶというのは要するに、この感覚を獲得することなのです。

ポイントとなるのは「ときめき」ですから、ベートーヴェンの交響曲第九番「歓喜の歌」に、彼が好きだったシラーの詩が引用されていることを知らなくても、また歌詞の意味がわからなくても、音楽だけ聴いて感動したなら、それで十分なのです。

もちろん、歌舞伎のように、ある程度背景がわかっているほうがより楽しめるというものもあります。その場合も、先に知識から入るより、とりあえず劇場に足を運んで、歌舞伎というものを味わってみること。そうしているうちに、より深く知りたいという気持ちが湧いてきたら、そのときはインターネットなどで調べてみるという順番がいいと思います。

■まずは美術全集の古書を数千円で買う

名画を鑑賞してもクラシックの名曲を聴いても、何も感じないし、どれも好きになれません。どうしたらいいのでしょう。

山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)
山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)

たまにそういう声も耳にします。

厳しいようですが、もしそうならそれは、これまでの人生で自分の心に水をやるのを怠ってきた結果です。

でも、そういう人もあきらめる必要はありません。いまから少しずつでも水やりを続けてください。そうすればやがて乾いていた心も潤い、いずれは草木も育つように必ずなるからです。

子どものころ、近所の中華そばや食べたラーメンの味があまり口に合わず、それ以来ラーメンを敬遠してきた人が、いきなり食べログの評価が高い人気店に連れていかれて、さあどうですかと尋ねられても、「はあ、美味しいです」くらいの感想しかいえないでしょう。

けれども、そこからいろいろなラーメン店を食べ歩くようになったら、だんだんと自分の好みもわかってきて、そのうち「私はあの店の豚骨ラーメンがいちばん好き」と自信をもって断言できるようになるじゃないですか。

アートもこれと一緒です。まずは、自分が好きなのはこれと堂々いえるようになるまで、意識して味わう機会を増やすのです。

それができるようになったら今度はそれを言葉にしてみましょう。自分の中で起こった感情の変化を言語化する訓練をするのです。

これを習慣化すると、アート思考は確実に鍛えられていきます。

何から始めたらいいか迷っている人には、美術全集がお薦めです。古本であればメルカリでは数千円で買えますから、それを手元に置いておいて、暇なときに眺めてください。

美術館で本物を見なければ意味がないなどということはありません。気軽にアートにアクセスできることが重要なのです。

※プレジデント社は、本稿でも触れた「アート思考」を実践的に学べるアート思考オンラインプログラムを開催しております。興味関心をお持ち頂けた方は、アート思考オンラインプログラムで検索頂けますと幸いです。

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山口 周(やまぐち・しゅう)
独立研究者・著述家/パブリックスピーカー
1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て現在は独立研究者・著述家・パブリックスピーカーとして活動。神奈川県葉山町在住。著書に『ニュータイプの時代』など多数。

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(独立研究者・著述家/パブリックスピーカー 山口 周 構成=山口雅之)

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