「言うことを聞かない部下」が動き出す、押し付けられ感ゼロの"ある質問"
プレジデントオンライン / 2021年1月27日 11時15分
■メンバーが言うことを聞いてくれない悩み
こんにちは、桶谷功です。
先日、若い人からこんな相談を受けました。
「初めてプロジェクトリーダーになったのですが、私が『こうしたら?』と方向を示しても、みんな言うことを聞いてくれません。これからどうやって、みんなを引っ張っていけばいいでしょうか?」
私もマーケティングの専門家としていろいろなプロジェクトを進めていますが、人を動かすのは本当に難しいものです。できればこちらの考えを押し付けることなく、メンバーみずから動いてもらいたいけれど、「こうしたほうがいいですよ」と言うくらいでは、誰も動いてくれません。これは私にとっても長年の悩みの種でした。
■「質問」でうまく誘導する
しかしあるとき会議でファシリテーターを務めることになり、思い切って話し方を変えてみたら、メンバーがそれぞれ自発的に動いてくれるようになったのです。
どんなふうに話し方を変えたかというと、「質問」をするようにしました。質問をするだけで、自分の思う方向にみんなを導けるようになったのです。
たとえば、ある商品のメインターゲットを決める話し合いをしているとしましょう。このままでは「男性」をターゲットにすることに決まりそうな雰囲気です。しかし自分としては「女性もアリ」だと思っている。こんなときはストレートに「女性もターゲットとして考えたほうがいいと思いますよ」と言ってしまいがちですが、この言い方では、言われたほうにどうしても多少の「押し付けられた感」が生じてしまいます。
ところがこれを、質問の形で投げかけてみたらどうでしょう。
■質問されると、人は考えざるをえなくなる
「女性はターゲットとして考えなくていいでしょうか?」
面白いことに人間は何か質問されると、絶対にその答えを考えずにはいられなくなる。だから「女性はターゲットとして考えなくていいですか?」と聞かれると、「女性をターゲットにした場合」を自動的に考え始めます。その結果、「女性もアリだな」と自発的に思うようになるというわけです。
![ブレーンストーミング](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/6/670/img_c63a6be7a029f6c179ccc7aac3629d3c181915.jpg)
自分で考えて納得したことは、実行のモチベーションが高くなる。だから質問すると、人は動いてくれるのです。遠回りのようですが、これが一番の早道だと思います。
■質問を重ねて答えの領域を狭めていく
質問は一度とは限りません。さらに、「女子がこれを使うとしたら、どういうシーンでしょうね」と重ねて質問していくことによって、答えの領域がだんだん狭まっていきます。
あるいはメンバーに、「ここはもっと考えを深めてほしいな」と思ったら、「みんな、これについてもっと考えてください」と言うのではなく、「この行動のもとになっているのは、どういう気持ちなんでしょうか」と尋ねてみる。質問することで、そこを掘り下げることになります。
このように質問をすると、決して結論を押し付けていないのに、自分の想定した着地点に自然とみんなを引っ張っていくことができるのです。
ただし、質問の仕方には注意が必要です。質問には「イエス・ノー」で答えられるクローズド・クエスチョンと、「イエス・ノー」で答えられないオープン・クエスチョンの二種類があります。相手に考えてもらうには、絶対にオープン・クエスチョンでなければなりません。
最初は、「女子もターゲットとして考えなくていいですか?」というクローズド・クエスチョンであっても、考えを深めてほしいときは、「女子がこれを使うとしたら、どういうシーンでしょうね?」というようなオープン・クエスチョンにすることを心掛けてください。
■予想外のアイデアが出てきてしまったときの対応
このように「質問」はかなりいい方法なのですが、答えを押し付けるものではないので、チームで話し合っているうちに、自分が予定していた着地点とは別のところにたどり着くことも珍しくありません。
そんなときは、自分の想定していた結論に固執しないことです。
「これは思いつかなかったな。画期的なアイデアかもしれない」
と思える意見が出てきたら、用意していた結論は捨て、そちらを掘り下げていったほうがいい。私の経験からすると、議論をすることによって、あらかじめ考えていた結論よりも、いい案が出ることのほうが多いものです。やはりいろいろな人が集まることで、化学反応が起きるのでしょう。
しかし、なかには、「うーん、これはどうかな」というものもあります。そんなときも、慌てる必要はありません。まずは「その考え方は面白いですね」といって肯定します。しかしそれをさらに掘り下げることはせず、
「今度はこういう視点で考えてみましょうか。これについてはどう思いますか?」
というふうに、視点を変えた質問を投げかけて、軌道修正をすればいいのです。
人を動かすには上手に「質問」をすること。ぜひ試してみてください。
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株式会社インサイト 代表取締役
大日本印刷、外資系広告会社J.ウォルター・トンプソン・ジャパン戦略プランニング局 執行役員を経て、2010年にインサイト社設立。初著『インサイト』(ダイヤモンド社)で、日本に初めてインサイトを体系的に紹介。商品開発・ブランド育成などのコンサルティングを行っている。
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(株式会社インサイト 代表取締役 桶谷 功 構成=長山清子)
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