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「体が若返り、夜はぐっすり」ブラブラ歩きとは違う"正しい散歩"のコツ

プレジデントオンライン / 2021年1月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gilaxia

■悩んで停滞するのではなく、ともかく動く

新年の始まり、すべては最初の一歩からという思いを込め、「歩く」をテーマに記事を届けたい。

以前、プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんの長女、恵美里さんを取材したとき、「たとえ目的地が遠くても、踏み出さなければ近づきません」という言葉があった。常に山頂を目指す三浦ファミリーは、その最初の一歩を踏み出すことに躊躇がないのだ。悩んで停滞するのではなく、ともかく動くこと、歩くことを重視する。

恵美里さんはこうも話していた。

「人は何かをやろうとするとき、年だから、病気だからと、“できない理由”ならたくさん思い浮かぶんです。でも、父はいいます。“できる理由”を探すほうが人生は楽しい、と」

煮詰まったり、何かに悩んだりしたら歩いたほうがいいという。

■知らないコースを歩いてみると脳の刺激になる

実際、歩くことは脳に刺激を与える。『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』(サンマーク出版)の著者で、国立環境研究所主任研究員の谷口優氏によると「自分が歩いている姿を思い浮かべるだけで脳の血流量が増える」という。

「歩く動作は、歩いた道を覚える『記憶力』、自動車が近づいてきていないかなど、周辺に気を配る『注意力』、自分がどの方向に進んでいるかを把握する『視空間認知』など、複数の機能が必要になります。しかし、いつもの歩き慣れた道では駅の方向や道路の混雑状況などを知り尽くしているので、それほど脳のトレーニングにならないかもしれません」(谷口氏)

つまり、新しい道を歩けば、いろいろな方向に注意を払う必要があるため、頭を刺激することになるのだ。知らないコースを歩いてみよう。また、筋肉量が増える歩き方をマスターしたい。

■フットワークが重くなるのは長年の筋肉減少の積み重ね

これまで約20年間で8700人以上に運動指導を行ってきた信州大学医学部特任教授の能勢博氏によると、「年を取って疲れやすくなったり、フットワークが重くなるのは長年の筋肉減少の積み重ね」だという。

たとえると、筋肉は車のエンジンの大きさで、脂肪は車に載せる荷物。筋肉は30歳を過ぎると年に1%ずつ減少していくが、脂肪は減っていかない。そのため運動習慣がない人は、筋肉が減るにつれて本来筋肉があった部分に脂肪が入り込む。見た目の体形は変わらなくても、体の内部では筋肉量が大幅に減少しているのだ。車でいうと、載せる荷物は増え続けるのに、エンジンは小さくなっていく状態といえる。

「顔にシワやたるみが出てくるのも、顔の筋肉が衰え、筋肉の上にのっている脂肪や皮膚を支えきれなくなることが一因。日常では最大体力の20~30%しか使わなくても生きていけるので、気づいたときには脂肪だらけで筋肉が少ない体になっています」(能勢氏)

■ゴルフでも買い物に行くときでも、ブラブラ歩くのではダメ

30代以上で運動習慣が全くない人にお勧めなのは「インターバルウオーキング」だ。

「“ややキツイと感じるペースでの速歩き”と“ゆっくり歩き”を3分間ずつ交互に繰り返すのです。ややキツイというのは3分間歩いて息がはずむ程度。速歩きのときは大股で、ゆっくり歩きのときはいつもの歩幅で歩きましょう。ややキツイ速歩きのときは体を大きく動かすため、筋肉を構成する筋線維がわずかにダメージを受けます。それを修復する際、筋肉がより強く太くなるのです」(同)

能勢氏が、70歳の集団に1日30分のインターバルウオーキングを週4回、半年間実施したところ、実施前と比べて平均して20%体力が上昇するという結果だった。

「同様の運動を継続していると、80歳まで体力が落ちませんでした。一方で何も運動をしない群は70歳から80歳までの10年間で20%も体力が低下していたんです。運動をしている群とそうでない群で比較すると、その差は40%にもなります」(同)

インターバルウオーキングを5カ月間続けると、筋肉量が増え、それに伴って体力が向上して体が若返るという。夜にぐっすり眠れる、肌にハリが出る、脳の活性が上がって鬱々とする日々が減るなどの効果もある。

「ゴルフでも買い物に行くときでも、ブラブラ歩くのではなく『ゆっくり』と『ややキツイ』を交互に数分ずつ繰り返すんです。それだけで半年経つ頃には筋肉量が増えて持久力も向上します。もちろん、もっと体を鍛えたいときには、下半身を鍛えるスクワットや、上半身に効く腕立て伏せのような筋トレを取り入れてもいいでしょう」(同)

■「安静は麻薬」という言葉の意味

もっと鍛えたい人だけでなく、歩くと腰や膝が痛くなる人も、まず筋トレをしてからウオーキングをするといい。

日本整形外科学会認定医で日本スポーツ協会認定医、松浦整形外科の井上留美子医師によると40歳を過ぎると歩行に必要な太ももや、股関節まわりの筋肉がどんどん退化していくという。

「昔と同じように歩けない、走れないのは下肢や体幹を支える腸腰筋群の筋力が低下し、背筋が萎縮・脂肪化してしまうからです。表に挙げた2つの筋トレを毎日少しずつでも続けていくと、股関節を上げやすくなり、歩くのが楽になると思います。また腰椎を前方に引く力がついて腰のS字がきれいに描け、姿勢が良くなりますね」

井上留美子医師提唱「もっと楽に歩ける」トレーニング

井上医師は患者を指導する際に、ある専門家が掲げた“安静は麻薬”という言葉を胸に置いているという。「動かないのは心地よいですが、じっとしていると確実に筋力が落ち、気づいたときには動けない体になってしまいます」

■「夢に年齢制限はない、必要なのは動き出す勇気」

ちなみに、運動終了後は1時間以内に牛乳を飲むことで、筋肉量の増加が促進される。

「運動直後は傷んだ組織を修復しようと、筋肉が牛乳に含まれる乳タンパク(アミノ酸)や糖分を積極的に取り込もうとします。そのため、効率的に筋肉を増やせるのです」(能勢氏)

サプリメントのような栄養補助食品でタンパク質を摂取するのも悪くはないが、取りすぎは腎臓の負担になるため気をつけたい。

「歩く」という行為自体は基本的な運動だが、だからこそ健康維持のためだけではない目標や楽しみがあるといい。冒頭の三浦雄一郎さんは「夢に年齢制限はない、必要なのはそれに向かって動き出す勇気」と話す。

「単なる長生きではなくて、何かに挑戦することが生きがい。老いることより目標がなくなることのほうが怖い」

三浦さんは「あの山の向こうには何があるのか」という冒険心を持って歩いている。あなたは2021年をどんな年にしたいだろうか。自分の夢や目標に向かって確かな一歩を踏み出してほしい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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