性犯罪を巡る刑法のアップデートを
プレジデントオンライン / 2021年2月8日 9時15分
■性犯罪を巡る刑法のアップデートを
#MeTooが世界的なムーブメントになり3年。この3年で世界中で性暴力やセクハラに対する体制や法の厳罰化などが見直されてきた。スウェーデンでは、これまでの「No means No」という不同意性行為はレイプという法律から「Only Yes means Yes」と積極的な同意がなければ性暴力に当たるとする法律に改正された。
日本ではどうか。2017年に性犯罪に関する刑法改正が110年ぶりにされ、強姦罪から強制性交等罪になり厳罰化、男性の被害も含まれるようになった。だが合意の有無ではなく被害者への著しい暴行、脅迫され抵抗できなかったことの証明を求める「暴行・脅迫要件」は改正されずに残された。
■これまで幾度も性暴力を受けた被害者を追い詰めてきた言葉たち……
「なぜ抵抗できなかったの?」「逃げられたはずでしょう」。これまで幾度も性暴力を受けた被害者を追い詰めてきた言葉たち……。本来、こんな問いかけは絶対にあってはいけない。スウェーデンの調査では性暴力を受けた際、約7割の人がショックで体が硬直してしまうというリサーチがある。著しい暴力などがなくても抵抗できなくなってしまうのだ。
娘への性的暴行を繰り返し行っていた父親へ名古屋地裁岡崎支部で無罪とされたケースでは「娘の同意なく中学2年生の頃から性的虐待をし続けた」と認定したものの「娘は著しく抵抗できない状態だったとは認められない」として無罪になった。この判決は刑法改正を求めるフラワーデモの1つのきっかけとなった。そして20年11月、最高裁で一転有罪判決が下された。日本の刑法に「同意がなければ性的暴行」ということが記されていたら、被害女性にとって地裁から最高裁までの3年という長くて苦しい道のりは違うものになっていただろう。
ほかにも、性交同意年齢が13歳にとどまっている。多くの学校では性交同意について教えていないにもかかわらず、法律上では13歳になった途端、性交同意ができることになる。満足な性教育もないのに、法律だけ子どもに押し付けるのはあまりにも無責任だ。性犯罪に関する刑法を巡っては現在、見直しに向け法務省の検討会で議論されている。大切な人の尊厳を守るため、日本の刑法をアップデートするべきだ。
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ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。
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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)
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