FX、暗号通貨、不動産…初心者がこうした投資商品に手を出すべきではない理由
プレジデントオンライン / 2021年1月27日 9時15分
※本稿は、足立武志『お金偏差値30からの株式投資』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
■「何に投資すればよいか分からない」が投資のハードルを上げている
資産をもっと増やしたい、老後をお金の心配なく過ごせるように今から準備したい、そのためには投資が必要だ……おぼろげながらこんなふうに思っている方はとても多いのではないでしょうか。
初心者にとって投資のハードルが意外に高いのは、確かに投資は必要、でも具体的に何に投資すればよいか分からない、という思いからであることが多いです。
そこで、投資初心者にとって実は株式投資が最も向いていると筆者が考える理由をいくつかお伝えしたいと思います。
まず「投資」と聞いてどんなものを思い浮かべますか。いろいろな投資がありますが、メジャーなものといえば、株式投資(これには投資信託による投資も含めます)、不動産投資、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産(仮想通貨)といったところではないでしょうか。
投資家から集めた資金をプロのファンドマネージャーが一定の運用方針で代わりに運用してくれる金融商品のことです。100円からの少額資金でも購入可能で、プロに運用を任せるため、初心者でも投資しやすいのが魅力です。また、高額な投資金額が必要な株式や債券、個人投資家が独力で買うのが難しい海外の金融商品を対象にしたものなど品ぞろえも豊富です。
日本円を売って米ドルを買うなど、各国通貨間の交換レートに投資する金融商品です。証拠金として入金した元手の最大25倍まで投資できるので少額投資も可能ですが、当然リスクは高くなります。低金利通貨を売って高金利通貨を買うと、「スワップポイント」という金利収入も得られます。
暗号技術を使い、ネット上で決済や売買できる通貨のことです。「仮想通貨」とも呼ばれ、ビットコイン、リップルなど様々な種類があります。
■不動産投資で5億円の借金が残ったケースも…
それぞれの投資には、それぞれに成功している人やプロの人がいます。その人たちに聞けば、自身が手掛けている投資を勧めると思います。筆者の場合は株式投資で成功していますから株式投資を勧めることになりますが、それは決してえこひいきしているわけではなく、株式投資が投資初心者に向いていると本心から思っているからなのです。
例えば、不動産投資の最大のネックは、「かなり大きな資金が必要なこと」「借り入れをしないと資産を大きく増やせないこと」です。
不動産投資で成功している方は、借り入れをして資金調達できることこそが、不動産投資の最大のメリットであると口をそろえて言います。
確かに成功できるような人にとってはそうなのでしょうが、でも借り入れは借り入れです。借りたものは返さなければなりません。
もし物件の目利きがうまくできず、その結果賃料も想定通りに入らず、売ろうとしても買った値段よりかなり安くないと売れない、そのため物件を売却しても借金が残ってしまう……、これが不動産投資で失敗する典型的なパターンです。
筆者も、バブル期に借り入れをして不動産投資をした結果、50億円あった資産が全てなくなり、5億円の借金が残った、というケースを実際に目にしています。
不動産は扱う金額がかなり大きいことと、失敗した場合、多額の借金が残る可能性があるため、一度大きな失敗をすると再起不能になってしまいます。投資初心者がしっかり勉強もせず、いきなり借金をして不動産投資をするのはかなりリスクが高いのではないかと思います。
■FX投資は短期売買になりがちでせわしない
個人投資家の間では、株式への投資ではなくFX投資を始める、という声もよく聞きます。
FX取引は、レバレッジをかけないとほとんど動きがないので、高いレバレッジをかけて運用します。しかしその結果、短期的な為替の変動要因により、大きな損益が一瞬にして生じることも多々あります。
そして為替市場は24時間動いています。日本のマーケットが閉まって日本が夜中の時間であっても、米国のマーケットが開いているため、いつ大きな為替の変動が起きてもおかしくないのです。落ち着いて寝ることもできないからFX取引をやめた、という人も少なくありません。そのためFX投資は、じっくり長期間ポジションを持ち続けるというよりは、デイトレードやスイングトレードのように短期間で完結させることが多くなります。特にデイトレードであれば、ポジションを有している間は、基本的に為替の動きを見ている必要があります。
もちろん、ロスカット注文(「ここまで下がったら損失が出ても売る」という損切りの注文)などを事前に入れておけば、四六時中パソコンの前に張りつくことは避けられますが、それでも短期間に取引を完結させることには変わりないですから、結構せわしないと思います。そして株式投資と異なり、FXはどちらかがプラスになれば、もう片方は同じだけマイナスになるというゼロサムゲーム(投資参加者の利益と損失の総和がゼロになること)ですから利益が得にくいです。ちなみに株式投資は企業価値が上昇すれば株価も上がりますからプラスサムです。株式投資の方がFXより利益を上げやすいと思います。
自らの元手を担保に資金を借りるなどして、元手以上の取引を行うこと。FXでは最大、元手の25倍の金額を投資できます。
1日の取引時間中(日本の株式市場の場合、午前9時から11時30分までの前場と午後12時30分から15時までの後場)に、何度も短期的な売買を繰り返すのがデイトレードです。数日から数週間程度の値動きを狙って売買する取引は「スイングトレード」と呼ばれます。
■暗号資産はファンダメンタルの裏づけに乏しい
数年前には一大ブームを起こした暗号資産。今でも取引を行っている方は数多くいます。暗号資産は株式に比べると、とにかく値動きが荒いです。しっかりと損切りをしないとあっという間に資産半減、ということもよく起こります。
もう一つ、暗号資産はファンダメンタルの裏づけに乏しいため、今ついている価格が適正値なのか、割高なのか割安なのかが判断できないという難点があります。
株式であれば、業績に応じてあるべき企業価値というのがだいたい計算できますから、今ついている株価が割安か、割高か、という判断は比較的しやすいです。しかし暗号資産は単なる通貨ですから、ファンダメンタル分析をして現時点での価値を把握することが困難です。
価格の値動きが極めて大きく、価格が上下どちらに動くかも分からないというのが、投資初心者に暗号資産取引をお勧めしにくい理由です。
投資したいと思っている企業の業績や財務を調べたり、相場全体をとりまく経済情勢などを分析したうえで投資判断を下す手法のこと。純粋に、過去の株価の値動きから現在や未来の値動きの方向性を把握する「テクニカル分析」と双璧をなす株の分析法です。
■少額でも可能で長期投資もできる株式投資は始めやすい
最後に、株式投資です。株式は、10万円出せば買える銘柄もたくさんあります。不動産投資のように大きな金額も必要なく、借り入れをする必要もありませんから初心者でも気軽に始めることができます。
また、FX取引のように短期間で取引をする必要もなく、じっくり何年も持ち続けることもできます。暗号資産と違ってファンダメンタル分析によって企業価値を調べ、株価が割安か割高かを算定することもできます。
不動産投資は値上がり益(キャピタルゲイン)よりも安定的な利回り(インカムゲイン)が得られる、というメリットは確かにあります。でも、無理に借り入れをして不動産投資をするのではなく、上場しているREIT(リート:不動産投資信託)に投資すれば、比較的高い利回りで少額でも不動産投資をすることができます。
税金面で考えても、不動産投資や暗号資産は最高税率50%超の総合課税ですが、株式投資やREITは20.315%の分離課税ですからメリットが大きいです。
無論、株式投資でなければいけないということは一切ありません。しかし、大きな失敗をする可能性が他の投資より少なく、正しく取り組めば成果が出やすいという点で、やはり筆者としては株式投資をお勧めしたいのです。
多くの投資家から集めた資金で、オフィス、商業施設、マンション、物流倉庫などの不動産に投資し、そこから得た賃料収入を投資家に分配する金融商品のことです。中でも「J-REIT(ジェイ・リート)」は証券取引所に上場され、株式と同じように売買できます。
他の所得と分けて課税されることです。株式や投資信託の取引で得た値上がり益や配当・分配金収入は分離課税方式で課税されるのが一般的です(配当・分配金収入は総合課税も選べます)。分離課税の場合、その他の所得額に関係なく、投資で得た利益に対して所得税と復興特別所得税(2037年末まで)が15.315%、住民税が5%、合計20.315%の税金がかかります。
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足立公認会計士事務所代表
公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)。マーケットチェッカー取締役。1975年、神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活動、セミナー講師などを通じ、個人投資家に対して真に必要・有益な知識や情報の提供に努めている。現在、楽天証券にて資産運用のコラムを連載中。著書に、『株を買うなら最低限知っておきたい株価チャートの教科書』(ダイヤモンド社)、『すぐできる! らくらくネット株入門』(高橋書店)、『それは失敗する株式投資です!』『超実践・株価チャート使いこなし術』(ともに日本経済新聞出版社)、『はじめての人の決算書入門塾』(かんき出版)、『知識ゼロからの経営分析入門』(幻冬舎)などがある。
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(足立公認会計士事務所代表 足立 武志)
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