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食、運動、睡眠、ストレス…新型コロナも遠ざける「免疫力」を高める新常識

プレジデントオンライン / 2021年2月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wenmei Zhou

新型コロナウイルスなどの病気を遠ざけるには「免疫力」を高めることが重要だ。一体なにをすればいいのか。東京医科歯科大学副学長の古川哲史氏は「医学の常識はどんどん更新されている。たとえば野菜が健康にいいのは『毒だから』という説が有力だ」という——。

※本稿は、古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■野菜が健康に良いのは“抗酸化物質”ではなかった?

「野菜を食べることはどうして健康に良いの?」と訊かれて、きちんと答えられる人は少ないようです。これは無理からぬことです。なぜなら、専門家の間でも答えが一致しているわけではないからです。

今まで最も信じられていた考え方は、「野菜に含まれる“抗酸化物質”のおかげだろう」というものでした。ヒトに限らず生物は生きていくうえで、酸素が必要です。このなくてはならない酸素ですが、多すぎると害になります。過剰な酸素からは「フリーラジカル」と呼ばれる有害な物質が出るからです。

野菜に含まれるビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどは、フリーラジカルの有害な作用を抑える力があります。これを「抗酸化作用」といいます。だから、野菜は健康に良いのだろう、とこれまで専門家も含めて多くの人が信じてきました。

ところが、これを証明しようとして多くの研究者が、動物実験やヒトの臨床研究で、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどの抗酸化物質を投与したところ、確かに抗酸化作用があるものの、到底食べきれないほどの大量のそれらを摂取しない限り、フリーラジカルによる障害を予防することはできないことがわかりました。

野菜に含まれる抗酸化物質は身体に良いのだけれども、日常的に食べている量の野菜によって健康を維持できるのは、どうも抗酸化作用が理由ではないといえるようです。

では、どうして野菜は健康に良いのでしょう?

■七草粥の「苦味」=「毒」が身体によい

今では、野菜を食べることによって身体に入ってくる少量の毒物が健康に良い、という考えが有力です。

新鮮な野菜
写真=iStock.com/sunabesyou
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sunabesyou

「えっ、私達って、野菜を食べることによって毒物を食べているの? ウソでしょ」と思った人も多いのではないでしょうか。

生物は敵から身を守るために、走って逃げたり、隠れたりすることができます。

ところが植物は根が生えているので逃げたり、隠れたりすることができません。

でも植物もしたたかです。何千万~何億年もの年月をかけて、身を守るための防御策を編み出したのです。それは、植物が作り出す苦味のある化学物質です。これがあたかも「天然の殺虫剤」のような役目をはたして害虫から身を守っているのです。

ピーマンやゴーヤなどの野菜を食べた時、「苦い!」と感じる、あれです。私たちが植物由来の食品を食べる時、これらの少量の殺虫剤も一緒に摂取してしまい、私たちの身体の中にある細胞が軽いストレスを受けるのです。

この軽いストレスにさらされることによって、あとから強いストレスを受けても、これに対抗できる抵抗力を身につけることができるのです。

日本には古くから、1月7日に無病息災を願って七草粥を食べるという風習があります。七草粥に含まれる春の七草は、特にこの苦味が強いようです。きっと昔の人は、この苦味が無病息災に良いということを経験から知っていたのでしょう。

■睡眠不足だとワクチンの効果が半減する

野菜の毒のように、弱いストレスにさらされた際に、それに対応することで、強いストレスに対する抵抗力を得ることを「ホルミシス効果」といいます。

ホルミシスは、言葉こそ最近使われるようになりましたが、その概念自体は何も新しいものではありません。毎年、冬になる前にインフルエンザのワクチンを注射する人が多いと思いますが、このワクチンも、ごく弱い病原体や死んでしまった病原体、すなわち、ある種のストレスを体内に注射することによって、抗体を作って、実際にインフルエンザウイルスが身体に入ってきた時にこれを排除する仕組みです。

このインフルエンザワクチンの効果と睡眠時間に関する、面白い研究があります。健康な人を2つのグループに分けて、一方のグループは7時間半~8時間半の睡眠、他方のグループは4時間の睡眠を6日間続けてもらい、6日目にインフルエンザの予防接種を受けてもらうのです。そして数日後に血液検査を行い、抗体の産生具合を調べると、7時間半~8時間半の睡眠グループに比べて、4時間睡眠グループでは、抗体の産生量が約50%しかありませんでした。

睡眠不足は、病原菌に対する免疫力が弱くなって、風邪やインフルエンザになりやすくなることも判っていますが、予防接種の効果も半減させるのです。

■カレーがアルツハイマー病を抑える理由

もう一つ、ホルミシス効果によって、身体の中でどのようなことが起こっているのか、カレーの香辛料のクルクミンを使った研究をご紹介しましょう。

インド人にはアルツハイマー病が少なく、アメリカ人の4分の1の発症率であることが昔から知られています。

インドで地元のバザール
写真=iStock.com/CatherineL-Prod
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CatherineL-Prod

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のコール博士はこれに注目して、カレーの香辛料に含まれるクルクミンがアルツハイマー病に効果があるのではないかとの仮説を立て、マウスを使って調べました。

その結果、クルクミンが直接フリーラジカルを除去するのではなく、クルクミンが軽いストレスとなり、脳細胞がみずから持つフリーラジカルに対する抵抗力を強化することによって、脳細胞のダメージを予防していたことがわかりました。

このように、ストレスにも「良いストレス」と「悪いストレス」があるのです。えてしてストレスは身体に悪いもの、と決めつけられがちですが、まったくのストレスフリーな環境に置かれると、ヒトは自律神経失調症状態となることも研究によって判っています。

ストレスの性質、それがかかる時間の長さなどにもよりますが、「良いストレス」は自分を高めてくれます。よきライバルと切磋琢磨しあって、互いに実力を伸ばしあうことなどが典型例でしょう。

一方、悪いストレスは「やらなくてはいけない」「頑張り続けなくてはいけない」と自分を強制的に追い込み、自らの意思とは無関係にある行動を続けることにより受けるストレスです。この悪いストレスが続くことによって、さまざまな身体的な異常が現れます。首や肩の凝り、頭重感や頭痛、耳鳴りやめまい、などです。また、長時間のストレスにさらされると、がんになりやすくなることも研究結果から判っています。

■孤立のストレスは心疾患・脳卒中リスクを3割増しにする

では、ヒトにとって最大の「悪いストレス」とは何か。それは、「社会的孤立」です。

米国ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド教授たちは、1980~2014年に行われた研究で「孤独」、「社会的孤立」、「1人暮らし」のいずれかの言葉と「死」、「生存」のいずれかの言葉の組み合わせ、すなわち「孤独」と「死」の両方をもつ、あるいは「1人暮らし」と「生存」の両方をもつ、等の1384件の研究の中から、70の研究を選んで調査を行いました。

その対象となった人はトータルで340万7134人、平均年齢は66歳、経過観察期間は平均7年間でした。その結果、「社会的孤立」によって29%、「孤独」によって26%、「1人暮らし」によって32%、死亡リスクが高まることが示されました。これは肥満の約2倍、タバコに換算すると、なんと1日15本喫い続けた死亡リスクに相当します。

日本でも18歳以上の男女、約18万人を対象とした複数の研究から、孤独や社会的孤立と心血管疾患、脳卒中との関連が解析されています。その結果、孤独で社会的に孤立している人は、心筋梗塞や狭心症の発症リスクが29%高く、脳卒中リスクも32%高いことが示されました。

「1人暮らし」が悪いのではなく、「社会的孤立」が健康に悪影響を与えるという研究結果も出ています。要介護率において、独居老人と非独居老人では差がないのですが、ネットワークの少ない老人は、そうでない老人に比べて高かったのです。1人暮らしでも他人と接触をとっている人は要介護になりにくいのです。

孤独が死亡リスクを高める理由として、シカゴ大学のジョン・カシオボ博士は、他の人々から隔離されているという感覚は、ストレスホルモンであるコルチコステロンを上昇させることを示しています。

■病気を防ぐために医学の新常識を知る

古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)
古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)

そもそも進化の過程において、我々ホモ・サピエンスが生き残ったのは、言語機能を得たことにより、コミュニケーション能力を発達させて、大人数による狩りが出来るようになったこと、と言われています。

言葉による「社会的つながり」「コミュニケーション能力」こそが、ホモ・サピエンスが現存する唯一のホモ属である土台であり、これが妨げられることは人にとって最大のストレスとなるのです。それゆえ、新型コロナウイルスによる外出自粛のストレスによる、免疫力の低下も危惧されるところです。

こうしたストレスを含め、それらに対応するために、今すべきことについて、本書では「食」「運動」「睡眠」「ストレス」に絞って、判りやすく解説しました。皆様の健康の一助となれば幸いです。

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古川 哲史(ふるかわ・てつし)
医学博士・東京医科歯科大学副学長
1957(昭和32)年、東京都生まれ。医学博士。1989年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学副学長。著書に『血圧と心臓が気になる人のための本』『心房細動のすべて 脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章』『心臓によい運動、悪い運動』(いずれも新潮新書)などがある。

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(医学博士・東京医科歯科大学副学長 古川 哲史)

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