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カビキラー、固めるテンプル、ジャバ…超ヒット商品に共通する8つのコツ

プレジデントオンライン / 2021年2月1日 11時15分

出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』

ヒットする商品はどこが違うのか。マーケティングコンサルタントの梅澤伸嘉氏は「もっとも重要なのはコンセプトづくり。そのため私の手がけたヒット商品には共通する8つのコツがある」という――。

※本稿は、梅澤伸嘉『「梅澤式」だと、なぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』(1万年堂出版)の一部を再編集したものです。

■定番商品が成立する基本要素は、「生まれ」にある

第1章、第2章で、コンセプトが定番商品づくりに欠かせないものであることを理解していただきました。第3章ではもう少し掘り下げて、コンセプトづくりが定番商品を生む仕組みを見ていきます。

図表1に示したように、定番商品が成立する基本要素は、「生まれ」にあることがわかります。しかし、生まれだけでは作れません。

定番商品が生まれる途中段階で、「商品力」として「C/P(コンセプト/パフォーマンス)バランスのよい新カテゴリー」という条件を満たし、意図したか否かに関係なく、発売後は「販売力」や「広告力」という最大化要素によって、「カテゴリーの代名詞的商品」になるのです。

定番商品の特徴は、定番商品であるための条件とも言えます。それゆえ、これを目指していく指標としてとらえてください。代表的な特徴は、次のようになります。

①ロングヒット
市場に10年以上、上位として残り定着することです。定番商品は長い間市場にあって、消費者の期待に応えつづけます。

②長期No1〜3
定番商品として市場に定着すると、その80%はカテゴリー内シェアでNo1〜3を長期間保つことができます。逆読みすれば、必ずしもNo1でなくても上位3位以内を長くキープしつづけられればいいわけです。

③C/Pバランスのよい新カテゴリー
多くの消費者に、買う前から期待を与え、欲しいと思わせる力の強いコンセプト力があり、買ったあとに満足を与え、期待をかなえてくれるパフォーマンス力も持ち合わせている。

つまり「C/Pバランス」がよいこと。さらに「新カテゴリー」であること。この2つは定番商品の基本中の基本です。この特徴がロングヒットを生み、長期No1〜3の売上シェアを達成するのです。この特徴を備えた商品が「新市場創造型商品」ということです。

■「ホチキス」「セロテープ」は一般名称ではない

④先発商品であることが多い
定番商品の多くは「先発商品」です。つまり、新カテゴリーを作り、そこに最初に登場したということです。C/Pバランスがよければ、新カテゴリー商品の多くはロングヒットになる「新市場創造型商品」の条件を満たすのです。

⑤カテゴリーの代名詞
定番商品というと、多くの人は「カテゴリーの代名詞」というイメージをすぐにいだくでしょう。あるカテゴリー名を聞くと、そのカテゴリーの中の定番商品名が浮かびます。世の中には、一般名称として使っていたものが、じつは商品名だったということがよくあり、よく知られているところでは、ホチキス、セロテープなどがあります。

⑥多くの店に置いてある
定番商品はカテゴリーの代名詞になっているので、多くの店で扱われます。「配荷店率」が高いということです。その典型がコンビニエンスストアで、日用品の定番商品のほとんどが置いてあります。また、スーパー、ドラッグストア、デパート、あるいは小さな小売店でも、定番商品は必ずといってよいほど扱われています。

規模の大きい店では定番商品以外も扱いますが、小規模店では定番商品だけを扱うというのがほとんどでしょう。

⑦普遍のニーズに応えている
定番商品が応えているDoニーズ(生活ニーズ)は、長期間にわたって変わらず、ずっと続いているもの。つまり、流行のニーズではない、流行に左右されないということです。

⑧強いブランドになっている
ブランドは、カテゴリーの代名詞になっている商品のことですから、強いブランドとは「カテゴリーの代表度」が高いブランドのこと。まさに定番商品は強いブランドになっているのです。

以上の①〜⑧はすべて「新市場創造型商品」そのものの特徴です。

新しく市場を創造した商品はロングヒットすることが多く、シェアは長期間にわたってNo1〜3であり、C/Pバランスのよい新カテゴリーであり、先発商品であり、カテゴリーの代名詞になりやすく、配荷店率が高く、普遍のニーズに応え、強いブランドになっている、という特徴があるのです。

■2つの方法で定番商品は育てられる

企業の商品がたくさん並ぶ中に、定番商品が1つでもあると経営は楽になります。

開発、製造、販売と続く流れにはすべて膨大なコストがかかるわけですが、2回目の製造からは開発費はいらないし、製造ラインを新たに作る必要もないし、販売ルートもほぼ敷かれているため、コストは何分の一かですみます。

ドル箱を成功させられれば、まさに当分安泰です。図表2で示しているように、何十年も独走する商品を揃えると、経営上のメリットは計り知れません。定番商品を作ることの重大さがおわかりいただけると思います。

出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』
出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』
・長期間、売上・利益が安定的に続く
・長期間、No1〜3のシェアが続く
・広告費、販促費が少なくても売りやすい
・強いブランドが持てる

これらの恩恵を得るためにも、商品コンセプト開発にすべてを凝縮していきます。

新カテゴリーで新市場を作る図表3は、新市場創造型商品を生んで定番商品に育てていくときの2つの方法を示しています。

出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』
出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』

①新市場創造型商品開発(図表の右下から上へ)
=1からコンセプトを作る
(今の市場の外に、今はない「新カテゴリー」の市場を作る)

②新市場創造型商品化4(図表の左下から右へ移ってから上へ)
=コンセプトを変える
(今の市場(激戦地)から脱して、今はない「新カテゴリー」の市場を作る)

これは、コンセプト発想法の行動アプローチかシーズアプローチによって「未充足の強い生活ニーズ」に応える商品コンセプトを作ることから始めて、新市場創造型商品を開発するアプローチです。

これは、「コンセプト発想法」の変身アプローチか代替アプローチによって、苦戦中の商品のコンセプトを変えることから始め、苦戦商品を定番商品に変えるアプローチです。いわば、売れなくて困っている自社商品のコンセプトに改良を加えて、定番商品に生まれ変わらせる方法です。

■「商品の満足度」を使用前から高める方法

①②いずれも「新市場創造型商品」を生むアプローチで、定番商品への旅立ちです。本書は①をテーマとしています。

「新市場創造型商品開発」や「新市場創造型商品化」で商品コンセプトを新カテゴリー化したら、売上も利益も安定する未知の「聖域の市場」に向かって、カテゴリー代表度を上げていきます。定番商品となった時点で、「聖域の市場」は「今の市場」となるわけです。

この道筋を「定番化」とか「ブランド化」と呼びます。以上のように、①②いずれのアプローチをするにも、定番商品はコンセプトを考えることから始まる、ということをご理解いただけたでしょう。すべてのスタートは「何を作るか」「何をやるか」というコンセプトを決めることなのです。

ここで、図表4のC/Pバランスを今一度ご覧ください。商品力の構成要素の1つである「コンセプト力」は、消費者に期待を与えてニーズを刺激し、「欲しい」と思わせる働きを持ちます。すぐれたコンセプトは力が強いので、多くの人に欲しいと思わせ、大量の購入を促します。

出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』
出所=『「梅澤式」だとなぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』

その商品を買った消費者の満足は、図表中の「パフォーマンス力」によってもたらされます。その満足度は、コンセプトで与えられた「期待」と比較して、「期待以上」「期待どおり」「期待だおれ」のいずれかになります。つまり、コンセプトは満足の度合いにも影響を与えるのです。

■なぜカビキラーはヒットしたのか

どうしたら定番商品を生み出せるのか。頭に浮かぶのは次の2つです。

①「商品上の問題」を解決する
②「消費者の生活上の問題」を解決する

先に答えを言ってしまえば、定番商品は、既存商品の「商品上の問題」を解決するのではなく、「消費者の生活上の(行動に伴う)問題」を解決することによって生まれます。この違いをよく理解してください。

商品上の問題は誰でもわかることなので、生活上の問題を、みなさんご存じの定番商品を例に見ていきましょう。

《定番商品》 《生活上の(行動に伴う)問題》
カビキラー 風呂場のタイルのメジのカビをいくらこすっても落ちない
スキンガード いつも注意していないと蚊にさされてしまう
固めるテンプル 古くなった天ぷら(+揚げ物)油の処理がめんどう
ジャバ ホース洗いでは風呂釜にこびりついた湯ドロは除去できない
サンスタートニックシャンプー 石鹸やシャンプーで洗っても、頭皮も気分もスカッとしない
カンターチ 従来の洗濯のりでは、アイロンがけ時に、のりづけできない
写ルンです 旅行でカメラを忘れると写真が撮れない
モンカフェ レギュラーコーヒーを家でいれるのはめんどう
ぐーぴたっ 空腹になるとおなかが鳴って恥ずかしい
GUM いくら歯を丁寧に磨いても歯周病は防げない
梅澤伸嘉『「梅澤式」だと、なぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』(1万年堂出版)
梅澤伸嘉『「梅澤式」だと、なぜ超ヒット商品がこんなに作れるのか』(1万年堂出版)

これら消費者の生活上の(行動に伴う)問題点を見ると、納得できると思います。これらを解決するのが、将来、定番商品となる新市場創造型商品なのです。

生活上の問題解決が新市場を生み出すでは、なぜ生活上の問題を解決すると新市場創造型商品が生まれ、いずれ定番商品になるのでしょうか。それは次のとおりです。

①商品上の問題を解決する⇨同じ商品が改良される
②生活上の問題を解決する⇨新しい市場が生まれる

商品上の問題を解決しても、既存品の改良にしかなりませんが、生活上の問題を解決すると、新しい市場が生まれます。それが新市場創造型商品の開発によってもたらされるのです。

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梅澤 伸嘉(うめざわ・のぶよし)
マーケティングコンサルタント
商品企画エンジン代表取締役会長。1940年生まれ。日本大学大学院(心理学)卒業、文学修士。愛知学院大学大学院経営学研究科修了。経営学博士。サンスター研究所、ジョンソンを経て、現在、商品企画エンジン代表取締役会長として企業コンサルテーション(新商品開発、独創性開発、市場調査)に従事する。主な著書に『消費者心理のしくみ』(同文舘出版)、『消費者ニーズ・ハンドブック』(同文舘出版)、『「アイデア」を「お金」に変える思考ノート』(かんき出版)などがある。

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(マーケティングコンサルタント 梅澤 伸嘉)

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