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「ジャガイモは水に浮くか?」本当にできる子供は4歳時点でこう考える

プレジデントオンライン / 2021年2月8日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

どうすれば子供の学力は高くなるのか。白梅学園大学子ども学部の増田修治教授は「学力=認知能力を高めるためには、非認知能力を伸ばすのが効果的。たとえば『次の野菜や果物は水に浮くか、沈むか』というクイズが役に立つ」という――。

※本稿は、おおたとしまさ・監修、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ・編集『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■筆記テストで測ることのできない力

学力のように、テストで測ることができる力を「認知能力」、テストで測ることのできない力を「非認知能力」と呼びます。この非認知能力は、これからの社会を生きていくためにとても重要な能力だといわれています。

とはいえ、明確にイメージしにくいという人も多いでしょう。非認知能力がどういうものかを知ってもらうため、まずは次のクイズに挑戦してみてください。

Q:次の野菜や果物は水に浮くか、沈むか
1.ピーマン
2.キュウリ
3.ナス
4.バナナ
5.リンゴ
6.ニンジン
7.ジャガイモ

これは、わたしが4歳の子どもたちに出したクイズです。実際に水槽を用意して順番に答えを確かめながら進めました。

ピーマンは水に浮きますよね。4歳児も多くが正解しました。ところが、次のキュウリは子どもたちの答えがけっこうわかれました。正解は次のナスも含めて浮きます。大人であれば、料理中にこれらを洗うときに水に浮かぶ様子を見たことがある人も多いでしょう。

それでは次のバナナとリンゴは? このふたつも浮くんですね。では、子どもたちはニンジンについてはどう答えたでしょうか。

■能動的な心情を自分でつくり出せるか

それは「浮く」でした。なぜそう思うのかと聞いたら「これまでの全部が浮くから」と。

子どもたちはちゃんと考えているんです。これまでの正解を聞いて、「野菜や果物は水に浮く」と考えたわけです。でも、答えは「沈む」なんですよね(笑)。

それでは、最後のジャガイモはどうでしょう? 答えは「沈む」です。「野菜や果物は水に浮く」という仮説は正しくありませんでした。

でも、別の仮説が浮かんできませんか? そう、基本的に地下で育つものは水に沈んで、地上で育つものは浮くというわけです。

そして、このクイズのあと、子どもたちは家に帰ってお風呂にいろいろな野菜や果物を浮かべてみたのです。

これが、簡単にいえば非認知能力です。このクイズで、なにが浮く浮かないといった知識を教えようとしたわけではありません。子どもたちはクイズを通じて、自分の頭でうんと考えたのです。

そして、「面白い」だとか「やってみよう」「調べてみよう」という気持ちになりました。

こういう能動的な心情を、自分のなかでつくり出せる力――それが非認知能力なのです。

ジャガイモの皮をむく小さな女の子
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■AI時代になくなる仕事、残る仕事

いま、この非認知能力が「子どもたちの人生を決める」ともいわれています。

というのも、時代が大きな曲がり角に来ているからです。これからは人工知能、いわゆるAIが社会を大きく変えていきます。そして、そのAIをどういう方向で使っていくかを考えられる人間が必要とされる。

AIの時代になるからこそ、これまでとちがった角度からものを見ることができる、あるいは新しいものや発想を生み出せる力が求められるのです。それこそ、テストでは測ることができない、非認知能力そのものでしょう。

いま、「スマートガスメーター」の導入が全国で進んでいることをご存じですか?

これは、ガスの使用量を無線通信回線で把握するというメーター。つまり、これまで検針員がやっていた仕事がなくなるということです。

なくならない仕事は、教師や保育士など人間相手の仕事、それからデザイナーといった創造性が必要な仕事などに限られてきます。

単純な仕事は基本的にどんどんなくなるので、これからは自ら仕事を生み出すような人間になっていかないとならない。それがいいかどうかはともかく、そうならざるを得ないのです。

それこそ、他人とどう接するか、どういう新しい発想を持って創造性を発揮するかといったことは、なかなか点数にできるものではありません。それらはまさに、非認知能力だということです。

■学習機会が奪われていても学力の高い子

いま、日本の教育は「貧困」という大きな問題に直面しています。

「子ども食堂」というものを聞いたことはありますよね。貧困世帯の子どもたちを集めて食事を与え、同時に勉強も見てあげるという社会活動です。そこに来る子どもたちは、やはり学力が低い傾向にあります。

貧困世帯の子どもは、学習塾には通えません。となると、自分で勉強しなければならない。でも、学習教材など自分で勉強できる環境が整っているわけでもありません。となると、その子どもにとって勉強できる唯一の場所は、学校です。

ところが、子ども食堂に来る子どもたちのなんと約8割が学級崩壊を経験しているというではありませんか。学級崩壊したクラスでは、まともに授業を受けることができません。

そういう子どもたちは、勉強する機会を完全に奪われているのです。逆に、学級崩壊によって勉強する場所がないから、子ども食堂に通っているともいえます。

アルファベットの模型で勉強する女の子
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

では、貧困世帯に育つと学力を伸ばすことができないのかというと、そうではありません。貧困世帯の子どもにも、貧困ではない世帯の子どもと遜色ない学力を持つ子どもたちがいます。彼らの共通点はなにかというと、「非認知能力が高い」ことです。

■非認知能力が高い子どもはテストの点数も上がる

非認知能力には、「朝ごはんを毎日食べる」といった生活習慣、「毎日の勉強時間の目安を決めている」といった学習習慣、あるいは、つらいことや困ったことがあったときに学校の先生に相談できるなどのコミュニケーション能力といったものも含まれます。

これらは、一般的には貧困ではない世帯の子どものほうがしっかりと身につけている傾向にあるのですが、貧困世帯に育ちながら学力が高い子どもも、こういった基本的な習慣、非認知能力を身につけているのです。

これがなにを表しているかというと、「非認知能力が認知能力を発達させる」ということです。

2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマンらは、40年にわたる長期追跡調査の分析により、「非認知能力がその後の認知能力の発達を促し、その逆は確認できない」と結論づけました。

非認知能力が高い子どもはテストの点数も上がるが、テストの点数がいいからといってその子どもの非認知能力が伸びるわけではないのです。

■非認知能力の育成に欠かせない、子どもの声に耳を傾ける姿勢

となると、今後の乳幼児教育や小学校教育は大きく変わっていく必要があります。いつまでも、テストで高得点を取ることだけが素晴らしいと評価する教育ではダメなのです。

おおたとしまさ監修、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ編『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社)
おおたとしまさ監修、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ編『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社)

もちろん、これは学校などの教育現場だけの問題ではありません。家庭教育も、「非認知能力を伸ばす」ことを意識して行うべきでしょう。

とはいえ、身構えるような必要はありません。大事なのは、「子どもの話をきちんと聞く」ことです。

教育に熱心な親ほど、子どものいうことに耳を貸さず、「これが子どものためになるんだ」と勉強や習い事を押しつける傾向にあります。それでは、まったくの逆効果。

まずは、「なにかやりたいことある?」と子どもに聞いて一緒に考えること。そのなかで、互いに折り合いをつけていくべきでしょう。

宿題ひとつ取っても、「○時になったから宿題をやりなさい」ではダメ。「何時になったら宿題に取りかかれる?」と子どもに聞いてください。そうして決めた時間は、親が決めたものではありませんよね?

これはつまり、子どもに選択権をわたしているということです。そうすれば、親からすれば「あなたが決めたことでしょう?」といえるし、子どもからすれば「自分で決めたのだからやらなくちゃ」と、自発性や意欲、責任感を養うことにもなります。

多くの親は、その過程を省いてしまっているように感じます。そうではなくて、親と子どもそれぞれが納得する「一致点」をつくるコミュニケーションをたくさん取ってください。そういったことが、子どもの非認知能力を育んでいくのですから。

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増田 修治(ますだ・しゅうじ)
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授
1958年生まれ、埼玉県出身。埼玉大学教育学部卒業後、小学校教諭として埼玉県朝霞市内の小学校に勤務。「ユーモア詩」に取り組み、子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図るとともに、楽しい学級づくり、保護者とのコミュニケーションづくりを行う。2002年にはNHK「にんげんドキュメント 詩が躍る教室」が放映され反響を呼んだ。2008年3月末で小学校教諭を退職し、白梅学園大学准教授を経て現職。著書に『子どものココロが見えるユーモア詩の世界親・保育者・教師のための子ども理解ガイド』(ぎょうせい)、『幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿を育む保育実践32』(黎明書房)などがある。

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(白梅学園大学子ども学部子ども学科教授 増田 修治)

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