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サッカー部監督"唾吐き"で話題の青森山田をしのぐ「日本一のスポーツ強豪校」埼玉栄がエグすぎる

プレジデントオンライン / 2021年2月6日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuttapong

正月の全国高校サッカー選手権で準優勝した青森山田は、他の複数の競技でも全国区の実力を持つ。高校スポーツのウオッチャーであるライター相沢光一氏は「私立校を中心にスポーツ強豪校は全国に数多くありますが、青森山田以上の実績とプロ選手の輩出数を誇るのが埼玉栄です」という――。

■高校スポーツウオッチャーが語る「年末年始の大会で残念だったこと」

「春の甲子園」選抜高校野球大会の出場32校が決まった(3月19日開幕)。日本高校野球連盟は徹底したコロナ対策をするため、組み合わせ抽選会はリモート、甲子園練習や開会式の入場行進も行わず、チケットはすべて前売り指定席で密を避けるという。

その意味でいえば昨年、高3になった球児や、他の競技の選手たちは気の毒だった。

甲子園は春・夏とも本来の形では実施されず、陸上・水泳など多くの競技を行う高校総体(インターハイ)も中止に追い込まれた。「部活は高校まで」と心に決め、高3の大会を競技生活の集大成として臨む生徒は多い。今回の甲子園は開幕時の状況次第では変更の可能性もあるが、球児たちがプレーできるのはなによりだ。

2020年の高校スポーツイベントに関しては、会場を無観客にするなどの対策で年末から年明けにかけては関係者の努力によって、全国大会が開催されるようになった。

サッカー、ラグビー、駅伝、バスケットボール、バレーボール、ホッケー、アメリカンフットボールなどだ。選手たちは全国大会を開いてもらったことに感謝し、全力プレーを見せた。それによって生まれた好試合も少なくない。

とくに次の3つの試合は白熱した好ゲームだった。

●バスケットボール・ウインターカップ2020(全国高等学校バスケットボール選手権大会)男子決勝:仙台大付属明成(宮城)—東山(京都)
●第99回全国高校サッカー選手権決勝:山梨学院青森山田
●全国高校アメリカンフットボール選手権大会決勝(「クリスマスボウル」):佼成学園(東京)―関西学院(兵庫)

いずれも最後の最後までどちらが勝つか分らない息詰まる熱戦だった。高校アメフトは注目度がやや低い競技のせいかあまり話題にならなかったが、終了2秒前のロングパスでタッチダウンが決まる劇的な試合となった。

厳しい状況を乗り越えて大会が開催され、選手がそれに応えるプレーをしたからこそ、これらの好試合が生まれたともいえる。

■強豪校・青森山田サッカー部監督はなぜ炎上したのか

しかし、残念な出来事もあった。好試合として挙げたサッカー選手権の決勝での青森山田・黒田剛監督が試合中に「(相手選手の)スローインの邪魔をした」「ピッチで唾を吐いた」と、ネット上で「指導者としてふさわしくないのではないか」と物議を醸したのだ。

この一件をAERA dot.が〈これも戦術?高校サッカー決勝戦で“違い”が浮き彫りになった監督の「マナー」〉(1月14日公開)と題した記事でサッカーライターの見解を交えて詳述すると、さらに批判の声が高まった。

これに対して黒田監督はAERA dot.編集部に「事実が違います」と連絡し、弁明。その内容が翌日に公開された(青森山田サッカー部・黒田剛監督インタビュー「マナー問題は誤解。あのとき起きたことは偶然だった」)。ただ、そこに謝罪と受け取れる言葉はなく、「苦しい言い訳をして正当化しているのでは」と再び炎上状態になったのだ。

黒田監督にも言い分はあるだろうが、好試合に水を差してしまったことは事実だ。なんとも後味が悪い。

■青森山田はサッカー以外に卓球、バドミントン、野球、駅伝もトップ級

黒田監督が指導する青森山田は現在、高校サッカー界随一の強豪校だ。高校王者を決める選手権において2016年度と2018年度に優勝。2019年度と2020年度(今大会)は準優勝。つまりこの5年間で4回、日本一を争う場に進出している。

Jリーガー輩出数もダントツで、日本代表の柴崎岳、室屋成をはじめ、40人以上のプロサッカー選手を生んでいる。そのため全国から有望選手が集まり、部員数は200人前後。チームは6軍まで分けられ、厳しい競争が強さにつながっているといわれる。青森は練習環境でもハンデがある。冬はグラウンドに雪が積もり、寒さも厳しい。こんな場所で、よくトップレベルのチームを作ったと評価もされている。

青森山田高校サッカー部の紹介コーナーには「サッカーだけではなく挨拶や礼儀など人として当たり前のことを行えるよう厳しく取り組んでいます」とあった(同校HPより)
青森山田高校サッカー部の紹介コーナーには「サッカーだけではなく挨拶や礼儀など人として当たり前のことを行えるよう厳しく取り組んでいます」とあった(同校HPより)

弁明で黒田監督は「意図的にしたことではない」と答えている。強いチームをつくるには勝利に対する並々ならぬ執念が必要だ。また、教え子に勝利の喜びを味あわせたいという思いも強いだろう。その思いが無意識に出てしまった行為なのかもしれない。だが、意図的でないとしても多くの人が見て疑問に感じる行為はしないように努めるべきだろう。多くの人が名指導者として認め、リスペクトされているのだからなおさらだ。

この青森山田はサッカーに限らず、多くの競技がトップレベルの実力を持つ。例えば、卓球の男子はインターハイで優勝15回、女子も4回優勝している。バドミントン女子も10回、新体操男子団体は11回、日本一になっている。

野球も甲子園に春・夏合わせて13回出場。駅伝とラグビーも全国大会の常連だ。ひとつの競技でさえ地区予選を勝ち抜いて全国大会に出場するのは大変なのに、これだけの競技が当たり前のように全国の頂点を争っているのだから、すごい。

■「甲子園出場」で校名を知らしめ有能な人材を集める私立校

同じように複数の競技がトップレベルにあるスポーツ強豪校は他にどこがあるだろうか。

サッカー以上に注目度が高く、数多くの高校が強化しているのが硬式野球だ。それだけ競争が激しく、日本一になるのは至難なわけだが、そこで絶対的強さを誇るのが大阪桐蔭だ。甲子園大会は直近10年間で春・夏とも3回ずつ、通算では8回全国優勝している。また、ラグビーも全国大会で優勝と準優勝が1回ずつ、女子バスケットやゴルフでも日本一になったことがある。

野球部が甲子園に出場したことがある高校は、他の複数の競技もその後、トップレベルにある傾向がある。「野球部にできるのなら自分たちもできる」と頑張るのだろう。

甲子園出場は校名の知名度を高める効果が抜群で優秀な生徒が集まるようになる。スポーツだけでなく学力レベルもアップし、難関大学への合格者を出すことにも成功するケースも多い。そうやって学校運営に好循環が生まれるため、そのやり方を踏襲する学校は多い。

■「日本一のスポーツ強豪校」はどこか?

青森山田と同じ、主なスポーツ強豪校を北から挙げてみよう(校名の後にあるのは、野球以外の強い競技)。

駒大苫小牧(北海道)=アイスホッケー
仙台育英(宮城)=ラグビー、駅伝
東北(宮城)=ゴルフ
前橋育英(群馬)=サッカー
作新学院=ボクシング
花咲徳栄(埼玉)=レスリング
浦和学院(埼玉)=ハンドボール
市立船橋(千葉)=体操、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳
帝京(東京)=サッカー
早稲田実業(東京)=硬式テニス
国士舘(東京)=柔道
桐蔭学園(神奈川)=ラグビー、剣道、柔道
東海大相模(神奈川)=柔道
山梨学院=サッカー、駅伝、ホッケー
星稜(石川)=サッカー、トランポリン
中京大中京(愛知)=サッカー、フィギュアスケート、陸上
愛工大名電(愛知)=卓球
龍谷大平安(京都)=ゴルフ、フェンシング
東山(京都)=バスケットボール、バレーボール、テニス
近大付属(大阪)=サッカー、水泳、アーチェリー
報徳学園(兵庫)=ラグビー、駅伝
天理(奈良)=ラグビー、ホッケー
尽誠学園(香川)=軟式テニス、バスケットボール
明徳義塾(高知)=バスケットボール、ゴルフ
東福岡(福岡)=サッカー、ラグビー
九州学院(熊本)=剣道、自転車
延岡学園(宮崎)=バスケットボール
鹿児島実業=サッカー、バレーボール
興南(沖縄)=ハンドボール
沖縄尚学=柔道、ウエイトリフティング。

錚々(そうそう)たる顔ぶれ、ほとんどが私立校である。だが、ここに挙げなかったスポーツ強豪校がひとつある。埼玉栄だ。同列にしなかったのは「別格」だからである。

■「現役幕内力士8人」埼玉栄が横綱不在の大相撲を支えている

もちろん甲子園出場経験はあるが(春・夏1回ずつ)、むしろ野球以外の部活の活躍が目立っている。何しろほとんどが全国トップレベルなのだ。

埼玉栄で最も知られているのは相撲の強さだ。同校出身の大相撲現役力士は現在30人もいて、そのうち8人が幕内力士(1月場所)だ。名前を挙げよう。大関・貴景勝、北勝富士、大栄翔、翔猿、妙義龍、琴勝峰、琴ノ若、明瀬山である。大相撲力士輩出数は埼玉栄がダントツの1位。幕内に8人のOBが同時にいるのは、もちろん初めてであり、快挙というしかない。

埼玉栄の学校の敷地面積は東京ドーム14個分、各部活ごとの専用施設が揃っている(同校HPより)
埼玉栄の学校の敷地面積は東京ドーム14個分、各部活ごとの専用施設がそろっている(同校HPより)

横綱不在が続く場所は埼玉栄勢が支えてきたともいえる。昨年の9月場所は新入幕の翔猿が11勝4敗と大活躍し人気力士となった。11月場所は貴景勝が優勝。今年の1月場所は綱取りがかかった貴景勝が序盤で崩れたが、その大関を破って勢いに乗った大栄翔が平幕優勝してヒーローになった。また、明瀬山は初日から6連勝して注目され、琴ノ若も10勝して地力がついたことを示した。

■埼玉栄がダントツで日本一のスポーツ強豪高校と言えるワケ

埼玉栄は相撲部が強いのはよく知られているが、他の競技も軒並み全国トップレベルだ。

まずバドミントン。インターハイでは男子団体で7回、女子団体で2回優勝している。全国高校駅伝では男子が1回、女子が3回の優勝がある。女子柔道、女子硬式野球、女子サッカー、水球、競泳、男女ゴルフ、女子ウエイトリフティング、男子新体操、男子ソフトボールは日本一になったことがあるし、男女バスケットボール、男女体操、サッカーなども全国大会に出場した実績がある。

埼玉栄のスポーツ部活は全国大会に出場することが目標ではなく、全国制覇を目標とするのが当たり前、という空気だ。総合力では埼玉栄がナンバーワンのスポーツ強豪校と言っていい。高校スポーツを長年ウオッチする身としては頭が下がるが、指導者・選手ともくれぐれも「勝って兜の緒を締めよ」を忘れないでほしいと思うのだ。

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相沢 光一(あいざわ・こういち)
フリーライター
1956年生まれ。月刊誌を主に取材・執筆を行ってきた。得意とするジャンルはスポーツ全般、人物インタビュー、ビジネス。著書にアメリカンフットボールのマネジメントをテーマとした『勝利者』などがある。

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(フリーライター 相沢 光一)

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