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「座りっぱなしで死亡リスク40%増」医師が"朝は立食、椅子は背もたれなし"を実践するワケ

プレジデントオンライン / 2021年2月20日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SIphotography

テレワークの浸透で運動不足に陥り、腰の痛みを訴える人が激増している。慢性腰痛、ぎっくり腰……体をどちらに向けても「しんどい」この状態をどうすれば脱却できるのか。自身、長年腰痛に悩み、克服した経験を持つ池谷敏郎医師が、困った腰痛の原因の突き止め方とともに、その腰の痛みに隠された重篤な病気の見抜き方を教示する──。(第3回/全3回)

※本稿は、池谷敏郎『腰痛難民』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

■腰がラクになる座り方

国内で行なわれたある疫学調査(集団を対象に病気の頻度や要因を統計的に調べること)では、デスクワーク(事務職)の人の42~49%が腰痛を自覚しているという結果が出ています。つまり、デスクワークの人の半数近くが腰痛を感じているということです。

重たい荷物を持ち上げるわけでもないのに、なぜそれほど腰痛が多いのかといえば、長時間同じ姿勢でいることが多く、体を動かさない生活になりやすいことに加えて、座っている時の姿勢の悪さがあるのだと思います。

ありがちなのが、ひとつは、背もたれに寄りかかって背中が丸まってしまっていること。私も、腰痛がひどかった頃には、背もたれにどかっと寄りかかって座っていました。また、パソコンで長時間の作業をしているうちに、顔が前に出て肩も背中も丸まってしまう人も多いですよね。

ただ、自分の姿勢というのは意外とわからないものです。一度、家族や同僚にふだんの座り姿勢を写真に撮ってもらってみてください。画像で確認すれば一目瞭然です。

■おすすめエクササイズ「エア・ボート漕ぎ」

おすすめの座り方は、まずは背もたれを使わないこと。そして、「エア・ボート漕(こ)ぎ」をしたあとでそのまま腕を下ろした姿勢、と患者さんによくアドバイスしています。

「エア・ボート漕ぎ」とは次のようなものです。

エア・ボート漕ぎ
①座ったまま、ビルの5階くらいを見上げるように上を向き、目線の先に腕を伸ばす。この時に、お腹を突き出して反り腰にならないように、お腹に軽く力を入れる。
エア・ボート漕ぎ
②顔は“5階”を見たまま、ボートを漕ぐように両腕を後ろに引く。

これが、「エア・ボート漕ぎ」です。胸を開き、肩甲骨をギューッと寄せるようなイメージで行ないましょう。

■「ちょうどいい座り方」のコツ

「エア・ボート漕ぎ」は、デスクワークで上半身が丸まりがちな人にぜひ行なってもらいたいエクササイズ。ふだんあまり使わない肩甲骨まわりの筋肉を使うので、肩こりの人にもおすすめです。仕事の合間、ちょっと疲れたなという時に数回ボートを漕いでみてください。気分転換にもなりますよ。

そして、エア・ボートを1回漕いだあと、後ろに引いた腕を下ろして太ももの上に置き、お腹に軽く力を入れたまま、頭の位置を変えないように顔を正面に戻します。その姿勢が、ちょうどいい座り方です。

自然に頭が背骨の真上に乗っかって、太ももと上半身でつくる角度が90度よりも少し広くなります。それが、もっとも腰に負担がかからないラクな座り方なのです。

■なぜ座りっぱなしだと病気になりやすいか

最近、「座りっぱなしは良くない」と、よくいわれます。有名なのが、「1日に11時間以上座っている人は、4時間未満しか座らない人に比べて死亡リスクが40%高くなる」ということを示したオーストラリアの研究です。

この研究は、45歳以上のオーストラリア人、22万人強を対象とした大規模なものでした。1日のうち座っている時間の合計が「4時間未満」「4時間以上、8時間未満」「8時間以上、11時間未満」「11時間以上」という4つのグループに分けて調べたところ、座っている時間が長くなればなるほど、がんや心疾患、肺炎などにかかりやすくなり、死亡リスクも高くなるという結果が出たのです。

なぜ、座っている時間が長いと病気が増え、死亡リスクも高まるのでしょうか。

理由のひとつは、長時間同じ姿勢でいると血流が滞るからです。全身に酸素と栄養を運んでいるのが血管なので、血流の低下は全身の臓器や組織の健康にかかわります。血流が滞れば、もちろん筋肉も硬くなり、こりやすくなって、肩こり、腰痛といった問題も出てきます。

また、座りっぱなしで筋肉を動かさないと、血液中の糖を筋肉に取り込む働きが鈍くなります。このような状況が長期にわたれば、肥満や糖尿病、さらに高血圧や動脈硬化が進むので、心筋梗塞や脳梗塞などの発症とともに死亡のリスクが高まります。

がんのリスクが高まるメカニズムについては、まだ明確にはわかっていませんが、血流や代謝の悪化とともに免疫力が低下することが関与している可能性が考えられます。

こうしたことから、長時間同じ姿勢でいることや座りっぱなしでいることは体に良くないといわれています。

■私は「家ではほとんど座らない生活」

医者という仕事も、デスクワークの人と同じように座っている時間の長い職業です。外来診療中は基本的にずっと座っているので、気をつけなければ朝から夕方まで座って過ごすことになります。

だから、家ではほとんど座らない生活をしています。まず、朝食は基本的に立食です。手づくりの野菜ジュースとヨーグルトとコーヒーが定番なので、野菜ジュースをつくりながら、キッチンで済ませます。そのため、朝起きて仕事に行くまでの間に座っているのは、トイレのなかくらいでしょうか。

池谷敏郎『腰痛難民』(PHP新書)
池谷敏郎『腰痛難民』(PHP新書)

さらに夕食も、日によっては立食スタイルで済ませます。つくり置きの料理や買ってきたお惣菜を食べる時もあります。そういう場合は、お惣菜は皿に移し、キッチンのカウンターに並べて、お酒も添えて、妻と2人で立ち話をしながら、まるでバーで食事をしているかのような気分で楽しんでいます。

妻がつくってくれた日には、食後の後片付けが私の担当です。夕食後、キッチンで洗い物をして、お風呂に入り、軽くストレッチをして寝るというのが日課です。

もちろんテレビを見てゆったりする時間も多少ありますが、家のソファーでも背もたれは使いません。ソファーに座るにしても、どかっと身を預けるのではなく、浅く腰かけて腰を立て、腹筋や背筋を使っています。

そんなふうに、仕事中に座っている時間が長い分、家にいる間は座りっぱなしにならないように気をつけています。

■仕事は「背もたれのない硬めの丸椅子」で

もうひとつ工夫しているのが、仕事中の椅子。

以前、それこそ腰痛時代には背もたれのある椅子を使っていましたが、今は、あえて背もたれのない硬めの丸椅子を使っています。背もたれに寄りかかる姿勢が良くないことはすでに説明したとおりですが、なぜ硬めの椅子を使っているのかというと、座り心地が良すぎないものをあえて選んだからです。

ビーチ砂の木製のスツールにテディベア
写真=iStock.com/liveslow
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liveslow

それと同じで、座面が少し硬い分、しばらく座っていると立ち上がりたくなるので、座りっぱなし防止に役立つのです。実際、今の丸椅子に替えてから、診察が終わって次の患者さんがいらっしゃるまでのほんの少しの合間に立ち上がって、1回エア・ボート漕ぎをしたり、伸びをしたりすることが増えました。

喫茶店でも椅子の座面が固いと、しばらくしたら立ち上がりたくなりませんか。お店によっては、回転率を上げるために、あえて座り心地が良すぎない、固めの椅子を選んでいるそうです。

腰に良い椅子と聞くと、立派な背もたれと肘置きがついている椅子を思い浮かべる人が多いと思いますが、私は、むしろ背もたれのない、座面が少し硬めで、長時間座っていると立ち上がりたくなる椅子のほうが、腰にとっても全身にとっても健康的だと思います。

ぜひお試しください。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。著書に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)、『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』(三笠書房)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)などがある。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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