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「公明党は辞職したのに」"夜のクラブ活動"の3人が議員辞職しない本当の理由

プレジデントオンライン / 2021年2月4日 18時15分

自民党へ離党届提出後、記者団の質問に答える(左から)大塚高司、松本純、田野瀬太道の3氏=2021年2月1日、東京・永田町の同党本部 - 写真=時事通信フォト

コロナ禍での国会議員の「銀座の夜のクラブ活動」は、松本純衆院議員ら自民党3議員が離党、公明党の遠山清彦衆院議員は議員辞職という事態に発展した。松本氏ら3人と遠山氏の「責任の取り方」の違いはどこから出たのか——。

■首相自らが「更迭」という言葉を使うことは珍しい

「緊急事態宣言下の中で、深夜まで会食をして、今日まで明らかにしませんでした。こうしたことを受けて田野瀬太道文部科学副大臣を更迭しました。誠に遺憾だと思います。国民の皆さんにお詫びを申し上げたいと思います」

2月1日夜9時20分、菅義偉首相は記者団の前で深々と頭を下げた。この記者対応は、緊急事態宣言の延長方針を表明するためのものだったが、記者の関心も、国民の関心も、松本、田野瀬、そして大塚高司の3氏が自民党を離党したことに集中していた。

松本氏が夜遅くまで銀座のクラブに滞在していたことは1月下旬に分かっていたが、この日になって同僚2議員も同席していたことが判明。そろって離党となった。

不祥事を起こした議員が、政府や党の役職から事実上更迭されることは、しばしばある。しかし、形式的には当事者が辞表を持参し、首相が受理する、という「自発的辞任」という形を取ることが多い。今回のように首相自らが「更迭」という言葉を使うことは珍しい。それだけ、国民を欺いた3人に対する菅氏の怒りが激しかったということだろう。

■「ウソ」の松本氏らは離党、「キャバクラ」の遠山氏は辞職

公明党の遠山氏の方は、一足早く、同日午前、議員辞職を表明した。松本氏ら3人も、遠山氏も、緊急事態宣言下での「クラブ活動」が批判を受けたことは同じ。松本氏は、「3人」でクラブを訪問していたことを隠し、国民にウソの説明をしていた問題が加わった。

一方の遠山氏は、資金管理団体がキャバクラなどに「飲食代」として約11万円を計上していたことも批判の対象となった。このあたりは、2月1日配信の「『批判ばかりで中身がない』菅首相を追及する蓮舫氏が自爆した根本原因」に詳しいので、参照いただきたい。

松本氏らと、遠山氏のどちらの方が「罪深い」かは、評価の分かれるところだ。だが、結果として松本氏らは「離党」、遠山氏は「議員辞職」と、責任の取り方が割れた。

■昨年4月には立民議員が「セクシーキャバクラ」で除籍に

政治家の責任の取り方は、時々の政治状況によって変わる。松本氏がウソの説明をしたことは大問題だが、それなら安倍晋三首相は「桜を見る会」について、事実と異なる答弁を国会で繰り返してきたのはどうなるか。1日には、記者からもこの指摘があったが、菅氏は正面からとりあわず「(安倍)総理は、この間の委員会の中でお詫びされた」と語った。

最近、政治家が責任をとった例としては、大手鶏卵生産会社アキタフーズ元代表から現金を受け取った疑いが持たれた自民党の吉川貴盛元農相が「健康上の理由」で議員辞職した。一方、公選法違反が問われている河井克行元法相、河井案里参院議員の夫妻は自民党を離党。案里氏は議員辞職することになったが、克行氏は衆院議員にとどまっている。

コロナ禍の不適切行動という点では昨年4月、高井崇志衆院議員が新宿・歌舞伎町の「セクシーキャバクラ」を訪れていたことが発覚。立憲民主党から除籍処分となったことがある。

■「クリーン」標榜の公明党は厳しい処遇が多い

政党別に対応が割れた例として、1980年代から90年代にかけて政界を震撼させたリクルート事件のことを紹介しておきたい。リクルートの関連会社であるリクルートコスモスの未公開株などが政界、官界にバラかまれた同事件。各党、「疑惑議員」の対応はどうだったか。

派閥の領袖クラスから中堅議員まで、軒並み疑惑が指摘された自民党。将来の首相候補と目された藤波孝生氏は、受託収賄罪で起訴されて離党したが、自ら議員辞職することはなかった。この他、中曽根康弘元首相は一時離党。首相だった竹下登氏は、自身の疑惑も指摘されて首相退陣に追い込まれた。

当時野党第1党だった社会党は、上田卓三氏の疑惑が指摘されて議員辞職。公明党は池田克也氏が在宅起訴されて議員辞職に追い込まれている。

他のスキャンダルの事例をみても、自民党は、議員辞職に発展することは比較的少なく、離党や役職の離脱にとどめ、選挙などの「みそぎ」を経て復党するというパターンが多い。

自民党議員の場合、個人の強固な後援会組織に支えられて当選している例が多いため、進退については個々の判断に委ねられる傾向があるのだ。

一方、クリーンを標榜する公明党は、一気に議員辞職となる確率が高いようだ。

■松本氏らが辞職すると「4・25」に6補選

今回、クラブに出入りした3人が離党にとどまったことについては、議員辞職した遠山氏との対比も含めて厳しい批判にさらされている。「1人で行った」とウソの説明をしていた松本氏に対しての風当たりは、特に強い。だが、自民党内には、3人を議員辞職させられない事情もあるのだ。

ネオンの銀座
写真=iStock.com/7maru
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/7maru

もし3人が議員辞職したらどうなるか。松本氏は衆院神奈川1区、田野瀬氏は奈良3区、大塚氏は大阪8区選出の衆院議員だ。今辞職すれば4月25日に補欠選挙が行われる。

同日には吉川氏の辞任に伴う衆院北海道2区、立憲民主党の羽田雄一郎氏の死去に伴う参院長野選挙区の補選が行われることが確定。さらに案里氏の辞職で参院広島選挙区補選が加わる。

北海道と広島の補選は、自民党議員のスキャンダルが端緒だけに同党にとっては逆風の選挙だ。北海道2区では自民党は候補を擁立せずに不戦敗の道を選ぶ見通し。長野は、羽田氏の弔い合戦の構図。羽田氏の弟・次郎氏の出馬が固まっている。兄弟の父・孜元首相が築いた王国を自民党が崩すのは容易ではない。自民党内では「今の逆風が続けば(不戦敗も含めて)最悪3戦全敗の可能性もある」と危機感をあらわにする。

さらに松本氏ら3人が辞任するようなことになれば、衆参6つの選挙区で補選が行われることになる。3氏はそれぞれ地元に根を張った政治家だが、逆風の中での選挙となる。

■野党から不祥事が出れば攻守は一気に逆転か

3氏が「みそぎの選挙」に臨むことになれば、国民もメディアを通じて「クラブ活動」を思い出す。逆風は全国に伝播し、結果次第では菅氏の責任論が浮上しかねない。それは自民党にとって最悪のシナリオだ。だから議員辞職してほしくない。つまり、松本氏らが離党しないのは自民党側の事情でもあるのだ。

このように書くと、野党側に追い風が吹いているようにみえる。しかし、数日たつと状況は一変するかもしれない。

永田町では今、「野党議員が夜に飲食に興じている写真を週刊誌が入手した」といった未確認情報が飛び交っている。もしこれが事実なら、批判の矛先は自民党一辺倒から「オール永田町」に変わる。今、野党側は松本氏らを徹底的に批判しているだけに、その反動も大きくなる。SNSでの野党批判も高まるだろう。いわゆる「ブーメラン現象」だ。4月下旬、補選の投票日の頃には、野党側の方に強い逆風が吹いている可能性が十分あることも指摘しておこう。

(永田町コンフィデンシャル)

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