ステイホームの続く子供に「たまには遊園地に行こうか?」と誘ってはいけない
プレジデントオンライン / 2021年2月9日 15時15分
※本稿は、おおたとしまさ・監修、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ・編集『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■ストレスが人間を生かしている
ストレスは、わたしたちにとって必要なのでしょうか?
その答えは「YES」です。
ただ、それは自分が付き合えるほどの「ある程度のストレス」ということになる。手に負えないような過大なストレスは心を大きく傷つけてしまいますから、ないに越したことはありません。
一方、ある程度のストレスとは、たとえば「お腹が減る」といった日常的に感じる小さなストレスです。それこそが、人間にとって重要なのです。
人間というのは、お腹が減るからご飯を食べようとするし、将来が不安だから働こうとする。もちろん、そこに楽しみを見出している一面もありますが、自分が生きていくためにするべきことをしないといけないという危機感を与えてくれるのがストレスなのです。
■「転ばない」より「起き上がる」
そもそも、まったくストレスを感じないとしたらどうなるのかと想像してみてください。
お腹が減ることにストレスを感じなければ、体はエネルギーを求めていても食事をしようともしない。また、将来になんの不安も感じませんから、お金を稼ごうと働くこともしないでしょう。
つまり、ストレスを感じなければ、生きていけないということになるのです。
そういう意味では、子どものストレスを排除し過ぎることは危険だという言い方もできます。「転ばぬ先の杖」という言葉がありますが、ストレスマネジメントにおいてはその杖は危険なものです。
ストレスと無縁の人生を送ることは不可能なのですから、子どもが転ばないようにするのではなく、転んだときにそのストレスとどう向き合ってどう起き上がればいいのかということを、子どもが小さいうちから教えてあげなければならないのです。
■ストレス対処の2類型
ストレスとの向き合い方のひとつに、「ストレスコーピング」というものがあります。
これは、ストレスそのものにどう対処するかに視点を置いた手法のことで、「情動焦点型」と「問題解決型」という大きくふたつの種類にわけられます。
前者は情動に焦点をあてる、つまりストレスを発散させて気持ちを楽にさせる方法です。一方の後者は、そもそものストレスの原因となっている問題をなくす手法を指します。
情動焦点型がフィットするのは、比較的大きな問題や過去に起こったことによるストレスに対処するとき。たとえば、前日に犯してしまった大失敗を悔やんでストレスを感じているような場合、タイムマシンでもなければ問題そのものにアプローチすることはできません。
そういうときは、いままさに感じているストレスを軽減するための行動を取ります。人それぞれですが、漫画を読んだりテレビを観たりお風呂に入ったり、大人ならお酒を飲むというようなことです。
逆に、これから起きることによってストレスを感じている場合には、問題解決型がフィットします。
明日のテストが心配でストレスを感じているというときに、漫画を読んでもお風呂に入ってもなんの解決にもなりません。だとすれば、しっかりテストでいい点数を取るための行動を起こす必要があります。
■親が選択肢を示す
そして、これらの選択肢は多ければ多いほどいい。
たとえば、ストレスを感じたために友だちと飲みに行こうとした人が、友だちに「忙しいから」と断られたときに、他の対処法を持っていなければストレスはたまる一方です。そうではなくて、他の友だちを誘ってみる、あるいは映画を観るといった別の手段を選ぶ必要があります。
そう考えると、子どもは自分で選択できる手段が限りなく少ないですから、やはり親が選択肢を提示してあげる必要があります。
ひとつ注意してほしいのは、海外旅行や遊園地に行くといった、滅多にできないような選択肢を示すことは避けるべきです。
そういう経験によって「遊園地で遊ぶことが僕にとっていちばんいいストレス発散方法なんだ」なんて子どもが思ったとしても、遊園地にはそう簡単に連れて行けるものではありません。
日常的なストレスを発散させる方法は、日常的にできるものでなければならないのです。
■親が主体的に「選ばせる」
子どもがストレスを感じているようだったら、子どもの好き嫌いに注目して選択肢を示してあげてください。
幼い子どもでも、『アンパンマン』が好きだとか、チョコレートが好きだとか、ある程度の好き嫌いを持っているはずです。その好き嫌いに沿って、「『アンパンマン』の映画を観る?」「チョコ、食べようか」「どうしたい?」というふうに選ばせてあげるのです。
幼い子どものためのストレスコーピングの場合、基本的には情動焦点型だけで問題ありません。幼い子どもの場合、先々起こることでストレスを感じるということが少ないからです。
でも、子どもが成長して小学校中学年くらいになると、具体的な問題を解決する必要も出てきます。その頃の子どもがストレスを感じるいちばんの問題というと、やはり勉強になるでしょう。
その場合も子どもに選ばせてあげましょう。たとえば、子どもが勉強に集中できなくてストレスを感じているのなら、親が勉強を見ていたほうがいいのか、ひとりで自分の部屋でやるほうがいいのか、あるいは塾に通いたいのか。
子どもと相談しながらいろいろな選択肢を示してあげるのです。
ただ、注意してほしいのは、「親が答えを決めつけない」ということ。
選択肢を示しながらも、「わたしはこれがいいと思う」なんて親が思っていると、子どもが別の選択肢を選んだときに親はイライラしてしまうものです。
そんなことでは、子どものストレスを解消しようとしているのに、親がストレスを感じるということになりかねません。
■いつも一緒にいられる親の強み
また、余裕を持って時間を使うということも意識してほしいポイントです。
誰よりも子どもと長くいられるのが、親が持つ最大のメリットです。
ストレスを感じている子どもにカウンセリングを受けさせるとしても、カウンセラーがその子どもに会えるのはせいぜい週に1回、30分くらいのものでしょう。
もちろん、カウンセラーは専門的な知識や技術を持っていますが、それ以上につねに一緒にいられるということが親の持つ強みなのです。
「いますぐ解決してあげなくちゃ」なんて思う必要はありません。親が焦ってイライラすることなくじっくり子どもと向き合い、子どもにとって最適なストレスの対処法を一緒に考えてあげてください。
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桜美林大学心理・教育学系准教授
1982年生まれ、山形県出身。博士(学校教育学)。桜美林大学リベラルアーツ学群准教授、日本ストレスマネジメント学会常任理事。他に、日本認知・行動療法学会公認心理師対応委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長も務める。子どもを対象とした認知行動療法を中心として、主に学校、家庭、地域における臨床実践・研究を推進している。小学校~高校における学級集団を対象としたストレスマネジメントや学校における特別支援教育の支援方法の検討、発達障害のある子どもとその保護者に対する支援を中心に研究と臨床を行う。また、東日本大震災以降、被災地での心理的支援も継続して実施している。
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(桜美林大学心理・教育学系准教授 小関 俊祐)
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