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老後は娘の合否で決まる…学費は私立大なら国立の2倍「家賃6万アパート住まい父子家庭」の命運

プレジデントオンライン / 2021年2月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yenwen

洋品店を営む男性(53)が男手ひとつで育てたひとり娘(18)が今冬、大学受験に挑む。合格・進学するのは国立大か私立大か。学費は約2倍違う。進路先によって、今後の父子家庭の生活レベルや男性の老後資金を貯める見通しに変化が出る。受験本番を前にファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が家計をより筋肉質にするためにアドバイスしたこととは——。

■老後資金を貯めたい53歳自営業者の命運握る、娘の大学受験

「娘が大学進学するのですが、行かせても自分の老後資金を作れるでしょうか」

娘さん(18)とともに家計相談に来たのは、父親のUさん(53)。ひとりっ子の子供が小さいときに奥さんと死別し、以降、洋品店を営みながら2DKのアパート(賃料6万8000円)で、父子2人で暮らしてきました。コロナ禍にありながら自営業は比較的順調で、手取り月収約31万円と収入も安定している。家計は毎月2万円の黒字です。

大学進学を目指す娘さんは現在、公立高校の3年生。父子で相談にいらしたのはコロナ禍の昨春。資金を心配するには時期が少々遅いと感じましたが、奨学金の説明会などに参加し、ようやく学費など進学資金について意識し始めたというところのようです。

娘さんが希望する進学先は、父親の貯金のことも考慮し、学費負担が少ない国立大学が第一希望です。滑り止めで私立大学を受けるのですが、第一希望に受からず、私立に行くことになった時、もしくは受験に失敗して浪人して予備校代などをかけてしまうようになったらどうしたら良いかということを、娘さんなりに心配しています。

Uさんは頑張って仕事も家計も切り盛りしてきましたが、今の貯金額は830万円。私立大学に通うとなると、4年間の授業料などの学納金で半分ほどなくなってしまうイメージです。貯金を増やすために生活費の見直しをするとともに、学費の負担の仕方も検討したほうがよさそうです。

貯金や家計の全体像を把握するため、収支の状況から伺いました。収入は毎月31万円前後。国民年金保険料や国民健康保険料、住民税を除いているので、全額を生活に回すことができます。支出を見ると、大きく無駄を感じる支出はなく、努力されてきたのだろうと思わされます。

■浪費はしていないが、まだまだ支出は削れる。すべては学費のために

この状態の中であえて支出を削減できるところを探すなら食費、通信費、生命保険料でしょう。

食費は現状、月5万6000円。自炊が少なく、総菜や弁当用の冷凍食品の利用が多いということなので、自炊を増やせば支出を下げられる可能性が高いです。仕事が忙しく、帰宅後はなかなか料理をする気になれないということでしたが、休日などを利用して作り置きしたり、娘さんにも協力してもらったりすれば、効率よく楽しい食卓が作れるかもしれません。

通信費(月2万3000円)は、その大部分を占めるスマホ代を下げられると、節約効果が長続きします。今は割安な新料金プランが各社から続々出ているので料金をかなり下げられます。店の電話をスマートフォンで受けているなどしていて、格安なものに抵抗がある場合でも、契約内容を見直すだけで利用料が下がる場合もあります。今のままを続けるよりは、自分たちの使い方を見直して、使う分だけの契約にすることが得策です。

娘さんも学校の友達に格安スマホを使う子が増えていますし、大学生になったらアルバイトをして自分の支出は自分でまかなえるようにしようと考えているようです。

また、生命保険(月3万2000円)には今は必要ない保障が隠れている場合があるので、保障内容が適正か、過剰な保障がついていないかを見直すことで、支出を下げられる可能性があります。

このように支出の見直しをしていくと、ざっと5万円は支出を減らすことができそうです。娘さんが大学に進学するとまた、支出状況は変わるかもしれませんが、あと半年以上は、これまでの黒字2万円に加えて5万円、計7万円を蓄えていくことができます。

■娘が国立大に落ち、私立大合格なら「学費は2倍」になる

次に学費とUさんの老後資金について考えます。娘さんが受験する大学は、国立大でも私立大でも自宅から通えるところにあります。心配すべきはやはり学費です。国立の場合、初年度に入学金が28万円ほどかかりますが、授業料は毎年54万円弱、4年で215万円ほどです。

東京大学と早稲田大学
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula

一方、私立の場合、文系・理系、また大学によっても変わりますが、入学金が文系で約23万円、理系で25万円強ほどが平均です。授業料は設備費と合わせて文系で1年間94万円ほど、4年で375万円ほど、理系は1年間129万円ほど、4年で516万円ほどが平均です。Uさんの貯金だけで進学するとなると、老後資金を作ることが難しくなってしまいます。学費については、娘さんと相談することが必要です。

合格・進学するのが、国立大か私立大かで家計へのインパクトは大きく変わりそうです。

いずれにしろ学費は安くはありませんが、娘さんがアルバイトを多めに入れ学費の一部にしたり、返済金額を計算しながら無理のない範囲で「奨学金」を利用したりするなど、検討できる方法はいくつかあります。お子さんと話をするなどで、父娘で協力して支払う方法を検討していくことも必要でしょう。Uさんの老後のことにも影響が出ることですので、無理せず進めるようにしたいものです。

■貯金800万円超も学費で減るのは必至……老後資金はどうするのか

Uさんの老後資金の準備についても計画的に、スピードを上げて準備していかなくてはいけません。自営業ですから、将来的に受けられる年金は国民年金のみ。会社員の方の年金額に比べ、少ない金額です。ですから準備しておくべき老後資金は会社員の方より多くなります。学費負担もしていくのですから、貯め方自体を見直したほうが良いでしょう。

支出を見直して毎月安定して貯金する金額を出せるようになれば、毎月貯金する金額の一部を「長期、分散、積立」の投資に回すと、効率よく資産を増せる可能性があります。もしそういった投資に取り組むのなら、通常の投資信託の積み立てをしていくことも良いのですが、国の私的年金制度の一つであるiDeCoの利用を検討しても良いでしょう。

これから制度の改正が行われ、2022年5月から加入可能な年齢が60歳から65歳まで引き上がります。Uさんは50歳を超えてしまいましたが、加入年齢が引き上がるのなら、10年以上かけていくことができる可能性があります。ただし国民年金の被保険者であることが加入の条件です。20才からきっちり国民年金保険料を支払っていたのであれば、60才以降は掛け金を拠出することができませんが、未加入期間、未払い期間があり加入期間が40年に満たない場合は、60歳以降は任意加入者となることができます。

そうすると、iDeCoに掛け金を拠出することが可能となるのです。掛金の上限は、自営業者の場合6万8000円。掛金は全額所得控除となり、所得税、住民税を節税できることができますから、それだけでもメリットは大きいはずです。自営業をできるだけ長く続けるつもりでいると話すUさんにとっては、働いている間ずっとその恩恵を受けられるのです。

もし、任意加入できる期間が少なく、iDeCoでは積立期間が短いのなら、掛け金は少なくなりますが、その場合はつみたてNISAを併用するなども考えて良いでしょう。

■支出を月5万円カットできる見通しで、月の黒字は7万円に

このようなことに取り組んだり、考えたりしたことで、毎月の支出は予定通り5万円ほど下がりました。

メタボ家計BEFORE⇒AFTER

食費(月5万6000円→4万2000円)は娘さんが受験勉強の傍ら、気分転換も兼ねて夕食の準備をしてくれる日が増えました。Uさんも休みの日に常備菜の作り置きしたり、下ごしらえをして冷凍したりするようになりました。

通信費(月2万3000円→9000円)は二人で家電量販店に説明を聞きに行き、格安スマホへ変更しました。生命保険(月3万2000円→1万5000円)は数年前に見直したつもりでいたものの、貯蓄型の保険に加入していたのでそれを解約しました。今は保険で貯めるよりも、学費などにすぐ使えるように、現金で貯めておきたいと考えたからです。

他、契約中のサブスクを見直したり、新聞の夕刊は必要かと考えたり、使途不明金をなくしたりということで計5万円削減につながったのです。

老後と教育費はシーソーのような関係です。頑張りすぎると、簡単に親の老後資金が脅かされてしまいます。子どもがある程度大きくなれば、全部親が面倒を見ると張り切らなくても大丈夫な面が出てきます。

生活費を削減し、貯金額を増やすことが最善かもしれませんが、今は学費を乗り越える方法がいくつか考えられますし、老後資金を準備する制度もあります。「こうでなくてはダメ」と考えず、柔軟に捉え、よく話し合い、互いによい方法を検討することが一番良いと思います。それが、老後資金と教育費の良いバランスをとる良策であるといえます。

■【何を削ったのか「家計コストカット」】

1位 -1.7万円 生命保険費
貯蓄型の保険をやめた(お金の流動性を重視したため)
2位 -1.4万円 食費
娘が夕食の準備位をするようになり、Uさんも休日に下ごしらえを保存するように
2位 -1.4万円 通信費
父子とも格安スマホへの変更をした
4位 -0.6万円 その他
サブスクを絞り込み、夕刊をやめた。使途不明を出さないようにした。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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