いつでもどこでも仕事のことを考えてしまうのをやめる5つの方法
プレジデントオンライン / 2021年2月12日 9時15分
※本稿は、リズ・フォスリエン、モリー・ウェスト・ダフィー『のびのび働く技術 成果を出す人の感情の使い方』(早川書房)の一部を再編集したものです。
■仕事のことを考えすぎてもいい影響は何もない
次に挙げた5つの項目のうち、あなたはいくつ心当たりがあるでしょうか?
・仕事のメールを10分以上チェックしないでいると気になる
・「最近どうしてた?」と友人にきかれると、仕事上のちょっとした困っている件について細部まで話しはじめる
・そのちょっとした困っている件が夢に出てくる
・夕食のとき、ジムで運動しているとき、寝る前などにも仕事のことが気になってしまう
・仕事がうまくいっているかどうかで気分がほぼ決まる
「結構あてはまる」という人は、とりあえず少し仕事から離れてみたほうがよさそうです。
仕事のことをくよくよ考えすぎても何もいい影響はないですし、健全でもありません。気にしすぎると、たいしたことのない問題が大ごとに思えたり、誰かが何げなく言ったひとことにショックを受けてしまったりするものです。
仕事のことを心配しすぎるのは何も管理職や女性やおとめ座の人ばかりではありません。仕事の内容やポジションを問わず、仕事が頭のなかの大部分を占めてしまう人はいるものです。そこで「仕事における感情の扱いかた新ルールその1」に「仕事に熱くなりすぎない」を提案します。
■「熱くなりすぎない=どうでもよい」ではない
気にしすぎるのをやめると、いろんな苦悩が消えます。大事なプレゼンの前に過呼吸になったりしません。仕事のできないチームメイトにいらいらすることもありません。携帯電話をかばんの中にしまって夜のデートを満喫できます。バックパックを背負ってマチュピチュで休暇を過ごしているときにFOMO(Fear of Missing Outの略。自分が知らない話題やイベントなど、取り残されることへの不安からSNSに依存してしまう状態)を感じることもありません。
「仕事に熱くなりすぎない」のは、「仕事はどうでもよい」とは違います。もっと自分を大事にする、という意味です。大切な人と過ごしたり、身体を動かしたり、後ろめたさなしで休みを楽しんだりする時間を増やすことです。人生をふりかえって「あのとき夜10時までオフィスで仕事をすればよかった」などと思う人はまずいないわけで、それを自分に意識させることでもあります。
■なぜ仕事にすべてを捧げようとしてしまうのか
問題の根っこは何なのかを知らなくては、仕事のことを気にしすぎるのをやめようと自分に言い聞かせても難しいものです。ではなぜ、私たちは仕事にすべてを捧げる殉教者のようになってしまっているのでしょうか。
![リズ・フォスリエン、モリー・ウェスト・ダフィー『のびのび働く技術 成果を出す人の感情の使い方』(早川書房)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/8/200/img_983b21787eb0f75938aa30cced1d1156199753.jpg)
1.成功をつかむには、とにかく働き続ける以外にないと考えているから。少しでも離れるとキャリアにさしさわるのではと不安を抱いている。
2.仕事で結果を出してこそ幸せになれるのであって、その逆はないと考えているから。「職場で上の立場につけばいい人生が待っている」「大金を稼げれば、これまでやってきたことがすべて報われる」と自分に言い聞かせている。
ここでは、こうした考えをじっくり検証してみます。そういうものだと信じている人も多いかもしれませんが、いずれも真実というより神話にすぎないとわかっていただけるはずです。ときにはとんでもない時間まで仕事をしたり、四六時中メールを送ってくる上司のもとで働くはめになったりするとしても。
■仕事とプライベートの境目が曖昧になっている
1996年、大手オフィス家具メーカーのスチールケース社は、マンハッタンにある本社に横1.8メートル、縦1.2メートルの大きなガラスケースを置きました。中には収穫アリと呼ばれるアリの巣があって、外から見えるようになっています。アリが「働くために生き、生きるために働く」ようすを見てもらうのが狙いでした。
ところが、残念ながら世間はここにこめられた意図に感心してくれませんでした。《ウォール・ストリート・ジャーナル》の記事は収穫アリの寿命が3、4カ月しかない点にふれ、スチールケースの社訓は「ひたすら働き、そして死ぬ」なのかと揶揄(やゆ)したのです。とはいえ、同社は決して間違っていたわけではないとも言えます。テクノロジーが進化した今、仕事とプライベートの境目はあいまいになっています。誰でもいつでも連絡がつくせいで、つねに仕事への責任を背負っている気がするものです。
■がむしゃらに熱心にやっても良い成果にはつながらない
「ちょっと待って、なんでそんなに暗い話になるんだ……仕事熱心だって別にいいよね?」と思った方もいるかもしれません。もちろんいいんです! 仕事をしていれば、ディナーの約束を泣く泣くキャンセルして上司に頼まれたトラブル対応にあたる、なんて日も必ずあります。でも慢性的にオーバーワークを続けるのは健康によくないうえ、一見意外に思えるかもしれませんが、いい成果にもつながらないのです。
生産性は労働時間が週50時間を超えたくらいから落ちてきます。昔から「仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」(パーキンソンの法則)といいます。逆にいうと、仕事にかける時間を短くすれば効率を上げられるかもしれないわけです。
「ハフィントン・ポスト」の創設者、アリアナ・ハフィントンは若き日の自分を振り返ってこんなことを言っています。
「若かったころの自分にこう声をかけてやりたい。ただがむしゃらに仕事をするんじゃなくて、ときには電源をオフにして充電して、リフレッシュするほうがいい仕事ができるよ、と」
では、タフな仕事をこなしながらも気持ちのうえで適度に仕事から距離をおくには、どうすればいいのでしょうか。
長めの休暇をとると、心と身体の健康を守れますし、生産性も維持できます。とくに、休み中に職場の人と連絡しないように割り切るのがおすすめです。現在、アメリカ人の半分以上は与えられた有給休暇を使い切っていません。1日メールで連絡がつかなくなると考えただけで罪悪感にかられるようでは、遠い南の島で休暇を楽しむのは難しそうです。
リズは以前、休みをとりたいと上司に言い出すのにもびくびくしていました。休むとあてにできない人だと思われる気がしたからです。職場で部下をもつみなさんが休みをどうとらえるかは、かなり重要です。
働く人の多くが、休みをとることに関して管理職はとくにいいとも悪いとも言わないか、否定的な態度を示す、あるいは口ではいいと言いつつ矛盾する態度をみせる、と指摘しています。上の立場にいる人がもう少し休みをとることに積極的になれば、みんながもっと休暇を活用できるようになるはずです。「休みをとろうとすると上司が明らかにいい顔をしなくて……」という人は、このあとに続く項目を読んでみてください。ヒントになると思います。
![『のびのび働く技術 成果を出す人の感情の使い方』(早川書房)より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/7/670/img_775d570d862c6c309f0aedfdd36a0e7d180589.jpg)
仕事のある平日に楽しい時間をつくるのは休みをとるのと同じように大切ですし、ちゃんとした休暇をとるより実行しやすいのではないでしょうか。ボストン・コンサルティング・グループは「プレディクタブル・タイムオフ(PTO)」と名づけた制度を取り入れ、チームのメンバー6人が平日夜に一日ずつ完全に仕事から離れる日を設けました。
すると社員の満足度は増し、気持ちにゆとりができて、離職率も下がったそうです。また、仲間が心身とも気持ちよく働けているかを意識するようにもなりました。コンサルタントの一人はこう述べています。
「仕事に打ち込んでいても、お互いを気にかけて、疲れて燃え尽きてしまっていないか目を配っています」
夜まで仕事を持ちこまない日をつくると、睡眠を補うこともできます。しっかり寝ていないと外科医も手をすべらせるし、ドライバーも事故を起こすでしょう。睡眠不足だと気持ちも沈み、不安になりがちです。長い間寝ていない状態の人は他人の友好的な表情を敵対的とみなす傾向がある、という実験結果もあります。そう考えると、よく眠れていないときはモリーのお母さんの名言に従っておくのがよさそうです。いわく「ちゃんと寝てないときに人生について判断を下してはだめ」。
リズの場合、週に1日はミーティングも電話会議もプライベートで人と会う予定も入れない日を確保しています。途中になっている仕事もこの日に進められるので、ほかの日にそこまで追い詰められずにすみます。まる一日あけておくのが難しければ、何時間かだけでも確保して、やりたい仕事に集中できるようにしてみましょう。
ほんの5分デスクを離れるだけでも緊張がほぐれ、そのあとまたがんばることができます。デンマークで行われた実験では、試験の前に短い休憩を入れた学生のほうが、ひと息つく時間を一切与えられなかった学生より高いスコアを取っています。別の実験では、数分でも同僚と雑談すると、一人で休憩するよりも早くストレスがなくなる傾向がみられたそうです。
「今日の仕事は終わり!」と脳に伝えるお決まりの習慣があると、切り替えがうまくいきます。例を挙げると、歩きか自転車で家へ帰る(短い時間、軽く身体を動かすだけでも効果があります)、帰宅中に電車の中などでメディテーションする、音楽を聞く、雑誌を読む、ウェイトトレーニングをする(いわゆる有酸素運動よりも筋力トレーニングのほうがより気分を上げてくれるという研究もあります)などです。
『大事なことに集中する――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法』(ダイヤモンド社)の著者であるカル・ニューポートは、一日の終わりに習慣にしている一連の行為があるといいます。
まず、やることを書きとめたメモを整理し、基本のタスクリストとしてまとめる。そしてコンピュータを閉じ、こうつぶやく。
「スケジュールシャットダウン、完了」
ニューポートは次のように説明します。
「これが自分のルールです。決まり文句を声に出して言えば、そのあとで仕事関係の不安が頭をよぎっても『終了のせりふをもう唱えたんだから』と考えるようにします」
まずは自分のための時間を捻出すること。仕事をしすぎる自分から距離をおくには、これが一番簡単な最初の一歩です。
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ポモナ・カレッジ卒。マーケティングとデザインを専門とするコンサルタント。「エコノミスト」「フィナンシャル・タイムズ」などに寄稿している。
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ブラウン大学卒、パーソンズ美術大学美術学修士。デザインファームIDEOで組織デザイナーを務める。「ハーバード・ビジネス・レビュー」「ファスト・カンパニー」「クオーツ」などに執筆している。
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(コンサルタント リズ・フォスリエン、組織デザイナー モリー・ウェスト・ダフィー)
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