部下が成長する「絶妙な緊張感」を出せるリーダーと優しいだけのリーダーの決定的違い
プレジデントオンライン / 2021年2月16日 8時15分
※本稿は、安藤広大『リーダーの仮面――「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■ブレないリーダーになるための自問自答
リーダーは、「葛藤」を抱えることがあると思います。
現場の部下のことを考える一方、上から数字の目標を言い渡される中間管理職だからです。そこで板挟みになってしまい、消耗していくリーダーが後を絶ちません。そんなときに考えてもらいたいのが、次の自問自答です。
「これって、利益相反を起こしていないか?」
つまり、個人と会社が「利益相反」を起こしていないかどうかだけを見るのです。個人が追求することで会社が利益を得るもの。それは、「成長」しかありません。個人が成長という「利益」を得ることができるのは、会社の成長に貢献できているからです。「成長」という利益を追い求める限り、会社と利益相反を起こさず、永遠に利益を得続けることが可能です。
一方、「仲間と楽しく働きたい」「充実した福利厚生がほしい」などの部下が求める利益は、ときに、会社と利益相反を起こします。会社と利益相反を起こす利益を与え続けることは不可能です。
そんなときこそ、「利益相反を起こしていないか?」を自らに問うてみるのです。仮面の内側で自分に聞いてみる。すると、いま、やるべきことがブレないはずです。
■個人を蔑ろにしているわけではない
さて、ここまで、「組織の利益」について述べてきました。この話は、ヘタをすると大きな誤解を生みます。
「個人を蔑(ないがし)ろにしている!」「そうやって組織が個人を潰していくんだ!」などと拒否反応を示されるおそれがあります。
「組織のために働いたことが、個人の利益につながっていく」だけです。初めてリーダーになるあなたが、考え方をアップデートすることを期待しています。
■リーダーは「恐怖」の感情を利用する
逆に、利益を失うときに感じるのが、「恐怖」です。識学では、「恐怖」の感情についてもマネジメントに取り入れるようにしています。なぜなら、人が生きていく上で「恐怖」は大事だと考えているからです。
人は、事故や災害が起こると、恐怖を感じてそれを回避するように行動します。恐怖は、死を避けるための大切なシグナルです。恐怖を正しく認識し、恐怖を回避するような行動をすれば、人間は生きていけます。「いま自分は、何を『恐怖』として感じているのか?」
ぜひ、一度それを考えてみてください。そして、感じなければいけない恐怖の種類を間違えていないかを確認しましょう。
![財務アドバイスするコンサルタント](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/3/670/img_c36d7f839931f8a2abf44989622a3d1c370872.jpg)
たとえば、課長が自分の身を守ろうと思ったら、「課の成果が上がらないこと」に恐怖を感じなければいけません。「この瞬間に部下から嫌われる恐怖」が優先されているのなら、それは錯覚です。
「今日は機嫌が悪そうだから仕事を振るのはやめよう」
「タイミングが悪そうだから、報告はやめておこう」
というように、目の前のことに恐怖を感じてしまうのは間違いです。ここで考えるべきなのが、先ほど説明した「組織の利益」です。
「組織の利益」が減ることに対して恐怖を感じているのであれば、問題ありません。しかし、そうではなく、「自分がこの瞬間、嫌な気持ちになること」に対して恐怖を感じていたとしたら、リーダーとしてNGです。
その判断軸として、「何に恐怖を感じているか」を自らに問うようにしてください。
■危機感のある人、感じない人
10年後、会社が潰れたとしたら、自分は他でもやっていけるだろうか。これからの時代は、そんな「恐怖」も感じることでしょう。「このままじゃダメだ」という危機感があり、それを現在いるところで乗り越えようとすると、「成長」につながります。
率先して勉強したり、業務を改善したりして、自分で考えるようになるからです。自らもリーダーとして、そのように考えるべきだし、部下にもそういう機会を与え続けるのが、いいリーダーの姿です。それを生み出すのが、「いい緊張感」です。
「どう振る舞っても、何も言われない」
「目標を達成しなくても、何も言われない」
そんな優しいリーダーの下では、「いい緊張感」が生まれません。部下が成長せず、チームとして成果が出せなければ、リーダーは評価されず、いずれは会社から必要とされなくなるでしょう。
食いっぱぐれる危険性は、こちらのほうが大きいのです。だからと言って、「恐怖政治をやれ」とは言いません。怖い顔をしたり、言い方を強める必要はありません。あくまで、「いい緊張感」です。
■適度な「負荷」でより遠くまで導いていく
個人の目標は、いまできることの「少し上」に設定すべきです。そうすることで、いまとの「差」が生まれ、それを埋めようと努力します。そうして目標をクリアしたら、また「少し上」に設定する。その繰り返しです。
![安藤広大『リーダーの仮面――「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』(ダイヤモンド社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/b/200/img_9b3c813c7ae5a9b2f2f4e6446ca6ca8b26717.jpg)
そうやって適度な負荷を与え続けることが、リーダーの役目です。まったく無理な目標であれば、最初から諦めてしまいますが、ちょっと頑張れば届きそうだと思えば、人は力を出します。
たとえば、筋トレやマラソンは、初日に頑張りすぎてしまうと、体を痛めて続かなくなります。
「もうちょっと頑張れば、まだできそうだけど、ここでやめとこう」
そう思える限界の手前までを、毎日続けることが、継続のコツです。そして筋力がつき重いものを持ち上げられたり、より長い距離を走れるようになります。
仕事も同じです。長期的に成長していくためには、「もうちょっと、もうちょっと」を日々、積み重ねることです。そのための「いい緊張感」をつくるのが、リーダーの仕事であり、リーダーの仮面の力です。
ちなみに、長く大企業にいる人のほうが、「間違った恐怖」を抱きがちです。そう簡単には潰れない大企業に勤めている人は、社内の人間関係を気にしがちです。
逆に、いつ潰れてもおかしくないような会社では、「社員の仲がいいかどうか」は気にしません。ヘタに安心感があり、ぬるま湯の中にいる人ほど、まわりと仲よくやっていないことに、つい「恐怖」を感じてしまうのです。
しかし、それは本来、感じる必要のない怖さであり、もっと未来に恐るべき「恐怖」があることを認識しておかなければいけません。
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識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングスを経て、ジェイコム(現:ライク)にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11カ月でマザーズ上場を果たす。2021年1月現在、約2000社の導入実績がある。
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(識学 代表取締役社長 安藤 広大)
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