どれだけ忙しくても仕事用デスクで昼食を食べてはいけない3つの理由
プレジデントオンライン / 2021年2月15日 15時15分
※本稿は、平井孝幸『仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
■IT企業に多い「デスクでご飯」は最悪の選択
せっかく摂っているのに、元気がちっとも出ない。そんなランチがあります。「デスクでご飯」です。これは、最悪の選択だと私は思っています。
DeNAもそうですが、IT企業はパソコンだけでも仕事ができますから、1日中デスクにいる人も多い。弁当だけ買いに出たり、人によっては同僚に買ってきてもらって、ずっとパソコンをいじりながら食べていたりする。あるいはカップラーメンを机の下に買い置きしておいて、トイレに行くついでにお湯を入れてきて、お昼に席で食べている、という光景もよく見かけました。私は健康経営を進める上で、このような習慣をどうすれば変えられるかを常々考えていました。
時間短縮になり、それが生産性を落とさないワークスタイルだと思っているようでしたが、そんなことはないのです。むしろ、やがて生産性を下げていくことになる。一見、便利で簡単に見える裏には、不健康が潜んでいるのです。
■脳には「仕事をする場所だ」とインプットされている
理由その1:仕事場で食事を摂ると、リラックスできない
なぜデスクでランチは避けたいのか。一つ目の理由は、デスクは仕事の場だと脳が認識していることです。脳は場所で「何をすべきか」を覚えているので、仕事場で食事を摂ると、リラックスできず、緊張感を残します。食べているものの消化にも悪影響を及ぼしかねません。
これは、「ベッドではスマホを触らない」という教えと同じ考え方です。ベッドの上でスマートフォンを使うと、本当はそこは寝る場所なのに、脳に「仕事をする場所だ」とインプットされ、寝付きが悪くなったりするのです。
だから、ランチのときにはデスクから離れたほうがいい。どんなに忙しくても、食事はデスク以外で行うことを勧めています。お店に行かなくてもいいのです。1メートル離れるだけでもいい。
そして席を離れず、気分転換もできないので、メンタルマネジメントも難しい。実際、デスクを離れずランチをしている人の中には、イライラしたり、落ち込んでいる印象の人たちが少なくありません。これでは、パフォーマンスも低下します。
■食後にすぐ動くと血糖値の低下が緩やかに
理由その2:血流が停滞し、腰痛や肩こりになる
デスクで食事をしてはいけない理由は他にもあります。自席で身体を留めていると、血流が停滞しやすくなるからです。
言うまでもないことですが、身体を動かしているときのほうが、発想力も豊かになりやすいのです。だから積極的に身体を動かしたいのです。さらに、血流が停滞することで腰痛や肩こりになりやすく、生産性を落とす要因をつくることになります。シリコンバレーの企業には、会議室にランニングマシンを置き、歩きながら会議を行う企業もあるくらいです。
ちょっとした食事でもカフェに行ったりして、息抜きとしてランチタイムをうまく使うようにしましょう。
理由その3:血糖値の低下が緩やかになり、眠気を回避できる
また、食べたあとにすぐ動くことで、血糖値の低下が緩やかになるのも利点です。その動きがないと、血糖値は上がったままで、急降下していく可能性が高くなります。
血糖値は「緩やかに上げ、緩やかに下がるようにする」が鉄則です。血糖値が上がると、テンションが少し高くなります。しかしその反動は必ずやってきます。インスリンというホルモンが、血糖値を下げようとするからです。つまり、もし急激に血糖値を高くしてしまうと、そのあと急激に下がってしまうのです。この急な上昇下降を「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値スパイクになると、頭がボーッとしたり、眠気が押し寄せたりして、コンディションは下がってしまうので注意が必要です。
■グーグルの「Gmail」が社食での雑談から生まれた理由
コンディションとは直接関係ありませんが、ランチは心がけ次第で、単なる栄養補給ではなく、ビジネスの武器として使うことが可能です。
DeNAでも、いつもデスクで食事をしていた人に、ランチはなるべく同僚と一緒に行くようにと勧めたところ、新たな人間関係が生まれ、仕事がしやすくなったという話を聞いたこともあります。有名なエピソードとしては、GoogleのGmailは、社食での雑談から生まれたという逸話があります。
ビジネスパーソンのコンディション低下を招き、新しい出会いや発見に遭遇する機会をなくす「デスクランチ」は、絶対に避けるべきでしょう。
どうしてもデスクから離れられず、お腹が空いたなら、ひとまずガムを噛んでその場をいったんしのぐというのも、ひとつの選択です。
■1日や2日食べなくても平気な日本人ばかり
では、食事を摂るのに最適な時間はいつか。その答えは「腹が空いたな」と思った時間です。そのときどきの自分に合わせて、食事のリズムを調整することが大切です。
そもそも論として、お腹が空いていなければ、食べる必要はない。これが、私の考え方です。食べるか食べないかを選べるのであれば、食べないという選択をしています。
ただ、たとえば昼食を3時に食べてしまうと夕食に響きますから、そんなときには、お昼にバナナを食べるなど軽く済ませるといった工夫も必要です。また、夕食は、就寝までに胃の中を軽くしておくために、寝る2時間前までには済ませると良いでしょう。
私が感じているのは、そもそも日本人は過食だということです。食べ過ぎで、エネルギー過多になっている人が多く、1日や2日食べなくても平気な人ばかりです。私の周りには定期的に断食を行い、減量はもちろん集中力が高まり仕事にプラスになっているという人も大勢います。
毎日3食食べなければいけない、というのは、思い込みです。
■空腹のほうが仕事は捗る
先にも触れましたが、食べないほうがパフォーマンスが上がるケースも多いのです。野生動物に関して、ライオンやトラは、お腹が空いているとき以外は食べません。お腹いっぱいだと獲物を追いかけに行けない。飢餓感があるほうが、むしろ集中力が高まるのです。
満腹時と空腹時、どちらのほうが生産性が高いのかといえば、ほぼすべての人が空腹時だと思います。お腹が空き過ぎてイライラするのは問題ですが、満腹感があるときに、すごくいいアイデアが出やすい、仕事が充実する、というのはあまり聞こえてきません。
食べないといけない、という思い込みを、まずはなくすことです。
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ディー・エヌ・エー(DeNA) CHO室 室長代理
東京大学医学部附属病院22世紀医療センター研究員。東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、ゴルフ事業で起業。2011年DeNA入社。2015年従業員の健康サポートを始める。16年健康経営の専門部署CHO室を立ち上げる。19年同社での取り組みが経済産業省と東京証券取引所から評価され、健康経営銘柄を獲得。翌年も連続して獲得する。18年DBJ(日本政策投資銀行)健康経営格付アドバイザリーボード、PGA(日本プロゴルフ協会)経営戦略委員会アドバイザーなどを歴任。
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(ディー・エヌ・エー(DeNA) CHO室 室長代理 平井 孝幸)
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