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「後任は安倍元首相か」IOCの手のひら返しで新局面に入った森会長問題

プレジデントオンライン / 2021年2月10日 18時15分

首相在任中の国会答弁の誤りについて、参院議院運営委員会で経緯を説明する自民党の安倍晋三前首相=2020年12月25日、国会内 - 写真=時事通信フォト

■IOCが「完全に不適切」との声明を発表

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視ととれる発言で批判を集めている東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長。自身は発言を撤回して謝罪したが、会見が「逆ギレ」となってしまったこともあり、問題は日々拡大中だ。

菅義偉首相ら政府・自民党は、森氏の会長続投を容認し続ける道と、「自発的辞任」を促す道の両にらみの状態だが、どちらの道も険しい。

問題の発言は2月3日、JOC(日本オリンピック委員会)の臨時評議会で起きた。日本ラグビー協会での経験談を紹介しながら、女性蔑視発言をした。この日は、「オリンピック、どんなことがあってもやります」とも発言。世界で新型コロナウイルスの感染が止まらない現状を理解しているのか、という批判もあがった。その2日前に自民党本部で発言した「(密を回避するために)有名人は、田んぼを走ったらいいんじゃないか」も物議を醸している。

これに対し、内外のメディア、国際機関、女性団体、スポンサー企業……あらゆるところから批判が吹き出しているのはご承知の通り。野党が森氏を強く批判して辞任を求めるのは当然として、自民党内からも後藤田正純、泉田裕彦の両衆院議員らから責任追及の声があがる。

いったんは森氏の謝罪で「不問」としていたIOC(国際オリンピック委員会)も9日「(森氏の発言は)完全に不適切」との声明を発表した。IOCの「手のひら返し」は、森氏を守り切れない、という判断に傾いてきたということだろう。「森問題」は新局面を迎えた。

■女性議員は、森氏や二階氏に対する批判コメントを求められ…

批判の矛先は森氏にとどまらない。女性蔑視発言に怒り、大会ボランティアの辞退者が続出していることについて二階俊博自民党幹事長は「(ボランティアを)どうしても辞めたいなら、新しいボランティアを募集する」などと発言。コメントを求められた橋本聖子五輪相は9日、衆院予算委員会で「真意は把握していないが、不適切だった」と述べた。

スイス・ローザンヌにある国際オリンピック委員会(IOC)の新しい本部「オリンピック・ハウス」
写真=iStock.com/Bogdan Lazar
スイス・ローザンヌにある国際オリンピック委員会(IOC)の新しい本部「オリンピック・ハウス」 - 写真=iStock.com/Bogdan Lazar

党内における二階氏と橋本氏の「格」の差は歴然としている。「格下」の橋本氏が二階氏に苦言を呈するのは異例。普通なら「真意は把握していないのでコメントは控えたい」のような答弁でお茶を濁すところだ。橋本氏ら、女性議員たちは、この問題で曖昧な対応をとると自分も批判されるという危機意識を持っているのだろう。

実際、稲田朋美、野田聖子の両衆院議員ら、知名度のある女性議員たちは、森氏や二階氏に対する批判コメントを引きだそうとするマスコミに追いかけ回されている。

■麻生氏は「子どもを産まないほうが問題だ」とも発言

9日の予算委員会では麻生太郎副総理兼財務相も追及を受けた。麻生氏は2019年2月、自身が「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まないほうが問題だ」と発言したのだが、この問題について現状での認識を問われた。

失言の多さでは森氏に負けない麻生氏は「いつの発言だか、まったく記憶がない」と述べたが、女性がらみの失言をしたことがある政治家たちは、しばらくの間「過去」を蒸し返されることだろう。

しかし、今後最も追及を受けるのは菅義偉首相となりそうだ。菅氏は8日の衆院予算委で森発言について「国益にとって芳しいものではない」と語ったが、森氏に辞任を求めるよう迫られると「組織委が決めること」を繰り返した。

■「鈴つけ役」は菅首相しかない

今回の問題が起きてから森氏は、いったん辞意を固めたが、組織委の会長代行・遠藤利明氏、事務総長の武藤敏郎氏らに強く慰留されて翻意したと説明している。森氏を守ろうとする組織委の体質そのものも批判の対象となっている。

そんな中で菅氏が「組織委に判断を委ねる」という立場をとり続ければ、事実上、森氏の続投を容認することと受け止められる。これでは、「ラスボス」森氏に忖度しているようで、政権のイメージダウンは避けられない。

政権内部では、森氏が辞任するシナリオが練られ始めている。森氏が自発的に辞める形で、名誉を残して後進に道を譲るイメージだ。ただ、この場合、問題は2つある。1つは、誰が森氏の首に鈴をつけるか。遠藤氏や武藤氏では役者が違う。小池百合子東京都知事が訴えても森氏は言うことはきかないだろう。二階氏は、自身も批判されているだけに「鈴つけ役」にはなれない。

役割は菅氏自身が果たすしかない。首相自ら乗り出す場合、失敗は許されないので、綿密なうち合わせが必要だ。

■後任の「本命」は安倍氏。「対抗」は麻生氏か

もう1つの問題は、森氏が退いた後の人事。組織委の会長はIOCとのパイプ役であり、日本政府、民間企業にも太いパイプが必要だ。今回の場合は開催するかどうか、開催の場合その方法はどうするか、という難問が山積している。しかも開幕まで半年を切っているので「即戦力」であることが必要だ。

その観点で候補を探すと、真っ先に安倍晋三前首相の名が上がる。7年8カ月に及ぶ首相在任中、外国要人とのパイプは随一。国内の官界、財界ににらみをきかす力も申し分ない。そもそも2013年、五輪を招致した時の首相で、自らIOC総会に出向き招致演説も行った。招致から開催、延期に至った経緯も熟知している。

首相として五輪を迎えることを夢見ていた安倍氏。その夢は叶わなかったが、組織委の会長として五輪を迎えるのは、まんざら悪い話ではないだろう。森氏は安倍氏の要請を受ける形で組織委の会長に就任した。森氏に会長の後を託されるという展開も、因縁めいている。

ただ、「安倍会長」が適任かというと、そうは言えない。

■「森友学園」「加計学園」などの疑惑もまだ晴れていない

安倍氏は昨年9月、持病の潰瘍性大腸炎の悪化を理由に首相を辞任した。辞任後、健康状態はかなり回復したが、激務に耐えられるかどうか。そして、なんと言っても安倍氏の場合「負の要素」がついて回る。

首相辞任後の昨年末、「桜を見る会」の前夜祭をめぐり、自身の公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴されるという事態が起きた。安倍氏自身は不起訴となったが、首相在任中に誤った答弁を繰り返していたことが明らかになり、国会でも追及を受けている。7年8カ月の在任中に起きた「森友学園」「加計学園」などの疑惑も、まだ晴れていない。

同じく首相経験者で、自ら選手として五輪出場の経験もある麻生氏も会長候補といえよう。ただし麻生氏は、森氏に負けず劣らずの失言癖がある。騒動の火消し役としては、向いていない。

83歳の森氏の後任候補として、持病を理由に首相を退任したばかりの人物と、80歳の元首相の名ぐらいしか浮かばないというのは、我が国の人材の払底ぶりを露呈しているともいえる。

10日開かれた自民党谷垣グループの会合では、森氏の後継者として、自分たちのリーダーでもある谷垣禎一元党総裁の名が上がったほか、「女性で元アスリートがいい」との理由で、小谷実可子さんらの名前があがったという。いずれも思い付きの域を出ないが、森氏の辞任が織り込み済みになってきたことは事実のようだ。果たしてどうなるか。

(永田町コンフィデンシャル)

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