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戦略コンサルタントはなぜ「問題」と「課題」を使い分けるのか

プレジデントオンライン / 2021年2月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bulat Silvia

ビジネスで難問に直面したとき、どう取り組めばいいか。Airbnb執行役員の長田英知氏は「『問題』を切り分けて『課題』に置き換えることが重要だ。正しい視点で切り分けられれば、どこから手を付ければいいかが見えてくる」と説く――。

※本稿は長田英知『あたらしい問題解決』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■解決策は「問題」と「課題」の特定から生まれる

「問題解決」のプロセスにおいて、「問題」のありかを特定したあとに大事なのが「問題」から適切な「課題」を導き出すことです。

このように申し上げると、「問題」も「課題」も両方同じものじゃないかと思われる方も多いかもしれません。なぜなら、一般的には「問題」と「課題」という言葉はあまり区別せずに利用されるからです。

しかし戦略コンサルタントにおいては、この2つの言葉を切り分けて考えているため、まずはその違いについて説明します。

端的に言うと、「問題」とは「あるべき姿」を阻害されている状態のことを差し、「課題」とはその阻害要因を解消するために解決すべき具体的なポイントを指します。私たちが直接的に解決できることは「課題」です。「課題」が解消されれば、結果として「問題」は間接的に解決されることになります。

■医者とコンサルタントの共通点

「問題」と「課題」の関係について理解を深めるために、医者の診断を例にします。

私たちが病院に行くのは、体調が悪いと感じているからでしょう。しかし熱があり、身体がだるかったとしても、その熱とだるさの理由を素人である私は特定することはできません。

長田英知『あたらしい問題解決』(日本実業出版社
長田英知『あたらしい問題解決』(日本実業出版社)

それは、ただの風邪かもしれないですし、インフルエンザかもしれません。もしかしたらもっと深刻な病気の前兆なのかもしれません。この、原因が何なのかはよくわからないけれど体調が悪いという状態が「問題」にあたります。

体調が悪いという患者の訴えに対して、医者は触診をしたり喉を見たりして総合的な分析を行い、体調の悪い原因を特定=診断します。この診断の結果、たとえば「あなたの病気は熱と咳を伴う風邪です」となったとき、体調が悪い状態から、熱や咳といった解決すべきポイントが切り分けられ、「課題」となります。

最後に医者は熱を下げ、咳を止めるための薬を処方します。この処方が「施策(解決策)」にあたります。熱や咳といった「課題」が解消されると、体調の悪さという「問題」が解決され、健康な身体を取り戻すことができます。

「問題」はそのままでは、有効な解決策を導き出すことはできません。「問題」と「課題」の違いを理解し、「問題」を解決可能な「課題(あるいは課題群)」へと切り分ける、つまり「セグメント」することで、私たちははじめて解決の糸口をつかむことができるのです。

■問題を「分ける」と、どこから手をつければ良いか「分かる」

ビジネスにおいて何らかの問題に直面したとき、問題が複雑過ぎて、どこから手をつけていいか分からなくなった経験が皆さんも一度や二度はあると思います。一方、何らかの視点で問題を切り分けることで、状況が分かりやすく見える化され、改善のためにどこから手をつければいいか明らかになったという経験も同様にあるのではないでしょうか。

このことをビジネスの例で考えてみましょう。たとえば、あなたは陶器の製造工場を経営していて、陶器の皿を大量生産しているとします。しかし最近、焼き上がった皿の不良品の割合が高くなっていました。

工場で生産される製品の不良品が多いというのは「問題」となります。ただし、この「問題」をいくら眺めていても、どこを直せば状況が改善するかは分かりません。

■医者が問診するように全体を分析する

そこで医者が患者に問診を行うように、全体の分析を行うことが重要になってきます。具体的には、製造プロセスごとや製品ごとに工場のオペレーションを「切り分け」ていくと、不良品が多い原因がどこにあり、何を直せば不良品を削減できるかが分かっていきます。不良品増加の原因となっているオペレーションが「課題」であり、この「課題」を特定することで、具体的な改善策を見つけることができるようになります。

仮に陶器の製造の工程が、(1)陶土(とうど)を作る、(2)陶土から皿をろくろで作る、(3)窯(かま)で焼き上げるという3つの工程から成り立っているとしましょう。「問題」が起きているとすれば、この3つの工程のどれかで「課題」が生じているという仮説を立てることができます。

「陶土を作る」工程の分析では、陶土の品質を調べ、土の成分の構成が以前と変わっていないか、含水量が変わっていないかといったことを調べることで改善の糸口を見つけることができます。

また、「陶土から皿をろくろで作る」工程で問題がある場合は、皿の形に成形するときに問題がないか、何かこれまでと違う作業をしていないかを分析します。

そして最後の「窯で焼き上げる」工程では、窯の温度や焼成時間が以前と異なっていないかについて検証を行います。このように製品に不良品が多いという事実だけでは見えてこなかったやるべきことが、プロセスを切り分けることで明らかになり、解決の糸口を見出しやすくなるのです。

■工程以外にもさまざまな分け方が考えられる

なお、問題を分析する際、工程別以外にもさまざまな分け方を考えることができます。複数のタイプの皿を製造しているとき、皿ごとに不良品率を見てみるのも1つの方法です。そして、ある特定の皿だけ不良品率が高いことが分かれば、不良品率が高い皿と他の皿の形状や工程を比較することで、問題を特定できる可能性が高まります。

あるいは複数の工場を利用している場合、工場別に不良品率を調べて、その間に差がないかを調べる方法もあるでしょう。

■「適切な分け方」を選択するロジックをどう立てるか

このようにさまざまな分け方の中から「適切な分け方」を選び出すことも「セグメント」を機能させるための重要なポイントとなります。

問題の中身によっては、切り分け方のオプションがさらに増えるため、どの切り分け方を選択するかに関する明確なロジックが必要となるケースもあります。

課題と数字データを壁に貼って考える女性
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

陶器工場の例で、「売上が下がっている」という問題を解決したいとします。この場合は分析の幅を社外にも広げて考える必要があります。

■最適な切り分け方の選択を可能にするのが「セグメント」

たとえば、他社製品と比較して品質が負けている、あるいは消費者が求めているデザインを提供できていないことが課題かもしれません。品質やデザインはいいけれど価格競争で負けているのかもしれません。さらには、市場そのものがなくなっている、すなわち消費者がそのような皿を求めていないケースも考えられます。

このように実際のビジネスにおいて生じる問題は、時に複雑に状況が入り組んでおり、その結果、どのような切り分け方が最適なのかを特定するのが難しいケースも多くあります。

そうしたとき、目の前に現れている「問題」を正しい視点で正しく切り分けることで、本当の「課題」と、その「課題」を解決するためのスキルが大事になってきます。そのスキルの正体こそが「セグメント」なのです。

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長田 英知(ながた・ひでとも)
Airbnb Japan株式会社執行役員
1974年生まれ。東京大学法学部卒業後、日本生命を経て、埼玉県本庄市の市議会議員に全国最年少当選(当時)。その後、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社、PwCアドバイザリー合同会社等を経て、2017年より現職。著書に『プロフェッショナル・ミーティング』『いまこそ知りたいシェアリングエコノミー』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『たいていのことは「100日」あれば、うまくいく。』(PHP研究所)がある。

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(Airbnb Japan株式会社執行役員 長田 英知)

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