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「日経平均3万円も景況感ダダ下がり」タクシー運転手も匙投げる残念政府

プレジデントオンライン / 2021年2月16日 12時15分

2月15日、日経平均株価が30年ぶりに3万円台に回復した。実体経済との乖離が懸念されている。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「コロナ対策と経済活性化のトレードオフなど、政府はメリハリのついた配分ができていない。今後も無能さを露呈し続けるなら、国民が政権を見限るのもそう遠くはない」と指摘する――。

■株価は30年ぶりに3万円に回復も実体経済との乖離が大

2月7日までの予定だった11都府県への緊急事態宣言が栃木県をのぞき延長されました。その効果もあり、新型コロナウイルスの第3波も抑えられつつあります。また、2月15日には日経平均株価が30年ぶりに3万円台に回復しましたが、実体経済との乖離が懸念されます。

コロナ禍の経済統計を見ていると、感染を抑えようとして経済活動を抑制すると景気が急に落ち込み、逆にそれを緩めると経済活動が活発化するのが端的に読み取れます。

感染拡大防止と経済活動というトレードオフのバランスをどうとるかが難しいところですが、今の政府でそれができるかは不安なところです。

■引き締めれば急速に落ち、緩めば伸びる経済

図表1を見てください。

経済の最前線で景気を敏感に感じる人たちから景況感を調査している「街角景気(景気ウォッチャー調査)」の数字です。景気を敏感に感じている人たちとは、タクシーの運転手、小売店の店頭に立つ人、ホテルのフロントマン、中小企業の経営者たちなどです。この数字は、こうした経済の最前線で働く人たちに対し、内閣府が各地域で毎月調査しているものです。

この数字の見方は「50」が良いか悪いかの基準です。50を超えていると、景気が良くなっていると答えた人が多く、50以下なら悪化していると感じている人が多いということです。絶対的な景気の良さではなく、あくまでも方向感を表しているものです。

この数字を見ると、2020年2月以降、急速に悪化しているのが分かります。コロナの影響が景気に大きな影を落としたのです。とくに、第1回目の緊急事態宣言が出た4月は7.9、5月は15.5と大きく落ち込んでいます。この数字は、2008年のリーマンショックやそれに続く世界同時不況、2011年の東日本大震災直後よりも悪い数字です。そこまで景況感は落ち込んだのです。

しかし、その後は大きく回復しています。とくに、10月は50を超えて54.5まで上昇しました。これはここ数年以上なかった数字です。GoToトラベルは7月から開始されましたが、10月1日からは東京発着も解禁になりました。それにより、実際に国内での移動、宿泊が増加しましたが、何よりも感染防止に関する気持ちの緩みが大きくなったと思われます。気持ちも財布の紐も緩み、移動や消費が増えたのです。

■経済最前線のタクシー運転手、ホテルマンの景況感は……

しかし、当然のことながらその緩みにより感染が再拡大し、第3波が襲来しました。そのため国も都道府県も「自粛」の呼びかけが強化し、それと同時に再び街角景気の数字は一気に落ち始めました。

先ほども述べたように10月には54.5まで上昇していた景況感も、12月には一気に35.5まで悪化しました。そして、1月には11都府県に緊急事態宣言が出たこともあって31.2とさらに悪化しました。

経済に圧力をかけると感染は減りますが、確実に景況感は落ちるのです。タクシー運転手やホテルマンといった景気ウォッチャーにしてみたら、政府のかじ取りの良しあしで、実入りが激変するのですから、たまったものではないでしょう。

■どっちつかずの政策に翻弄される、小売業、旅行業の苦闘

このことは、GDP(国内総生産)の55%程度を支える「家計の支出」、つまり個人消費にも当てはまります。

図表2をご覧ください。

図表2

家計の支出を端的に表す「消費支出2人以上世帯(前年比)」、「小売業販売額」、「旅行取扱状況」を表しています。

こちらも、先の表と同じく、消費税増税直前の2019年9月からのものですが、「街角景気」と同じく、2020年に入って落ち込みはじめ、第1回目の緊急事態宣言が出たあたりから大きく落ち込んでいます。

先ほども述べたように、家計の消費支出がGDPの55%程度を支えているので、これが大きく落ち込むことは景気に大きな影響を与えます。4、5月はそれぞれ前年比で11.2%、16.2%と大きな落ち込みです。その4、5月を含む、2020年4-6月の実質GDPは年率で前四半期比年率29.2%という大きな落ち込みでした。

緊急事態宣言が解除された後は、前年比マイナスが続いたものの、マイナス幅はかなり縮小しています。9月は10.2%とマイナス幅は再び拡大しましたが、これはその前年の9月が消費税増税前の駆け込み需要で大きく伸びたことが影響しています。緊急事態宣言が解除されると経済は伸びるのです。

そして、10、11月は前年比プラスにまで戻りました。こちらも前年は消費税増税による落ち込みがあり、その分、戻りが大きく出がちということもありますが、消費マインドが向上したともいえると思います。しかし、12月は再びマイナスです。

このことは、「小売業販売額」からも全く同じトレンドが読み取れます。また、コロナでとても大きな影響を受けている「旅行取扱状況」ですが、こちらは、緊急事態宣言解除後の戻りはそれほどではありません。それでも、7月にGoToトラベルが始まって以降は改善傾向が見え、東京発着のGoToトラベルが解除された10月以降はその改善傾向が顕著になっていますが、まだ戻りは半分程度です。旅行業は苦しい状況が続いています。

■もっときめ細やかな対応をしなければ政府は国民に見限られる

ここまで見てきたように、外出などを制限すれば経済は落ち込み、人々の気持ちが「緩め」ば経済は向上するのです。

タクシー
写真=iStock.com/TkKurikawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TkKurikawa

そういうことを考えれば、2021年1月以降はワクチン接種の状況にもよりますが、経済が落ち込む可能性は高いと考えられます。それが長期化するという場合には、政府は経済崩壊を防ぐ努力もしなければならないことは言うまでもありません。その際、今までのような「大雑把な」政策では効果も半減です。

まず、飲食業への助成金です。現状、緊急事態宣言が出ている地域では、20時以降の営業を自粛しているお店に対しては一律日額6万円が支払われています。しかし、これは店の大きさなどを考慮していません。従業員1人か2人で10席程度の店を切り盛りしている場合には、日に6万円もらえば普段より大きな利益が出ていてホクホクだと思います。

一方、大型店では6万円程度では焼け石に水のところも多いでしょう。助成金を得るには申請をしなければならないので、その際に、家賃や雇用調整助成金をもらわない従業員などの固定費を申請してもらいそれを支払うべきです。金額が個別に違うだけで、これまでと役所側の手間もそう変わらないはずです。

■このままでは大手の飲食業は壊滅してしまう

助成金で儲かるところとそれでも全く足りないところが出ているのはおかしな話です。これでは、飲食業、とくに大手は壊滅します。

他に、ホテルや旅行代理店、陸運、海運、タクシー、飲食業に資材を供給しているところなど、助成金がほとんど出ておらず、業績が厳しい業種がたくさんあります。借入れでなんとか事業を維持し、その後のGoToキャンペーンが復活すれば業績がある程度戻る可能性のあるところはいいかもしれませんが、そうでないところには、返済不要の助成金や資本性資金の注入が必要なところも少なくないでしょう。

さらには、困っている人への助成も必要です。前回は、富裕層にもひとり10万円を配りました。収入が落ちていない年金受給者にも配りました。選挙対策が見え見えの愚策でした。富裕層では貯蓄が増えただけで、年金受給者はプラスアルファの収入があったので、それをGoToトラベルで使い、それにより感染が増えただけの結果に終わりました。これも申請ベースだったので、次回は本当に困っている人に厚めに配分すべきです。

先の飲食業も同じですが、申請で不正があれば、あとで調査し厳罰を科せばいいのです。

メリハリのついた配分ができないほど政府は無能だとは思いたくありませんし、もし、これから先も無能さを露呈し続けるなら、国民が政権を見限るのもそう遠くはないでしょう。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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