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「これが結婚のリアル」女性はカネがほしい、男性は1人でカネを使いたい

プレジデントオンライン / 2021年2月19日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

■結婚は愛? それともお金?

「結婚とは、ひとつの消費行動である」

ドイツの新進気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルは、「欲望の資本主義」(NHK BS1)という番組の中でこう言いました。これを聞いて「そんなことはない。結婚とは愛だ」と反論したい方もいるかもしれませんが、今回の「結婚とお金」というテーマは、そういう方にこそ読んでほしいのです。

お見合い結婚が減り、9割が恋愛結婚といわれる現在、ほとんどの夫婦は、恋愛の延長線上として結婚に至ったことでしょう。しかし、その一方で、「恋愛と結婚は別物だ」とも言われます。結婚後の2人の生活というのは、恋愛関係とは違い、現実が突きつけられます。

分かりやすくいえば、現実とはお金です。夫婦2人またはそのうち子をもうけて家族として生活する上で、「愛さえあればなんでも乗り越えられる」などという既婚者はあまりいないのではないでしょうか。ある意味、結婚とは経済基盤をベースとしたひとつの共同体です。つまり、結婚とは経済活動でもあり、消費の一形態というとらえ方はむしろ的を射ていると言えます。

■「相手に求めるもの」女性は年収、男性は容姿

昨年12月の記事で、「婚活女子が希望する年収500万円以上の未婚男性は2割しかいない」と書きましたが、500万という基準の是非はともかく、婚活女子の結婚相手の条件から「年収条件」がなくなることはありません。

2015年の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)「出生動向基本調査」にある「結婚で重視・考慮する点」の男女差分を見れば明らかな通り、未婚女性が相手に求めるのは「収入」「職業」「学歴」が圧倒的で、対する未婚男性が相手に求めるのは「容姿」という結果となっています。要するに、あくまで独身者の希望ベースの話ですが、結婚とは「男性の経済力と女性の容姿とのトレードオフ」と言えるわけです。

結婚相手選びで重視するポイント男女比較

さらに「出生動向基本調査」の他の調査項目にある、独身者が考える「結婚の利点」「独身の利点」から、男女の明確な違いを比較してみましょう。

まず、結婚の利点の男女差分です。

結婚の利点 男女差推移

男女で明確に傾向に違いがあるのが分かります。女性は、「愛情を感じている人と暮らせる」が下がり続け、圧倒的に「経済的に余裕が持てる」項目が急上昇しています。2015年には、ずっと安定的に高い「子どもや家庭を持てる」を遂に抜きました。

一方、男性はどうでしょう。「社会的信用や対等な関係が得られる」「生活上便利になる」などで女性より多い部分があるものの、ほぼ経年で下降傾向です。全体的に、女性と比較して男性は「結婚するメリットを感じていない」もしくは「結婚するメリットが減っている」と考えていることが分かります。

■結婚する理由も、しない理由も「金のため」

続いて、「独身の利点」はどう考えているのでしょうか。

独身の利点 男女差推移

こちらも一目瞭然です。意外にも、独身の利点として「行動や生き方が自由」をあげているのは女性の方が多く、これも年々伸びています。つまり、女性の方が独身の利点を「自由」であることに見いだしており、かつ、独身のままの方が、男性より友人や社会との関係性を保持できるととらえています。

逆に、男性が独身のままでいたいのは、「自分のためにお金を使いたい」からです。彼らは「自分のために金を使える自由」を捨ててまで、結婚をする必要を感じられないのです。定期的に既婚サラリーマンのお小遣いのデータが発表されていますが、「結婚したら月3万円台の小遣い制にされる」なんて情報を聞くと、とても結婚に前向きにはなれません。

しかし、それは、女性にとっても同様で、「自分の自由を奪われてまで、経済的メリットのない結婚をする必要はない」ということになります。

すなわち、女性が「結婚するのは金のため」であり、男性が「結婚しないのも金のため」ということです。結婚に対する意識では、男も女もしょせん「お金」なんですが、その意識は相反するわけです。身も蓋もない言い方をしてしまうと、結婚に際して、女は「金をよこせ」、男は「金はやらん」と思っているわけです。双方譲れないポイント(お金)がここで真っ向からぶつかっているのですから、こんな人たち同士がマッチングするわけがありません。

■経済面を重視すると結婚を選ばなくなる

もちろん、すべての女性が結婚後専業主婦になって夫の経済力に依存しようとしているわけではありません。しかし、たとえ結婚時は共働きだとしても、育児の時期は離職を余儀なくされる可能性も高く、事実そうなっています。少なくとも自分の稼ぎ以上の相手との結婚でなければ、「そもそも一緒になる意味がない」と考えるのも無理のない話です。

こうした状況から未婚男女の間では「結婚はコスパが悪い」という言われ方もされます。ここでいうコストとは、お金の部分だけではなく、自分の人生という時間の意味も含みます。そう書くと、「結婚はコスパじゃない。結婚をコスパなんかで考えているから独身なんだよ」と説教したい既婚者の方もいると思います。しかし、既婚者であればなおさら「結婚生活や子育てにお金がかかる」という現実を身に染みて実感されているのではないでしょうか。

経済学者ケインズは、著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で、市場における投資家の行動をこんな話で例えています。「100枚の写真の中から最も美人だと思う1人に投票してもらいます。ただし、最も投票が多かったトップの人に投票した者だけに賞品を与えます。

すると、投票者は自分が美人と思う人へ投票するのではなく、みんなが投票しそうな女性に投票するようになり、誰の好みでもない女性が優勝する」と。

自由な選択権を与えられても、そこに経済的メリットを提示されると、そこに気を取られて、結果的に、人は不自由な選択をしてしまうのです。結婚の選択も同様です。男女とも、結婚に対して経済的メリットを意識しすぎて、合理的に考えれば考えるほど、結婚そのものを選択しにくくなるというパラドックスに陥ります。

結婚指輪
写真=iStock.com/davidf
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/davidf

■皆婚社会には「お膳立てシステム」があったが…

「結婚は消費である」という言葉だけを取り出すと、腑に落ちない人もいると思いますが、戦後間もなく、「三種の神器」と呼ばれた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目を国民全員が買い揃えたように、大量生産・大量消費の時代を支えたのは、結婚することが当たり前だという規範に基づく皆婚社会です。

繰り返しますが、結婚とは、夫婦と子という最小単位の共同体を継続させるための経済活動にほかなりません。「三種の神器」の家電と同様、当時の日本の社会には結婚という消費を全員が享受できる社会的お膳立てシステムがありました。それは、お見合いであり、職場結婚という、いわば「結婚商店」でした。

そうしたサービスを提供するお店は、今やほぼ廃業の危機に瀕して、代わって訪れたのが「結婚の新自由主義」といわれる時代です。くしくも、それは、英国サッチャー首相や米国レーガン大統領によって推進された「経済の新自由主義」の1980年代以降の時代と重なります。

■「結婚は消費である」の本当の意味

誰もが平等に、しかも、自由に相手を選択できる「結婚の新自由主義」がもたらしたものは、一部の恋愛強者と経済力強者だけが結婚相手を選択できる「勝者総取り」の世界でした。恋愛における強者と弱者の格差がどんどん広がっていくのは、経済の新自由主義と同じです。

しかし、一方で、消費とは本来、物を買った瞬間だけで完結するものではありません。消費そのものは手段であり、目的ではない。消費して手に入れたものでその先どう楽しむか。どう人生を豊かにしていくかが重要なはずです。

結婚に当てはめれば、結婚はゴールではない。互いに経済生活も含めた結婚運営をどう2人で共に仕上げていくか、一緒に作り上げていくか。その未来へのしあわせの投資なのだと思います。

コーヒーカップ
写真=iStock.com/AntonioGuillem
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem

ちなみに、「しあわせ」とは、奈良時代は「為合わせ」と書き、室町時代に「仕合わせ」と表記されるようになったと言われています。「仕合わせ」とは「誰かと共に合わせる」こと。つまり、「しあわせ」とは「仕合わせる」という動詞であり、「幸せ」という状態のことを指すものではありません。見つけるものではなく、人との完成形の中で作りだすものです。

「結婚は消費である」とは「結婚とは、未来の仕合わせを2人で共に作り上げていくため扉を開ける消費である」ともいえるのです。そう考えると、決して悪いものではないのかもしれません。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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