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センスがいいと言われる人が行っている「たった1つの方法」

プレジデントオンライン / 2021年2月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bulat Silvia

今、ビジネスの流れが大きく変わろうとしている。これまでの広告宣伝の手段は、マスメディアに限られていたが、ソーシャルメディアの時代となり、ビジネスの有り様が大きく変わっている。独立研究家の山口周氏は、今は、人も企業も「センス」が問われる時代になったという。

■自分の好きなものを徹底的に掘り下げていく

彼の発想はセンスがいい。

あの商品のセンスは素晴らしい。

ビジネスシーンでも私たちはセンスという言葉をよく使います。一方で、センスというのは持って生まれたもので、後天的な努力でどうにかなるものではないとあきらめている人も少なくないようです。

そこで、今回はセンスについて考えてみようと思います。

そもそもセンスとは、どんな能力のことをいうのでしょうか。

たとえば、音楽業界でいえば、90年代にミリオンセラーを連発した小室哲哉さんは、大衆の心をつかむ曲をつくるセンスがあったといえます。

一方、坂本龍一さんも、国内のレコードセールスは小室さんほどではありませんが、世界各国に一定数いる耳の肥えた音楽ファンから圧倒的に支持され続けているという点では、やはりセンスのいい音楽家だといっていいでしょう。

そして、20世紀にもてはやされたのは、自分の音楽を追求する「世界のサカモト」よりも、社会の空気やトレンドを読み、次に何がはやるかをいち早く見抜いて、そこにはまる曲を提供できる小室さん的なセンスのほうでした。

ところが、21世紀になると、小室さん的なセンスの評価は徐々に下がっていきます。世の中の複雑さや不透明さが増したことに加え、人々の価値観が多様化したことで、マスセールス自体が難しくなってきたためです。

さらに、メディア環境の変化もあります。

以前は、広告宣伝の手段がマスメディアに限られていたため、1万人のうちの1人にしか受け入れられないようなものは、なかなか市場に出てきませんでした。ところが、いまは誰もがいつでもスマートフォンでインターネットにアクセスできます。SNSのようなソーシャルメディアを使えば、1万人に1人の共感者とすぐにつながれる。しかも、ネットに国境はありませんから、日本で1万人しかファンを獲得できなくても、100カ国であれば100万人ですから、じゅうぶんビジネスとなります。

それゆえ、次に何がはやるかを予想できるよりも、自分はこれが好きだというものがはっきりしていて、なおかつそれをアピールできるセンスのほうが、現在では価値が高まっているのです。

つまり、結論をいえば、自分の好きなものを徹底的に掘り下げていくことで、おのずとセンスも磨かれていくということになるのです。

■伊藤若冲を発掘したアメリカ人収集家のセンス

伊藤若冲「紫陽花双鶏図」
伊藤若冲「紫陽花双鶏図」

そうはいっても、自分が好きになった画家の絵が市場でまったく評価されていなければ、センスがないとみなされるのではないか。

その気持ちはわからなくありませんが、心配は無用です。

江戸時代の画家、伊藤若冲は、もともと日本ではあまり高く評価されていませんでした。ところが、2006年にアメリカ人収集家のジョー・プライスが京都国立博物館の展覧会で紹介したのがきっかけで話題となり、いまでは彼の作品は国内外で注目の的となっています。

プライスはもちろん、若冲の絵はあまり人気がないことは知っていたはずです。でも、あの鮮やかな色使いと緻密な筆致に心を動かされたため、かまわず作品を自分のコレクションに加えたのです。

山口周さん(撮影=原貴彦)
山口周さん(撮影=原貴彦)

あるいは、千利休。彼は最初の茶会で、わざと青くなり損ねた青磁の茶碗を使い、逆に評価を高めました。また、ろくろを使わず手びねりという技法でつくった茶碗も、利休がこれを取り入れたことで一般の人の評価がたちまち高まったといわれています。

このように、何かのきっかけでそれまでの価値基準が180度変わるというのは、アートの世界では珍しいことではありません。そういう意味では音楽家のモーツァルトだって、200年後には誰も聴かなくなっているかもしれないのです。

そのため、現在の社会の評価がどうであれ、自分が気に入ったものは堂々と好きといえることが大切であり、それができる人は間違いなくセンスがあるといえます。

■スペキュラティブ・デザインを採用することもセンスである

センスの有無は、人だけではなく企業にもあります。

少し前に、学校や社会でいじめや差別を受けて悩む3人の少女が、スポーツを通じて自分のアイデンティティを確認し、乗り越えていくというナイキのコマーシャルが物議を醸しました。

あのCMは、スペキュラティブ・デザイン、あえて議論を巻き起こすことを狙っています。

スペキュラティブとは、「こういうこともありえるのではないか」という可能性を提示することです。マイノリティに対する差別という問題は、日本にも存在するということを視聴者に気づいてほしいというメッセージを、ナイキはより多くの人に伝えたかったのでしょう。

また、ザボディショップは「Forever Against Animal Testing」というキャンペーンを通じて、化粧品業界が動物実験を恒常的に行っているという事実を白日の下にさらしました。

社会問題を告発する声というのは、それだけだとなかなか世の中に広がりません。そこで、この2社は、CMやキャンペーンにしたのです。しかも、一方的に正論を振りかざすのではなく、どうしたらいいかを消費者に考えさせるつくり方をしている。

ビジネスのポジションは「役に立つ・役に立たない」と「意味がある・意味がない」の2つの軸で整理できます。

山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)
山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)

日本の多くの企業はいまだに前者の軸だけで商品開発をしていますが、それだと生き残れるのはトップの企業だけ。ゆえに、戦略としては、提供するモノやサービスにどれだけ意味をもたせられるかを考えるべきなのです。

その際、こういう社会を実現しようとしているという企業の姿勢が明確になっている必要があります。そこがはっきりしていれば、それに賛同する人たちは、消費者としてその企業を応援しようとするでしょう。

ところが、できるだけ多くの人を取り込みたいといって企業のポジションを曖昧なままにしていると、攻撃はされないかもしれませんが、味方もいなくなります。

ナイキもザボディショップも、反対意見があるのを承知で自分たちの旗色を鮮明にしました。

こういうのを、センスがある企業といいます。

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山口 周(やまぐち・しゅう)
独立研究者・著述家/パブリックスピーカー
1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て現在は独立研究者・著述家・パブリックスピーカーとして活動。神奈川県葉山町在住。著書に『ニュータイプの時代』など多数。

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(独立研究者・著述家/パブリックスピーカー 山口 周 構成=山口雅之)

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