「あなたが悪いんじゃない」いじめサバイバー、女性弁護士のメッセージ
プレジデントオンライン / 2021年2月21日 9時15分
■いじめが始まると抜けにくい「一貫校」地獄
お昼休み、いつものように、一緒にお弁当を食べている子たちに加わろうとしたら、みんなが、ふっと違うところへ行ってしまったんです。そのとき、ひとりの子が振り向いて、ちょっと申し訳なさそうな顔をしました。その顔は今もはっきりと覚えていますね。それまで仲の良かったグループから始まった無視は次第に広まり、クラスのほとんどの子から口をきいてもらえなくなりました。中3の終わり頃のことでした。
小中高一貫の学校だったので、高校でも状況はそのまま。学校に行っても、誰とも口をきかないで帰ってくる毎日でした。クラブ活動でも、活動日を私だけ教えてもらえなかったり、絶対にできないようなことを押しつけられ、失敗すると、みんなの前で非難されるということが繰り返されました。
■「自分がおかしいんだ」始まった自己否定
小学校から通っていた学校だったので思い入れも強かった。すごく大事にしていた世界だったので、そこで自分が全否定をされているような気持ちになりました。なぜこんな目に遭うのか、という問いから行き着いたのは、“自分がおかしいんだ”という思いでした。それがつらかったですね。
突然、学校をサボった日があったんです。もう行けなくなってしまったんですよね。街なかで時間をつぶし、家に帰ってきたとき、「学校から連絡があったけど、今日、どうしたの?」と母に訊かれ、そのとき初めていじめのことを打ち明けました。
そのあたりから、学校にはほとんど行けなくなってしまったのですが、行かなければ単位は取れない。けれど高校2年のときには、うつ病と摂食障害が酷くなり、日常生活を送ることさえ厳しい状況でした。高2の終わりに退学を決め、東京から関西の学校に転校しました。
■転校したら、いじめられなかった
転校先では、すぐに受け入れてもらいました。そこで初めて、“私が悪かったわけじゃないんだ”ということに気が付いたんです。
自分がおかしかったなら、転校先でもいじめに遭うはずなのに、友だちがたくさんできた。「私がおかしかったわけではなかったんだ」と気付けたことは、すごく大きかった。その学校での日々は、本当に楽しくて。
![学生](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/b/670/img_4b6498f4999611d769b62a2dda9556a01064521.jpg)
ただ、いじめに端を発した過食症が治っていなかったので、行きたくても行けず、病気と闘いながら、出席日数ギリギリで卒業しました。そんな状況だったので、ずっと目指していた受験はできず、大学へは指定校推薦で進学しました。
■いじめが終わっても残る後遺症
嫌なことがあると、食べずにはいられない衝動が突きあげてくる。それが起こると、次は食べられなくなる。私の摂食障害には、小学校のとき、太っていることをからかわれていたことが影響していると思います。
それがすごく嫌で、私は6年生のときからダイエットを始めたのですが、度が過ぎ、中2のとき、拒食症になってしまったんです。そしていじめがきっかけで次は過食症になってしまった。だから根は、小学校の低学年の頃からつながっていると思うんです。
たとえば、みんなの前で体重を発表されて笑われたり、通学の途中、座席が空いていると、「豚だから座れないよね」みたいなことを言われたり。言った方は“からかい”としか思っていないだろうけど、これも“いじめ”だったのではないか、それは別問題にしても、自分の病気に関してはつながっているんだろうなと思います。
■出産後、司法試験に挑戦
うつ病と摂食障害は、その後も続き、大学も単位ギリギリで卒業し、就職はできませんでした。落ち着いたのは、子どもを出産した20代後半のことでした。そこで司法試験を受験しようと決心したんです。
“何かしたい”という思いが、自分のなかでくすぶり続けていたんですよね。今まで何もできなかったゆえに、自分の力を試したい、その力を証明したいと。子育てをしながらの挑戦は大変でしたが、それは初めて自分で選んだこと。だから絶対にやめられなかった。
■いじめられて恥ずかしいと思わないで
幾度かのトライの後、司法試験に受かり、私は今、弁護士をしています。被害を受けた相談者の立場を何より理解したいという、私が大事にしている姿勢には、過去の経験がつながっていると感じるところがあります。
![『FACES いじめをこえて』](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/c/670/img_1ccb18eff532d3608df726e75d292175603657.jpg)
でも私はまだ、いじめを克服したとは思えない。“そんな経験があったから、今の自分がいる”なんて思うことはできない。でも今は、ちょっと弱いところのある自分を受け止め、楽しいことも、うれしいこともあって、それでいいんじゃないかなと気楽に考えるようにしています。
当時の私は、“いじめられていることが恥ずかしい”という思いが強かったんです。だから誰にも相談できなかった。あのときの自分に言いたいのは、ひとりで抱えないで、ということ。もっと誰かに相談して、全然恥ずかしいことじゃないんだから、って。
![NHK「FACES」プロジェクト『FACES いじめをこえて』(KADOKAWA刊)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/300/img_350ee4b7a02b7bca154a0779e1a3a559297401.jpg)
----------
----------
(NHK「FACES」プロジェクト)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「友人と思っている」段ボールに閉じ込めて、黒板消しの粉を振りかけて…炎上した雑誌記事に小山田圭吾が語る“真実”
文春オンライン / 2024年7月24日 6時10分
-
小学校いじめ重大認定遅れで提訴 芦屋市相手に被害児童と保護者が
共同通信 / 2024年7月16日 18時59分
-
「自分は何者」そこまで考える必要ない?虐待、いじめ、リスカ傷痕も大切な一部 「死んではダメ」手差し伸べた恩人のため「もう一度働きたい」
47NEWS / 2024年7月9日 10時0分
-
養子縁組した息子の障がいと不登校…子ども食堂運営理事長、笑顔の裏にある壮絶な半生
週刊女性PRIME / 2024年7月7日 17時0分
-
次世代のSNSスター、ゆでたまごの壮絶な半生「中学2年のとき体重が17kgまで落ちICU入り」
エンタメNEXT / 2024年7月7日 6時0分
ランキング
-
1京急百貨店内のうなぎ料理店の丑の日向け弁当で130人食中毒、90代の女性死亡
読売新聞 / 2024年7月29日 21時23分
-
2『佐渡島の金山』世界遺産効果で「宿泊予約が一気に増えた」金山にちなんだユニークメニューも! 新潟県
BSN新潟放送 / 2024年7月29日 20時14分
-
3大雨被害が次々と明らかに…住宅や農業・漁業など 広範囲にわたって甚大な被害 各地を取材
ABS秋田放送 / 2024年7月29日 19時1分
-
4遺体は行方不明の巡査部長 山形大雨、殉職2人目
共同通信 / 2024年7月29日 22時28分
-
5火元は…“コンブ”!函館の漁港で火事…干すため電気除湿器を使用…気づいたら火の手が!
STVニュース北海道 / 2024年7月30日 7時2分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)