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「これが謙虚ということか」学びのプロが心底驚いた"名経営者の人の話を聞く姿勢"

プレジデントオンライン / 2021年3月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat

人から話を聞くとき、あなたはメモを取るだろうか。「Yahoo!アカデミア」学長の伊藤羊一氏は、10年ほど前に孫正義氏の前でプレゼンテーションをした。その時、孫氏は必死にメモを取りながら、話を聞いていたという――。

※本稿は、伊藤羊一『ブレイクセルフ 自分を変える思考法』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

■本からインプットすることが苦手だった

何かをアウトプットをするには、その前にインプットが必要だ。素材がなければ表現はできない。そもそも、自分がどんな個性や価値を持っているのかを見つけるためにも、まずは他人について知らなければいけない。そのためにはインプットだ。まずはアウトプットの機会をつくることが大事、という話も一方でよくするが、それはある程度インプットをしている人向けのアドバイスだ。最初はやっぱりそれなりに自分の中に「ネタ」を仕入れたい。

インプットと言えば、本を読むことがまず思い浮かぶ。

かつて僕は、本を読んで学ぶということが苦手だった。それをつくづく感じたのは、銀行員だった20代のときのことだ。

そもそも、僕は大学では勉強らしい勉強をしていなかった。そのままなんとなく就職して、ぜんぜん仕事についていけず、メンタルが不調になって、ついには出社拒否症にまでなってしまったことについては、『やりたいことなんて、なくていい。』(PHP研究所)という本に書いた。

■本から学ぶのが無理だから、人から聞いた

自分は何もできない、つらい、とずっと感じていた。順調に仕事を覚えていっている同期たちからは、3年くらい遅れている感じがした。

メンタルの不調をなんとか乗り越えて、仕事をしっかりとやっていこうと思ったのが27歳のとき。まずは勉強をしよう、と思ったが、本を読んでも何がなんだかさっぱりわからなかった。

書いてあることの意味がわからないというのではない。つまり、読めることは読める。でも、本を読んで、そこから何かを学ぶ、ということがわからなかった。本を自分の役に立てるためには、どんな頭の働かせ方をしたらいいのかわからない。だから、読み終わっても何も頭に残っていない。もちろん、自分が成長した感じもない。

本から学ぶのは無理だ。と、僕は明確に気づいた。

だったら、別の学び方をするしかない。

それは、人から聴くことだ。本を読むのと違って、人から教えてもらうことは学びになる、という実感があったから。

たとえば、仕事でわからないことがあったら先輩や上司に聞く。みんな親切に教えてくれる。「こんなことも知らないなんて、かわいそうなやつだ」と思ってくれたのかもしれない。

■人の話を聞き続けていたら、本が読めるようになった

とにかく自分は、聞かないと学べなかった。人の話から学ぶことは大きい。それが僕の基本スタンスになった。本よりも人から聞いて学ぶこと、これがインプットとして重要だった。

でも、そうやって教えてもらえる時間はそう長くない。いつまでも何もできず、人に聞いてばかりだと相手にされなくなる。もっと教えてもらうためには、自分にできることで貢献しなければならない、ということにも気づいた(どうやって貢献するのかについては後で詳しく話そう)。

おもしろいもので、人の話を聴き続けているうちに、しだいに本からも学べるようになった。それと同時に、20代の僕が本から学べなかった理由にも気づいた。

僕が本から学べなかったのは、その内容を文字通り「インプット」しようとしていたからだ。理解して、頭に入れたい。なんなら覚えよう、なんて考えていたからだ。

本を読んでいる男性
写真=iStock.com/DjelicS
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DjelicS

大学に入るまでの勉強、受験勉強なら、これでなんとかなる。実際、僕はすべての科目を「暗記」して受験を乗り切った。数学でさえ、「いい問題と解答」を300個くらいまる覚えしていたくらいだ。

でも、社会に出たら丸暗記ではどうにもならないのは当たり前。本を読んでも、何も頭に残らなかったのも無理はない。

■読みながら「対話」をする

本から学ぶというのは、内容を覚えることではない。読みながら、「え、そこはそうくるの?」「なるほど、でも、俺は違うんだよね」「そうそうそう、わかる!」……という具合に、本と対話することだ。本の内容をそのまま頭に入れるのではなく、主体的に自分と関連付けていくことだ。自分で選んだものだから、頭に残る。現実の問題解決の役に立てることもできる。

人と対話しながら学ぶことを通じて、僕は本からも学べるようになった。

Give&Listen
アウトプットをするために、まずはインプットをしなければいけない。それは正しい。
けれども、あなたはむやみに情報を頭に入れようとはしていないだろうか?
学びの対象が、本やメディアに偏っていないだろうか?
身のまわりにいる人たちから、「聴く」ことができているだろうか?

■「すごい人」と言われるのは嫌だ

ここ数年は本を出したりしたこともあり、顔と名前が多少知られるようになった。はじめて会う人でも、僕のことを知っていてくれる、ということが増えた。

それはありがたいのだけれど、困惑してしまうこともある。

僕が嫌なのは「伊藤さんのような『すごい人』と話せて……」と言われることだ。

以前は、そう言われるたびに「すごいってなんですか?」と食ってかかっていた。なんとなく腹が立った。

「すごい」と言われて、なぜ腹が立つのか。自分でも最初はわからなかった。「伊藤さんのようなすごい人」というのは、客観的に見れば褒め言葉だ。

しばらく考えて、理由がわかった。

「すごい」と言ってもらえるのは、僕の仕事が誰かの役に立ったからであり、その結果、ある程度は名前も知られるようになって、ときには「先生」扱いされるようになったからだろう。そういう僕を褒めるつもりで「すごい」と言ってくれているのだろう。

でも、僕を「すごい」と思っているということは、それ以外の「すごくない」人もいると考えているということだと感じた。

「すごい人」がいて、その下に「すごくない人」がいるという序列を前提にしている。その価値観というか、世界観が嫌だったのだ。本当はおそらく、誰もそんなことは考えていないと思うが……。

■僕がすごいのだとしたら、みんなすごいのだ

前に言った通り、僕は人から学ぶしかないと思ってやってきた。

「自分が学ぶべきはこういう人だ」と選別したわけではない。

自分以外全員から学ぼう、という感覚だった。

最初は、自分はダメだから、「みんな俺よりはすごいのだ」と思っていた。けれども、それも間違いだとやがて気づいた。自分よりすごいとかすごくないではない。自分と他人は違う。だから、他人は自分とは違う経験や知識、感覚を持っている。それは自分にとって価値がある。だから、自分以外全員から学ぶ。

だったら、自分だって人の役に立てることがあるはずだ……と思えるようになっていった。

セミナーで拍手をする人々
写真=iStock.com/eggeeggjiew
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eggeeggjiew

だから、僕は「すごい人」と「すごくない人」がいるという感覚は受け入れられない。

僕がすごいのだとしたら、みんなすごいのだ。みんながすごくないとしたら、僕もすごくない。

それぞれがオンリーワンであるからこそ、人から学ぶ意味は大きい。

そして、それは誰もが自分の思いや考えを口に出していい、行動で表していい、それらにはすべて価値がある、ということでもある。

Give&Listen
あなたも、誰かを「すごい人」と見てしまうことがあると思う。
「すごい人」を何人か思い浮かべてみよう。
「すごくない人」も、同じように思い浮かべてみよう。
今思い浮かべた、「すごい人」も「すごくない人」も、大切な存在だ。

■孫さんは、全員のプレゼンを猛烈にメモを取りながら聞いていた

10年ほど前、ソフトバンクアカデミアというところで孫正義さん相手に何度かプレゼンをしたことがある。

参加者がテーマを与えられてプレゼンテーションの腕を競い合う。勝ち上がっていくと、孫さんの前でプレゼンを披露できる。

最初のうちは緊張してそれどころじゃなかったけれど、何度か孫さんの前に立つうちに、だんだん慣れてきた。

すると、聞いている孫さんの様子を見る余裕が出てくる。

孫さんは、僕を含め、20人ほどの参加者全員のプレゼンを、iPadに指を使って猛烈にメモをとりながら、真剣に聞いていた。

あくまでもアイデアのプレゼンテーションで、仕事ではないから、こっちはかなり自由な――まあ、ある意味でいい加減なことも言っている。それを、こんなに真剣に聞かれるとは思ってもいなかった。

■これが「謙虚」ということなのだ

それだけでなく、孫さんは後から僕に、「伊藤くん、今言ってたこのことなんだけど、どういうこと?」と質問までしてくる。これには驚かされた。

伊藤羊一『ブレイクセルフ 自分を変える思考法』(世界文化社)
伊藤羊一『ブレイクセルフ 自分を変える思考法』(世界文化社)

当然ながら、孫さんは僕らがアクセスできないような情報をいっぱい知っている。経験も僕らとは比較にならないほど豊富だ。

それでも、孫さんは、世間的に見ればぜんぜん「すごくない」参加者たちのプレゼンを必死に聞いて、メモをとって、質問する。

これが「謙虚」ということなのだなと。

人から学ぶことは重要だ。人の話を聴くことは大切だと、僕は改めて感じた。

Give&Listen
あなたは、人の話を聴くとき、どんな姿勢で聞いているだろうか?
相手によって、聞く姿勢が違うかもしれない。
だとしたら、どんな相手の話なら熱心に聞いて、どんな相手の話を聞き流しているだろうか。
あなたの「聞く姿勢」を、もう一度見直してみよう。

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伊藤 羊一(いとう・よういち)
ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月にヤフー入社。企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長としてヤフーの次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授、株式会社ウェイウェイ代表として、ヤフー以外でも様々な活動に従事する。近著に『1分で話せ―世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』がある。

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(ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長 伊藤 羊一)

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