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「漁船いじめが激増中」中国から尖閣諸島を守るために日本政府がやるべきこと

プレジデントオンライン / 2021年3月4日 15時15分

機関砲(76ミリ砲の可能性)を搭載した1万トン級の中国公船船体に「中国海警」「2901」の文字[海上保安庁提供]=2020年5月 - 写真=時事通信フォト

■日本漁船を追い回して威嚇、退去を強要

中国海上保安機関の海警局に武器の使用を認めた「海警法」の施行から1カ月が過ぎた。日本の海上保安庁(海保)によると、沖縄県の尖閣諸島周辺海域で中国海警船による挑発行動が異常に増えている。

中国は尖閣諸島の領有権を一方的に主張している。海警法が施行された2月1日から28日までの1カ月の間に14隻もの海警船が尖閣諸島周辺の日本の領海に不法に侵入。操業中の日本漁船を追い回して威嚇し、無線や電光掲示板を使って退去を強要している。1月の不法侵入は6隻だったというから2月はその倍以上だ。

現場の海域では海保の巡視船が警戒を強めているが、中国の海警船の中には砲を搭載した船舶もあり、巡視船や漁船が射撃を受ける危険性がある。

■アメリカとの親密さを示して、中国を封じ込めたい

領海内で漁をする漁船を無理やり追い払おうとする危険な行為は許されない。尖閣諸島は竹島(島根県隠岐の島町)と同様、日本固有の領土だ。その領有権は日本にある。2012年9月に日本は私有から国有に変え、国際社会に領有権をはっきり示した。竹島については2月25日の記事「『竹島に上陸する自衛隊は撃退する』韓国政府は日本との戦争を覚悟している」で触れたので今回は省く。

中国は国家安全維持法(国安法)を制定して香港の民主派を弾圧し、自国の一部とみなす台湾に対しては防空識別圏(ADIZ)への侵入を繰り返している。この台湾への威嚇については、2月2日の記事「『台湾は必ず防衛する』中国の挑発に対しバイデン新政権が示した本気度」で詳しく書いた。

中国の習近平(シー・チンピン)政権は他国にも一党独裁の牙をむく。尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入がその代表例である。中国は自国が富むためには手段を選ばない。その中国が恐れているのがアメリカだ。日本はアメリカとの親密さを常に示し、冷静に中国の行動を封じ込めるべきである。

■「海警法は武器使用権限と国際法との整合性から問題」

海警法は中国の管轄海域で他国船を強制退去させる権限などを海警局に認め、中国の主権や管轄権が侵害されれば、武器使用が許されるとしている。

茂木敏允外相は2月26日の記者会見で「海警法は曖昧な適用海域や、武器使用権限と国際法との整合性から問題がある規定を含んでいる」と批判した。これに先立ち、菅義偉首相も19日の先進7カ国(G7)首脳テレビ会議で、尖閣諸島を含む東シナ海と軍事要塞の人工島の設置が進む南シナ海での中国の軍事行動を問題視した。23日にはアメリカ国防総省の報道官が尖閣諸島周辺での中国の挑発行動を強く警告した。

大漁旗を掲げた日本の漁船
写真=iStock.com/akiyoko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/akiyoko

日本政府は中国の海警船が上陸目的で尖閣諸島に接近した場合、海保や自衛隊が「危害射撃」(相手を負傷させる可能性のある射撃行為)を行えるとの見解も示している。

■海警局は警察ではなく、その正体は「第2の海軍」だ

中国の海警局は、2013年に公安省辺防海警と国家海洋局などの4つの組織が統合された海上保安機関である。海警法の施行によって初めて権限が具体的に定まった。

発足時の局員数は1万6000人以上。業務は東シナ海や南シナ海での監視活動だ。最初は公安省の指導下にあったが、2018年に軍指導機関の中央軍事委員会が支配する武装警察部隊の傘下に置かれた。

表向きは警察だが、トップには軍の出身者が多く、海警局は軍部との関係が強い。そのため「第2の海軍」とも言われ、海警船は砲などの火器類を搭載している。海軍を投入すれば国際社会から批判されるため、それを避けるために発足した組織である。日本の海上保安庁とはまったく違う。

■中国は違法行為を重ねることで、最終的に正当化させる

中国は2012年に日本が尖閣諸島を国有化したことから自らの領有権を主張するために海警局による侵入を何度も繰り返し、既成事実にしようと企んでいる。典型的な中国のやり口だ。違法行為を重ねることで、最終的に正当化させる。中国は、うそも100回もつけば、“事実”になると考えているのだ。

問題の海警法を整理すると、ポイントは次の3つである。

①管轄海域では、他国の軍艦や警備船を排除でき、臨検や航行の制限もできる
②主権の侵害時には武器が使用でき、攻撃を受けたときには公船の武器の使用も可能となる。軍部の指示で防衛もできる。
③管轄海域やその海域の島で他国が建造した建築物の強制撤去が可能で、自国の人工島は保護の対象となる。

日中米の船が地図の上でにらみ合い
写真=iStock.com/pengpeng
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pengpeng

■「力によって一方的に現状を変えるのはやめよ」と朝日社説

3月1日付の朝日新聞の社説は「中国海警法 海洋の緊張を高めるな」との見出しでこう書き出している。

「中国の行動は地域の平和と安定を揺るがしかねない危うさをはらんでいる。力によって一方的に現状を変えようとすることはやめるべきだ」
「中国公船は年々、大型化などの増強が進む。自らの主張に合わせた既成事実を強引に築くねらいのようだが、認めるわけにはいかない」

「一方的に現状を変える」「既成事実を強引に築く」。前述したが、まさにこれが中国のやり方なのである。朝日社説が主張するように決して認めてはならない。

中盤で朝日社説は「中国海警局の役割と権限を定めた中国海警法が施行されたことも、波紋を広げている」と指摘し、「まるで法律の不透明さを利用した『脅し』のようだ。これでは日本だけでなく、フィリピンやベトナムなどの周辺国が不安を感じるのは当然だろう」と書く。

海警法はまさに中国の卑劣極まりない脅しなのである。中国は周辺の国々に恐れや不安を抱かせ、その国の政治や経済を一党独裁色で塗りつぶしたいのだ。中国の脅しに屈してはならない。周辺の国々がひとつにまとまり、中国に「ノー」というべきである。

■「意思疎通のチャンネルを広げる必要がある」

朝日社説はさらに書く。

「一方で、自衛隊の速やかな出動に向けた法整備などを求める声も一部で出ているが、過剰反応は慎むべきだ。冷静な議論を慎重に進めなければ、中国側の挑発にのせられて事態を悪化させることにもなりかねない」

朝日社説は「過剰反応は慎むべき」と自衛隊への期待に待ったをかける。一触即発の危機や偶発的な衝突を避けることは重要である。ただし、「自衛隊出動の法整備」を議論することが中国の動きを封じる抑止力につながることも忘れてはならない。要は冷静さを失わないバランス感覚で中国に対応すべきだと思う。

朝日社説は続けて、「中国に強い懸念を直接伝えると同時に、意思疎通のチャンネルを広げる必要がある」と書く。これは重要な指摘だ。

■「中国政府の侵略の道具といえる」と産経社説

2月14日付の産経新聞の社説は書き出しからこう批判する。

「中国海警局(海警)の権限を定めた海警法が施行された」
「これにより、中国政府が、中央軍事委員会傘下の『第二海軍』としての海警に、法執行機関の行動であるかのように偽らせて尖閣諸島(沖縄県)や南シナ海の島々を奪い取る恐れが高まった」
「国際法に明らかに反する内容で、中国政府の侵略の道具といえる。中国は海警法を取り下げなくてはならない」

「奪い取る恐れ」「侵略の道具」と中国嫌いの産経社説らしさがストレートに出ている。

そんな中国に日本はどう対処すればいいのか。産経社説は「菅義偉首相は危機の段階が上がったことを踏まえ、尖閣を守り抜く具体的方策を講じるべきだ」と政権に注文する。

■海警法は「明確な国際法違反である」

産経社説は指摘する。

「日中両国が加わっている国際法(国連海洋法条約)は海上法執行機関に、外国の公船に対する武器使用を認めていない」
「日本の海上保安庁法は国際法に則って、武器使用の対象から外国公船を外している」
「ところが海警法では、海保巡視船への武器使用ができる。明確な国際法違反である」

中国は違反を承知でごり押ししてくる。それが中国なのだ。ただし、習近平政権はアメリカに反撃のチャンスを与えることになるため、武力による尖閣奪取には踏み切らないだろう。日本の領有権の主張を崩した後、尖閣諸島周辺海域の日中共同管理を言い出すだろう。問題は菅政権がそんなしたたかな習近平政権に太刀打ちできるかである。

■自衛隊出動の議論を進めることも念頭に置くべき

産経社説は朝日社説と違い、自衛隊の出動を明確に主張する。

「日本政府は海警による海保への武器使用や尖閣上陸は法執行ではなく、日本の主権を侵害する軍事攻撃であり、そのような侵略は排除すると表明しておくべきだ」
「増強は必要だが、海保は軍事組織ではない。海警の攻撃を一手に引き受けさせることは難しい。自衛隊の早期展開の意思と態勢を整えることが急務である。それが侵略への抑止力を高める近道だ」

日本の主権を脅かす中国の行動は、侵略行為以外の何ものでもない。繰り返すが、日本は自衛隊出動の議論を進めることも念頭に置くべきである。それが抑止力につながるからだ。

ただし、同時に朝日社説が主張する「意思疎通のチャンネル」を構築することも欠かせない。抑止力とは言え、日本が自衛隊を持ち出すと、中国もそれに応じて軍隊を展開させる恐れがある。わずかでも軍事衝突を起こせば、日本にとっても中国にとっても痛手は大きい。軍事衝突だけは避けなければならない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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