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既婚女性だけ違う判断「2人の目の前にある1000万円、総取りか? 山分けか?」

プレジデントオンライン / 2021年7月13日 11時15分

荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』より

「男は寡黙で理屈型」vs「女はおしゃべりで感情型」のような対比的なステレオタイプは正しいのだろうか。マーケティングディレクターの荒川和久氏は「性別に関係なく、時と場合によって人の思考・判断は変わりますが、こうした性別や属性、職業にまつわるステレオタイプを払拭するのは至難の業です」という――。

※本稿は、荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■「ステレオタイプ脅威」を払拭するのは至難の業

自分とは何か? 性別や属性、職業にまつわるステレオタイプに縛られない多様な自分を認めることで、個人がもっと自由に生きられるようになるのではないか、ということについて、独身研究家でマーケティングディレクターの荒川和久さんと、脳科学者の中野信子さんが考えます。

【荒川】世間一般ではいまだに「女性は直感で選ぶ、男性は理屈で選ぶ」といわれます。これも「ステレオタイプ」ですよね。

【中野】これ、本当は逆じゃないかと思うんですが……。

【荒川】図表1のように、男女それぞれステレオタイプがありますよね。「男は寡黙で地図が読めて、女はおしゃべりで地図を読めない」とか。僕が言うのもなんですが、よくしゃべる男なんてたくさんいます。

【中野】おしゃべりな男性って、けっこういますよね。

【荒川】男性はよくしゃべりますよ。逆に、みんな「俺にしゃべらせろ」と言うんですよね。

【中野】「俺の話を聞け」という感じですよね。

【荒川】まさに、「俺の話を聞け」です。

■「血液型は性格とは関係ない」と言われても信じてしまうのと同じ

【中野】たとえば職人さんは寡黙な印象がありますが、技術のことになると、けっこうしゃべりますね。

【荒川】そうなんですよ、実際には違うんです。でも、こうやって「男は△△、女は○○」って分けて見せると、「あるある、そうだそうだ」ってほとんどの人が思ってしまうんです。

【中野】うーん。実際にはロマンティックでガラスのハートを持つ、恋愛重視の男性が「論理的」とされているわけですか……。

【荒川】血液型性格診断と一緒ですよ。「血液型は性格とは関係ない」と何回言われてもみんな信じているように、このステレオタイプを払拭するのは至難の業なんだと思います。

【中野】私もステレオタイプを払拭することはだんだんあきらめてきていて、ステレオタイプのとおりに誘導したほうが得するんじゃないかな、と思いはじめています……。

■目の前にある現金1000万円を総取りするか、分け合うか

【荒川】「理屈の男」と「感情の女」──このような対比的なステレオタイプって常につきまといますね。ではここで、ある思考実験の話をしましょう。

目の前に、現金が1000万円あります。あなたと見ず知らずの誰かと二人で、その1000万円を分け合います。選択肢は、次の2つです。

A 500万円を選ぶ(=二人で500万円ずつ分け合う)
B 1000万円総取りを選ぶ(=自分だけで1000万円全額をもらう)

繰り返しますが、相手は見ず知らずの赤の他人です。図表にすると、次のようになります(図表2)。条件があって、あなたが500万円を選んで、相手も500万円を選んだら、二人とも仲良く500万円ずつもらえます。

1,000万円を総取りか、分け合うか?
荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』より

一方、あなたが500万円を選んでも、相手が1000万円総取りを選んだら、あなたは1円ももらえず、相手だけ1000万円をもらえます。

逆に、あなたが1000万円総取りを選んで、相手が500万円ずつ分け合うことを選んだら、あなただけ1000万円もらえます。二人とも1000万円を選んだら、二人とも0円です。

要するに、選択肢は2つだけです。500万円(分け合う)か、1000万円(総取り)か。中野さんはどちらですか?

【中野】1000万円のほうですね。

■「1000万円総取り」を選ぶのは、理屈で動く人

【荒川】実はこの思考実験では、既婚女性だけ500万円を選ぶ人が多くて、ソロ(独身)男・ソロ女・既婚男性は1000万円を選ぶ人がちょっとだけ多いんです。

【中野】あれ? 私、結婚しているのに。

【荒川】いや、どう考えても中野さんの価値観は、「ガチソロ」のほうですよね(笑)。経済学的に言えば、500万円を選ぶと、期待値は500万円or0円ですから、250万円じゃないですか。1000万円を選ぶと、1000万円or0円だから、期待値は500万円。つまり、1000万円を選んだほうが絶対に得なんですよ。

【中野】そう思います。

■既婚女性だけは7割の人が500万円のほうを選ぶ

【荒川】では、なぜ500万円を選ぶかというと、「500万円にしておいたほうがいいんじゃないかな?」という考え方に基づいています。でも、見ず知らずの相手ですよ。普通は1000万円を選ぶんです。

【中野】普通は1000万円ですよね?

【荒川】でも、既婚女性だけは7割の人が500万円のほうを選ぶんですよ。ところが、相手が自分の知っている人になると、既婚男女もソロ男女も9割から10割が500万円を選びます。

【中野】ああ、なるほど。知っている人ならね。嫌なやつだと思われたくないですから。

【荒川】そう。見ず知らずの人なら、どう思われても関係ないですよね。だから、1000万円を総取りするほうが合理的なんです。

【中野】うーん。論理的に考えれば、1000万円を選びますよね……。ステレオタイプではひとくくりにはできない

■「感情で動くタイプ」と自称する人が「理屈で動くタイプ」のことも

【荒川】なぜこんな話をしたのかというと、1000万円総取りを選ぶ人は、理屈で動いている人なんですよ。

「私は感情で動くタイプです」と常々言っているのに、本当は1000万円を選ぶのなら、日常生活の判断基準として理屈・ロジックを重視しているということじゃないですか。こんなふうにステレオタイプから外れていることはかなり多いんです。

荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

この思考実験は、言っていることとやっていることが違う、と明らかにするのに面白いなと思っています。

このようなステレオタイプは非常に安易ですから、男と女は違うよね、という単純な話にはしたくないと思っているんです。一人の人間の中にいろいろな面がある。一人の人間の中に男性性も女性性もあるし、父性もあるし母性も存在する。

【中野】ライフステージによっても変わりますしね。

【荒川】あと、上司に相対するときの自分と、部下と相対するときの自分と、好きな人に相対するときの自分とは、全然違うじゃないですか。

【中野】そうですね。それに関して言えば、使う言語によってペルソナ(外的側面、周囲の人に見せる自分)が変わる、という興味深い研究があります。日本語を話しているときは謙虚な人も、英語を話しているときはすごく熱いネゴシエーターになったりする。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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中野 信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者
東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。1975年、東京都生まれ。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『サイコパス』『不倫』、ヤマザキマリとの共著『パンデミックの文明論』(すべて文春新書)、『ペルソナ』、熊澤弘との共著『脳から見るミュージアム』(ともに講談社現代新書)などがある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久、脳科学者、医学博士、認知科学者 中野 信子)

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