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会議、商談、営業…オンラインのビジネスで差がつく「表情筋」の科学的な鍛え方

プレジデントオンライン / 2021年3月5日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ridofranz

オンライン会議では表情の豊かさが仕事の成果に直結する。サービスビジネスコンサルタントの安東徳子氏は「表情筋を鍛えている人は、表情のバリエーションが豊富。日常生活で鍛えるには、“変顔・あいうえお・笑い”の3つを意識するといい」という――。

■ビジネスは「小さな会議室」で「顔コミュニケーション」の時代に

会議室が驚くほど小さなサイズになった。13.3インチ、ほぼA4サイズの画面。そう、オンライン会議の舞台である。

新型コロナウイルスの感染拡大により、ZoomやTeamsなどを使ったオンライン会議が瞬く間に普及し、ビジネスコミュニケーションはリアルな空間から小さなパソコン画面上でする、新しい形態にシフトした。

こうした「小さな会議室」では、顔だけがコミュニケーションツールとなる。ここでは、そんな「顔コミュニケーション」時代への対処法を紹介したい。

まず、顔しか見えない「顔コミュニケーション」においては、従来のコミュニケーションと何が違い、何を変えなくてはいけないのか。

「人は見た目が9割」と言われることもあるように、コミュニケーションに視覚情報は欠かせない。リアルで対面した際、人は顔だけでなく姿勢やしぐさなど全身の視覚情報を取り入れる。さらに洋服の趣味やセンス、アクセサリーや時計、靴などの質感やブランドも、相手を見極める重要な判断基準となる。

それに対してオンライン上のコミュニケーションでは、取得できる情報がほぼ顔だけになる。ワイシャツを着ていれば、下がパジャマのズボンでも画面に映らなければわからないし、アルマーニのスーツを着ていても細部まで見えないから誰も気づかない。唯一の視覚情報が「顔」という、なんともアンバランスなスタイルのコミュニケーションが、今後のスタンダードのひとつとして定着することは確かだろう。

■職業によって異なる表情スキル

相手の注目が顔に集まるということは、リアル対面で相手の全身から視覚情報を集めていたエネルギーが、顔だけに集中することを意味する。そのため、リアル対面では見逃されてきた表情の細かな動きが目に留まることになる。

大きな身振り手振りは、「小さな会議室」には入りきらない。時には腕組みや仁王立ちなどのノンバーバル(非言語)コミュニケーションを使って部下に対して威圧感を与えてきた管理職も、画面越しではそれが使えない。また、膝を合わせる、指をそろえるなど、ノンバーバルな所作も無意味となり、顔だけで品格やマナーを表現しなければならない。

表情に関して、ウエディング業界や理美容業界、教育ビジネス業界を中心に長年コミュニケーションを教えてきた私自身の経験から気づいたことがある。それは職業ごとに表情スキルに差があるということだ。

たとえば接客業に携わっている人たちは、日頃から笑顔を意識する習慣が身についているので、表情豊かな人が多い。入社した時から笑顔の徹底教育をされてきたため、表情をコントロールするスキルが高いのだ。一方で、エンジニアやクラフトマンなど、個々で取り組む時間の多い人たちは、表情が乏しい傾向がある。

こうして職業によって表情の豊かさやコントロールスキルが大きく異なるのは、「表情筋の鍛え方」が違うからである。

■科学的なアプローチで「表情筋」を鍛える

表情は、顔面にある表情筋を使って作られる。そのため表情筋を鍛えている人は、表情のバリエーションが豊富で、自分で表情をコントロールすることができる。逆に表情筋が鍛えられていない人は表情が乏しく、コントロールも苦手なものだ。

また、国による文化や習慣の違いも、こうした表情スキルと密接に関係する。特定の技能や資格を持って日本で働く外国人は、国によっては日本人の感情表現と大きく違うことがある。今後は「顔コミュニケーション」の時代を生き抜くために、日本仕様の表情トレーニングが必要となるだろう。

「顔コミュニケーション」の時代には、表情だけで信頼や好感度を生み、顧客との絆を育まなければならない。プレゼンテーションも同様で、表情スキルで契約を勝ち取ることが求められるようになる。そしてそのためには、表情筋のしくみを理解し、正しいトレーニングを始める必要があるのだ。

2人の女性がジムで腕立て伏せ
写真=iStock.com/nd3000
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nd3000

ただし、相手に対する「想い」だけでは表情筋は鍛えられない。アスリートたちが専門のコーチのもとで科学的なトレーニングをするように、表情筋の鍛え方も科学的なアプローチがある。

■テレワーク中、声を出して笑っているか

顔の表情を作る表情筋は30種類以上も存在し、他の筋肉と比較すると細く、薄いという特徴がある。

そして表情は、眉、目の周り、口の周りの3点を中心に作られる。その3点を動かしている主な筋肉が、前頭筋、眼輪筋、頬筋、口輪筋の4つだ。個別にそれらの筋力を上げることは難しいが、表情筋全体を鍛えることで感情表現力はかなり向上する。

筋肉は動かすことで鍛えられるため、できるだけ顔を「動かす」ことを意識する習慣をつけるとよい。日常生活の中で、自分でできる表情筋トレーニングをいくつか紹介しよう。

① 大きな口でゆっくり「あいうえお」50音を言うトレーニング

顔を動かすことが目的なので、大きな声をあげる必要はない。声を出せない場所であれば、声を出さなくともよい。一つひとつの音を発声する度に、顔が動いていることを意識する。一音、3秒くらいかけてゆっくり顔を動かすとよいだろう。

② 「変顔」トレーニング

口をすぼめてみたり、鼻にシワをよせてみたり、顔中の表情筋を動かすつもりで変顔をつくる。Web上で変顔を集めているサイトなどもあるので、それを手本にしてみるのもよい。一表情10秒くらい、3~5種類くらい行おう。

③ 声を出して笑い続けるトレーニング

表情筋が最も活性化するのは「笑顔」になっている時である。思いきり笑うことは表情筋を鍛えるために最も効果がある。コロナ禍のテレワークなどで笑う機会は減っている今、笑うこと自体をひとつのトレーニングとして意識的に取り入れることもおすすめしたい。お笑いでも漫画でも、自分が笑えるネタを探しておくとよい。

このように、まずは表情筋を鍛えておくことが、表情豊かなコミュニケーションスキルを上げることにつながる。

■「笑顔の時間差」が相手との距離感を生む

また、表情筋を鍛えるのと同時に、表情をつくるタイミングも意識するようにしたい。相手の一言に対して、どのくらいの間隔で反応するかで、相手の感情は変わる。「笑顔の時間差」があってはいけないのだ。

駆け出しの食レポのタレントが、料理を口に入れた途端、「おいしい!」と声を上げるのに違和感を感じたことはないだろうか?

料理を口に入れてから、味を認知するまでには、少し時間がかかる。その間をきちんととっているか否かで、食レポのリアリティが変わってしまう。

同様に、相手の言葉への共感度は、表情が変わるまでのスピードで判断される。表情が変化するまでに「間」があると、相手は距離感を感じてしまう。表情が変わるスピードは、相手への共感と比例していることも知っておきたい。

笑顔の男性
写真=iStock.com/Ridofranz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ridofranz

■AIを使ったアプリで表情トレーニングを効率的に

一方で、自分の表情がどれだけの表現力を持っているのかを客観的に判断することも必要になる。

そのためにAIを活用するのも一つの手段である。

顔面認識の技術の進化とともに、表情と感情の関係について分析ができるAIの開発も進んできた。たとえばパソコンやスマホから表情を採点、評価できるアプリ「心sensor for training」がある。

このアプリで使われている感情認識AIは、今から40年以上も前にアメリカで開発されたFACS理論(=Facial Action Coding System、顔面動作符号化システム)のアルゴリズムを用いて開発されたものである。

世界87カ国以上から収集した900万件超の表情データを基にディープラーニングが行われているので、表情分析もユニバーサルであることも時代にマッチしている。

これらのアプリの活用法としては、感情表現のチェック用スクリプトを準備する方法がある。「感謝」「称賛」「謝罪」「反省」などビジネスコミュニケーションで必要とされる代表的な感情を表現する原稿を準備し、それを読みながら表情チェックをすると、自然な表情を生むことができ、分析の効果があがる。

【スクリプト例】
感謝:お問合せいただきありがとうございます。
称賛:きれいな色のニットですね。
謝罪:ご連絡が遅くなり大変失礼いたしました。
反省:なぜ、ダブルチェックをしなかったのか、大変悔やんでおります。

このような簡単に感情移入ができるスクリプトを読み上げながらアプリを活用すると、それ自体も表情トレーニングになるというメリットもある。

■照明器具、外付けカメラ…環境整備も仕事のうち

また、顔コミュニケーションにはもう1つ、環境の問題がある。パソコンでオンライン会議を行う場合、デスクの上にノートパソコンを置き、内蔵または外付けカメラで自分の顔を映すときに環境が表情を台無しにすることも珍しくない。

よく見受けられるのが、自分の顔を下からのアングルで映しているケースだ。顔を下から撮影すると、輪郭が歪んだり老けて見えたりすることがある。また、明度の低い蛍光灯の下では、顔面が青ざめて見えたり、そもそも暗すぎて表情が見えにくかったりする。

せっかく相手に好印象を与える表情を作っても、デバイス側の事情で伝わらないようではもったいない。この場合、パソコンの下に台を置いてカメラの位置を目線に合わせるなどの工夫も必要だろうし、パソコンまわりに照明器具や外付けカメラを設置するのも一案だ。

幸い、オンライン会議のツールは画面内に自分の顔が映るものが多いので、己の表情を確認し、客観視するいい機会になりそうだ。ぜひ「顔コミュニケーション」の時代ならではのスキルアップに励んでいただきたい。

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安東 徳子(あんどう・のりこ)
マリッジ・ライフ・プランナー/サービスビジネスコンサルタント
エスプレシーボ・コム社長。一般社団法人日本ホスピタリエ協会代表理事。明治学院大学社会学部社会学科卒業。大学卒業後、広告代理店勤務、ピアノ講師を経て、ウエディングプランナーとして活動。その後、ウエディング、理美容業界、教育ビジネスなどホスピタリティ産業を中心とした、サービスビジネスコンサルタントとして活躍する。現在、サービス業に特化した講演会、セミナーは全国45都道府県での実施実績があり、年間120回を超える。著書に『究極のホスピタリティを実現する「共感力」の鍛え方――AIにはできない、人にしかできない!』(コスモトゥーワン)、『誰も書かなかった ハネムーンでしかできない10のこと』(コスモトゥーワン)など。エスプレシーボ・コム

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(マリッジ・ライフ・プランナー/サービスビジネスコンサルタント 安東 徳子)

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