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「第4波襲来を確信」経営コンサルタントが毎朝真っ先に確認する日経の"ある数字"

プレジデントオンライン / 2021年3月16日 9時15分

緊急事態宣言が3月21日で解除される見通しだ。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「ここ1年間のコロナ禍で、おおよそ3~4カ月に一度の周期で感染の波がやってきました。ワクチン接種の進度が他国に比べて遅い日本では宣言解除後は再び感染者が増え、第4波がくると考え、経営者もビジネスパーソンも資金や対策の準備をしたほうがいい」と指摘する――。

■緊急事態宣言が解除される見通し…そして第4波は来る

一都三県で延長された緊急事態宣言は3月21日で解除されるようです。経営コンサルタントである私は、2021年に入って首都圏・近畿圏を中心とした2度目の緊急事態宣言が出てから顧客企業の経営者に対して、以前にも増して「資金の確保」をすることの重要性を伝えています。新型コロナウイルスの第4波が来る、と心配しているからです。

感染症の専門家ではありませんが、最近のコロナに関する数字を見るや、そう感じずにはいられません。経済も全体的にはある程度回復の兆しが見えていますが、一部業種では、低迷どころか存亡の危機に瀕している業種もあります。先の展開が見えない中、すべての業種、そしてそこで働く人々が備えなければなりません。

■まさに壊滅的低迷、国民が愛する百貨店業界が超ピンチ

図表1を見てください。これは全国百貨店売上高と旅行取扱状況の数字です。前回も指摘しましたが、コロナ以降は惨憺(さんたん)たる状況です。

まず、百貨店。1回目の緊急事態宣言が出た2020年4、5月は、百貨店は地下の食料品売り場だけを営業しているところが多く、前年同月比の売上高がマイナス60%以上でした。宣言解除後は少し持ち直しましたが、それでも2ケタの減少です。

10月だけマイナス1.7%と減少幅が小さいのは、2019年10月が消費税増税後に売り上げが落ち込んで大幅減少(2018年同月比マイナス17.5%)したからです。

コロナ禍のこの1年、地方都市では百貨店の閉店が続き、百貨店がない県も増えつつあります。そして、感染が拡大した2021年1月にはマイナス30%近い減少となり、収束するまではこうしたマイナス傾向は続くだろうと思われます。

百貨店を含む「小売業販売額」の数字もコロナの影響を受けていますが、百貨店の数字は小売業全体の数字とは比較にならないほど大きく落ち込んでいるのが分かります。

■旅行代理店はGoToトラベル解禁後も、前年同月比マイナス50%以上

もっと大変なのは、旅行代理店です。「旅行取扱状況」の数字は観光庁が主要旅行代理店からの数字を毎月集計したもので、1回目の緊急事態宣言の時は、前年同月比マイナス90%を超えていました。その後、7月からGoToトラベルが始まり、減少幅が縮小しましたが、10月に東京発着のGoToトラベルが解禁になった後も、マイナス50%以上という状態が続いています。東京発着のGoToトラベルが解禁された後は、高級ホテルや旅館は大いににぎわいましたが、それ以外の宿泊施設などは大きな恩恵を受けなかったと言えます。

2度目の緊急事態宣言も大きく響いています。HISは香港のファンドからの資金調達で急場をしのいでいますし、KNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト+クラブツーリズム)は債務超過に陥り、いずれにしても業界全体でとても厳しい状況が続いています。

冒頭で述べた通り、私は新型コロナウイルスの第4波襲来を強く懸念しています。飲食、イベント関連、百貨店、旅行関係、さらにそれらの会社に資材を提供する関連業種はとても厳しい状況がこの先も続く可能性が高いと言わざるを得ません。

■経営コンサルタントが毎朝真っ先に日経の“ある数字”確認するワケ

私は毎朝、日本経済新聞に目を通しますが、このところ注意して見ている箇所があります。第4波を意識してからは、真っ先にそこを確認するほどです。

それは、「世界各国・地域の新型コロナ感染者・死者数」という表の「米国」の数字の「前日比」の数字です。つまり、毎日の増加数です。この原稿を書いている3月10日(水曜日)の前日の増加数は4万5277人です。私は感染症の専門家ではありませんが、数字から、感染の状況を把握し、将来を推測しているのです。

筆者が日経新聞で真っ先に確認する数字

米国ではこのところ新規感染者は10万人を切っており減少傾向です。一時は20万人を超えていたのですが、ピークの半分から4分の1以下程度まで落ちています。しかし、とても低い水準とは言えません。米国では人口の約20%は1回以上のワクチン接種を終えたと言われていますが、それでもこの状況なのですから、現地の方は本当に大変です。

また、図表には累計の感染者数も出ています。最近、2900万人を超えました。米国の人口は約3億3000万人ですから、人口の約9%ということになります。感染者は一定の免疫を持っていると考えられます。ワクチン接種者と合わせて人口の30%程度になんらかの免疫がある可能性があります(※)

※厚生労働省HPには、ワクチンに関して「ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社はワクチンを投与した人のほうが、投与していない人よりも、新型コロナウイルス感染症に発症した人が少ないとの結果又は中間結果が得られたと発表しています。臨床試験や接種が始まってから時間があまり経過していないことから、効果の持続期間については明らかになっていません」と記載している。

そうした中で、毎日4万~5万人程度の新規感染者が出ています。その数は減少傾向ですが、収束にはほど遠い状況です。

一方、日本の1日の平均新規感染者数は、このところ1000人前後です。累計感染者数は約44万人で、これは人口のわずか0.4%。米国に比べ、新規及び累計感染者数が格段に少ないのが分かります(にもかかわらず医療機関でベッド不足が叫ばれるのも不思議です)。

日本では医療従事者などへのワクチン接種が始まったばかりです。該当者は470万人程度で、これは人口の約4%にあたります。それに続いて、約3600万人の高齢者への接種が始まりますが、これは人口の約29%。高齢者への接種が終わった段階で人口の33%程度に接種が終わるということです。この高齢者への接種は、なかなか予定通りに進まない懸念もあり、早くても6月くらいまではかかるでしょう。

■第4波は来る、ここ1年、3~4カ月の周期で感染の波がやってきた

日本ではこれまで新型コロナの3つの「波」を経験してきました。第1波は2020年の3月から。4、5月にかけては1回目の緊急事態宣言が出ました。マスク不足やこれまでなかったウイルスへの恐怖もあり、「自粛」は国民に広く徹底されました。

第2波は、夏にやってきました。コロナに少し「慣れ」が生じたことと、緊急事態宣言が出されなかったこともあり、第1波よりも波が高くなりました。

そして、2020年の11月ごろからまた感染者数が増えました。第3波です。12月末には都内で1日の感染者が1000人を超え、年明け早々には2000人を突破。感染爆発の懸念もあり、2021年1月からは11の都府県に対し2回目の緊急事態宣言が出て、首都圏では現在も続いています。

こうした流れを俯瞰すると、3~4カ月に一度「波」がやってきたことが分かります。そして、回を追うごとに感染者数が増えて、波が大きく高くなっています。

現在の第3波の発生した背景を気温低下などの季節要因で説明する専門家もいますが、それでは昨夏の第2波が説明できません。となると、どれだけ新規感染者数を低くしたとしても、この後、第4波が来る確率は高いのではないでしょうか。

ワクチン摂取が30%以上のイスラエルの数字を見ると、ワクチンの効果は高いようですが、接種の進度が遅い日本ではそのレベルには達しそうにありません。また、変異株の流行の懸念も指摘されています。

新聞
写真=iStock.com/mstwin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mstwin

緊急事態宣言下の東京の人々を見ていると、「気持ちの緩み」は明らかです。すでに新規感染者数の減少は底打ち感があり、解除後は感染者数が増えるでしょう。もし、GoToトラベルなどが再び解禁されるとなおさらです。経済の崩壊も回避しなければならず、政府はこの先も感染と経済という非常に難しいバランスを取らなければならなくなります。

■「普段より多い手元流動性を持つことをお勧めします」

冒頭でも述べましたが、飲食や旅行関係、イベント関連など、業績が厳しい業界の方は、しばらくは普段より多い手元流動性を持つことをお勧めします。感染症の専門家ではない私の予想が100%当たるとは限りませんが、保険の意味でも資金を確保しておいたほうがいいでしょう。

政府は、飲食店には「一律6万円」といった大ざっぱな政策を続行せず、固定費などに応じた弾力的な補助をすべきです。一人か二人で営んでいる飲食店では、かえって普段より儲かるので「海外旅行にでも行きたいが、この状況では」というような腹立たしい話も耳にします。

私は昨日、大規模に飲食店を展開する経営者から「大型店の縮小のタイミング」の相談を受けました。飲食店だけでなく、政府はもっときめ細かな対応が必要です。

いずれにしても、この先のわが国の感染者数の推移とワクチンの接種の進行具合を注意深く見ていく必要があります。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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