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「NHKも誤解している」本当の半グレは"ケンカの強いアウトロー"なんかではない

プレジデントオンライン / 2021年3月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Oleg Elkov

「半グレ」とはどういう人たちなのか。龍谷大学嘱託研究員の廣末登さんは「さまざまな形態が十把一絡げに『半グレ』と言われ、実態が見えづらくなっている。NHKスペシャルは半グレを『不良漫画から飛び出してきたアウトロー』のように伝えたが、それは不正確だ」という――。

※本稿は、廣末登『だからヤクザを辞められない 裏社会メルトダウン』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■暴排条例が生んだ「半グレ」

(前編から続く)

暴排政策が浸透し、反社の代表格である暴力団は弱体化、離脱者・離脱希望者が増えてきたことを見てきました。構成員数の減少に反比例するように台頭し、事件報道やマスコミ情報を通じて一般人もよく目にするようになったのが「半グレ」です。

暴力団員とは、組長と盃を交わし、組織に籍を置くことで「登録」された存在です。しかし半グレは、イカした名前の付いたグループはあったとしても個人の匿名性が強く、警察当局もどこまでが半グレかを特定することは困難だと嘆きます。

警察によると、このような「暴力団と同程度の明確な組織性は有しないものの、これに属する者が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行っている、暴力団に準ずる集団」を「準暴力団」と定め、それに準ずる集団と合わせて、実態解明の徹底及び違法行為の取締りの強化に努めているといいます(警察庁「平成30年における組織犯罪の情勢」)。

一方、暴力団離脱後に社会復帰に挫折し、再び非合法活動に手を染めてしまった元暴アウトローも存在します。彼らも半グレと呼ぶべきなのか、別と考えるべきなのか。筆者なりに、一般人以上暴力団未満のあいまいな存在について考察してみました。また、周辺情報と筋からの紹介を集めて、自他ともに半グレと認める人たちの調査を2019年に行いました。

■オレオレ詐欺の火付け役は半グレだった

暴力団の勢力が衰退するとともに、半グレによるとされる事件が目に見えて増えてきました。暴力団というオオカミが暴排条例で身動きが取れなくなり、半グレという野良犬の活動領域が拡がった観があります。とりわけ、オレオレ詐欺の火付け役は半グレでした。まずはこの名称がどう扱われてきたかを見てみましょう。

溝口敦氏の著書『ヤクザ崩壊半グレ勃興(新装版)』(講談社+α文庫2015年)をみると、2000年から2010年頃まで、当時は半グレという言葉はありませんでしたが、昔やんちゃしていた人、イベサー(大学のイベントサークル)加入者などが、暴力団と組んだり、単独で行ったりと、様々な詐欺(出会い系サイトやアダルトサイトの未納金があるといった架空請求詐欺、息子を装い、痴漢などわいせつ事件を起こしたので示談金を払わなければならないといったオレオレ詐欺など)に関与していた様子がうかがえます。

ヤンキーやチーマー、暴走族などの「昔やんちゃしていた元不良」が詐欺集団を形成し、どこかで挫折した普通の若者たち(就職氷河期の被害者であるワーキングプア、ネットカフェ難民、若年ホームレスであり、その中の肉食系が、少なくとも半グレ系と思考や気質を共有)がそれに加わり、やがて「半グレ」とカテゴライズされていった、ということが書いてあります。

■2013年に「半グレ」という用語が登場してきた

2013年3月、警察庁は、この種の集団は、暴力団と同程度の明確な組織性は有しないものの、これに属する者が集団的に、または常習的に暴力的不法行為等を敢行しており、中には暴力団等との密接な関係がうかがわれるものも存在しているとして、「準暴力団」と位置付け、実態解明の徹底、違法行為の取締りの強化及び情報共有の推進という三つの柱からなる対策を推進するよう都道府県警察に対して指示しています(「準暴力団に関する実態解明及び取締りの強化について(通達)」平成25年3月7日付け警察庁丁企分発第26号)。

同年、警察政策学会資料第71号平成25年7月「『これからの安全・安心』のための犯罪対策に関する提言」にも、「半グレ」という用語が登場し、その中で、「注」として「『半グレ』を、暴力団とは距離を置き、堅気とヤクザの中間的な存在である暴走族OBであるとしている」、と溝口敦氏の『暴力団』(新潮新書2011年)における記述が紹介されています。溝口氏の筆による『暴力団』の該当箇所は、後述します。

朝日新聞は、2013年3月20日の朝刊で、半グレとは、「暴走族の元メンバーやその知人らが離合集散しながら、緩やかなネットワークで行動を共にするグループ。『半分グレている』の略などが由来で、暴力団と結びついて犯罪組織化している実態もある」と定義しています。

■2013年頃は半グレといえば暴走族OBだった

さらに、半グレは準暴力団である、と当局が位置付けたことを紹介しています。

「警察庁は『治安を脅かす新たな反社会勢力』として『準暴力団』に位置づけ、全国の警察に活動実態を把握するよう指示した。首都圏を拠点とする暴走族『関東連合』や『怒羅権(ドラゴン)』の元メンバーらのグループが該当する。昨年9月に東京・六本木のクラブで、客の男性が目出し帽の集団に襲われて死亡した事件では、関東連合の元リーダーの男らが警視庁に逮捕された」

溝口氏が想定している当時の半グレは、関東連合OBやドラゴンOB等でした。しかし、暴排条例で暴力団の締め付けが続く現在まで、大小さまざまなグループの半グレが、雨後のタケノコのように、あちこちで勃興しているのです。筆者は、半グレ当事者たちへの取材を通して、2013年頃に「半グレ」と呼ばれた集団と、今日の半グレとでは、その性質や活動において異なってきていると考えるに至りました。

関東連合OBやドラゴンOBという半グレはOBというだけあって、20代後半以上の年齢でした。たとえば前述した朝日新聞の解説にもある、2012年9月の関東連合OBによる六本木クラブ襲撃事件当時、判決で主犯格とされた石元太一は30歳くらいの年齢です。しかし、筆者の見るところ、以降、低年齢化が進んでおり、半グレのハードルも低くなっているように思えます(本人は事件への関与を否定して法廷闘争を続けている)。

■半分どころか全部グレている

筆者が聴取した半グレも、3人は20代前半ですし、就労支援で関わった少年は2人とも10代です。今では、悪い事を集団で行う者を一括して「半グレ」と括る傾向があるようです。東京の民暴の専門家である、東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長の齋藤理英弁護士は、東京商工リサーチのセミナーにおいて、半グレに言及し、警鐘を鳴らしています(2019年12月19日開催「特別情報セミナー反社リスクに備える・与信担当者が知っておきたい反社対策」)。

「半グレは定義が曖昧だが、新たな反社会的勢力と評価して差し支えなく、準暴力団や(暴力団)偽装離脱者などを含む概念だ。半グレの実態は半分どころか全部グレている」

齋藤弁護士の指摘にあるように、半グレは半分どころか全部グレており、暴力団の偽装離脱者までをも含みます。この、安直かつ幅広く犯罪者を網羅した十把一絡げ的な「半グレ」というネーミングが、半グレについて何だかわかりにくい不穏感を作り出しているようです。

■半グレの最大の武器は匿名性のはずだったが…

2019年7月27日に放送された、半グレを追ったNHKスペシャル『半グレ 反社会勢力の実像』もまた、一般の「半グレ観」に大きな影響を与えました。番組には大阪の半グレ2人が、顔も名前も出して登場します。堂々とインタビューにも答え、ルックスも良い。いかにも女性にモテそうな感じです。実際に番組では彼らの「ファン」という女性が地方からわざわざ会いに来る様も紹介されていました。

「高級ブランド品で固めた自身のコーデや毎晩飲み歩く派手な姿を(インスタグラムに)投稿し続ける……『今風』で、不良漫画から飛び出してきたようなアウトローといった印象を視聴者はもったはずだ」(NEWSポストセブン2019年8月17日)

汚いお金が降ってくる
写真=iStock.com/BBuilder
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BBuilder

2人が取り仕切る半グレ集団はアマチュア格闘技集団から派生したグループでした。そのアマチュア格闘技集団の名は「強者」といい、2013年2月に解散しています。

暴力団とは異なり、半グレの最大の武器は匿名性のはずでした。公共の放送で顔を知られたらシノギが出来なくなります。そもそも警察がこのような形での露出を座して眺めているはずはない──そう考えていたら、案の定、2人はその後、大阪府警にそれぞれ恐喝未遂などで逮捕されました。

■「半グレ」は半分カタギなどではなく明らかに犯罪・非行集団

NHKスペシャルは半グレを「不良漫画から飛び出してきたアウトロー」のように伝えたきらいがあります。制作者にはそのような意図はなかったかもしれませんが、番組を見たかなりの人にそういう印象を与えたのは事実です。

しかし、筆者から見てもやはり「半グレ」は、明らかに犯罪・非行集団です。半分カタギで半分犯罪者などはいない。社会的弱者の命金を狙うオレオレ詐欺に代表される特殊詐欺がハーフクライムなら、フルクライムとは余程凶悪な「強の付く」犯罪しか残らなくなってしまいます。路上で殴打した、女性にわいせつなことをしたなどは犯罪の内に入らなくなってしまうかもしれません。

しかし、犯罪に半分も全部もありません。故意または過失によって他人に何らかの損害を与える行為は、不法行為であり全て歴とした犯罪なのです。暴力団の取材を重ねるうち、昨今の裏社会に言及する上では、ますます半グレのことも避けて通れなくなってきました。

「半グレ」という用語を最初に提唱した溝口氏がリアルに描き出したガチな半グレとは異なり、筆者が接したのは現代風ともいえる半グレがほとんどでした(本書は学術的な研究書ではないので、知見などの一般化は意図していません。筆者がインタビューした限定的な範囲で、半グレの実態を紹介し、筆者なりの見解を述べたいと思います)。

■「暴力団に入るメリットがなくなった」

種類を整理する半グレという用語が定着したのは、前述の溝口敦氏が、新書『暴力団』を著し、半グレについて言及した2011年頃からではないかと考えます。溝口氏は、同書の「第六章代替勢力『半グレ集団』とは?」において、次のように解説しています。

「(半グレが暴力団から距離を置く)一番の理由は暴力団に入るメリットがなくなったからです。若い暴力団組員が貧しくなり、格好よくなくなりました。暴走族を惹きつける吸引力をなくしています。暴走族としても、今さら暴力団の組員になっても、先輩の組員がああいう状態では、と二の足を踏みます……暴力団に入ると不利なことばかりですから、わざわざ組員になって、苦労する気になれません。それより暴走族時代のまま、『先輩─後輩』関係を続けていた方が気楽だし、楽しいと考えます。

彼らがやっているシノギは何かというと、たいていのメンバーが振り込め詐欺やヤミ金、貧困ビジネスを手掛け、また解体工事や産廃の運搬業などに従っています。才覚のある者はクラブの雇われ社長をやったり、芸能プロダクションや出会い系サイトを営んだりもしています。こういうシノギに暴力団の後ろ盾がある場合もあるし、ない場合もあります。ですが、ほとんどのメンバーはない方を選びます。下手に暴力団を近づけると、お金を毟られるだけですから、できるだけ近づけたくないのです」

■時代の流れの中で変わりゆく半グレの姿

この本を溝口氏が執筆していたと思われる時期、すなわち、2010年11月には、市川海老蔵暴行事件が西麻布で発生しました。実行犯は関東連合と呼ばれる半グレ集団です。彼らは、東京の六本木に活動拠点を置く、暴走族・関東連合のOBで、そのまま「関東連合」を名乗っていました。この事件以降、半グレも暴力団なの? というような感じで、世間の注目が集まりました。その世間の疑問に答えたのが、溝口敦氏の『暴力団』だったのです。

この半グレ、以降、勢力を伸長させ、様々な問題を起こしています。筆者が2014年に助成金をもらって、暴力団離脱者の研究を行った時も、関西で様々な半グレと袖振り合いました。そして、2018年から19年にかけて、福岡県更生保護就労支援事業所の所長として老若男女の刑余者と接した経験から、時代の流れの中で、半グレが、溝口氏が紹介した当時の姿とは微妙に異なってきているのではないかという疑問を有するに至りました。以下、筆者が感じた現在の半グレにつき、少し稿を割きたいと思います。

■半グレは4パターンに分類できる

先述したように、東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長の齋藤弁護士が言及していますが、現在の「半グレ」の定義は曖昧です。10代の不良も、20代の青年も、40代の元暴アウトロー(社会復帰に失敗した暴力団真正離脱者や計画的な偽装離脱者)も一緒くたにして、半グレと括るのは、ちょっと大雑把すぎるのではないかと考えます。

しかし、カオス化した裏社会を語るに際して、それ以外に何か適切な呼び名があるのか──と言われると、確かに困惑します。ですから、現在、報道などで用いられている半グレという呼称に異議を唱えるつもりはありません。いつの日か、半グレ研究が深耕され、適切な定義、分類がなされることを願っています。

本稿においては、現場の聞き込みで得た一次情報に基づく、筆者なりの見解を述べるに止めます。筆者が様々なフィールドにおいて、反社といわれる人たちと面談し、見聞きした範囲から、半グレとは(世間で半グレと呼ばれている対象は)少なくとも以下の4パターン存在するのではないかと考えました。

(1)関東連合やドラゴンに代表される草創期の半グレの流れ、(2)オレオレ詐欺の実行犯(これは、昨今ではそのまま暴力団の手先となっているケースが多いと聞き及びます)、(3)ウラのシノギをしつつ正業を持つグループ、(4)元暴アウトロー(暴力団を離脱したものの正業に就けず、違法なシノギで食いつなぐ者などです)。

(1)~(4)について以下詳述します。

■暴力団に近い「準暴力団」

(1)関東連合OBやドラゴンOBに代表される草創期の半グレは、暴力団になるのはちょっと面倒くさいが、10代の頃の暴走族やグレン隊の非行集団の仲間関係を引きずり、どちらかというと、暴力団に近い「準暴力団」的な活動(みかじめ料徴収や薬物関係、債権回収など)をシノギとしている集団。先述の溝口敦氏のいう「半グレ」がこれにあたります。なお、このカテゴリーでは、AV業界に進出する者もいました。

人気女優を多数在籍させるプロダクションを立ち上げることで、AV業界で成功を収めています(AV業界のスカウトは、プロダクションよりも上位に位置し、暴力団の縄張り内での活動となるため、暴力団のシノギに直結する)。最近では、性的行為なしに特化した「チャット女優」を使ったエロチャットなどのビジネスも、こうしたプロダクションの収入源となっています。

さらに、チャット利用上、NGとされる行為を客からされた女優の相談を受けた場合、女優を管理するプロダクションの立場を利用して「NG行為」を犯した者(被害者となる)に対して、金員を要求するなどのシノギを行っています(『OCC2019summerNo.6』立花書房)。

■不良がかった若い一般人

(2)オレオレ詐欺などの特殊詐欺に従事する不良がかった若い一般人。カネが欲しく、真っ当に働きたくはないが、暴力団や本格的な半グレにもなりきれない(なりたくない)層。2018年に大量検挙された大阪の「アビス」グループのように年齢的にも若い層です。彼らが暴力団の走狗となってオレオレ詐欺に加担する傾向があります。現在、筆者が支援にあたる保護観察中の青少年の多くが、このパターンです。

ただし、カテゴリー(1)の下で実行部隊として使い捨てにされるケースもあるようで、カテゴリー(1)から「誰かこのシノギやる奴いないか」と言われ、「おれらがやります」と手を挙げるといった具合でシノギの実行を請け負い、犯罪で得たカネの一部を上納します。

もし、そのシノギでしくじったら、トカゲの尻尾切りで、逮捕、即退場となる使い捨てグループです。2019年11月10日の静岡新聞に、「詐欺『受け子』枯渇か外国人や女性、少年に移行警察の包囲網強化で人材、資金不足」という見出しの記事が掲載されました。

この記事によると、静岡県内で発生した特殊詐欺事件で「受け子」と呼ばれる現金やキャッシュカードの受け取り役が最近、首都圏の若者から、被害者の近隣などに住む少年や女性、外国人に移行する傾向が強まっているとのこと。そのような背景には、県警などの包囲網の強化で詐欺グループが人材と資金の不足に陥り、コストの削減を図りながら末端の「受け子」を賄う窮状が透けて見えます。

他県警が逮捕した「受け子」らに行った調査では、半数以上が約束された報酬を受け取っていないと回答しているといい、詐欺グループが末端の「受け子」を軽視している実情が浮き彫りになったという報告がなされています。

■正業を持っている集団と元暴アウトロー

(3)(1)、(2)に比較すると、一見マトモな(?)半グレといえます。正業を持っている集団です。多くが喧嘩上等で腕っぷしの強さを競う観のある地下格闘技のような団体に所属し(あるいは過去に属していた)、ウラとのコネクションを築きやすい位置にいます。

ITベンチャーの若い社長などのボディーガード的な役割から、徐々にITビジネス関係に詳しくなりビットコインなど金融系取引で食っている、あるいはオーナーとして、高額請求傾向のある風俗・飲食店などを経営する小集団を指します。ただし表向きの正業の裏で、カテゴリー(1)の半グレなどと通じ、ビジネスのようにシノギをする集団です。NHKスペシャル『半グレ反社会勢力の実像』に登場した2人は本来これにあたります。

(4)最後の元暴アウトローは、極悪の暴力団並みに、かなり厄介です。近年、暴排条例の影響により、暴力団離脱者は増加傾向にあることを見てきました。しかし、職業社会に復帰して更生する人数は僅少です。前編で述べたように、暴排条例の元暴5年条項で暴力団員等、いわゆる暴力団関係者とみなされ、社会復帰できなかった人が元暴アウトローとなります。行き場のない彼らは、結局、覚せい剤の売買やヤミ金、オレオレ詐欺、下手をするとカテゴリー(1)の半グレの配下となったりして、悪事を重ねることになります。

■十把一絡げにされていることで実態が見えづらくなっている

また、このパターンには偽装離脱により「掟」の外に出された元暴も含まれます。このカテゴリー(4)の半グレ=元暴アウトローがなぜ厄介かというと、それは犯罪のプロ集団である暴力団に所属していたからです。そこで蓄積された人脈や知識を有するがゆえに個人のプロの犯罪者といえます。

現状、こうした性質が異なるグループが、十把一絡げに「半グレ」とカテゴライズされていることで、実態が見えづらくなっているように思います。オレオレ詐欺やみかじめ料徴収、グループでの薬物販売に関係する者たちが「半グレ」だ、「準暴力団」だというのであれば、正しくは(1)(2)(3)のカテゴリーに属する反社の人たちではないでしょうか。

カテゴリー(4)の人たちは、警察では「暴力団員等」という範疇に分類しています。筆者は、このカテゴリー(4)の人たちは反社には該当しますが、若い半グレとは性質が少し異なる存在であると考えています。

繰り返しますが、暴力団現役時代に、犯罪の手練手管を磨き、裏社会にネットワークを築いているので、犯罪のプロ経験者といえる存在だからです。余談ですが、カテゴリー(1)と(3)((2)は未成年で消耗要員の場合が多く、裏社会では有象無象の者たちであり、警察もマークしていません)、およびカテゴリー(4)の人たちは、1990年頃までなら「暴常(暴力常習者)」として、警察にマークされていたような人たちです。

当時の警察には、「マル暴」(暴力団案件を示す)同様に「暴常」のハンコがあったそうですが、1992年の暴力団対策法施行以降は、この「暴常」扱いが姿を消したと、当時を知る警察官の方から聞きました。

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廣末 登(ひろすえ・のぼる)
龍谷大学嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学)
博士(学術)。1970年福岡市生まれ。北九州市立大学社会システム研究科博士後期課程修了。専門は犯罪社会学。青少年の健全な社会化をサポートする家族社会や地域社会の整備が中心テーマ。現在、大学非常勤講師、日本キャリア開発協会のキャリアカウンセラーなどを務める傍ら、「人々の経験を書き残す者」として執筆活動を続けている。著書に『若者はなぜヤクザになったのか』(ハーベスト社)、『ヤクザになる理由』(新潮新書)、『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』(新潮文庫)『ヤクザと介護――暴力団離脱者たちの研究』(角川新書)など。

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(龍谷大学嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学) 廣末 登)

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