「意識高い系ばかりで息苦しい」若者がクラブハウスから大量退去する理由
プレジデントオンライン / 2021年3月27日 11時15分
國武 那汰莉さん/立教大学文学部3年生。
河内 杏南さん/早稲田大学文化構想学部2年生。
齊藤 龍星くん/早稲田大学政治経済学部2年生。
高杉 真由香さん/慶應義塾大学総合政策学部2年生。
山本 祥子さん(仮名)/慶應義塾大学法学部1年生。
鈴木 かのんさん/桜美林大学ビジネスマネジメント学群2年生。
加藤 耀くん/東京理科大学理工学部2年生。
坂後 裕菜さん/上智大学総合グローバル学部1年生。
福永 怜生くん/早稲田大学商学部5年生。
竹田 綾香さん(仮名)/津田塾大学学芸学部3年生。
矢追 耕太郎くん/早稲田大学政治経済学部2年生。
■「使ったのは3日だけ」
【原田】皆にはトレンド研究の活動の中で、Clubhouseを使ってもらったよね。だから、皆一度は利用しているわけだけど、普段の生活の中ではどうなのかな?
【齊藤】僕は最初は友達と始めて、ルームをつくって6人ぐらいでよくしゃべっていました。でも最近はClubhousを使う友達が減ってきたので、夜にラジオ代わりに流していることが多いです。
【山本】私は、招待されてから最初の1週間ぐらいは毎日使っていました。有名人のルームに入ったり、友達5~6人としゃべったり。でも最近はあまり使っていなくて、たまに面白そうな話題を見つけたら参加するぐらいです。
【鈴木】私が使ったのは3日間だけで、その間に有名人のルームをのぞいたぐらいです。今は興味をなくして、通知もオフにしています。
【福永】僕は1回だけ。社会人の友達が「慣れない環境で寂しい」って言っていたので、週末にクローズドのルームを立ち上げて皆でエンタメの話なんかをしました。でも、それ以外ではほとんど使っていません。
【矢追】僕は流行に乗ろうと思ってダウンロードはしましたが、安田大サーカスのクロちゃんや、メンタリストのDaiGoのルームをのぞいたぐらいで、後はほとんど使ってないです。僕の友達には使っている人があまりいなくて、Clubhouseを知らない子も多いですね。
■芸能人が減った、飽きた……
【河内】私はもともと人と話すのが苦手なので、使ったことはあるけど会話に参加したことはないです。芸能人のおしゃべりを聞くぐらいで。でも、今はルームを立ち上げる人も減ってきているし、私自身も以前ほど興味が持てなくなりました。
【竹田】私は、Clubhouseが話題になり始めた1月後半ごろに初めて使いました。今も、芸能人やビジネス系インフルエンサーのルームをよくのぞいています。周りの友達も割と使っていて、ルームをつくって就活の話をしたりしているみたいです。
【高杉】今も結構使っています。私は帰国子女なんですが、そのコミュニティーの中では使い続けている人が多いですね。でも、そうでない友達のほとんどは「飽きた」って言ってやめちゃいました。
【原田】使い続けている若者もいるけど、全体としては下火になってきているようだね。最初は有名人や友達と会話できると思って始めた人も、今は参加する有名人や友達が減ってきてつまらなくなったと。ほかにも使わなくなった理由があれば教えてほしいな。
■意識高い系が集まりすぎて息苦しい
【鈴木】私は、どぎつい話をすることで有名な人のルームを見ていたんですが、あれって参加者の名前が表示されますよね。私がこんな話題に参加していることも、もしかして原田さんとか色々な人に見られてるのかなと思っちゃって。それで抵抗感を持つようになりました。
【河内】そもそも、インスタやTwitterと違って始めるのに手間がかかりますよね。招待制だし電話番号を登録しなきゃいけないし。あと、芸能人が減ったのは、Clubhouseで話したことが週刊誌に載ったりしたからかも。そうなるとしゃべりづらくなりますよね。
【矢追】普段会えないような起業家の話を聞けるのは面白いけど、意識高い系の人が集まりすぎちゃって、普通の大学生には使いづらい気がします。ただ友達と話したいだけだったらLINEやZoomで十分だし。
【山本】Clubhouseって、招待されてルームに入った時点でゴールみたいな気がします。最初は皆がそこを目指して盛り上がったけど、今はもうたくさんの人が入れているからレア感もないですよね。
【高杉】全体のユーザー数はまだ多いみたいだし、私も使い続けていますが、若者は「飽きた」って言ってる人がほとんど。なのにユーザー数があまり減らないのは、退会手続きが面倒なせいもあると思うんですよ。実際は、アプリを入れたままにしているだけの若者も多いと思います。
■流行っているものに乗りたくない
【原田】一度使ったきりっていう人の意見も聞きたいな。どうして普段の生活の中では使わないの?
【國武】知らない人の話をわざわざ生で聞きたいっていう気持ちがわかりません。思想の話題なら本を読めばいいし、話を聞きたければインスタライブやラジオもあるし、好きな起業家の発信を追いかけるのもTwitterで十分だし。私の場合、「皆がやるならやりたくない」っていうもともとの性格もありますけど(笑)。
【加藤】僕も同じで、流行っているものには乗りたくないタイプ。そもそも友達がいないので、なかなかClubhouseに入れなくて、原田さんに招待されてやっと入った感じなんですよ。あと、オンタイムでしか聞けないっていう時間的な束縛があるところも苦手。それならいつでも聞けるYouTubeのほうがいいです。
■「初めから定着しないと直感した」ワケ
【坂後】私は、この流行は一時で終わるだろうから、それなら無理に使おうとしなくてもいいかなって思いました。招待制は珍しいけど、インスタほど私たちの日常には定着しないだろうなって。それに、仕組みも好きになれないです。しゃべったことがそのままダダ漏れになるのも、自分の友達の中で互いに知らない人同士がつながるのも嫌。自分の交友関係が皆に知られちゃうのって、プライバシーの観点で怖いです。
【矢追】Clubhouseが定着しないだろうっていうのは、僕も何回か使ってみて思いました。ルームをつくるだけでも、テーマを決めて友達と予定を合わせてっていう手間がかかるから、面倒くさくて何回もやる気になれないですよね。インスタは好きな時に発信できるのに。
【鈴木】それもあるし、私の周りだとClubhouseは意識の高い子だけがやっている印象です。友達とも「意識高い系と大人がやってるだけだよね」って話しています。
【國武】日本で流行り始めた頃、海外の人たちが「偏見を感じる話題が多い」「集まるのは意識高い系の人ばかり」って言っているのを目にして、今もそういうSNSなんだという印象を持っています。
【加藤】僕の印象だと、Clubhouseはカースト上位層のものって感じです。友達や知り合いの招待がないと入れないから、陽キャ(陽気なキャラクター)しか参加できない。それで、招待されない僕みたいな陰キャ(陰気なキャラクター)の間では、本物からの逃げ場として「Crabhouse」が流行りました。本物のほうの使い方が分からなかった人がつくったゲームで、内容はルームの中にカニが出てきて時々しゃべるだけ(笑)。でも、本物と同じようにiOSユーザーだけが使えて、かつ皆が知らない無名のゲームだから、いち早くダウンロードすることで優越感を覚える陰キャが多かったみたいです。
■おばさん、おじさんの乱入に困惑
【原田】自分でルームをつくれる、知らない人の会話も聞けてつながれるっていう、Clubhouseの利点とされている点が逆にデメリットに思えているわけか。加えて、時間的な束縛は確かに若い子は嫌だろうね。僕みたいなラジオ世代はオンタイムに慣れているけど、そこは大きな違いだろうな。ちなみに、Clubhouseで嫌な思いをしたり、困ったりしたことはある?
【高杉】帰国子女系のルームで「将来、子どもを海外と国内のどちらで育てたいか」というお題で話していたら、突然40代ぐらいの女性にお説教されたことがあります。「日本の意識を変えるのは帰国子女なんだから、皆、政治家になりなさい」って。困惑しちゃいました。
【國武】ルームで話していた時、おじさんが入ってきたことがありました。急に長い話を始めたから「この人何なんだろう、若者に自分の知識をひけらかしたいのかな」って思ったし、何だか怖かったです。
■1カ月足らずで急速に興味を失う
【原田】空気を読めないおじさん、おばさんの乱入に戸惑ったんだね。しかも発言が長いと。僕も含めて、発言したがる中年って話が長い人が多い(笑)。若者と話したい気持ちはわかる気もするけど、説教や武勇伝はNGだろうな。若者が安心して使うには、ルームに年齢制限をかけられる仕組みや匿名性が必要なのかもしれないね。
Clubhouseに対しては、続けている人が多いアラフォー世代に比べ、若者たちは急速に、始めてから1カ月足らずで興味を失っているようです。最初に飛びついた新しもの好きの若者も、招待されて参加した時点で達成感を得てしまい、その後はあまり活用していない様子。
同じ若者でも、特定の話題に関心が高い層や、帰国子女のコミュニティーなどでは使われ続けているようですが、いわゆる普通の大学生からは「面倒」「他のSNSのほうが便利」「知らない人の話を聞く必要性を感じない」といった声が多数。友達と使うにしても、わざわざ予定を合わせなければならないのがネックになっています。ユーザーが急速に増えた分、若者が「自分たちにとっての使いづらさ」に気づくのもまた早かったと言えるでしょう。この新しいSNSがどんな戦略をもって生き残りを図るのか、今後も注目していきます。
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マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村洋子)
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