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「目指すは現代の毛沢東」習近平の野望を止められるのは日本だけだ

プレジデントオンライン / 2021年3月20日 11時15分

米国、日本、インド、オーストラリアの4カ国協議体であるクアッド(Quad)は12日(現地時間)、初の首脳会議をオンラインで行った。シドニーから参加するオーストラリアのスコット・モリソン首相(左)。 - 写真=EPA/時事通信フォト

■中国の脅威に対抗するための「クアッドの精神」

3月12日、日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4カ国の首脳がオンラインで会議を行った。この4カ国による首脳会議は初めてで、その枠組みは「4」を意味する「クアッド」(Quad)と呼ばれる。インド太平洋地域で影響力を強め、国際秩序を脅かす中国に対抗するところにクアッドの目的がある。

4カ国は中国の脅威に対抗するため、「クアッドの精神」と題した共同声明を発表した。共同声明には名指しは避けたものの、中国を警戒する海洋安全保障協力が示されている。

その主な内容は次の3点である。

①威圧に屈せずに自由で開かれ地域のために尽力する
②東シナ海と南シナ海での海洋秩序への挑戦に対抗するための海洋安全保障協力を促進する
③インド太平洋地域に対する新型コロナワクチンの普及に力を合わせる

この3点のほか、4カ国首脳は北朝鮮による拉致問題の解決や、国軍を抑えてミャンマーを民主主義国家に戻すことについても確認し合った。

■日米は「2プラス2」を開き、中国への対応を確認

4日後の16日には、日本とアメリカの政府が外務・防衛担当閣僚による「日米安全保障協議委員会(2プラス2)」を都内で開き、「自由で開かれたインド太平洋」を目指して中国の脅威に協力して対応することを確認し合った。

共同文書も発表した。クアッドの共同声明とは違い、東・南シナ海で強引に海洋進出を続ける中国を名指しで厳しく批判した。なかでも中国海警局の船舶に武器使用の条件を定めた海警法に対しては、「深い懸念」を表明した。

日本とアメリカの両政府による2プラス2は、2019年4月にワシントンで開かれて以来のことだ。アメリカの新政権の発足から2カ月足らずという異例のスピードで、しかもバイデン政権の発足後、初めての開催である。

日本からは茂木敏允外相、岸信夫防衛相、アメリカからはブリンケン国務長官、オースティン国防長官が出席し、1時間半にわたって会合が持たれた。茂木氏は東大卒のエリート政治家、岸氏は安倍晋三前首相の実弟で、いずれも政界の実力者である。

■バイデン政権は日本を特別な存在とみている

クアッドの首脳会議も2プラス2の会合もアメリカの呼びかけで実現した。バイデン政権は世界の国々に脅威を与える中国の習近平(シー・チンピン)政権にストップをかける考えがあるのだろう。

クアッド首脳会議の前にはバイデン大統領が菅義偉首相の4月の訪米を決め、即座に公表した。菅首相は大統領就任後、対面による初の会談相手となる。アメリカの国務長官、ブリンケン氏と国防長官、オースティン氏も就任後初の外遊先として日本を選び、16日の2プラス2に出席した。

アメリカのバイデン政権は日本を特別な存在とみている。これは日本にとって日米同盟を強化するための絶好の機会であり、アメリカと協力して軍事力で脅威を増す中国に対し、「ノー」を突き付けたい。

■いまや日本とアメリカとの関係は、切っても切れない

アメリカ側にも打算はある。バイデン政権の最重要課題は対中国だ。バイデン政権は中国との長期的な戦略的競争を日本との同盟を基盤に有利に進めようとしている。いまや日本とアメリカとの関係は、切っても切れないのである。

バイデン大統領はクアッドの4カ国首脳会談で「『自由で開かれたインド太平洋』は不可欠である。アメリカはこの地域の安定を目指し、全ての同盟国やパートナーとの協力を強く約束する」と述べた。

2014年の太平洋展開時の米軍駆逐艦
写真=iStock.com/Benny Winslow
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Benny Winslow

バイデン氏は大統領選挙の前から対中戦略の大きな柱として同盟国との協力を前面に打ち出すことを構想していた。特に中国の習近平政権と長期的に競争していくために地理的にも歴史的にも中国との関係が深い、日本との協力関係を重視しようとしている。日本はインド太平洋地域での駐留アメリカ軍の最大拠点で、経済力では中国に世界第2位の地位を奪い取られたものの、世界第3位を保っている。

こうした日本との連携を強化することで、アメリカの同盟国や友好国に安心感を与えることも狙っている。

■中国・習近平政権の根底にある歪んだ精神

それにしても、中国の行動には目に余るものがある。

沖縄県の尖閣諸島周辺海域での中国海警局船の日本領海侵入、東・南シナ海での軍事的行動、台湾に対する威嚇、香港からの民主派の強硬的一掃。習近平政権は、地域の安全と平和を脅かしている。国際社会を蔑ろにする一連の行動はどこから生まれるのだろうか。

習近平国家主席(中国共産党総書記)は「党の指導や中国の主権と安全、それに党と国の利益が損なわれるようなことがあれば、どこまでも強く闘う」とことあるごとにその闘争の意志をあらわにしてきた。

党や国の幹部、官僚に対してもこの方針を強く伝え、幹部らは服従し、先回りして習近平方針を忖度(そんたく)している。その結果、国際的信用の喪失など意にも介せずに他者をねじ伏せる一連の異常行動が生まれてくるのだと、沙鴎一歩は考えている。この闘争の路線こそが、中国・習近平政権の根底にある歪んだ精神なのである。

■習近平氏は主席制を復活させ、主席に就くことを狙っている

今年7月、中国共産党は党創設100年を迎える。2049年には毛沢東(党主席)が中華人民共和国の建国を宣言した1949年から100年となる。

毛沢東の像
写真=iStock.com/tanukiphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tanukiphoto

習近平氏はこの「2つの100年」を強く意識し、今年は中国共産党の悲願の「小康社会」の達成を宣言し、習近平氏自身と共産党への求心力強化を図る。そして2049年の建国100年までにアメリカと肩を並べる、いやアメリカを追い越す中国社会の実現を目指している。

その間、習近平氏個人は毛沢東時代の主席制(1982年に廃止)を復活させ、主席に就くことを狙っている。実にしたたかな男だ。

今後、習近平政権の中国は日本やアメリカなどの国際社会とますます対立し、その行動は激しさを増すだろう。そうさせないためにも、日本とアメリカ、それにオーストラリア、インドなどが強く結び付き、中国に対抗していくべきである。このクアッドの枠組みこそが、国際社会の未来を築き上げるだろう。

■「4か国首脳が問題を確認し合った意義は大きい」と読売社説

3月14日付の読売新聞の社説は「日米豪印会談 地域の安定へ首脳合意生かせ」との見出しを付け、こう書き出す。

「民主主義や法の支配などの価値観を共有する日米豪印4か国の首脳が、世界が直面している問題に取り組むことを確認した意義は大きい」
「安全保障だけでなく、民生分野も含め、国際社会の課題解決に向けて協力してもらいたい」

強硬な中国に対抗するには、価値観が同じ国同士が枠組みを作って協力することが重要である。

読売社説は指摘する。

「4首脳は共同声明をまとめ、ワクチン支援と気候変動、重要・新興技術という3分野で、作業部会を設置することを打ち出した」
「ワクチンを巡る外交戦は激しさを増している。中国は、アジアやアフリカへの自国産ワクチンの援助に余念がない。世界のワクチンの6割を生産しているというインドも、途上国を支援している」

世界でワクチン不足が懸念されるなか、中国は自国製のワクチンの接種を勧めている。いわゆる、ワクチン外交である。アフリカなどの発展途上国に廉価で買い取らせ、恩を売るのだろう。中国製ワクチンはどのくらいの規模の臨床試験(治験)が実施されたかが不明で、その安全性と有効性に疑問の声が上っている。中国からワクチン提供の申し出を受けた国は注意するべきだ。

■日本の選手は「中国ワクチン」の接種対象にはならない

中国はオリンピック委員会にもワクチンの提供を申し出ている。

IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が3月11日のオンライン形式での総会で明らかにしたところによると、東京五輪と2022年の北京冬季五輪への参加選手のために、新型コロナの中国製ワクチンをIOCが購入する。中国五輪委員会の申し出だ。

これに対し、東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は「事前に話は全く聞いていない。ワクチンの接種は日本政府がやっていることなので、組織委員会としてはコメントする立場にない」と話した。

一方、丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当相は「IOC側からの事前の調整はなかった」と話したうえで、「中国製のワクチンが承認された国において判断することだと思う。日本で中国の企業が承認申請をしているかどうか把握していない」と語り、日本の選手らは接種の対象にはならないとの認識を示した。

さらに丸川氏は「東京大会はワクチンを接種していなくても安心して参加と受け入れをできるようにするため、総合的な感染症対策をとることにしている。ワクチンの接種を前提としないという原則は変わらない」と述べ、中国のワクチン外交を牽制した。

丸川氏の発言は筋が通っている。評価できる。それだけに、中国のワクチン外交に乗っているIOCには慎重になってほしい、と思う。

■朝日社説も「台頭著しい中国にどう向き合うか」と指摘

3月17日付の朝日新聞の社説は「安倍氏から菅氏へ、トランプ氏からバイデン氏へ、日米のトップが代わって初の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が東京都内で開かれた」と書き出し、「最大の課題は、軍事的にも経済的にも台頭著しい中国にどう向き合うかである」と指摘する。

「日米2+2 対決より共存の土台」という見出しを気にしながらこの朝日社説を読み進めていくと、思ったとおりである。

せっかく盛り上がってきた日本とアメリカによる「中国封じ込め」に対し、水を差すような書き方をする。

■すでに日本は「中国との最前線」に置かれている

「気がかりなのは、共同発表に『日本は国家の防衛を強固なものとし、日米同盟を更に強化するために能力を向上させる』と明記されたことだ。日本の軍事的な役割を強化し、コロナ禍で逼迫(ひっぱく)する財政のさらなる悪化にもつながりかねない」

中国が怖いのは、アメリカの世界最強の軍事力である。日本が強権的な中国に対抗するには、このアメリカの軍事力を利用して中国に無謀な軍事行動を思いとどまらせ、軍事的圧力、すなわち抑止力を効かせることだ。その意味で朝日社説は腰が引けている。

朝日社説の「軍事的にも経済的にも台頭著しい中国にどう向き合うか」との指摘は何だったのか。意味がない。

最後に朝日社説は書く。

「米軍普天間飛行場の辺野古移設を『唯一の解決策』と繰り返しながら、日米地位協定の見直しには言及がなかった。これでは『同盟強化』を唱えても、幅広い国民の理解は得られまい。ましてや、日本が米国の対中戦略にのみ込まれ、米中の軍事対立の最前線に置かれるようなことがあってはならない」

日本が「対中戦略にのみ込まれる」のではなく、アメリカと協力して中国に対峙(たいじ)するのだ。中国は、日本の領海である尖閣諸島周辺の海域に海警船を進め、領海侵入を何度も繰り返している。すでに日本は「最前線」に置かれている。この現実を、理想論を振りかざすことが好きな朝日社説はどう見ているのか。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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