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「運動不足で毎年5万人死亡」通勤体力激減をどう補えばいいか

プレジデントオンライン / 2021年3月23日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/staticnak1983

1年に及ぶコロナ禍の在宅勤務のため運動不足で体力・筋力が低下している人が増えている。厚生労働省によれば、運動不足による国内の死亡者数は、喫煙、高血圧に次ぐ第3位でその数は年間約5万人に及ぶ。スポーツライターの酒井政人さんは「自宅で簡単な筋トレや一定のリズム運動であるランニング・ウォーキングなどをすることで心身の調子を整えることができる」という――。

■コロナ禍の在宅勤務の運動不足で体力・筋力が低下する人が増加

緊急事態宣言が3月21日に全面解除されたが、コロナ禍で変貌した日本人の生活は元には戻りそうもない。政府は引き続き「不要不急の外出・移動自粛」(散歩など生活や健康の維持に必要な外出は除く)を呼びかけている。新規感染者は近頃また増える傾向にあるため、日々の生活でも外出する機会は以前より少ないままとなる人が多いだろう。

多くの企業は「出勤者数の7割削減」を目指して、テレワークを導入。打ち合わせなどもオンラインが中心となり、ビジネスシーンでの移動は大幅に減少した。

テレワークを歓迎する人がいる一方、“通勤体力激減”を実感している人もいる。電車通勤の場合、自宅から駅までと駅から会社までの往復(徒歩、自転車など)。それから乗り換えを含めて駅構内の移動もある。駅構内では階段を昇降する機会があり、車内は座れないことも少なくない。出勤するだけでも“適度な運動”をしていることになる。

しかし、それがなくなることで運動量は減少。筋肉量が低下すると、以下のような“デフレスパイラル”を引き起こす可能性がある。

筋力低下→姿勢の悪化→血流が悪くなる→体内の疲労物質が滞る→気分が落ち込みやすくなる

運動不足は心身に不調をきたすリスクとなる。また筋力が低下すると疲れやすくなり、血流が悪くなると頭痛などの原因にもなる。テレワークで脳を酷使しても身体が疲れていないと、心身のバランスが崩れて、睡眠障害につながる恐れもある。

■20代でも運動をしないと50代並に筋肉量が低下することも

デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームが2016年に国際医学誌「ジャーナル・オブ・リハビリテーション・メディシン」に発表した内容によれば、2週間という短い期間でも下半身をまったく動かさなくなると、脚筋力が若者(平均年齢23歳)で28%、高齢者(同68歳)で23%低下。筋肉量は若者で485g、高齢者では250g減少したという。

実験後、参加者は週3~4回の自転車トレーニングを6週間続けたが、高齢者は失った筋力を取り戻すのが難しいことも判明した。失った筋肉をもとに戻すのに他世代の3倍以上の時間が必要になると考えたほうがいいようだ。

若い世代も油断はならない。筋肉量は年齢を重ねるにつれて減少する傾向にあるが、20代でも運動をしないと、50代並に低下することも十分にある(逆に50~60代でも筋肉量のアップは可能)。

厚生労働省によれば、運動不足による国内の死亡者数は、喫煙、高血圧に次ぐ第3位でその数は年間約5万人に及ぶ。同省の資料では「運動不足が原因で毎年5万人が死亡している」との記述がある(2019年「身体活動・運動を通じた健康増進のための厚生労働省の取組み」内の「2007年の我が国における危険因子に関連する非感染症疾病と外因による死亡数」というデータ)。運動習慣が認知症やがんの発症率にも関与しているという。在宅勤務が多い人ほど、「運動」することを考えていくべきだろう。

【図表】運動不足が原因で毎年5万人が死亡している
出所=厚生労働省

■鍛えるべきは、上半身よりも筋肉の衰えやすい下半身

最近はトレーニング系の動画が人気を集めている。種類は多彩で、「筋力アップ」「体脂肪燃焼」「お腹痩せ」「美尻」など目的に応じたエクササイズがある。マンションでもできる跳ばない運動やトップアスリートが教えてくれるチャンネルもあり、ジムに行かないとできなかったトレーニングが自宅でもできるような時代になった。

運動
写真=iStock.com/staticnak1983
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/staticnak1983

自宅で動画を観ながらトレーニングに励むのもいいが、ここで「筋肉」についての基本を知っておきたい。

筋肉は上半身より下半身のほうが衰えやすい。上半身は自宅にいても動かす機会は多いが、下半身は意識しなければ自宅内で動かす機会は少ない。また筋肉には速筋と遅筋の2種類に大きく分けられており、特に速筋は加齢の影響を受けて減少しやすい。将来、歩行困難や寝たきりにならないためには、若いうちに下半身の“筋肉貯金”をしておくことが有効だ。

では、下半身の筋力アップを図るには何をしたらいいのか。お尻、太腿、ふくらはぎなど普段から大きな筋肉を意識するだけでも基礎代謝量が上がり、衰えにくくなる。

■特別な器具はいらない、テレビを見ながらでもできる

自宅で簡単にできる筋トレの基本メニューとしては、スクワットとランジがいいだろう。その方法を簡単に説明しよう。

両脚を肩幅に開いて行うノーマル・スクワットは、背中を丸めず、膝を爪先より前に出さないように注意したい。10~20回を3セット行う。太腿前部をメインにお尻、太腿後部、ふくらはぎの筋肉を鍛えることができる。なお少し広めのスタンスで行うワイド・スクワットだとお尻の筋肉を重点的に刺激することができる。

ランジは両手を腰のあたりで固定。片脚を一歩前に大きく踏み出して、前腿が地面と平行になるくらいまで下げる。そして、ゆっくりと戻す。右脚も行う。この動作を5~10回繰り返す。3セット行う。太腿後部をメインにお尻、太腿前部、ふくらはぎの筋肉を鍛えることができる。なお両手にダンベルを持つと負荷が高くなる。

スクワットとランジは場所を取らずに、特別な器具もいらない。テレビを見ながらでもできるので、ぜひ実践していただきたい。

■軽いウォーキングも効果的。両脚、尻、腹、背中の筋肉を使う

ウォーキングも悪くない。歩くという行為は、両脚だけでなく、お尻やお腹、背中など全身の筋肉を使っている。さらにメンタル的な効果も得られるようだ。

運動
※写真はイメージです(写真=iStock.com/RoBeDeRo)

アメリカのスタンフォード大学ウッズ環境研究所の2015年の調査で、自然の中を90分間歩いた人は、うつに関連する脳の部位の活動が減少したという。また、アメリカのクラークソン大学の研究によれば65歳以上の被験者が1日わずか6分間歩くことを数日間続けただけで、活力低下、疲労感、うつ状態などの感情を改善することができたという。しかも、速く歩くほど、被験者の活力の感覚は増加し、疲労の感覚は減少したそうだ。

ウォーキングよりもランニングを行うとさらに運動強度が高くなる。しかも、近年は毎日走らなくても、週に1回や月に1回程度のランニングでも健康になれることがわかっている。

オーストラリアのビクトリア大学の研究チームは約23万人の参加者を5年半から35年の期間にわたって追跡。ランニングと死亡リスクとの統計的関連性を調査した。

その結果、1週間に50分以下のランニングでも頻繁に走る人と同等のメリットが得られることがわかったのだ。さらに月1回程度しか走らない人でも、走る習慣のない人と比較して、早期死亡のリスクが27%減少したことを発見している。その理由は様々だが、高血圧、高コレステロール、肥満、循環器系疾患、糖尿病などのリスクが減ることが考えられるという。

■リズミカルな運動が人を明るくポジティブな気持ちに

筆者はフリーランスとして20年以上活動している。コロナ禍以前からリモートワークには慣れている。自宅では仕事に集中しづらいため、日中は近くのカフェにいることが多い。なお自宅では21時頃には就寝して、妻子が寝静まった深夜から早朝にかけて、仕事をしたり、テレビを独り占めしたりしている。

リモートワークになって、うまく気分転換ができずに、ストレスを抱えている人も多いだろう。健康な人間が自宅にこもっているのは心身ともに良くない。適度に外出して、運動をすることで“好循環”を呼び込みたい。

運動により筋力がアップするだけでなく、脳の血流が良くなるので、脳が活性化され、思考力や記憶力も高まる。また、ランニングやウォーキングなどの一定のリズム運動をすることで、幸せホルモンといわれるセロトニンが増加することも報告されている。リズミカルな運動が、人を明るくポジティブな気持ちにさせるのだ。こんなご時世だからこそ、自分の身体と心を整えて、健やかに過ごせるようにしていきたい。

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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)

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(スポーツライター 酒井 政人)

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