嵐、TOKIO、SMAPに続き…「V6解散」はジャニーズ総解散の前触れである
プレジデントオンライン / 2021年3月23日 15時15分
■嵐、TOKIOに続きV6までも…
そして、ジャニーズ事務所には誰もいなくなった。
25年も続いてきたV6が今年の11月1日をもって解散することを発表した。
「嵐」が事実上の解散を発表(昨年末で活動休止)、TOKIOも山口達也の逮捕で活動を休止しており、長瀬智也が退社することが決まっている。
2019年にジャニー喜多川社長が亡くなってからは、中居正広、元関ジャニ∞の錦戸亮、元NEWSの手越祐也などが次々に事務所を離れてしまった。
そしてV6もとなると、ジャニーズ事務所は存続していけるのだろうか。私のような反ジャニ・ウォッチャーでも心配になる。
「嵐」の解散のきっかけは大野智の「嵐を辞めたい」というひと言だったが、V6のきっかけは森田剛(42)が2019年暮れごろに、退所を申し出たことからだったという。
それから年末まで三宅健(41)を中心に話し合いをしてきて、「6人でなければV6ではない」というごく当たり前の結論になり、解散が決まったと週刊文春(3/25日号)が報じている。
V6はジャニー喜多川に選ばれた6人組だが、坂本昌行(49)、長野博(48)、イノッチこと井ノ原快彦(44)の年長組を「トニセン」、森田、三宅、岡田准一(40)が「カミセン」と2つのユニットからできていた。
デビュー曲『MUSIC FOR THE PEOPLE』をリリースしたのは1995年、一世を風靡(ふうび)した光GENJIが解散した翌日に「お披露目会見」を六本木のヴェルファーレで行ったという。
■全員バク転ができ、ダンスはジャニーズ随一
週刊文春で当時を知る芸能記者がこう話す。
「フジテレビが独占放送していた『バレーボールワールドカップ』のイメージキャラクターとして結成され、後に同企画から嵐やNEWSもデビューしています。最年長の坂本と最年少の岡田は9歳年が離れた異色のグループで、トニセンとカミセンに分けたのはジャニーさんのアイディア。二手に分かれて活動できるようにと考えたようですが、初期のトニセンは完全に若手三人の引き立て役でした」
森田と三宅はジュニア時代から「剛健コンビ」として人気を博していたそうで、将来を悲観した坂本などは、サラリーマンに転じたこともあったという。
結成前にバレーボールの企画で呼ばれた坂本が、コーチの仕事と勘違いしていたという「逸話」も残っているそうだ。
だが、運動神経は抜群で、メンバー全員バク転ができ、ダンスの腕前はジャニーズ随一だそうである。
デビューした当時はパッとしなかったが、2年後の97年にTBSで『学校へ行こう!』が始まると、瞬く間にスターアイドルになっていった。
以来四半世紀近く、6人が一人も欠けることなくやってきた。だが、坂本や長野はもうすぐ50歳になる。
来年還暦になる松田聖子もアイドルを自認しているようだから、自分がそう思い込めばいいのかもしれないが。
■SMAP、嵐には遠く及ばないのになぜ続いたか
私は、V6が続いたのは、ジャニーズらしからぬ「お行儀の悪いグループ」だったからではないかと思う。
ジャニーズには不文律があるそうだ。「結婚するのは1グループ1人まで」がそれだが、V6は4人が妻帯者で、妻はすべて女優である。
このグループだけ結婚のハードルが低かったのは、SMAPや嵐のような国民的グループにならなかったから、事務所側も見て見ぬふりをしていたのだろう。
シングルが20数年間連続でオリコントップ10入りしたという記録はあるが、NHK紅白歌合戦に出場したのはわずか3回だけ。ファンクラブの会員数や音楽ソフトの売り上げによる事務所への貢献度はSMAPや嵐とは比べものにならない。
それに岡田や森田のように俳優としての活躍が多くなったため、V6というイメージが薄れていったということもあるのだろう。
しかし、このメンバー、写真週刊誌への貢献度では、他のグループをはるかに凌駕しているのである。
最初に所帯を持ったのは“イノッチ”で、2007年に女優の瀬戸朝香と結婚している。結婚後は仕事をセーブして夫を支え、文春によれば、「藤島ジュリー景子社長とも直に電話で話す間柄。(中略)陰で夫に尽くし、インスタでは手料理をアップ、時に事務所幹部とも話をする姿がキムタクの妻・工藤静香を彷彿とさせ、“第二の静香”と言う人もいます」(井ノ原家の知人)
■週刊誌の的となったカミセン2人の「恋の修羅場」
二組目が白石美帆と結婚した長野。芸能界きっての食通といわれる長野の胃袋を、栄養士の資格を持った白石がギュツと掴んだようだ。
ここまでは平穏だったが、岡田から森田になると、写真誌を欣喜雀躍させる「恋の修羅場」が次々に展開されたのだ。
99年に岡田が優香と密会していたのは路上の車の中だった。車中での「愛の行為」は4時間に及び、その一部始終をフライデーに“激写”されてしまったのである。
「取材に気づいた岡田は慌てて車を降りて記者に詰め寄り、『事務所にバレたら大阪に帰らないといけなくなる』と泣きついたが、記事が止まることはなかった。この報道がきっかけで二人は破局したと言われています」(女性誌記者)
当時はまだフライデーも強気が貫ける時代だった。ジャニーズだけではなく、バーニングプロともやりあっていた。今では、バーター企画を出せば、見逃してくれるかもしれないが。
懲りない岡田は、08年には蒼井優との半同棲が報じられるが、その後破局したといわれる。
そして11年12月末に週刊文春が報じた「泥沼不倫」が大きな話題になるのである。相手は女優の宮崎あおい(35)で、当時は高岡蒼佑と結婚していたが、岡田との恋に溺れ、一緒に温泉旅行へも行っていた。
■仕事が減っても…「ドロ沼不倫」を乗り越え
そのことを宮崎の携帯メールで知った高岡が所属している事務所の社長に話し、社長が文春に告発したのである。宮崎は記事が出る前日に離婚したが、アイドルと人気女優の不倫は世に衝撃を与えた。岡田は高岡に謝罪し、「芸能界を引退します」とまでいった。
宮崎へのダメージは大きく、彼女が出演していたCMは激減したという。だがその後2人は堂々とデートをするようになった。
フライデー(2016年4/8・15号)が「V6岡田准一と宮崎あおい『ドロ沼不倫を乗り越え同棲愛』」と報じている。
離婚から4年が過ぎ、宮崎はNHKの朝ドラ『あさが来た』で達者な演技を見せて復活。岡田は15年に「日本アカデミー賞」で史上初の最優秀主演男優賞と最優秀助演男優賞をW受賞して、役者としても大きく飛躍した。
フライデーが目撃したのは3月中旬の平日、朝10時。共に暮らすマンションから出てきた2人は、マスクと帽子をかぶった岡田が運転するポルシェで近くのスーパーへ行き、ベーカリーでパンを買ってマンションへ仲良く戻る姿をカメラに収めている。
翌年の週刊文春(2017年3/2号)が「ジャニーズ史上初となる“略奪愛”は実現するか」と報じ、この年の末にめでたく結婚した。恋多かった2人は、今やすっかり子煩悩な父と母になっているそうだ。
■「今はちょっと『アイドルです』と言いづらい部分はある」
4組目が森田。02年に彼は7歳年下で未成年だった上戸彩との「お泊まり愛」を報じられ、その後、AV女優と結婚するといわれたが破局している。
もっとも文春によれば、事務所が心配していたのは森田が腕に入れていたタトゥーだったというが。
そして、V6解散のきっかけになったのが森田と宮沢りえ(47)との結婚だった。いい年をしてアイドルといわれることに違和感を覚えていたようだ。
当時の雑誌のインタビューで、「今はちょっと『アイドルです』とは言いづらい部分はありますね。(中略)ライブのときもスイッチを入れないとなかなかその感覚が出てこない」(女性セブン4/1日号)
30代半ばの男ならそう感じて当然だろう。森田は舞台に魅力を感じ、中でも演出家の蜷川幸雄に鍛えられた。
りえと知り合ったきっかけは『ビニールの城』(唐十郎が劇団第七病棟に書き下ろし1985年に初演された作品を蜷川幸雄が演出した)で共演したことだった。
■森田を変えた宮沢りえの生き方
彼女を「一瞬で場の空気を変えられる」すごい女優だと、才能と存在感を仰ぎ見ていたが、次第にりえの「転ばない人生はつまらない」という考え方、さまざまなことにチャレンジしていく生き方に感化され、「もっと自由な感覚で、自由に演技していきたい」(同)と考えるようになっていったそうだ。
2人が交際している当時、熱烈な森田のファンからりえが激しいバッシングを受けたといわれる。だが、アイドル時代の彼女の人気、恋愛遍歴の多さ、俳優としての素質のどれをとっても、りえのほうが上である。
森田はりえの子どもを可愛がり、ファッションも変わったという。ジャニーズ退所は時間の問題だった。
「りえさんにとっては、幾度も身を焦がすような恋愛を経て、ようやく掴んだ“安らげる年下の恋人”。森田さんとの子供がほしいと、一時は妊活もしていたほどです。そんな妻の愛情も、森田さんを新しいステージへと押し上げたのかもしれません」(芸能関係者=同)
■いったん緩んだ緊張感を戻すのは容易ではない
嵐の活動休止に至る過程とV6はよく似ているが、違うのは、いい出した大野智が、事務所の強い引き留めで退所を踏みとどまったことだった。
それは「国民的グループとして事務所に莫大な利益をもたらし、東京五輪など国家的プロジェクトにかかわる重大な仕事を担っていた彼らは、自分たちでは進退を決められないほど大きな存在になっていた」(ワイドショー芸能デスク=週刊文春)からだというが、結局は自分の人生を自分で変えようという強い意思がなかっただけではないのか。
TOKIOも長瀬が退所するが、残る3人が株式会社TOKIOをつくってグループ名を存続させるという。
だが嵐もTOKIOも再始動する可能性は低いだろう。いったん緩んだ緊張感を戻すのは容易ではないからだ。
それに、それぞれが別の道を歩み始めている。俳優としての評価が高い二宮和也に先日、女の子が生まれた。
櫻井翔はジャーナリストとしてやっていきたいという意志が強いらしい。
櫻井がニューズウィーク日本版(3/16日号)で、「東日本大震災から10年 いま伝えたい『3・11の記憶』」という長編のルポを書いていた。
彼は『news zero』(日本テレビ系)のキャスターとして東日本大震災の被災地の取材を長年続けてきたという。なかなかの力作である。
先夜、友人から聞いたが、櫻井は作家の辺見庸が好きだとテレビで発言したそうだ。辺見の『もの食う人びと』を読んでファンになったという。そのおかげで、辺見の本が売れていると聞いている。
NEWSの加藤シゲアキ(33)は『オルタネート』(新潮社)で「第164回直木三十五賞」にノミネートされた。私も読んだが、ストーリーテラーとしての才能は間違いなくある。惜しくも受賞は逃したが、これからが楽しみである。
■ジャニー氏の死去で「ネバーランド」は消えつつある
嵐もTOKIOも森田や三宅たちと同じ「不惑」の中年男である。もはや自分をアイドルなんていうのは恥ずかしいだろう。
SMAPを解散し、退所した草彅剛や香取慎吾、稲垣吾郎たちは生き生きと自分たちのやりたいことをやって輝いている。
草彅は映画『ミッドナイトスワン』での演技が評価され、「第44回日本アカデミー賞」の最優秀主演男優賞を受賞した。
事務所に残った木村拓哉はドラマで頑張ってはいるが、中居正広は存在感が日に日に薄れていっている。中居は昨年3月に退所したが、もっと早く出ればよかったと後悔しているのではないか。
予想されたことだが、草彅たちが外で活躍する姿を見ていたジャニーズのアイドルたちが、次々に退所をいい出して、歯止めがかからない。
以前にも書いたが、ジャニー喜多川はピーターパンに出てくる「ネバーランド」をつくろうとしたのだと思う。
そこにいればいくつになっても年を取らない。だが現実は、たのきんトリオもSMAPも、TOKIOも、嵐も、V6も老いていく。
ジャニー喜多川が一昨年7月に亡くなってから、所属しているアイドルたちは、自分たちも年を取っていることにようやく気がついたのだろう。
時の流れは残酷だ。「ネバーランド」から一歩外に出ると、そこは「浦島太郎」の世界である。
草彅たち3人や、櫻井翔、二宮和也、岡田准一、加藤シゲアキなど、外の世界で活躍できる才能を持った人間たちはいいだろうが、多くのアイドルたちは外へ出るための修養も訓練もされていないように思う。
元アイドルとして、残りの人生を生きていくのは大変だろうと思わざるを得ない。
■ジャニーズJr.は「22歳定年制度」が始まる
遅まきながら、ジャニーズ事務所は1月16日、ジャニーズJr.に「定年制度」を設けることを発表した。
満22歳になって最初の3月31日までに、Jr.本人とジャニーズ事務所側が話し合い、合意に至らない場合はJr.としての活動を終了することになるというのである。この制度は23年3月31日から適用されるそうだ。
ジャニーズJr.というのは、ジャニーズに所属する研修生のことで、ダンスのレッスンや先輩たちのバックダンサーなどを経験しながら、CDデビューを目指していて、現在は東京と大阪に200人ほどのJr.がいるといわれている。
22歳というのは、大学生が卒業して社会人になる年齢から導き出したのであろう。22歳という年齢でいいのか、すでに22歳を超えているタレントたちはどうするのかという批判もあるようだが、私はいいと思う。
30を過ぎて、「お前は才能がないから出て行け」といわれたら、路頭に迷う人間は多いはずだ。22歳なら、大学へ入るなり技能を身に付けるなり、やり直しができる年齢である。
■帝国もいよいよ落城が近い
嵐が稼いだ途方もないカネがあるのだから、定年になる人間にいくばくかの「退職金」を出すことを考えたらどうか。第二の人生を見つけるまでの「路銀」としてである。
現在、SixTONESやSnow Manといった人気グループは出てきているが、SMAPや嵐のような国民的アイドルグループを再び作り出すのは至難であろう。
歌手の世界では、山口百恵を最後に、国民的大スターは生れていないといわれる。
ジャニーズ帝国はジャニー喜多川が亡くなったことで、一つの時代を終えたのである。
あと10年も経ったら、ジャニーズ事務所主催で、「アイドル懐メロ大会」でもNHKでやったらどうだろう。
還暦近くのキムタクや50歳近い櫻井翔たちが歌って踊る生中継。視聴率を稼げること間違いない。
戯言はこれまでにして、栄華を誇ったジャニーズ帝国もいよいよ落城が近いと思うと、一抹の寂しさも感じている。(文中敬称略)
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ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
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(ジャーナリスト 元木 昌彦)
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