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「世界56位」日本が幸福度ランキングで毎年惨敗する根本原因

プレジデントオンライン / 2021年3月26日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Delmaine Donson

国連が3月19日に発表した「世界幸福度ランキング」2021年版では、フィンランドが4年連続で1位となり、2位デンマーク、3位スイス、4位アイスランド、5位オランダと続いた。日本は前年から4つ順位を上げたものの56位にとどまった。『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA、前野隆司慶應義塾大学教授との共著)を著した作家の星渉氏は、「世界と広がる幸福度格差には、コロナよりももっと別の要因が影響している」と指摘する──。

■「幸福度」へのコロナの影響は限定的だった?

国連が世界各国の幸福度のランキングを示した「World Happiness Report 2021」を3月19日に発表しました。日本は前年から4つ順位を上げたものの56位。首位は4年連続でフィンランドとなりました。

今回注目すべき点は、報告書の著者の1人、ジョン・ヘリウェル氏が「驚くべきことに、各国の人が自分の生活について評価した結果、平均としては幸福度が低下していなかった」と述べている点でしょう。

新型コロナウイルス感染症により、多くの人が日常生活にさまざまな制約を強いられてきました。そのため、「幸福度は下がるのではないか」と広く予想された中で、これは意外な指摘であると受け止められました。

報告では、新型コロナウイルスが人々の幸福度に対し、思ったほど大きな影響を与えなかった理由として、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、全員に影響する共通の外的脅威だと大勢が見なし、それにより連帯感や仲間意識が高まったことが、理由の1つと考えられる」と指摘しています。

■新型コロナで連帯感、人々のつながりが向上した上位国

これは、4年連続首位となったフィンランドを分析してみるとよくわかります。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、人口約550万人のフィンランドは新型コロナウイルス感染症による死者数は805人と、欧州諸国の大半の半分以下に抑え込むことができています(日本の死者数は8869人=3月22日現在)。

「World Happiness Report 2021」では、フィンランドは「パンデミックの最中、人命と生活を守るのに役立つ、他者との相互の信頼関係に関する複数の指標で非常に高い順位を示した」と指摘しています。ここから、新型コロナウイルスの幸福度への悪影響より、コロナ禍(か)で得た「他者との連帯感や仲間意識、つながり」のほうが、幸福度に大きなプラスの影響を与えたと理解できます。

■2021年世界幸福度ランキングTOP10
1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 スイス
4位 アイスランド
5位 オランダ
6位 ノルウェー
7位 スウェーデン
8位 ルクセンブルク
9位 ニュージーランド
10位 オーストリア

■「自由度」と「寛容さ」が足を引っ張る日本

「World Happiness Report 2021」による世界幸福度ランキングは、主に次の6つの項目のアンケート調査を中心に選出されています。

1.人口あたりGDP
2.社会的支援(ソーシャルサポート、困ったときに頼ることができる人がいるか)
3.健康寿命
4.人生の選択の自由度
5.寛容(かんよう)さ(過去1カ月の間にチャリティーなど寄付をしたかなど)
6.腐敗の認識(不満、悲しみ、怒りの少なさ、社会、政府の腐敗が蔓延(まんえん)していないか)

上位10カ国のうち9カ国が欧州であることから、調査項目の特性、文化的背景や国家の性格など欧州の国が上位に入りやすい傾向があるとの指摘もあります。また、たとえば日本人はアンケート調査で自己評価を低めに申告しがちで、この世界幸福度ランキングがどこまで正確なのか議論の余地もあります。

その中でも確実にいえることがあります。私たちの幸福度には、人生で何をするかを選択できる「自由度」と、相手を受け入れて人とのつながりを作る「寛容さ」が影響する──これは、心理学や幸福学などのさまざまな研究から間違いないところです。

「World Happiness Report 2021」の調査で、日本は調査6項目のうち、その「自由度」と「寛容さ」が上位10カ国と比べ低いことがわかりました。

日本が世界と幸福度格差を埋めるためのポイントは、「自由度」と「寛容さ」にあると科学的にもいえるでしょう。

■「選択できる実感」と「人とのつながり」が人の幸福度を高める

昨今、日本では度々「女性を軽視する発言」や「女性の社会活躍」が課題として取り上げられています。また、貧富の格差から学業や就業において選択の幅が限られるなどの現象も起きています。「人生で選択できる自由度」は、世界と比較するとまだまだ低いことがうかがえます。

科学的にも、「人は『自分で選ぶことができている』と実感すると幸福度が高まる」ことがわかっていますから、この部分が世界との幸福度格差を埋めるうえで日本の課題であることは間違いないところでしょう。

また、75年という長期にわたり「人の幸福度」について研究した「ハーバードメン研究」(ハーバード大学)では、人の幸福度に最も影響を与えるのは「温かな人間関係である」と結論づけています。

この研究では、被験者268人を75年間追跡調査して、幸福度が高かった上位10%と、そうではない下位10%を比較しました。その結果、明らかになった両者の最大の違いが「温かい人間関係」を人生で築くことができたかどうかだったのです。

さらに「温かい人間関係を築くことができた」トップ10%の人は、下位10%の人と比較して専門分野で成功した人が3倍多く、年収も高いという結果も出ています(『99.9%は幸せの素人』より)。

温かな人間関係を築くうえで必要となるのが、自分と意見が違う人たち、立場が異なる人たちの意見を聞き、どれだけ理解を示すことができるかという「寛容さ」です。

今回の調査においてこの数値が低かった日本は、科学的な知見からも、世界との幸福度格差を解消していくうえでも、そして、日本人の幸福度そのものを高めるうえでも、「他人への寛容さ」が社会の課題であるといえるでしょう。

■コロナ禍で広がる日本国内での「幸福度格差」

「World Happiness Report 2021」では、世界的に新型コロナウイルス感染症の幸福度への影響が限定的であったとされていますが、日本国内に目を向けると「国内での幸福度格差」が広がっていることをご存じでしょうか。

『99.9%は幸せの素人』の共著者である前野隆司慶應義塾大学教授が、1回目の緊急事態宣言が出されていた2020年のゴールデンウィーク前後に473人のビジネスパーソンを対象に「幸福度」に関するアンケート調査を実施しています(「みんなで幸せでい続ける経営研究会」調査。参考記事はこちら)。

コロナ禍において「幸福度は上がりましたか?」という質問に42.5%の人が「上がった」と回答しているのに対し、「変わらない(39.1%)」「下がった(18.4%)」を合わせると57.5%。まさに幸福度の分断が始まっていました。

「幸福度が高まった」とする人が挙げたその要因は、テレワークになって家族との時間が増えたとか、人とのつながりを実感したというものでした。一方、幸福度が下がった人たちは、その要因として、「孤独感を感じる」など、人とのつながりを実感できなくなったことを挙げています。

やはりここでも、日本人の幸福度を高めるキーワードに「人とのつながり」が出てきます。

赤いハートを持つ男女の手元
写真=iStock.com/Dobino
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dobino

■「人とのつながり」を実感できる2021年の日本へ

人生の選択の自由度は社会課題でもあり、私たち一人ひとりの力でどうこうできるものではないかもしれません。しかし、日常で「人とのつながり」を大切にすることならば、私たちの努力でも十分可能です。

先に紹介した「ハーバードメン研究」においても、人の幸福度に最も影響を与えるのは「温かい人間関係」だと結論づけています。

それでは、温かい人間関係=良好な人間関係とは、いったいどのようにすれば築くことができるのでしょうか。実はこれも科学的に明らかになっています。

温かい人間関係を築くには、「人を愛する力」が最も大きな影響を与えます。これは、精神論ではなく科学的な話です。「人を愛する力」がある人は、相手に興味を持ち、相手の話を聞くようになる。つまりは、相手を受け入れやすくなるのです。

「World Happiness Report 2021」においても日本が海外と差をつけられていた「寛容さ」につながる力だといえます。

そして、「人を愛する力」の磨き方も科学的に明らかになっています。人を愛する力は「幸せホルモン」といわれる「オキシトシン」の影響を受けます、つまりは、「オキシトシン」が分泌される行動を取ると自然に人を愛する力が身につき、最終的に寛容さも持てるようになって、良好な人間関係が築かれるのです。

■オキシトシンが分泌される3つのアクションプラン

以下、良好な人間関係を作るべく、オキシトシンが分泌されるアクションプランを3つ紹介します。

①スキンシップ

人と直接触れ合うことでオキシトシンが分泌されることがわかっています。もちろん、コロナ禍においてスキンシップには注意が必要ですが、家族などとハグをしたり、マッサージをしたりすることはオキシトシンの分泌に効果的です。ペットとのスキンシップでもオキシトシンが分泌されるので、ペットを飼うことも幸福度が高まるといえるでしょう。

②心が温まる映画を観る

人間の脳には「ミラーニューロン」という神経細胞があります。視覚から得た情報を体験するので、心温まる映画を観ることでオキシトシンが分泌されることがわかっています。

③1日5善をする(1日1善は効果がない)

人に親切な行為をするとオキシトシンが分泌されることがわかっています。しかし、1日1回程度の親切では脳に記憶が残らず、幸福度に影響がないことがわかっています(米カリフォルニア大学の研究)。1日1善よりも1週間に1回の1日5善が科学的に有効です。

星 渉、前野隆司『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)
星 渉、前野隆司『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)

コロナ禍でも、日本の幸福度ランキングは、わずかではありますが上昇しました。世界との幸福度格差では「自由度」と「寛容さ」に課題はあるものの、言い方を変えれば「それだけ伸(の)び代(しろ)がある」ともいえます。

私たち日本人一人ひとりが生きやすい社会をつくるために、自分の幸福度を高めるためのアクションから始める。それが最終的に、世界との幸福度格差を縮めることになるのではないでしょうか。

本記事で紹介した内容以外にも、拙著『99.9%は幸せの素人』で科学的に自分の幸福度を高める方法を紹介しています。こちらもぜひご参照いただき、読者の皆様のお力になれたら嬉しく思います。

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星 渉(ほし・わたる)
作家、ビジネスコンサルタント
1983年仙台市生まれ。大手企業で働いていたが岩手県で東日本大震災に被災。生死を問われる経験を経て「自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め、独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学び始める。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」ことを中心に置いた独自のビジネス手法を構築。日本や海外で数千人規模の講演会を実施し、グローバルに「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」ための活動をしている。『神メンタル』『神トーーク』(KADOKAWA)はシリーズ累計20万部突破のベストセラー。最新刊は慶應義塾大学の前野隆司教授との共著『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)。

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(作家、ビジネスコンサルタント 星 渉)

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