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「今世紀最大のウソだ」なぜ中国はアメリカの指摘に異様に反発するのか

プレジデントオンライン / 2021年3月23日 18時15分

2021年3月18日、米アラスカ州アンカレジで行われた米中外交トップ会談に出席するサリバン大統領補佐官(右端)、ブリンケン国務長官(右から2人目)、中国の楊潔篪共産党政治局員(左から2人目)、王毅外相(左端) - 写真=AFP/時事通信フォト

■「アメリカのような外国の政府に干渉する権利はない」

アメリカのアラスカ州アンカレジで行われた外交トップ同士による米中会談が、2日間の日程をこなして3月19日に終わった。米バイデン政権発足後初めての米中会談にもかかわらず、冒頭から米中双方がお互いを批判し、「新冷戦」と指摘される米中関係の対立を国際社会に見せつけた。

アメリカは新疆(しんきょう)ウイグル自治区やチベット自治区、香港、台湾の問題、それにサイバー攻撃の被害を取り上げ、中国を追及した。

中国は新疆ウイグル地区で少数民族に対するジェノサイド(集団殺害)が行われたとするアメリカの批判に「今世紀最大のウソだ」と強く反発した。香港での民主派排除の選挙制度の見直しについては「あくまでも中国の内政だ。アメリカのような外国の政府に干渉する権利はない」と主張した。台湾への軍事的威嚇などに対しては「台湾は中国の一部で、中国政府に妥協や譲歩の余地はない」と訴え、アメリカに台湾への武器売却の停止を要求した。

■米中それぞれ2分ずつのはずが、1時間以上の応酬に

米中会談には、アメリカからブリンケン国務長官とサリバン国家安全保障担当大統領補佐官、中国からは楊潔篪(ヤン・チエチー)共産党政治局員と王毅(ワン・イー)国務委員兼外相がそれぞれ出席した。米中が課題や懸案事項について考え方を述べ合うのが会談の目的で、冒頭の発言はそれぞれ2分ずつの予定だった。だが、冒頭発言は大幅に延長され、1時間以上の応酬が続いた。

それにしても「ウソ」「内政干渉」「妥協はしない」など中国側の発言はなんとも乱暴で挑発的である。

中国は香港や台湾などに関して「核心的利益」と呼び、「中国の限界線を越えることを試みるな」との発言も繰り返した。さらに「中国政府はアメリカに挑戦するつもりはない。しかし、アメリカは中国が世界に与える影響力には向き合うべきだ」とも力説した。

実に勝手極まる中国の主張である。

■なぜ中国はここまで過激な発言をするのか

沙鴎一歩はこれまで、習近平(シー・チンピン)政権が世界の平和と安定、そして国際秩序を大きく脅かしている、と強調してきた。米中会談での中国側の発言を見ただけでもその強権さや強引さがよく分かるだろう。

それではなぜ、中国はここまで過激な発言をするのか。今年7月に「中国共産創設100年」を迎える中国は、アメリカに屈しない姿を中国・大経済圏の一帯一路に関係する国々にアピールしたいのだろう。

アラスカでの米中会談は2日間で3回開かれた。気候変動と感染症の流行など米中の利益が重なる分野では、お互いの協力を検討することが確認された。台湾や香港などの議論は、中国の強い反発でどこまでも平行線をたどった。この平行線こそ、まさに新冷戦の緊張状態から生まれた対立であり、その責任は一方的に自国の言い分を主張する中国にある。

米中貿易摩擦
写真=iStock.com/da-kuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/da-kuk

■アメリカ単独では経済的にも軍事的にも中国には対抗できない

米中会談で激しい批判の応酬が続いたことについて、日本の外務省などでは「想定の範囲内だ」と受け止める一方で、「アメリカから新冷戦を認め、その宣言をしたようなものだ。今後の米中はますます対立が深刻化する」と中国のアピール作戦に乗せられたとの悲観的な見方も出ている。

沙鴎一歩は、日本は米中関係が進む方向に常に注意を払う必要があると考える。日本とアメリカの最大の共通課題は「対中国」に絡む安全保障である。たとえば、中国海警局の船舶は、沖縄・尖閣諸島周辺の領海海域への侵犯を繰り返している。日本は対中国の最前線に置かれている。

バイデン政権は今回の中国との会談に先立ち、外務・防衛担当閣僚による「2プラス2(日米安全保障協議委員会)」を開き、日本との連帯感を強めた。もはやアメリカだけでは経済的にも軍事的にも中国には対抗できなくなっている。日本はアメリカに頼られている。これからも日米同盟を基軸とした日米の協力が欠かせない。

さらに3月20日の記事「 『目指すは現代の毛沢東』習近平の野望を止められるのは日本だけだ」でも指摘したように、日米豪印4カ国の枠組みである「クアッド」を駆使して強靭な「中国包囲網」を築き上げ、周辺の国々に圧力を加える中国に対抗すべきである。

■朝日社説はお得意の「喧嘩両成敗論」を持ち出す

3月21日付の朝日新聞の社説は「米中協議 健全な共存描く対話を」との見出しを掲げてこう指摘する。

「米バイデン政権発足後に初めて開かれた米国と中国の高官協議である。報道陣の眼前で米国は中国の『強要』や『脅威』を非難し、中国は米国の『非礼』や『偽善』をあげつらった」

「強要」と「脅威」に「非礼」と「偽善」。米中の応酬の激しさはよく分かるが、悪いのは中国である。一党独裁によって政治・軍事体制を築き上げ、世界第2位の経済力を得た中国の覇権主義に大きな問題がある。それにもかかわらず、朝日社説はお得意の歪んだ「喧嘩両成敗論」を持ち出し、こうも指摘する。

「双方とも自国向けに強硬さを演出する思惑もあっただろう」
「米側は、政権交代後の弱腰を見せたくない。中国も7月に共産党の建党100年を迎える。ただ、協議冒頭こそ異例だったが、米側の報道では、非公開協議は比較的冷静だったという」

そのうえで朝日社説は「今世紀の国際情勢を占う両国関係を安定化させるために、できる限り対話を広げ、意思疎通の努力を続けてもらいたい」と主張する。朝日社説は中国の覇権主義や自国中心の考え方を是とし、アメリカに「頭を下げろ」とでも言いたいのだろうか。朝日社説の主張は理解できない。

■「米国の中国の変化を促す戦略は理にかなっている」と読売社説

3月21日付の読売新聞の社説は「米国が築いた自由や法の支配を基にする国際システムに対し、中国が力の行使を厭(いと)わず、改変を試みる例は枚挙にいとまがない」と指摘したうえで、こう主張する。

「バイデン政権は『米中関係の前進には中国がまず行動を変えねばならない』という立場だ。対話のための対話は行わず、同盟国との連携を深めながら、中国の変化を促す戦略は理にかなっている」

沙鴎一歩はこの読売社説の主張に賛成する。中国は国際社会の倫理に背き、強権的である。繰り返すが、間違っているのは中国だ。バイデン政権が日本などの同盟国と協力して中国対応を進めていくべきである。

読売社説は書く。

「中国側は共産党体制の優位を宣伝し、香港や台湾などの『内政問題』に米国は介入すべきでないと恫喝した。気候変動や感染症対策といった地球規模の課題を持ち出すことで『大国間の協調』に重点を置こうとしているのだろう」
「だが、中国が信頼に足る行動をとらなければ、協力関係は築けない。中国は自らの言動が国際社会の警戒心を増幅させている現実を直視し、ルールや国際約束の順守へと舵(かじ)を切るべきだ」

確かに、米中会談では気候変動など利益が重なる分野では米中協力の確認ができたというが、中国はアメリカを利用して国際社会に自らの正しさを示したいのだろう。バイデン政権は中国を甘く見るべきではない。ここは何よりも中国を国際ルールに従わせることが重要である。

最後に読売社説は訴える。

「日本などの同盟国は、米中対立の長期化に備えて、中国の軍拡に対する抑止力強化や、先端技術で中国に依存しない体制作りを急ぐ必要がある。米中に軍事的緊張の激化や不測の衝突を回避するよう、自制も求めねばなるまい」

米中の対立は長く続くだろう。世界各国が中国に依存しないことが大切で、米中の軍事衝突を避けるために細心の注意を払うことも欠かせない。

■「評価すべきは、中国に改善を迫ったことだ」と産経社説

「『世界の懸念』を突き付けた」との見出しを付けた産経新聞の社説(3月21日付)は「中国の身勝手な振る舞いに対し、単独でなく同盟国と緊密に連携し厳しい態度で臨む。バイデン米政権の対中政策の進め方が明確に示された」と書き出し、次のように指摘する。

「評価すべきは、米側がこの会談に向け、同盟国との対中連携を積み上げ、『世界の懸念』として中国に改善を迫ったことだ」

産経社説が指摘するように同盟各国が力を合わせて、中国を国際ルールの内側に導くことが求められる。それにはできる限り多くの国の協力がいる。時間もかかる。しかし、決して諦めてはならない。

さらに産経社説は指摘する。

「アラスカを開催地に選び、米側が訪中せず、中国側をワシントンに招かない突き放した対応は、安易に中国との対話に転じないとのメッセージとなったはずだ」
「ただし、中国がこれで、態度を改めようとするはずもない。肝心なのは、今回の会談の内容を同盟国と共有し、次の一手へさらなる連携を重ねることだ」

中国には「突き放した対応」も必要だ。そのうえで「次の一手」に進めることだ。

産経社説は最後に日本の立場と対応に言及する。

「菅義偉首相の来月の訪米は、バイデン大統領にとって初の対面の首脳会談となる。米政権が進める対中政策のパートナーとして、日本にも覚悟と行動が必要だ。特に人権問題で、日本はより明確な批判を中国に突き付けるべきだ」

沙鴎一歩はこの産経社説の主張にも賛成する。日本は「覚悟」と「行動」によって中国に対し、毅然(きぜん)と対応すべきなのである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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