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「コロナでガクチカがない」と悩む就活生がアピールポイントを見つける簡単な方法

プレジデントオンライン / 2021年3月29日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

新型コロナウイルスの影響で、大学生はこれまでのような学生生活を送れなかった。就職活動で「学生時代に力を入れたこと=ガクチカ」を聞かれた時、何をアピールすればいいのか。千葉商科大学国際教養学部の常見陽平准教授は「コロナ禍に柔軟に対応して学生生活を送ったこと自体がアピールポイントになるのではないか」という――。

■就職氷河期再来? かつてない不思議な就職戦線

「就職氷河期再来」

そんな言葉をメディア関係者や読者は期待しているのではないかと感じる瞬間がある。大学生の就活についてコメントを求められる際、記者は学生が右往左往し、苦労している様子を想定して質問してくる。

なんせ、新型コロナウイルスショックである。世界は昨年から、感染症の爆発的拡大と経済的打撃の深刻化という未曽有の歴史的危機に覆われている。この状況下において、大学生の就活も深刻化していると予想するのは、普通の感覚のようにも見える。ただ、新型コロナウイルスショックにより就職氷河期が再来したというのは、必ずしも正しくない。2022年卒の就活戦線の実態をレポートしつつ、いくつか論点をあげてみよう。

新卒採用市場の実態をみてみよう。2010年代半ばから続いていた売り手市場が一段落したのは事実である。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2021年卒)」によると2021年卒の大卒求人倍率は1.53倍で、2020年卒の1.83倍と比較して、0.3ポイント低下した。人事担当者、大学教職員、人材ビジネス関係者など新卒採用に関わる人は、売り手市場か否かの基準を1.6倍だと捉えている。その線を割ってはいる。ただ、バブル崩壊の後や、リーマンショック後の頃ほどは悪化しなかった。

■コロナ禍でも企業の採用意欲は根強い

厚生労働省と文部科学省による「令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(2月1日現在)」においても、2月1日時点での大学生の就職内定率は89.5%(前年同期比2.8ポイント低下)となった。5年ぶりに90%を割ったとセンセーショナルに報じられたが、リーマンショック後は70%台後半だったことを考えると、まだ当時ほどは悪化していないと言える。

12月1日時点では82.2%で前年同期比4.9ポイント低下だったことを考えると、対前年分のダウン分が解消されてきているともいえる。新型コロナウイルスショックにより求人が減少しただけでなく、学生、企業ともに以前のように自由に活動できなかったこと、緊急事態宣言もあり就活・採用の例年のピーク期が後ろにずれたことも影響していると考えられる。

なお、この調査は62校の大学に対して所定の調査対象学生を抽出した後、電話・面接等の方法により、性別、就職希望の有無、内定状況等の調査を実施するものである。国公立大学が約4割を占め、大学全体の実態よりも高く出る傾向があることを覚えておこう。

就活面接
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

就職情報会社各社が予想する採用動向調査でも2021年卒と比較して、2022年卒は採用数が減少傾向ではあるが、完全に採用環境が悪化したとも言い切れない。リクルートワークス研究所の「採用見通し調査(新卒:2022年卒)によると、大学・大学院卒採用は「減る」11.6%の一方で「増える」も7.7%。「わからない」企業も19.7%→26.1%と増加している。若者が減っていくこともあり、根強い採用意欲の強さを感じる。

■ITに強い学生は業界問わず引く手あまた

もっとも、新型コロナウイルスショックの影響が大きい業界では、採用活動を凍結したり、採用数を大幅に減らす動きがあるのは昨年度と同様だ。航空会社、鉄道会社、旅行代理店、宿泊施設などがそうだ。これらの業界は学生にとって長年人気業界であり続けてきた。現在の就活生は、訪日観光客が今後も増えていくことを予想し、学部や進路を選択したものも多いと想像される。

ただ、企業の決算についても、すべての業界・企業が新型コロナウイルスショックで悪化しているわけではない。むしろ、特需に沸く企業もある。業界・企業別の採用動向は、この業界別の業績のメリハリが反映しているともいえる。業界をこえて、ITに強い学生は引く手あまたである。

景気が悪くなると、求人を減らすという単純な論理ではない。成長分野を担う人材は獲得したい。既存の社員には早期退職などを促しつつも、成長分野を担う人材は獲得したいのだ。

ここ数日、ニュースとなったのは、三菱UFJ銀行、大和証券などにおいて、ITなど高いスキルをもった求職者に新卒から年収1000万円、月給40万円などを支給する取り組みだ。他社でもここ数年、高い能力をもつ人、高いパフォーマンスをあげた人にこれまでの新卒の年収をはるかにこえる報酬を支給する動きがある。外資系企業を意識した取り組みだと言えるだろう。

■「就職氷河期再来」と言えるほど求人が悪化しているわけではない

内定状況を見てみよう。就職情報会社各社が発表する2月1日、3月1日時点での内定率はここ数年で最も高い。たとえば、リクルートキャリア社の就職みらい研究所の「就職プロセス調査(2022年卒)『2021年3月1日時点 内定状況』」においては、17.6%(前年+1.8ポイント)となり、2013年卒の調査開始以来最高となった。もちろん、この時点での内定状況は、求人が回復したかどうかとしての指標としては必ずしも参考にならない。単に先食いしているだけだとも言えるからだ。同レポートでも、エリアにおいては関東、業界においては情報通信業が突出しており、地域や業界別に詳しく見なくてはならないデータではある。とはいえ、新卒に関する採用熱を感じる数字ではある。

このように、たしかに、新型コロナウイルスショックの影響はあるものの、就職氷河期再来と断じるほど求人が悪化しているわけではない。現実を直視しよう。

■オンライン面接をどうするかという問題

2021年卒の大きなトピックスといえば、なんと言っても新型コロナウイルスショックだ。これにより求人、就活時期などが混乱しただけでなく、方式も大きく変わった。特に企業の採用広報活動においても、選考においてもオンライン化が進んだ。

実は、オンライン化は新型コロナウイルスショック前から、特に地方の学生から求められていた。首都圏の学生においても、23区外の大学に通学する学生、郊外に居住している学生にとっては移動の時間とコストがかかっていた。YouTubeなどと親和性が高い世代が就活生になったこともあり、オンライン会社説明会や面接の取り組みはコロナ前からも行われていた。後述するように、学生側も企業側もコミュニケーションに難を感じる部分などはあるものの、もともとオンライン就活を求める声はあったし、すでに採用広報活動でも、選考においてもコロナ前から一部導入されていたことを確認しておきたい。

経団連による「新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、2021年卒の採用活動において、Webによる企業説明会を実施した企業は88.4%、最終面接までWeb活用した企業は63.8%だった。

一方、企業側にも戸惑いはある。「学生の企業理解や動機形成にWebは、評価できない」47.1%、「Web面接は対面面接より評価が難しい」62.7%、「Web面接は通信環境が問題」75.8%など、オンライン就活には課題があることもまた事実である。

2022年卒も企業側も学生側もオンライン対応はマストである。ともに、いかに対応するか。オンライン就活が本格化してから「2期目」となるが、企業側でもまだまだ慣れていないケースが散見される。学生はデジタル・ネイティブ世代ではあるが、就活生は毎年、入れ替わるので、必ずしも面接は慣れていない。

2020年9月29日~10月5日に実施した採用動向調査(千葉商科大学)
出所=千葉商科大学

企業側は何に注目するのだろうか。勤務先の千葉商科大学が、企業639社に対して2020年9月29日~10月5日に実施した採用動向調査がある。それによると、Web面接における学生の映り方について、チェックしている項目(複数回答)で1位となったのは、「表情」で66.8%だった。身だしなみの56.3%、姿勢の43.3%と続く。あくまで、Web面接での映り方に関する項目である。ただ、当たり前のことのようで、学生たちは必ずしもできていない。

■オンライン面接はトラブル発生が前提である

筆者は大手企業で人事を担当していたことや、人事コンサルタントとして企業の面接官研修を担当していたことから、ゼミの学生などから模擬面接を依頼されることがよくある。この2カ月で20回以上、学生の模擬面接をリモートで担当した。オンライン面接は学生、企業ともに慣れが必要だと痛感した次第だ。この面接において、学生、企業ともに陥りがちな失敗を考えてみよう。

前提として、オンライン面接はいかに環境を整えようとも、トラブルが起こり得るものである。学生側はもちろん、企業側においても回線の速度が落ちることは必ずしも防ぐことができない。法人であっても、回線速度が落ちることはある。学生の方はなおさらだ。スマホの4G回線以外にネット環境がない学生もいるし、自宅のWi-Fiなどが必ずしも速くない場合や、テレワークの普及により建物全体でネット回線が重くなっていることもありえる。私が面接を繰り返していた際も、映像が止まったり、動きがカクカクしてしまうことがあった。この際も冷静に対処することが必要だ。企業側も、面接官マニュアルなどで、遅延した際も学生が焦らないように対処するなどの指針を示している。

突然、宅配便の配達などでベルがなる、家族が入ってくる、クルマや電車などが通過し、うるさくなるということもある。学生側も、企業側も取り乱さないことが必要だ。

■オンラインでは、反応はできるだけ大きく

互いに反応がわかりにくいのも、面接に限らず、オンラインコミュニケーションの課題である。ビジネスパーソンは普段のオンラインの会議などで体験しているかと思うが、相手の表情、反応がわからず、手応えがないということがあるだろう。これを学生も大変感じている。学生側も、面接官側もできるだけ大きく反応すること、身振り手振りを加えること、反応が乏しくても悪気がないものだと捉えたい。

面接に本来はする側とされる側はない。単なるプレゼンではなく、互いにキャッチボールをすることを意識したい。ただ、これはオンライン面接では悲しきかな、必ずしも実現しない。普段のオンラインコミュニケーションでも実感するかと思うが、前述した回線の問題などにより、テンポのよいキャッチボールは必ずしもできない。会議などでも、回線の遅延やタイミングがつかめず、発言が重なることはあるだろう。学生側も面接官側も一方的に話さざるを得ない場面があることを認識しておきたい。

■キャリアセンターのオンライン面接コーナーを活用する手もある

なお、学生の側で工夫するべきは、カメラアングル、照明、部屋のレイアウトなどだろう。学生の部屋は、必ずしも広くないし、日当たりがよくない場合もあるだろう。ただ、面接をする場として可能なかぎり、ベストになるようにしたい。部屋の中に面接用のコーナーをつくろう。できるだけ背景はすっきりさせる、光の当たり方などに気をつける、顔全体が映るようにカメラアングルを考えるなどしよう。よくある失敗は、カメラアングルにより顔全体が映らず、まるで河童のように頭部の上部が切れている状態で面接をしてしまうことだ。上半身だけスーツで、下はスウェットという状態も急な対応で立ち上がったときにバレることがある。

大学のキャリアセンターでは、オンライン面接コーナーを用意していることもある。こちらの活用も検討しよう。

なお、部屋など映像に映り込んだものについて面接官が必要以上にコメントするのは、ハラスメントである。面接官は注意するべきだが、気になることがあったら記録しておこう。

オンライン面接は慣れが必要だ。学生の側はキャリアセンターや、仲間同士で模擬面接を行い慣れておこう。面接する側も、さまざまなトラブルが発生しても寛容に接する姿勢を大切にしておきたい。何より、自分たちも面接をされているという心構えが必要だ。

■何をアピールするのか問題

今年の就活において、学生側が悩むのは「何をアピールするのか」という問題である。特にこの1年間は、新型コロナウイルスショックにより、対面講義が十分におこなわれない、課外活動が制限されるなどにより、学生生活が大幅に制限された。世界的にも「ロックダウン世代」という言葉が生まれている。新型コロナウイルスの影響で、教育や就職の機会や収入を失うなど不利益を受ける可能性のある若い世代のことをさし、国際労働機関(ILO)が報告書で使用した言葉である。

コロナ前から、大学生は「ガクチカ」で悩んでいた。「ガクチカ」とは「学生時代に力を入れたこと」の略である。大学3年生になる頃、就活で企業にアピールするポイントがなくて焦り、何か実績を作ろうとする学生がいる。もともと大学生活は、3年生はゼミ活動が本格化するし、サークルでも幹部となり活躍する。

しかし、新型コロナウイルスショックにより、ゼミなどもオンラインということが多く、フィールドワークなどを行うことができないなどの問題が起きている。サークルの成果を発表する学園祭なども、中止となってしまった。さて、何をアピールするのか?

少しだけ冷静になりたい。ここには、就活に関する根本的な勘違いが存在する。ガクチカは「思い出話」や「自慢話」「武勇伝」と必ずしもイコールではない。価値観、行動特性、思考回路などを理解するためのものであり、事実の確認が基本である。これは別に、ドラマチックな話、1回だけの成功体験を確認するものでもない。エピソードの派手さ、インパクトに引きずられると人事はミスジャッジをしてしまう。地味なことも含めて、物事への取り組み方を判断する。

たとえば、よくある学園祭でイベントを主催し、数百名分のチケットを売り切り、企業のスポンサーもつけて、大成功させたというようなよくあるエピソードも、必ずしもその人が貢献していないということがある。その中でどんな役割で、どんな成果を出したか、勝利の方程式は何かが問われる。趣味やアルバイトのありふれた取り組みでも、物事への取り組み方などを丁寧に見るのが選考のあるべき姿である。

■コロナ禍に立ち向かったこと自体が「ガクチカ」ではないか

新型コロナウイルスショックの渦中でも、学業や趣味、アルバイトなどへの取り組みを行ったはずである。その際に、どのように成果を出すようにしたか、何を学んだかを振り返ってみよう。

書籍が売れない時代となり、就活マニュアル本もあまりアップデートされていない。大学によってはキャリアセンターにおける就活指導もアップデートされていない。まだこの手のマニュアル本に載っていない上、ネットの就活対策記事でも見かけたことがあまりない、私がここ数年で編み出したテクニックがある。「スマホ・カメラ分析」である。

今の学生は、スマホを持ちはじめてから現在までの写真をスマホやクラウドの中に、全て保存している。学生時代のこれまでの写真を見返すと、自身が真にアピールするべき点、なんでもないような隠れたアピールポイントなどが見つかるものである。

そもそも、新型コロナウイルスショックに立ち向かったこと自体が「ガクチカ」ではないか。そんな視点も持っておきたい。他大学も含め、学生たちの取り組みを聞いていると、Zoomを活用してサークル活動を行った、ゼミでZoomを活かして著名人にインタビューを行った、アルバイト先でのコロナ対策を率先して行ったことなどはアピールポイントになりえる。

コロナで思い通りの大学生活を送れずに悩んでいる学生は多数いる。ただ、実は誰もが前向きな一歩を踏み出しているはずだ。そこを直視したい。

■コロナ禍で企業が学生に求めている資質

なお、企業が求める能力・資質もオンライン時代に向けて変化がみられる。マイナビが3月17日に公表した「2022年卒マイナビ企業新卒採用予定調査」を基に考えてみよう。

選考の際に重視する力を、経済産業省の「社会人基礎力」の12要素について複数回答で聞いた設問において、特に前年から増加幅が大きい項目は「柔軟性」(57.4%、対前年+8.0ポイント)、「傾聴力」(57.0%、対前年+7.8ポイント)、「ストレスコントロール力」(46.6%、対前年+6.5ポイント)などだった。変化の激しい時代であること、ウェブによるコミュニケーションが増えた時代を反映しているといえるのではないか。

たとえば、前述したように、「私のコロナ対策」はアピールポイントになりえる。この未曽有の危機に直面しつつ、いかに向き合ったかを考えてみよう。

■学業成績も判断材料として存在感を示すように

学業成績を選考の際に考慮する企業が微増したことも特徴だ。「重視する」が2.4%(対前年+0.4ポイント)、「ある程度重視する」が45.7%(対前年+2.1ポイント)と微増している。判断材料として学業がわずかではあるが、存在感を示していると言えなくはない。

もともと、学業での質問は学生を判断する上で、有益だった。というのも、自分が好きなこと、得意なことに対して、居心地の良い仲間と取り組むことになりえるサークルやアルバイトよりも、より「やらざるを得ない」ことであるからだ。どのような科目を履修したのか、よい成績をとるためにどう取り組んだのか。成績表を基に面接すると、その人をより深く理解することができる。

人事の側も、エピソードのインパクトに流されず、事実の確認をするのが基本であるはずだ。ぜひ、学生の話を味わい尽くす努力を怠らずにいきたい。

就職氷河期再来、コロナショックで激変などという言葉に流されず、情熱と冷静さをもとに前に進みたい。この時代、あたらしい何かが生まれることに期待したい。

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常見 陽平(つねみ・ようへい)
千葉商科大学国際教養学部准教授、働き方評論家
1974年札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学専任講師。2020年4月より准教授。著書に『僕たちはガンダムのジムである』『「就活」と日本社会』『なぜ、残業はなくならないのか』『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』ほか。1児の父。

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(千葉商科大学国際教養学部准教授、働き方評論家 常見 陽平)

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