「大手町の大企業と渋谷のITベンチャー」転職で悩んだときにまずやるべきこと
プレジデントオンライン / 2021年4月19日 11時15分
※本稿は、村上臣『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「有名な会社×自分に合うポジション」は滅多にない
転職する際、皆さんは会社をどういう基準で選んでますか。
かつては「会社」で就職先を選ぶという発想が主流であり、転職する際も会社で選ぶ傾向が一般的でした。
会社で選ぶとは、わかりやすく言うと「就職人気ランキングの上位企業だから入社する」「親が知っている有名企業だから入社する」ということ。仕事の内容よりも会社のブランドを優先させる考え方です。
しかし、会社で選ぶことのデメリットは、次の転職の可能性を極端に狭めてしまうところにあります。
「有名な会社で働くこと」に価値を感じている人は、転職するときも有名な会社を目指そうとします。有名な会社であり、かつ自分に合うポジションが用意されている確率を考えると、よほどのことがない限り、転職に踏み切ることは難しくなるのです。
■会社と人材が利用し合う「シナジー」が大事
これからの時代の会社選びに大事なのは「シナジー」です。「シナジー」とは何かと言えば、会社と働く個人が良い意味でお互いを利用し合うということです。
これまでは「会社が人材をどう活かすか」という視点ばかりが強調され、「従業員が会社をどう利用するか」という視点は希薄でした。しかし、これから会社と個人がフェアな関係を築いていく上では、お互いがお互いをいい意味で利用し合う関係が重要となります。
個人が何らかの目標を持ち、目標を達成するための場として会社を利用する。
これに対して会社側は、パフォーマンスを発揮してくれるのならどんどん会社を利用してくれて構わないというスタンスを取る。
お互いにコミットした期間内は全力で貢献し、お互いに役割を果たしたと感じたならば、離れるという選択肢もよしとする。
これからプロジェクトベースで仕事が進むようになり、雇用の流動性が高まれば、このように会社と個人がシナジーに基づいた関係性を志向するようになるのは必然と言えます。
能力がある人は、常に業務を通じて経験を積み、スキルアップをしたいと望んでいます。彼らは大きな課題を抱える会社に働きがいを見いだし、課題のない会社には在籍する意味を見いだしません。
例えば、エンジニアなどが、新規事業を立ち上げようとしている会社に転職し、事業が軌道に乗ったタイミングでまた別の会社に移る。このような会社の選び方が増えていくのではないかと予測しています。
■会社のカルチャーが自分に合うかはとても重要
これからは、会社のカルチャーが自分に合うかどうかが、シナジーを得るためにも非常に大きな要素となります。
採用する会社側にとっても、働く個人にとっても、カルチャーフィット(会社の文化への適応)しない状態は、お互いを破壊的に不幸にさせます。もちろん人間ですから、100%フィットするというのは非現実的でしょう。ただ、お互いが納得できるレベルにまですり合わせをしていく努力が求められると思います。
今は多くの会社がホームページやSNSなどを通じて、自社の運営方針や大切にしている価値についてメッセージを発信するようになっています。写真などのビジュアルなどからも、普段の仕事ぶりが垣間見えるようになっています。
こうした発信を見れば、会社のカルチャーが自分に合う・合わないは、おおよその想像がつくはずです。
![ソーシャルメディア](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/1/670/img_111ae3c921bc6126654dc699144feb71732098.jpg)
■口コミサイト、現役社員、立地から雰囲気を見極める
例えば、日本でいうと、メルカリやサイバーエージェント、GMOといった会社はカルチャーに独自性を感じます。こういった会社に合う人もいれば、絶対的に合わない人もいます。合う・合わないというのは良い・悪いの問題とはまったく無関係です。
ただ一つだけ断言できるのは「合わない会社で働くべきではない」ということです。
近年は、企業口コミサイトの情報も充実しています。
代表的なものを挙げれば、「オープンワーク」「転職会議」「エン ライトハウス(旧カイシャの評判)」などの口コミプラットフォームがあります。こういったもの以外に、実際に企業で働いている人に話を聞いて、会社の雰囲気を総合的に把握しておくことが大切です。
ちなみに、会社の立地も多少はカルチャーと連動しています。特に大手企業はオフィスに多額の投資を行うため、立地とカルチャーを紐づける傾向があります。大手町のシャキッとしたカラーを重んじる企業もあれば、渋谷のように若々しく躍動的な雰囲気を重視する企業もあるわけです。
このように複数の観点から会社のカルチャーを見極めていく姿勢が重要です。
■大企業向きの人、ベンチャー向きの人
人によって、大企業でシナジーを発揮しやすい人とベンチャーでシナジーを発揮しやすい人とがいます。
![村上臣『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』(SBクリエイティブ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/c/200/img_ac328ade880ed21ddf84d28f53dbbd33341032.jpg)
決められた役割の中できっちりと仕事をするのが好きな人は、大企業向きと言えるでしょう。これに対して、役割を超えたところで新しい仕事にチャレンジしていたい人はベンチャー向きです。
後者のタイプの人が大企業に行くと、窮屈さを感じるのではないかと思います。というのも、大企業で役割を超えた動きをすると「他の人の仕事を奪っている」と認識され、意外と評価されないことが多いのです。
ベンチャー企業では、社内でポジションの流動性が高いため、人が不足しているポジションと現在のポジションを兼務する機会も多々あります。兼務しているうちに、新しいポジションが本業になることも珍しくありません。また、自分自身でポジションを作り出すチャンスもあります。
実際に私の周りでも、ベンチャー企業の人は、仕事の内容が大きく変わったり、社内で新たなポジションを経験したりしてから他業界に転職したりするケースが目立ちます。業界やポジションを変えたいと考えている人には有利な環境であり、大企業にはない利点の一つです。
■「失敗経験」を評価する企業も少しずつ出てきた
ちなみに、アメリカなどではスタートアップを経験して失敗したことがある人は、求人市場で高く評価されています。事業を起こす経験がリスペクトされるという文化的な土壌もありますが、「失敗経験」が貴重なタグとして認知されているのです。
そもそも新規事業の9割以上は失敗します。つまり、失敗して当たり前です。そして、一度強烈に失敗した経験がある人が、同じ局面で失敗するリスクは非常に小さくなります。「なぜ過去に自分が失敗したのか、次にどうやれば成功できるか」を理路整然と語れる人は、会社に価値をもたらす可能性が高いのです。
日本では、まだまだ失敗を許容する文化が浸透していないのですが、ベンチャー企業などを中心に失敗経験を評価する動きが少しずつ出てきているのも事実です。起業経験者はベンチャーを目指すのも一つの方法でしょう。
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LinkedIn日本代表
青山学院大学理工学部物理学科卒業。大学在学中に現・ヤフーCEO 川邊健太郎らとともに有限会社電脳隊を設立。2000年にその後統合したピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴いヤフーに入社。2011年に一度ヤフーを退職。その後、孫正義が後継者育成のために始めた「ソフトバンクアカデミア」で、ヤフーの経営体制の問題点を指摘したことを機に、当時社長の宮坂学など新しい経営陣に口説かれ、2012年にヤフーへ出戻る。弱冠36歳でヤフーの執行役員兼CMOに就任。2017年11月、米国・人材系ビジネスの最前線企業・LinkedIn(リンクトイン)の日本代表に就任。複数のスタートアップ企業で戦略・技術顧問も務める。
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(LinkedIn日本代表 村上 臣)
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