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「下手をするとトランプ復活の可能性」バイデン大統領が絶対やってはいけないこと

プレジデントオンライン / 2021年4月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lukbar

2020年のアメリカ大統領選挙の結果を受けて、アメリカの保守・リベラルの構造、トランプ大統領誕生の背景などを話してくれた代々木ゼミナールのカリスマ講師・蔭山克秀先生が、民主党のジョー・バイデン氏の大統領就任までの歩みとこれからの未来図について解説。「わずか4年の任期中に、すべてを解決しようと『トランプの逆張り』に熱中したり、党内融和のために一貫性のない政治をすると、問題がこじれて再び『トランプ待望論』が出てくる可能性もある」と警鐘を鳴らします――。

■トランプという劇薬を使い続けるか否か

2020年のアメリカ大統領選挙は、完全にトランプ氏の“独り相撲”でした。「融和のバイデンか、分断のトランプか」よりも「トランプか、反トランプか」ばかりに注目が集まり、最終的にバイデン氏が勝利したのも、アメリカ国民が「バイデン氏を選んだから」というよりも「トランプ氏を選ばなかったから」という印象を強く受けました。

つまり多くのアメリカ人にとって、今回の選挙はトランプという「劇薬」を今後も使い続けるか否かを迫られる選挙であり、決してバイデン氏や民主党を積極的に肯定する選挙ではなかったということです。しかもバイデン氏は中道穏健派でインパクトに乏しく、同党のサンダース氏のように熱狂的なファンに支持されているわけでもありません(この人も大統領候補でしたが、急進左派で無党派層に受けが悪いため、民主党は「消去法」でバイデン支持に傾きました)。しかもバイデン氏、最終的にトランプ氏に勝ちはしたものの決して圧勝ではなく、票数はかなり拮抗(8000万票と7400万票)しました。

存在感の薄いバイデン氏が、トランプ氏の敵失で辛勝――この事実は、アメリカがまだ「分断が是か非か」を決められてないことを意味します。そんななか、「融和」に舵を切るバイデン氏。おそらくメディアは味方してくれるでしょうが、有権者はかなり冷めた目で、今後の動向を見守ることになるでしょう。しかもサンダース氏とのしこりも残ったままなので、急進左派への気遣いも必要です。これはヘタに舵を切り損ねたら、2024年には再びトランプ氏が大統領ということも、十分考えられます。

ニューヨーク
写真=iStock.com/Massimo Giachetti
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Massimo Giachetti

では、そんなバイデン氏とは、果たしてどんな人物なのでしょうか。

■36年間上院議員を務めてきた政治のプロ

バイデン新大統領は、1942年生まれの78歳、史上最高齢のアメリカ大統領です。弁護士資格があり、29歳より36年間上院議員を務めています。

中道派で議員キャリアが長いうえ、上院の外交委員長や司法委員長を務めた経験から、共和党とも交渉できる「政治のプロ」であり、トランプ氏と違いワシントンの政治手法を熟知しています。また議員時代には、地球温暖化の対処やDV防止法の制定、LGBTQへの差別禁止法であるLGBT平等法(米では一部の州のみにあり)の支持などに取り組んでいます。なかでも地球温暖化問題には、かなり初期から熱心に取り組んでいたため、トランプ氏が離脱したパリ協定には、大統領就任初日に復帰しました。

2009年、オバマ政権が発足すると、副大統領として大統領の実務面を8年間支えました。そして、そこで磨いた政治手腕を武器に2020年の大統領選を戦い、見事アメリカ合衆国第46代大統領の座を勝ち取ったのです。

ちなみに彼を支える副大統領は、カマラ・ハリス。ジャマイカ出身の父とインド出身の母を持つ、アメリカ初の「女性+黒人+アジア系」副大統領です。検察官、カリフォルニア州司法長官、上院議員を歴任してきたこの人は、民主党が求める「多様性の象徴」として期待されています。バイデン政権が今後4年間をうまく乗り切ることができれば、間違いなく「次期大統領」の声も上がってくる人物だと思います。

■バイデン氏の政策は「新型コロナ対策」「対中国外交」

さて、それではバイデン大統領が示している政策についても見ていきます。

バイデン大統領が提唱している政策の多くは、とても民主党的です。人種差別の解消、マイノリティや低所得者の救済(かわりに高額所得者には増税)、地球温暖化対策にオバマケアの拡充などからは、トランプ氏の毒で忘れかけていたもう1つのアメリカ、リベラルの息吹(弱者救済・多様性尊重・グローバリズム)を感じます。

ただしバイデン氏の政策には、従来の民主党になかったものが2つあります。1つは「新型コロナ対策」です。ご存知の通り、トランプ氏はコロナを軽く見ていたため、「防疫よりも経済優先」に走り、各州にロックダウンの制限緩和などを求めるのも早かった。しかしそのせいで、アメリカは感染者数が世界一になり、トランプ氏自らも感染してしまいました。また、あまりに中国寄りなWHO(世界保健機関)を批判し、2020年7月には脱退しました。一方、バイデン氏の方針は「経済よりもまず防疫」で、連邦職員すべてと公共交通機関の利用者にマスク着用を義務づけました。さらにはWHOにも復帰し、今後は検査・予防・治療の無料化をめざすそうです。

そして、もう1つが「対中国外交」です。まず「アメリカ第一主義」という反グローバリズムを唱えたトランプ氏は、当然「反中」に向かいます。そして中国と激しく衝突した結果、「米中貿易戦争」と呼ばれる事態を引き起こしました。一方、バイデン氏はグローバリズムの回帰をめざしており、なおかつ民主党には「親中」の土壌があります。となると当然トランプ氏の逆張りで親中路線に舵を切るのかと思いきや、現状はトランプ氏同様の「対中国強硬路線」です。

アメリカと中国
写真=iStock.com/Rawf8
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawf8

トランプ氏は中国製品に米国市場を荒らされることを嫌い、バイデン氏はウイグルや香港民主化問題に見られる中国の人権問題と覇権主義的傾向を嫌う……。こだわるポイントは少々違いますが、「中国脅威論」という点では一致しています。ですからバイデン氏は、トランプ氏がこじらせかけた日本や韓国など同盟国との関係を修復し、中国に強く当たるという方向性は継続しそうな流れです。

ただし、民主党には親中派の議員も多いうえ、温暖化対策などで中国の協力が必要になるだけに、どこかで政治的妥協が入り込む余地もあり(バイデン氏は政治を知りすぎているだけに、その可能性あり)、トランプ時代ほどの米中対立が続くかどうかは不透明です。

■まず集中すべきはコロナ対策ではないか

こうして見ると、今後のアメリカが取り組むべき課題は、かなり多く、しかも1つ1つが重い。バイデン氏は、バランス感覚に富んだ民主党の中道穏健派です。ガチガチの左派ではなく、話せばわかる人であり、人の痛みがわかる人です。そういう意味では破壊神・トランプ氏とは対照的で、分断の進んだアメリカ社会に融和をもたらす大統領としてはうってつけでしょう。

ただし、アメリカ社会の分断は、思った以上に深刻です。わずか4年の任期中に、すべてを解決しようと「トランプの逆張り」に熱中したり、党内融和のために一貫性のない政治をすると、問題がさらにこじれて再び「トランプ待望論」が出てくる可能性もあります。これは本当に気をつけるべき点です。なぜなら以前にも書いたように、アメリカ分断の原因は、トランプ氏だけではなく、民主党にも大いにあるのですから。

現在のアメリカには、分断とコロナという「2つの禍」があり、当然優先順位が高いのは、コロナ禍の解決です。これを解決できれば、社会は落ち着き、民主党の評価は高まります。バイデン氏がやるべきことは、まずコロナ対策に集中し、その実績で支持を盤石にしたうえで、次の民主党政権に分断修復を託すことではないでしょうか。

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蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師
「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。

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(代々木ゼミナール公民科講師 蔭山 克秀)

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