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「夫は大赤字なのに妻は余裕の黒字」お金が貯まらない"夫婦別財布"の特徴

プレジデントオンライン / 2021年3月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vladimir Sukhachev

ある40代の共働き夫婦は、食費を含む支出項目の多くを「別財布」で管理している。だが、住宅ローンなど大きな額を負担する夫の手取り月収はすぐに消える一方、妻は余裕の黒字とバランスが悪い。全体の家計は毎月3万円近くの赤字で、老後資金も貯まらない。そんな危機的家計を月4万円以上の黒字にさせたファイナンシャルプランナーの秘策とは——。

■40代共働き夫婦の貯金は50万円弱、老後不安が募る

「どうも生命保険料が高すぎて、貯金が増えないんです」

そう言って相談に来たのは、通信系の会社に勤務の森信二さん(44)。結婚する前に加入した生命保険は保障内容の必要性などをよく考えていなかった商品だったそうです。最近、書籍や雑誌などを読み、もしや自分の保険は保険料が高すぎるのではないか、見直しをして老後に備える投資もすべきではないかと思うようになりました。

信二さんは、契約社員で働く妻の裕子さん(42)と2人暮らし。家計は完全に別です。貯金は裕子さんが担当していますが、マンションを購入した時に信二さんは「住宅ローンは自分が払い、その繰り上げ返済用の資金は妻が貯める」と約束しました。妻が貯めたお金は毎年100万円を目標にせっせと繰り上げ返済。そのため、相談時の貯金は48万円しかありませんでした。年齢的に老後資金を拡充していくべきですが、できていません。

■「食費すら別財布」の夫婦が貯金できない必然

家計状況を伺うと、見事に家計は夫婦で別々。食費までもが別々で、家庭としての支出が見えにくくなっています。

信二さんの収支を見ると、手取り月収24万円弱の収入に対し、住宅ローンと管理費の負担が11万円弱と半分近くを占めています。そのほか食費4万円、生命保険料が3万5000円かかり、それだけで収入の大半が消えています。生命保険については、安くない額だけに保障内容を精査する必要がありそうです。

他に、通信費や日用品代、交際費、スポーツジムの費用、被服費、交通費、酒代といった支出もあり、毎月のように赤字。それをボーナスで補塡(ほてん)しているという状況です。

裕子さんは手取り月収が21万円弱。繰り上げ返済用の貯金として毎月6万円を積み立て、それ以外に、水道光熱費2万円弱、食費3万5000円、被服費2万円、交際費1万8000円などを支払っています。水道光熱費に関しては、信二さんが負担する住宅ローンの金額(11万円)と、繰り上げ返済用の貯金(6万円)との負担のバランスを考えて裕子さんが支払う担当になったとのこと。裕子さんの収支は毎月ゆとりがあり、こづかいとして自由に使う金額を含めても毎月1万円程度は残せているそうです。

■夫の財布は大赤字、妻の財布は余裕の黒字でバランス悪すぎる

一方が赤字で、一方が黒字。全体としては毎月3万円近くも赤字状態で、何ともバランスの悪い、このまま放置してはいけない家計状況です。できれば収入を合わせて財布を1つにし、重複する支出を省いたり、無駄な支出をカットしたりしたいところですが、夫婦別サイフは長年の習慣となっているので、すぐに合わせていくことは難しいかもしれません。

また、今回は保険料の見直しが相談理由だったので、別な視点からのアドバイスは好ましく思えないこともあるでしょう。ですが、老後資金を作りたいという希望をかなえていくには、家計の根本を改善することも大切です。

今回は生命保険の見直しと、家計管理法の見直しの2つに取り組むことを森さん夫婦に勧めると、理解を得られたため、早速取りかかることにしました。

生命保険は死亡保障が手厚く、医療保障が手薄の状態でした。共働きの夫婦2人暮らしという現状から考えると、死亡保障は必要なのかどうかも検討し、生きているときの保障である医療保険を手厚くしました(3万5000円→2万2000円)。

家計は完全に合わせることができなくでも、合わせる部分を増やすことで好転するものです。まずは食費を出し合い、共有の財布にお金を入れて管理をします(食費:計7万5000円→計6万4000円)。トイレットペーパーやティッシュ、洗剤など共有して使う日用品代も、その食費の財布で一緒に管理することにしました(日用品代:計1万5000円→1万1000円)。

メタボ家計before・after

■全体で月3万円近くの赤字家計が4万円の黒字家計に!

ほか、信二さんは会社の都合でかないませんでしたが、裕子さんのスマホは格安スマホに変更し固定電話もなくしました(通信費:計2万1000円→計1万1000円)。

また、裕子さんが仕事のために自分の判断で購入している洋服代は月により支出額に波があるため、1年間の予算を裕子さんのボーナスから作り、毎月の被服費の中の洋服代となる部分は、貯金に回していくことにしました(被服費:2万2000円→5000円)。

裕子さんは公私の付き合いで交際費も多くなっていますが、その月内の内容を考えて参加・不参加を決め(交際費:計2万5000円→計1万3000円)、趣味の読書の本は新品を買うよりも中古を選んだり、図書館で借りたりすることに(娯楽費:1万円→6000円)。読み終わってもう読まない本は、売ることにしました。

まだまだ夫婦で別々に管理する部分が多い家計ですが、互いの支出の削減についての話し合いを聞き、興味を持ったのでしょう。次の相談までの1カ月間、約束した削減方法ができているか、確認しあって過ごしたそうです。

その結果、2人合計で7万円を超える支出削減ができていました。貯金を増やしていけば、投資を始めることを検討できそうです。

■「夫婦別サイフ」による貧乏&老後崩壊を避ける方法

また、貯金と繰り上げ返済のバランスについても相談しました。

現在、貯金額は50万円弱と心もとない状況。夫婦どちらかの収入がなくなる、もしくは減額した場合、生活が破綻するおそれがあります。

一方で、繰り上げ返済は、70歳完済の住宅ローンを、できれば65歳までに完済したいという思いでしているもの。その方針は悪くありませんが、まずは現在の生活を守れる資金を持つことが最優先。そのため生活費の1年分ほどの貯金ができるまでは繰り上げ返済を保留することにしました。まだ住宅ローン控除も利用できている期間のため、その控除の恩恵をしっかりと受けるためにも、せめてその期間のうちは繰り上げ返済を慌てなくてもよいでしょう。

財布を開いて中身を見せている女性
写真=iStock.com/Henadzi Pechan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Henadzi Pechan

現在、共働き世帯が増え、「夫婦別サイフ」が当たり前になっています。別サイフの在り方も家庭により異なるのですが、やはり共有している部分が多いケースほど貯金ができる傾向にあります。家族内で家計について共有することが、有効にお金を使えたり、無駄を省いたりして効率のよい家計運営に大切なこととなっていくのです。

■【家計費コストカット額ランキング】

1位 -1万7000円 被服費
妻の洋服代は年間の予算を作り妻の賞与から出し、月の家計から支出しない
2位 -1万3000円 生命保険料
夫が若い頃に加入した保険を今必要な保障内容に見直した
3位 -1万2000円 交際費
参加すべきものとそうではないものを考えて集まりなどに参加するように
4位 -1万1000円 食費
食費を出し合い、共有財布でやりくりするようにした
5位 -1万円 通信費
妻のスマホだけ格安スマホに変更し、固定電話をやめた
6位 -4000円 日用品代
食費と共に夫婦で共有して管理
6位 -4000円 娯楽費
書籍代が多かったが一度読めばもう読まないため、中古や図書館の利用もするように

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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