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母親の「子どもを置いて不倫」は、なぜそこまでバッシングされるのか

プレジデントオンライン / 2021年4月5日 13時15分

2020年9月24日、台湾・台北で、顔面にやけどやけがを負った子供や家庭を支援する団体の記者会見に出席した江宏傑さんと福原愛さん夫婦。 - 写真=Top Photo/時事通信フォト

福原愛さんの不倫騒動は、日本中を驚かせ、本人へのバッシングが殺到しました。ドイツと日本で人生の半分ずつを過ごしてきたコラムニストのサンドラ・ヘフェリンさんは、「母親の不倫は、母でいるよりも女でいることを選んだと叩かれます。しかし子どものいる男性が不倫をした場合に、父でいるよりも男でいることを選んだとは言われないわけです」と指摘します――。

■国際結婚の難しさが浮き彫りになった

「福原愛さんが不倫をした」というニュースが飛び込んできた時、「あの泣きながら卓球していた幼稚園児の愛ちゃんが?」と思ってしまいました。筆者だけではなくおそらく日本の多くの人がそう感じたのではないでしょうか。

1月の時点で離婚協議中だったことや、家族のモラハラなど詳細を報じる週刊誌を読みながら、「愛ちゃんを泣かす男は許せない!」と思う一方で、このケースでは「国際結婚の難しさ」も浮き彫りになっています。

今回は「日本と外国の恋愛観や結婚観の違い」に触れながら、「女性が国際結婚をする時、どんなことに気をつけたほうがよいのか」を考えてみます。

■一番叩かれやすいのは「ママの不倫」

日本では不倫は何かと叩かれがちです。芸能界で、独身の女性が既婚者の男性と不倫をした場合、双方が叩かれますし、既婚者同士の不倫もまたしかりです。

ただ今回のような「小さな子どものいる女性」の不倫というと、女性ばかりが一方的に叩かれている印象です。きっと「お母さんなのに、まさか不倫をするなんて」という世間の衝撃度が強いのでしょう。

ところで子どもを介して女性同士が付き合う際(いわゆるママ友ですね)、互いのことを名前ではなく「●●(子どもの名前)ちゃんママ」と呼ぶことも多いように、「子どもができてからの女性は『個』よりも『子どものママ』として立場を優先すべき」という日本社会の暗黙の了解のようなものがあるように思います。

子どもがいても恋愛をする女性については昔から「母でいるよりも女でいることを選んだ」などと言われ、「母親業をないがしろにして男に走った」というような解釈をされがちです。しかし考えてみれば、子どものいる男性が不倫をした場合に「父でいるよりも男でいることを選んだ」とは言わないわけです。こうやって比較してみると、改めて「日本という国でお母さんであること」の理不尽さが浮き彫りになるのでした。ちなみに中国のメディアはおおむね福原愛さんに同情的で、欧米のメディアについては、この不倫騒動自体にあまり注目していないようです。

■ヨーロッパと日本で違う結婚、恋愛観

日本には「結婚と恋愛は別」という言い方があります。恋愛はあくまでも恋愛として楽しむもので、結婚とは別であるという考え方です。同時に「結婚は生活だよ」というアドバイスもよく耳にします。そこからは「結婚生活では愛だの恋だのとロマンチックなことばかり言っていられない」という考えが見えてきます。

ところがドイツでは結婚もいわば恋愛の延長です。いえ、恋愛そのものといってもいいかもしれません。そのため結婚後も男女が共通の趣味を持ち一緒に出かけたり、デートをしたりと「恋人のような関係」を維持するための努力を惜しまないことが「普通」だと見なされています。

手をつないで歩くカップル
写真=iStock.com/franckreporter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

ドイツ人男性と結婚した日本人女性からよく聞くのが「子どもが生まれてから子どもにしか興味がなくなってしまい、夫は家族だからとハグや触れあいをせずに安心していたら『僕のことはどうでもいいのか』と夫が怒り出した」という話です。

日本では子どもができたら子ども中心の生活になり夫婦間のことは二の次になっても仕方ないという暗黙の了解というか、諦めのようなものがあったりします。ところがドイツを含むヨーロッパ人は「良いパートナーシップを築けてこその家族」と考えるため、日本流の考えとは温度差があります。

■夫婦関係が破綻している場合の恋愛は不倫ではない

ドイツを含む欧米では「夫婦はいつまでも恋人同士のようにラブラブ」であることが求められるため、逆にラブラブでなくなった時は別れて男性も女性も新たなパートナーを見つけるのが自然だとされています。そのため、ドイツでは子どものいる女性が恋愛をしていても白い目でみられることはありません。

ドイツでは夫婦間で良い関係が築けていないと、日本人よりも離婚を決断するのが早いかもしれません。

ただドイツで離婚が簡単かというと、そうではありません。日本では双方が離婚届に印を押せば離婚は成り立ちますが、ドイツの場合は最低でも1年の別居期間を経た後にようやく離婚が認められます。この別居期間中は「夫婦関係が既に破綻している」と見なされるため、ドイツの世間はこの期間中の恋愛を「不倫」と見なすことはありません。

さらに、ドイツの法律では配偶者による不倫が原因で離婚に至ったとしても、相手に慰謝料を求めることはできません。それは「人の気持ちを法律で縛ることはできない」と考えられているからです。

福原愛さんの不倫が日本でこれほど叩かれていたのは、「お母さんという立場で恋愛をすること」に対して日本では厳しい視線が注がれていることもひとつの理由ですが、「不倫は法律の面でも慰謝料が請求できるぐらい『いけないこと』である」という社会のコンセンサスがあるからなのでしょう。

実は日本でも事実上夫婦関係が破綻していたり離婚調停中の場合の「婚外恋愛」は不倫に該当しないとみなされることも多いです。ところが有名人の話になると、その話題性からか、あえてマスコミが「不倫、不倫」と煽り立てているところがあるようです。

■「子どものために離婚しない」とはならない理由

夫婦関係が破綻した時、ドイツでは「子どもがいるから離婚はしない」という考え方をする人はいません。

ドイツでは離婚後も共同親権が基本であるため、離婚後も父親と母親の両方が子供を育てていくという考えです。親が離婚をしても、子どもは引き続き、父親と母親の両方に会えるので、親として「子どものために離婚を思いとどまろう」と考える必要がないわけです。

面白いのは離婚後の交流がびっくりするぐらい明るくあっけらかんとしていることです。新しい恋人と暮らす母親が一緒の世帯に住んでいる子どもを、週末は元夫(子どもにとっての父親)の家に送っていきますが、その家にも父親の新しい恋人がいたりします。クリスマスなどは、子どもを交えて、元夫・元妻とそれぞれの現在のパートナーと一緒にお祝いすることもあり、「離婚後も子どもを中心に上手に役割分担をしている」家庭が多いのです。

かつてはドイツでも恋愛をする母親はRabenmutter(直訳すると「カラスのお母さん」ですが、「薄情な母親」という意味)などと言われ揶揄(やゆ)されたものです。北欧やフランスなどと比べると長らく保守的な考え方が幅を利かせていたドイツですが、今は「子育ては母親のみの責任である」という昔ながらの考えからは脱却しつつあり、母親の恋愛がとがめられることはありません。

■家族のモラハラは「国際結婚あるある」

さて、愛ちゃん(あえてこう書かせていただきます)の結婚で気になったのは、愛ちゃんが結婚後に夫の国・台湾へ引っ越していることです。しかし夫の国に引っ越すと、夫には自分の両親や兄弟などが現地にいますし、友達もいますが、妻からしてみると、自分は両親も友達も現地にいないわけです。

週刊誌の情報だと、愛ちゃんの場合は、夫の家族が愛ちゃんに対していろいろと口出しをしてきたとありますが、これは「国際結婚あるある」なのでした。「ヨメ(あえてこう書きます)が外国人でこの国のことをあまり知らない」と分かるや、ここぞとばかりに口を出し「外国人である貴女はこの国のことを何もわかっていない!」などとモラハラをする家族もいます。

■経済的な自立が何よりも重要

国際結婚にも色んなケースがあるものの、夫の国に引っ越してきた妻は「現地に自分の両親がいない」「兄弟もいない」「友達もいない」「現地の言葉が分からない」という状態であることも珍しくありません。そんななかで自分の仕事を持っていたり収入があれば良いのですが、そうでない場合は、精神的にも経済的にも夫に依存することになってしまい、悲しいことにその状態が夫のモラハラを招くこともあります。

もちろん理想は、引っ越しをした先の外国で、夫やその家族が優しい気持ちで接してくれることです。でも悲しいかな、弱い立場にいる人を見て、そこにつけ込んでくる人がいるのも確かで、夫やその家族がそうならないとも言い切れないわけです。

もし「外国で生活してみたい」と思うのなら、その国で自分の仕事を持てるのかどうかを調べてから引っ越したほうが対等な関係が築けそうです。

■「子どもを置いたまま日本に帰るなんて」というニッポンの感覚

愛ちゃんのケースでは、愛ちゃんが日本に帰国中に不倫をし、「子どもを台湾に置いたままだった」ことも非難の対象となりました。その根底には、母親はいつも子どもと一緒にいなければいけない、という日本特有の価値観が根底にあるのだと思われます。

過去には、パリで作家の辻仁成さんと結婚生活をおくっていた中山美穂さんが離婚の際に子どもをパリに残し、一人で日本に帰国して女優業を再開したことがバッシングの対象となりました。

サンドラ・ヘフェリン『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)
サンドラ・ヘフェリン『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)

ただ知っておきたいのは、フランスはハーグ条約の加盟国であるため、夫婦が離婚をしたからといって、元夫の同意なしに妻が子どもを国外(日本)に連れて帰ることはできないということです。

7年前に中山美穂さんが子どもをパリに置いて一人で日本に帰国した際は、このハーグ条約に触れるマスコミはあまりありませんでした。でも日本人同士の結婚、国際結婚を問わず、海外で夫婦関係が破綻した場合、母親一人の意思で「子どもを連れて日本に帰る」ことは認められていません。

日本も2014年4月1日に加盟したハーグ条約は「子どもが現在住んでいる場所で今後も暮らしていくこと」が子どもにとって最善だという考えに基づいているので、配偶者・元配偶者の同意を得ずに親の都合で「子どもを日本に連れて帰る」ことは誘拐だと見なされてしまいます。夫・元夫に無断で子どもを日本に連れ帰った罪でアメリカでは複数の日本人女性が指名手配されているほどです。

■夫と別れた後もその国で子育てをする覚悟が必要

そう考えると「夫の国に引越しをして現地で子どもを産む」選択をした場合、「たとえ将来的に夫と別れることになっても子どもと一緒にその国で生活をしていく」という覚悟が必要です。現実的なことをいうと「夫がいなくても、外国で自分と子どもを食べさせる」収入を持っていることが大事です。

いろいろとシビアなことを書いてしまいましたが、筆者は国際結婚をした両親のもとに生まれているので、国際結婚にはもちろん反対ではありません。ただ日本国内で日本人と結婚するのとはやはり違うので、事前の情報収集をして「女性として損をしない選択」をしたいものです。

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サンドラ・ヘフェリン 著述家・コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ「ハーフを考えよう!」 著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから‼』(中公新書ラクレ)、『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)など。

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(著述家・コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)

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