「都心に残るか、地方移住するか」堀江貴文がコロナ禍に辿り着いた最終結論
プレジデントオンライン / 2021年4月15日 11時15分
※本稿は、橋下徹・堀江貴文『生き方革命 未知なる新時代の攻略法』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■都会には時間を最大限に有効活用する手段がいくつもある
東京暮らしは、とにかくコストがかかると思い込んでいる人もいるだろう。
だが、都会の暮らしは思っている以上にコスパがいい。確かに家賃に関しては、地方よりも高くなるが、それ以外の生活コストに関しては大きく変わるわけでもない。
何より、都会には時間を最大限に有効活用する手段がいくつもある。例えば、住居だ。お金を節約して自分の稼ぎの範囲内で暮らせるようにと意識しすぎるあまり、会社からずいぶん離れた場所に住まいを借りる人がいるが、それは理に適った選択とは言えない。
毎日、片道1時間、往復2時間の電車通勤となれば、いろいろな意味でロスが多すぎる。
それだけの時間があれば、いったいどれほどほかに有意義なことができるだろう。自分の時間こそが、人生において最も貴重なリソースなのだ。
何より満員電車で何十分も他人とぴったりくっついているのは気分が悪い。そんなことで朝から疲労困憊なんて、あまりにナンセンスだ。
いまはスマホのおかげで電車のなかでもできることはたくさんあるが、会社の近くに住み、通勤時間を限りなくゼロにしたほうがいろんなことに集中して取り組める。
会社の近くだと家賃が高くなる?
それはそうかもしれない。だが心配するようなことだろうか。自分の時間を安く考えすぎているから心配になるのだ。
■高い家賃は自己投資
家賃が高かったとしても、通勤に関わる時間とストレスは減る。ならば、仕事のパフォーマンスははるかに向上するはずだ。高い家賃は自己投資と考えよう。多少の無理があっても近場に住むべきだろう。狭いアパートがイヤならさっさと仕事で成果をあげ、広い高級マンションに移ればいい。それくらいの気持ちでいたほうが、仕事にも励める。
通勤以外についても、移動にいちいち電車を使うのは非効率だ。都内ならタクシーがどこでも走っている。アプリでもすぐに呼び出せる。人でいっぱいの電車よりタクシーのほうがくつろげるし、スマホやパソコンだって使いやすい。タクシー代も自己投資になる。
食事にしても都心ならそこら中にうまい店がある。フードデリバリーも充実している。選択肢が多いうえに、時間も節約できるのだ。時間に勝るリソースはない。都会のコスパは最高だ。
生活コストを抑えたいというのなら、地方に住めばいい。地方なら家賃が月1万円程度のところなどいくらでもあるし、シェアハウスならさらに安くなるかもしれない。家賃に関しては都会の数分の一で済ませられる。
地方には何もないと言うが、それは数十年前の話だ。いまどきどんな地方に行ってもコンビニやショッピングモールくらいはある。
■テレワーク移住すれば地方に住んで東京基準の給料をもらえる
遊ぶためには車で遠出しないといけないという人もいるが、娯楽を得るためにそこまでしてリアルの場に出かけなければいけないとは思わない。そういう人は、普段何をして遊んでいるというのだろう。
映画を観て、ゲームをして、マンガを読んで、友達と飲み会。そんな娯楽であればスマホ1台で事足りる。見放題の動画配信に、無料で遊べるゲームもいくらだってある。友達とSNSでやり取りしたり、オンライン飲み会をしてもいい。
都会でないと楽しめない娯楽を求めているのならともかく、どこででもできる娯楽で十分なのに地方を敬遠するのはもったいない話だ。
最近はテレワークに移行する企業も増えてきたから、そうした企業に勤めているのなら、地方に住んで東京基準の給料をもらうことだってできる。
僕が出資しているインターステラテクノロジズは、北海道大樹町に、本社屋とロケット製造のための工場を建設した。
人口5000人程度の小さな町に、いま続々とロケットを作りたいという20代、30代の若手が移住してきている。いまはまだ数十人規模だが、すでに社宅が足りなくなりはじめた。今後10年間で、社員は数千人規模に増えることになりそうだ。
地方には、移住や起業に対して気前よく補助金を出してくれるところもあるから、生活にはまったく困らないだろう。趣味や仕事内容にもよるが、地方にいることはハンデではなくなってきている。
■そもそも「住む」という概念が不要
都会はコスパがいいけれど、地方も安く楽しく暮らせる。
では、どちらに住むのがいいか。
そんなものはあなた次第、どこでもいい、が答えだ。
ホテル暮らしをしていることからわかるように、僕はそもそも「住む」という概念が不要だと考えている。これだけテクノロジーが発達した時代に、なぜみんな「住む」ことにこだわるのだろう。
好きなときに、好きなところへ行けばいいではないか。そんな自由は、誰でも持っている。
僕がそういうことを言うと「誰もがみんな自由に移動できるわけじゃない」「地場産業や農林水産業の従事者はどうなる」といった批判が寄せられる。
移動できるかどうかは、たんに本人のマインド次第だ。本人が移動したいと思えばできるし、できないと思い込んでいるならできない。
地元の産業が心配だから移動できないというのは言い訳だ。
漁師として働いている人が、漁師では食えなくなったらどうすればいいのか。漁師を辞めて別の仕事をすればいいだけだ。
農家として食えないというのなら、農家を辞めればいい。農林水産業はその場所に存在する社会資本や人間関係を活用しているわけだが、その場所を離れても生きていく手段はいまならいくらでもある。
だいたい、ある地方の産業が消えるかどうかなどいちいち心配するような問題ではない。もしその産業によって利益を上げられるのであれば、いくらでも代わりの事業者が参入してくるものだ。
新しい仕事のチャンスはいくらでも生まれているし、利益を上げる方法も多様化している。今後、テクノロジーを活かして、地方でビジネスをやろうとする人たちも増えてくるだろう。
■移住で発生する問題はテクノロジーと政治的決断で解決が可能
住み慣れた土地から離れられない高齢者はどうするか?
そうした問題も、テクノロジーと政治的決断で解決が可能だ。
例えば、人口流出が続く地方では、公共交通機関が維持できなくなっている。そうした場所でも、ライドシェア(自動車の相乗りをマッチングするサービス)を解禁すれば住民の利便性を保ちながら、タクシー会社が利益を上げる仕組みは作れる。
さらに、自動運転技術の実用化も目前に迫っている。買い物がしたいというなら、無人ロボット車による宅配サービスという手だってある。
通信網や電力網も、これからはどんどんコストが下がっていく。これまでとまったく同じアナログの郵便サービスを全国津々浦々まで展開するのは無理にしても、ネットサービスで置き換えることは可能だ。
携帯電話の基地局も、すべての地方にひとつひとつ建設する必要はなくなる。アメリカの民間宇宙開発企業スペースXは、スターリンク計画と呼ばれる衛星インターネットアクセスサービスに着手していて、すでに数百もの通信衛星が地球の低軌道を周回している。
最終的に万単位の通信衛星が低軌道を囲むことになれば、地球のどこにいてもネットへの高速アクセスが可能になる。
低軌道衛星計画はスペースXだけが開発を進めているのではないし、ほかにも成層圏に自動航行の飛行機を飛ばして通信網を構築するプロジェクトをソフトバンク子会社のHAPSモバイルなどが進めている。
■地方を住みやすくすることは実は簡単な話
エネルギー供給もそうだ。従来の電力網では、発電所で作られた電気が変電所などを経由し、送電線を伝って工場や家庭に送られていた。
そのために、発送電事業はどうしても大がかりにならざるをえなかったが、この常識がいまや揺らぎつつある。
太陽電池や充電池などの高性能化、低コスト化が急速に進んだことで、分散型エネルギー社会の可能性が見えてきたからだ。
従来広く使われてきた太陽電池はシリコン系だが、最近はペロブスカイト系の進歩が著しい。製造に手間がかかる硬いパネルのシリコン系と違い、ペロブスカイト系は印刷技術を使って大量生産できるため圧倒的に製造コストが安い。発電効率もシリコン系に迫るレベルになってきた。
充電池の主流であるリチウムイオン電池も改良が進んでいるし、次世代電池も続々と姿を見せはじめている。
電気を低コストで発電し、貯められるようになれば、従来のように巨大な電力網を構築する必要はなくなる。どこにいても電気が作れるし、余ったぶんは貯めておいて必要になったときに使えばよいのだ。
いまよりはるかに低コストでどこからでも利用できる通信サービス、エネルギーサービスがあって、自動運転車やドローン(小型無人航空機)、ロボットなどもある。
これだけの手駒があって、何ができないというのだろうか。ちょっとした規制緩和をするだけで、地方の問題などほとんどテクノロジーで簡単に解決できてしまう。地方を住みやすくすることなど、実は簡単な話だ。
それに個人は国や地方の問題など気にしてもしょうがない。自分の住みたい場所に行って、自分のやりたいことをやるのは、いますぐできることなのだ。
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実業家
1972年、福岡県生まれ。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。また、会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』『本音で生きる』『多動力』『東京改造計画』『将来の夢なんか、いま叶えろ。』など著書多数。
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(実業家 堀江 貴文)
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