1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

カリスマ予備校講師が解説「説明のうまい人が無意識に守る必須3条件」

プレジデントオンライン / 2021年4月6日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kasto80

一生懸命話しても、相手に説明が伝わらない。そんなときどうすればいいか。元駿台予備学校講師の犬塚壮志さんは「3つの根本的な原因を改善する必要がある」という――。

■なぜ説明が相手に伝わらないのか

こちらがどんなに懸命に説明しても、「相手にわかってもらえていないかも……」と感じることはないでしょうか?

一生懸命に話す内容を練ったり、説明する順番を整えたりしても、なんか相手に伝わらない……。誰しも一度や二度はそんな経験をしたことがあるのではないかと思います。

私自身、これまで予備校講師として長年、生徒に向けて受験の化学を説明する日々でした。その中で、自分の説明が相手に伝わらないということはしょっちゅうでしたし、「説明が相手に伝わらない」という悩みに対しては、その他多くの職種の方々の中でも一番深かったと思います。

だからこそ、説明が相手に伝わらないという状況をどうにか克服するために、原因分析やその対策を徹底的に行ってもきました。

さまざまな専門書や学術論文を調べたりすることはもちろんのこと、同僚の予備校講師や知人の教員などの専門家にインタビューを行ったりした結果、ある「3つの根本原因」にたどり着きました。

■説明が伝わらない3つの根本原因

その根本原因とは、次の3つです。

原因1 相手が説明を聴くための態勢をとれていない
原因2 そもそも自分自身が内容をよく理解していない
原因3 相手のもっている知識を自分が把握していない

イメージは図表1のような感じでしょうか。

説明が伝わらない3つの根本原因
犬塚壮志『神わかり!頭のいい説明力』(PHP研究所)より

まずは、原因1からお話ししていきます。

相手に説明をしてちゃんとわかってもらうには、そもそもあなたの話をしっかり聴いてもらうところから始めなければなりません。「何を当たり前な!」と思う方もいるかもしれませんが、実はこれがなかなか難しいのです。

どんなに説明内容を練って準備しても、相手がこっちを向いてくれなかったら意味がありません。そのため、まずは相手に振り向いてもらって、聴く態勢をつくるところから始めなければならないのです。

私は長年、塾や予備校で講義をしていましたが、実は一番気を遣ってきたのは“いかに生徒に自分の話を聴いてもらうか”ということです。

こういった話をすると、「そもそも予備校には勉強しに来ているのだから、みんな話を聴く態勢はとれているんじゃないの?」と言われます。

しかし、実際の現場はそんなに都合のいいことばかりではありません。

■授業の最初の壁は「聴いてもらう」こと

そもそも受験勉強自体に後ろ向きであったり、私が指導している「化学」という科目の性質上、嫌いだけど志望大学で必要な入試科目だから仕方なくやるといった子も少なくありませんでした。

化学は、大量の知識をインプットするだけでなく、イメージの湧きにくい高度な法則も理解しなければならないので、苦手科目になってしまうのも当然だと思います。

私も苦労した立場の人間なので、そのしんどさは痛いほどわかります。そのため、まずは講義に対して生徒に前向きなスタンスをとってもらうこと――つまり、相手に自分の説明を聴いてもらうということが、説明するときの最初の壁なのです。

ちなみに予備校講師という仕事は基本的に年契約なので、働きぶりが芳しくなければ次年度の契約更新はありません。早い話が、クビです。相手が聴く態勢になっていない説明は、説明として機能しない――そんなリスクを予備校講師は痛いほどわかっているのです。

■自分自身が説明する内容をわかっていないことも…

次に、2つ目の原因である「そもそも自分自身が内容をよく理解していない」についてお話ししていきます。

『神わかり! 頭のいい説明力』(PHP研究所)
『神わかり! 頭のいい説明力』(PHP研究所)

元も子もない話ですが、説明する本人がその内容についてちゃんとわかっていないケースです。

「えっ、説明する側がちゃんとわかっていないことってあるの?」――そう思われる方もいるかもしれませんが、実際にはけっこうあるのです。

説明する側が、話している途中で、「あれ? これって、そもそもなんでだっけ?」――そんなことが頭をよぎったり、そもそもそういったことすらも思わないでテキトーな理解のまま説明したりしてしまうことがあります。

恥ずかしい話、私も講師として駆け出しの頃は、けっこうな頻度で自分の理解不足から生徒に迷惑をかけてしまったことがありました。当たり前のことではあるのですが、説明する側がしっかりわかっていないことは、相手にちゃんとわかってもらうことは不可能です。

■話し手が腑に落ちていなければ相手に刺さらない

つまり、自分が深くまで理解しているからこそ、相手にしっかりわからせることができるのです。

予備校も含め、教育の世界では、「1」を教えるためには「10」まで知っておかなければならないとよくいわれるのですが、それは本当にその通り。

話し手自身がしっくりきていないことや腑に落ちていないものは、どんなに頑張って説明しようとしても、相手に突き刺さることはありません。そのため、説明する側は、事前に頭の中でシミュレーションを済ませておく必要があります。その説明で自分がしっくりくるかどうかを考えてから説明を始めるようにしなければなりません。

できれば実際に声に出して、自分の耳で自分の説明を聴いてみることをお勧めします。声に出してみると、案外違った感じで聞こえるものです。この方法は、思っている以上に簡単で効果的です。

■「わかる」とは情報がつながること

最後に、原因3の「相手のもっている知識を自分が把握していない」についてお話ししていきます。

この原因3を説明していく前に、そもそも“わかる”とは何かを簡単にお話ししておきます。平たく言ってしまいますと、“わかる”とは「自分がすでにもっている情報(知識)と、新しい情報とがつながること」です。

たとえば、自分がAという情報をもっていたとしましょう。そこにBという新たな情報が入ってきたとします。このとき、頭の中で「A、B」がそれぞれ別の状態で記憶されたら、Bをわかったことにはなりません。

「A―B」のようにつながった状態で頭の中に保存されると、「わかった!」となるのです(図表2)。

『神わかり!頭のいい説明力』(PHP研究所)より 
『神わかり!頭のいい説明力』(PHP研究所)より 

つまり、“わかる(理解する)”という行為は、「すでにもっているものと、新しいものをつなげる」という作業なのです。

言い換えると、わかってもらう説明の大前提は、話し手が説明の中で新たに追加する情報と、相手がすでにもっている情報(知識)を必ずつながなければならない、ということです。

逆に、もし相手に知識がまったくなかったら、説明をわかってもらうことは不可能だということです。もちろん、普通に生活している以上、もっている知識がゼロという人はいません。知識がないのは、生まれたての赤ちゃんくらいです。

■相手は何を「知っている」のか事前に探る

だからこそ、相手にわかってもらう説明は絶対に可能なのです。大切なのは、「相手がどの程度の知識をもっているのか?」――これを、説明する側があらかじめできるだけ知っておくことです。

まずは大まかにでも自分と相手の共通の知識(情報)、つまり共通して知っていたりわかっていたりする部分を事前に探っておくことをお勧めします。

新しい情報を相手のもっている情報(知識)につなげる。そしてまたそのつなげた情報(知識)に新しい情報をつなげる。相手に「わかってもらう」とは、この繰り返しです。

説明内容や準備をしっかり行ったにもかかわらず、説明を相手がわかってくれない場合には、まずその原因を特定するところから始めてみてはいかがでしょうか。

----------

犬塚 壮志(いぬつか・まさし)
教育コンテンツ・プロデューサー
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。士教育代表取締役。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25才で合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発したオリジナル講座は、3000人以上を動員する超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となった(映像講義除く)。2017年に社会人向けビジネスセミナーの開発や講座デザイン、テキスト作成などを請け負う事業を興す。企業向け研修講師としても登壇。現在は東京大学大学院で「認知科学」をベースとした研究も行う。主な著書に、『頭のいい説明は型で決まる』(PHP研究所)、『理系読書−読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)、『神わかり! 頭のいい説明力』(PHP研究所)などがある。

----------

(教育コンテンツ・プロデューサー 犬塚 壮志)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください