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教科書に「竹島・北方領土・尖閣は日本固有の領土」と書くことにどんな問題があるのか

プレジデントオンライン / 2021年4月7日 18時15分

領土問題に関する高校教科書の記述=2021年3月24日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

■新教科書は生徒が課題を見つけ、その解決策を探る道標

来年4月から主に高校1年生が使う教科書の検定結果が3月30日、公表された。文部科学省によると、新学習指導要領に対応する初めての高校の教科書で、生徒が自分で課題を見つけてその解決策を探る道標となる。文科省は新しい学習指導の理念を「探求学習」に求め、これを「AL(アクティブ・ラーニング)」と呼ぶ。ALは全11教科に盛り込まれた。

新学習指導要領では、日本と世界の近現代史を融合した「歴史総合」や、防災などを学ぶ「地理総合」、主権者教育を行う「公共」、プログラミングが必須の「情報I」などが新設され、今回の検定で11科目136点が合格した。

これからの高校生たちには難問に果断に挑戦し、解決できる柔軟な能力を身に付けてほしい。それが揺るぎない日本の将来を創ることにつながる。

■すべての教科書に「わが国固有の領土」という表現が登場した

今回の教科書検定は1年かけて実施され、教科書会社から298点の申請があり、検定意見が付いた修正を経て296点が合格し、1点が不合格となり、1点が申請を取り下げた。

沙鴎一歩が注目するのは、新学習指導要領に基づいて「地理総合」と「公共」の全18点で、北方領土(北海道)や竹島(島根県)、尖閣諸島(沖縄県)について「わが国固有の領土」という表現が登場したことである。

ちなみに検定意見による修正はたとえば、次のように行われた。

▼北方領土
 「現在も事実上、ロシアによって統治されている」
→「現在もロシアによる不法占拠が続いている」
▼竹島
 「閣議決定によって島根県に編入し、国家による領有の意思を公的に示した」
→「閣議決定によって公的に示した。残されている問題について日本は平和的な手段による解決に向けて努力している」
▼尖閣諸島
 「日本が実効支配している」
→「日本が実効支配しており、領有権の問題はないとされる」
▼慰安婦問題
 「従軍慰安婦など未解決の問題は多い」
→「従軍慰安婦など政府は解決済みとしているが、問題は多い」

それにしてもここまでくるのにどれだけ長い時間を費やしたことか。日本は敗戦国の負い目から韓国や中国などのアジアの国々の意見や立場に配慮して領土などに関する主張をきちんとしてこなかった。それが教育にまで浸透していた。これまで教科書にきちんと、固有の領土や歴史的事実が正しく明記されていなかったこと自体が、問題で異常なのである。

■「自虐史観が拭えぬ教科書で歴史を学べない」と産経社説

新聞各紙は3月31日付の社説で一斉に取り上げ(毎日新聞は4月1日付)、それぞれのスタンスで評価したり、批判したりしている。見出しだけを見ても、「『従軍慰安婦』 削除必要だ」(産経社説)、「多様な視点 育む検定に」(朝日社説)、「主体的に学ぶ授業への転換を」(読売社説)、「探究支える体制づくりを」(毎日社説)と意見がわかれている。

北方四島の色丹島に建てられているロシアの木造教会。
写真=iStock.com/HomoCosmicos
北方四島の色丹島に建てられているロシアの木造教会。 - 写真=iStock.com/HomoCosmicos

このうち産経社説は書き出しから手厳しい。

「来春から使われる高校教科書の検定結果が公表された。新科目の『歴史総合』で戦後の造語である『従軍慰安婦』の文言が検定をパスするなど、相変わらず偏向した記述が目立つ」
「自虐史観が拭えぬ教科書で、視野広く歴史を学ぶ授業が進められるだろうか。憂慮する」

「従軍慰安婦」を戦後の造語と糾弾し、検定を通過したこと自体を批判し、日本の過去の行為を否定する「自虐史観」の存在を懸念する。実に産経社説らしい主張である。

■「強制連行」をチェックするなら「従軍」もチェックすべき

産経社説は「高校の学習指導要領改訂に伴う初の検定で、教科書の内容が一新される。歴史総合は近現代中心に世界の流れの中で日本の歴史を学ぶ必修科目だが、多くの教科書が慰安婦問題を取り上げ、『従軍慰安婦』のほか、『慰安婦として従軍させられ-』との記述が検定を通った」と指摘した後、こう訴える。

「教科書検定では、日本軍や官憲が強制連行したとする誤った文言はチェックされるようになった。慰安婦に『従軍』を冠するのも根拠はなく誤解を生む記述だが、検定をすり抜けているのが実態だ。国際的な情報発信の上でも、教科書に不適切な記述が放置されぬよう是正が急がれる」

慰安婦問題において「強制連行」と「従軍」は同意語である。強制連行をチェックするなら、従軍という表現もチェックすべきだ。

さらに産経社説は指摘する。

「『従軍慰安婦』は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話でも使われ、9年度から使用の中学教科書に一斉に登場した経緯がある」
「これを機に日本をことさら悪く描く歴史教科書に批判が起き、一時は中学教科書から『従軍慰安婦』が消えるなど、記述の是正が進んだ。しかし、今春から使用される中学教科書で復活した。是正を阻む背景には中韓などに配慮する教科書検定の『近隣諸国条項』がいまだに残り、検定を縛っていることがある。河野談話とともに改めて見直しを求めたい」

日本が韓国や中国に配慮する姿勢がおかしいのである。日本が過度の配慮を行うから、韓中は批判の足がかりを得てしまうのだ。

■「相手方の主張の欠如は問題にされなかった」と朝日社説

次に朝日社説。「高度情報化にグローバル化、さらに感染症の蔓延も加わり、将来の日本、そして世界の姿を見通すのは容易ではない」と書き出した後、学習指導要領改訂について触れる。

「来年春から実施される高校の学習指導要領は、そうした時代状況を背景に、多様な人々と協働しながら変化を乗り越え、持続可能な社会の『創り手』となる人材を育てることを、教育の目標にかかげている」

ここまでは分かる。問題はこの後のくだりである。

「ところが、きのう文部科学省が発表した高校教科書の検定内容は、この理念と現実との乖離を浮かびあがらせた。領土問題を中心に、政府見解に基づく記述にするよう書き直しを迫る検定意見が目につく一方で、相手方の主張に関する記述がないことは問題にされなかった」
「政府見解の掲載自体を否定するものではない。しかし『多様な人々との協働』を図るには、その人々の考えや価値観を知る必要がある。違いを認識したうえで意見を交わし、理解を深め合う。センシティブな問題ほどそうした姿勢が求められよう」

何が「相手方の主張に関する記述」だ。どう「違いを認識したうえで意見を交わし、理解を深め合う」というのか。朝日社説は本気でこうしたことを考えているのか。驚かされるばかりである。

■日本はしっかり主張して自国の利益を守るべきだ

「センシティブな問題」とは慰安婦や領土の問題を指しているのだろうが、反日で塗り固まった韓国の文在寅大統領や尖閣諸島周辺の領海への侵入を繰り返す中国の習近平国家主席、それに北方4島を軍事要塞化しているロシアのプーチン大統領を相手に、彼らの主張を理解しようとすること自体、時間の無駄だろう。

文在寅大政権も習近平政権もプーチン政権も、自国の利益を最優先に日本と交渉する。それが外交というものだからだ。日本はアメリカとがっちりと手を組んで言うべきことはしっかり主張し、相手国の間違ってるところはきちんと指摘し、国益を守るできである。

朝日社説はこうも主張する。

「それなのに、検定意見は政府見解を教科書に載せることに躍起で、書かれさえすればそれで良しとする。そんな対応で明日の『創り手』を生み出すことができるのだろうか」

もっともらしい主張に思えるが、今回の新しい高校生の教科書の理念は、生徒が課題を見つけて解決していく「探求学習」にある。検定意見が政府見解に縛られているとは言い切れない。

■北方4島の現状を考えればロシアの言い分を聞く必要はない

朝日社説は指摘する。

「今回の検定では、北方領土の現状をロシアが『実効支配』『事実上統治』しているとした元の記述に、『生徒が誤解するおそれがある』と意見がつき、『不法占拠』に書き直された。だが、ロシアがどう主張しているかの説明は、そこにはない」

日本の北方領土4島は、終戦直後にロシアに不法占拠された。これは間違いのない歴史的事実である。

北方4島の総面積は千葉県や愛知県とほぼ同じで、その人口は1万7000人。大半がロシア人だ。ロシアは北方4島を自国の領土とみなし、歯舞群島に国境警備隊を駐留させ、国後、択捉両島には駐留兵士3500人を配置、地対艦ミサイルまで配備している。ロシアは北方4島をアメリカを警戒するための重要な軍事拠点にしている。

民間人も多く、ロシア政府は道路や港湾、住宅などのインフラの整備に巨額の資金を投じている。これが不法に占拠された北方4島の現状なのである。

この現状を考えれば、いまさらロシアの言い分を聞く必要はないと思う。

■「5文字を手がかりに」という皮肉を書く朝日社説

さらに朝日社説は「戦後補償関連では、旧植民地出身者の扱いや慰安婦の存在に触れ『未解決の問題が多い』と書いたのが不適切とされ、『政府は解決済みとしているが、問題は多い』になった。現場の教員には、残った『問題は多い』の5文字を手がかりに、丁寧な授業を期待したい」と指摘する。

慰安婦問題について火をつけ、誤報を重ねたのは朝日新聞である。その過ちを棚に上げて「5文字を手がかりに」とよく皮肉を書けたものである。

慰安婦や徴用工など日韓の戦後補償については、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的」に解決済みだ。特に慰安婦問題については、日本は2015年に保守の朴槿恵(パク・クネ)政権と「最終的かつ不可逆的な解決」で合意している。

しかも日本政府は「女性のためのアジア平和国民基金」(1995年設立)や日韓合意に基づく韓国の財団を通じて元慰安婦らに現金を支給してきた経緯がある。もちろん歴代の日本の首相も謝罪を重ねてきた。

しかし、2017年に発足した左派の文在寅政権が「被害者中心主義」を掲げ、「当事者の意思を反映していない」と2015年合意を破棄するとともに財団も解散してしまった。

間違っているのは韓国の文在寅政権なのである。朝日社説はなぜその事実を無視するのだろうか。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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