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どんなに怒っても「すみません」しか言わない部下を変える魔法の一言

プレジデントオンライン / 2021年4月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Love portrait and love the world

どんなに怒っても「すみません」としか言わない部下には、どんな声がけをすればいいのか。営業コンサルタントの大塚寿氏は「大原則は自分で決めさせることだ。そのために適切なフレーズがある」という――。

※本稿は、大塚寿『自分で考えて動く部下が育つすごい質問30』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

■ノルマを達成しない「スルー癖」のある部下

【こんな部下に】指示を平気でスルーする部下に対して

できる人ほどつい出ちゃう残念な言い方
「いい度胸してるね」
⇒言いたい気持ちはよくわかるが、相手の行動は変わらない

上から下りてきた目標やノルマを「やれ」と言ってもやらない部下。スルー癖が身についており、「できない人もいるからいいじゃん」「ホントにやらなきゃいけないならまた言ってくるだろうから、いいでしょ」と、上司の足元を見ている。「スミマセン」はすぐに出てくるので、暖簾に腕押し……といった部下です。

正直、こうした部下の存在の有無は、その企業や組織の風土と業績にもよると思います。目標の達成、未達成の議論ではなく、そもそも目標を最初からスルーしてしまう社員を抱えられるというのは、ある意味、経営的な余裕がないとできません。

組織によっては「退職勧奨」の要件が揃(そろ)ってしまう場合もありますが、人事部や労働弁護士マターにする前に、まずは上司がマネジメントで、繰り返しあの手この手で行動変容を促すのが第一義です。

■「自分で決めさせる」ことで行動変容を起こす

その上で大原則となるのは、上司が強く命令したり叱責したから「しぶしぶ」行動を起こすのではなく「自分で決めたことだから~」という自己決定を促すことです。

自己決定と、目標やノルマとのベクトル合わせを、本人と上司で行うのがセオリーですが、言い方は、

「○○さん、今期さ、『これ、やりたい』とか『これだけはやり切っておきたい』とか『達成しておきたい』っていう自己目標ある?」

という方向になるでしょう。

そのココロは「成長が実感できるような自己目標を設定させる」ことによって、“自分のために”、“自分の成長のために頑張る”ということで「やる気」に着火させるのです。

人は会社や上司に命令されたことより、「自分のために」「自分で決めたこと」のために頑張れるようにできています。

その特性を利用するのです。

「そんなんじゃ生ぬるい、そうした言い方はこれまでも試してきたけど効果がなかった」という場合は、叱るというコミュニケーションの様式を用いるのも「アリ」です。

ただし、このケース、言い方には気をつけないと逆効果になってしまうので、

「ひとつ聞きたいんだけど、○○さんの仕事に向き合うスタンス、それでいいと思ってる?」

といった質問をして、あくまで自己決定を促すようにしましょう。

「叱る」という文脈においては、これは部下の能力やスキルが高い場合に限定した言い方になりますが、

「○○さん、その△△△の能力を使わないのは罪だよ。発揮しない理由があるの?」

というのが、これまででもっとも効果を上げた定番の言い方になります。

叱責といっても、この表現には「期待を言葉にして伝えている」ニュアンスがあるので、言われた方は前向きに受け止めることができます。

■集団心理に巻き込む

組織には自浄作用がありますので、こうした部下に対しては、「上司と部下」だけの関係に留まらせず、「こうした部下とチーム全体」という関係でコミュニケーションをすすめる方法もあります。

具体的には「私たち」という主語を用いて、会話するのです。

強力なビジネスチーム
写真=iStock.com/filadendron
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/filadendron

例えば、

「○○さんの気持ちは分かるよ。なんで、自分たちのチームだけ、こんなノルマが高いんだって……。
でもさ、それって経営側の期待の表れだし、全国で一番成長している市場を担当しているわけだし、新商品も出るし……。
私たちのチームのメンバーはみな最後まであきらめずに目標(予算)を追いかける人ばかりだから、新人の××さんまで必死で数字を追いかけてるけど、そのみんなの姿勢をどう思う?」

といった言い方をベースに、最適なものにアレンジして使ってみてください。

<「自分で考え、動く」を引き出す言い方>

「○○さん、今期さ、『これ、やりたい』とか『これだけはやり切っておきたい』とか『達成しておきたい』って自己目標ある?」
⇒自己決定を促し、ノルマとのベクトル合わせを行う
「ひとつ聞きたいんだけど、○○さんの仕事に向き合うスタンス、それでいいと思ってる?」
⇒相手の認識について聞いてみる
「○○さん、その△△△の能力を使わないのは罪だよ。発揮しない理由があるの?」
⇒期待していると思えるように「叱る」
「○○さんの気持ちは分かるよ。なんで、自分たちのチームだけ、こんなノルマが高いんだって……。
でもさ、それって経営側の期待の表れだし、全国で一番成長している市場を担当しているわけだし、新商品も出るし……。
私たちのチームのメンバーはみな最後まであきらめずにノルマを追いかける人ばかりだから、新人の××さんまで必死で数字を追いかけてるけど、そのみんなの姿勢をどう思う?」

⇒集団心理に働きかける

■成長段階において、失敗と成功の意味は同じ

【こんな部下に】失敗を必要以上に恐れてしまう人に

できる人ほどつい出ちゃう残念な言い方
「みんな経験してきた案件なのに、なんでそんなに心配なの?」
⇒ベテランにはこれでOKだが、心配性の若手には効果がないかも

特に若手に対しては成功体験、失敗体験からそれぞれ得られることはあるけれど、若いうちは失敗経験も大切ということを伝えてください。

失敗して反省するからそれが蓄積して実力になるのであって、それがないと成長が著しく遅れるからです。

私たちビジネスパーソンは、いい反省を積み上げて成長していくのですから、ある意味、成長段階においては、ともに成長の糧となるという意味で、成功と失敗の意味は同じといえるでしょう。

どの業界でも新人や若手社員時代に、失敗して叱られパニックになり思考停止になってしまうというのは、通過儀礼的に諸先輩も経験しています。

オフィスでうなだれているアジアのビジネスウーマン
写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio

■「失敗して恥をかかないと人は成長できない」は真実

最初の失敗がトラウマとなってしまうと、失敗することを端(はな)から恐れてチャレンジすることを回避したり、新しいことや難易度の高いことから逃げようとしたりしがちですが、「失敗から学ぶ」ことの意義を伝え、その真摯な態度の重要性を教え込まなくてはなりません。

「失敗と書いて成長と読む」「失敗と書いて経験と読む」といいますが、どちらも意味するところは同じでしょうし、「成功者が一番失敗している人」ということにも大いに励まされます。

励まされる、共感するという意味では、『憂鬱でなければ、仕事じゃない』という見城徹さんと藤田晋さんの本のタイトルも、秀逸なのではないでしょうか。

このフレーズには逆に上司のほうが励まされるのではないでしょうか。

リクルート時代、失敗をやらかしてしまった先輩を飲み屋で「失敗して恥をかかないと人は成長できない」と励ましていた部長の言葉が今でも鮮明に残っていますが、それは真実だったからに違いありません。

若い頃は成功体験よりも、むしろ失敗体験によってより成長できるということも部下に教えて欲しいと思います。

■「責任は私が取るから、思い切ってやって」と言おう

失敗することを恐れて一歩を踏み出せずにいる人が、それでも勇気を振り絞って前に進もうとしている時に、「○○さん、責任とれるの?」では完全に心を折ってしまいます。

大塚寿『自分で考えて動く部下が育つすごい質問30』(青春新書インテリジェンス)
大塚寿『自分で考えて動く部下が育つすごい質問30』(青春新書インテリジェンス)

ここはやはり、誇張でかまわないので、

「○○さんが失敗したくらいじゃ、会社は潰れないから思い切りやってみよう」
「責任は私が取るから、思い切ってやって」

と励まして、背中を押してあげましょう。

失敗を恐れている部下に対しては、この上司がいれば大丈夫だと思わせることが重要なポイントになります。

小学校時代の運動会のリレーのチームに速い子が何人かいると、一等になれそうな気がしたり、体育のサッカーの時間、サッカー部員がチームに入っていると勝てそうな気持ちになったことはないでしょうか。

私たちは「より強いもの」や「より良いもの」の一部になったと感じた時、いつもの自分より積極的になったり、粘り強くなったりできるようになるものです。

この特性をマネジメントに生かさない手はありません。

後輩のことを褒めるのも大事ですが、負けることを気にしすぎる部下に対しては、むしろ「この上司がいれば大丈夫」と思わせる言動の方がより重要になるので、あなた自身が部下からそう思われるように、日ごろから心がけておきましょう。

■集団心理を使ってチャレンジ精神を引き出す

現在、ビジネス現場においてフロイト以上に使える心理学として人気のあるコフートは、「人間はいつも褒めてもらうために頑張れるのではなく、自分よりはるかに強い人間を求めることで、自己愛を満たそうとする」と述べています。

正直、誰でも多かれ少なかれ失敗することを恐れているでしょうし、できれば負けたくないと思っているはずです。

それでもなおチャレンジしようとするのは、個人的な性格以上に、上司をはじめとする職場の集団心理の影響も大きいのではないでしょうか。

うまくいくかどうかが心配だったり、失敗することを恐れて決断できずにグルグルしているときに、「大丈夫だ、○○さんならできる」と背中を押してくれる人がいたら事態は変わるはずです。

あるいは、そんな時にリスペクトしている人から「こういうふうにやってみたら」とか「こう考えてみたら」とアドバイスしてもらえただけで、ものすごく安心できるものだったりするのです。

<「自分で考え、動く」を引き出す言い方>

「よく、成功体験が大事っていうけど、結局、失敗体験のほうが次に同じ失敗をしないようになるので、若いうちは失敗体験のほうが大事なんだよね」
「失敗の痛みを経験すると、早く一人前になれるよ」
「『失敗と書いて、成長と読む』って野村監督の名言だけど、今のうちにできる失敗は全部、経験しておいた方がいいよ」

⇒ここは「共感」「激励」というコミュニケーションの様式を使う
「○○さんが失敗したくらいじゃ、会社は潰れないから思い切りやってみよう」
「責任は私が取るから、思い切ってやって」

⇒不安を取り除くひと言

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大塚 寿(おおつか・ひさし)
営業コンサルタント
1962年群馬県生まれ。リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修、営業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。オンライン営業研修「営業サプリ」において「売れる営業養成講座」の執筆・総合監修を務める。著書に『リクルート流』(PHP研究所)、『"惜しい部下"を動かす方法ベスト30』(KADOKAWA)、ベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)、『50代 後悔しない働き方』(青春新書インテリジェンス)などがある。

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(営業コンサルタント 大塚 寿)

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