「腹筋トレーニングさえやっていれば腹筋は割れる」素人が間違えやすい大誤解
プレジデントオンライン / 2021年4月18日 11時15分
※本稿は、清水忍『ロジカル筋トレ 超合理的に体を変える』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■腹筋はカチカチに硬く固めれば良いわけではない
腹筋――。
筋トレをする人は数知れないが、トレーニング愛好者の誰もが例外なく「こだわり」を持っている場所はやはりここなのではないか。最近では、「腹筋タテ割れ」「シックス・パック」「腹筋カチカチ」「腹筋鉄板状態」といったように、「鍛えられた腹筋」を称賛する言葉もよく耳にするようになった。
実際、「腹筋を割りたいんですけど」という理由でトレーニング指導を申し込んでくる人も少なくない。おそらく、「硬そうな腹筋」「タテ割れした腹筋」というのは、たくましさや強さの象徴なのだろう。
腹のたるみは何かと目立つ。やわらかくたるんだ腹や大きく突き出た腹の持ち主にしてみれば、鋼(はがね)のように硬く鍛えられた腹筋は一種のあこがれでもある。そういう“他人からあこがれられるようなたくましさや強さ”を象徴する部分だからこそ、トレーニングを志す人は、腹筋を鍛えることにこだわりを持ち、こぞって力を注ぐようになっていくのではないだろうか。
腹筋を鍛えること自体はすばらしいことであり、ぜひ取り組んでほしい。しかし――。
腹筋はただやみくもに鍛えればいいというものではない。また、ただカチンカチンに硬く固めさえすればいいというものでもない。
■「腹筋トレをやっていれば腹筋が割れる」と聞かれたトレーナー
じつは、日々腹筋を鍛えている人々には、「間違った知識」や「間違ったトレーニングの仕方」を信じ込んでしまい、まったく見当違いな方向に突っ走ってしまっている人が非常に多いのだ。
なかには、腹筋をガチガチに固めたために、かえって自身のパフォーマンスを落としてしまっているケースも目立つ。腹筋へのこだわりが逆にマイナスの結果を招いてしまっているわけだ。なぜ、腹筋を固めることがパフォーマンス低下につながるのか。その理由はこれから順を追って説明していくことにしよう。
腹筋に対するいちばんの誤解。それは「腹筋トレさえやっていれば腹筋が割れてくる」と勘違いしている人が多い点だろう。
みなさんの中にも腹筋をタテ割りさせるため、上体を繰り返し寝かせたり起こしたりする腹筋運動に励んできた人がいらっしゃるかもしれない。そんな人々は、きっと“えっ、ウソ、違うの!?”と驚いているのではなかろうか。
せっせとがんばってきたみなさんには申し訳ないが、腹筋トレはいくらやったとしても腹筋をタテ割りさせることにはつながらない。
では、いったい腹筋をタテ割れさせるにはどうすればいいのか?
■分厚い腹筋を持っている力士のお腹が割れていない理由
それには、体脂肪を落とすことだ。
意外に知られていないのだが、「腹筋のタテ割れ」は腹部体脂肪の減少によって起こる現象なのである。すなわち、体脂肪さえ減らしていけば、腹筋トレなんかまったくやらなくても筋肉が浮き出て腹が自然に割れてくる。
要するに、「タテ割れ」という現象に関係しているのはあくまで体脂肪の量であって、筋トレの量はあまり関係していないのだ。
まあ、日々腹筋トレをがんばっていれば、腹直筋などが太くなってはくるので、浮き出てきた腹筋を多少目立たせることにはつながるかもしれない。しかしながら、「筋肉が割れたように浮き出てくる」という現象そのものは、「体脂肪の減少」という条件が満たされなければ絶対に起こり得ない。
これに関しては、大相撲の力士たちの腹筋が割れていないのを見れば腑に落ちる。もちろん力士たちはこれでもかというくらい腹筋を鍛えていて、常人とは比べ物にならないほどの太い腹筋を備えている。
だが、そうした腹筋の盛り上がりは、分厚い脂肪の下に隠れてしまっていてまったく見えない。つまり、力士たちの身に「体脂肪の減少」という事態が起こらない限り、彼らの「驚異的に盛り上がった腹筋」にお目にかかれることは永遠にないことになる。
なぜ、腹筋トレをがんばってもタテ割れにつながらないのか、みなさん納得していただけただろうか。
■腹筋を割るために必要なのは体脂肪を落とすこと
先述したように、私のもとにも「腹筋を割りたいんで、トレーニングのやり方を教えてください」といったことを言ってくる人がいる。そういう人に対しては、私は筋トレではなく、体脂肪を落とすための指導をするようにしている。
当人は「なぜ、筋トレを教えてくれないんだろう?」と不思議そうな顔をしているが、私からすれば「筋トレさえ行なえば腹筋が割れてくる」と何の疑いもなく思い込んでしまっていることのほうが不思議でならないのである。もちろんその後、「なるほど、そういう理由なのか」と納得できる説明を十分に行なうことは言うまでもない。
腹筋運動をやっても、体脂肪が落ちなければ腹筋タテ割れにはつながらない――。その事実を知ったみなさんの中には、「なんだ、じゃあ、おなかにたまっている体脂肪が落ちるくらいに腹筋トレーニングをがんばればいいだけの話じゃないか」と考える人もいらっしゃるかもしれない。
しかし、残念ながら、これも「タテ割れ」にはつながらない。
なぜなら、腹筋トレをがんばったところで、おなかの脂肪は減ってくれないからだ。
ここではっきりお断りしておこう。
腹筋トレーニングをやっても、脂肪は1グラムも落ちない。おなかの出っ張りも1ミリも引っ込みはしない。また、これと同じように、腕立て伏せをやっても二の腕の脂肪は落ちないし、スクワットをやっても下半身の脂肪が落ちることはない。つまり、筋トレの動きによってやせることはないのだ。
■筋トレでは脂肪は1グラムも減らない
「そんなバカな! じゃあ、これまでやせようとがんばってきたトレーニングは何だったんだ」と思う人もいるかもしれない。
そういう人々には、非常に残酷な宣告を突きつけるようでたいへん申し訳ないのだが、「筋トレ自体ではやせない」ということは医学的・科学的な事実なのだから仕方ない。
まあ、テレビなどのメディアでは、筋トレをすればスリムになるかのようなイメージが喧伝されているので、筋トレでやせると誤解してしまう人が多いのもやむを得ない。
具体的な例を挙げれば、有名シェイプアップジムのテレビCMを見て、「自分もあんなふうにやせたい」と思う人も少なくないはずだ。だが、あれは基本的に食事制限によってやせているのだ。
多くのシェイプアップジムでは、毎日の食事を徹底的に管理して制限することによって脂肪を落としている。ただ、食事制限だけでやせると筋肉まで落ちてしまうから、そうならないように筋トレをしっかりやりましょうというスタイルをとっている。
つまり、「脂肪を落とせた」「やせられた」という“結果”を出すことができているのはあくまで食事制限のおかげであって、筋トレのおかげではないのである。
だから、「筋トレで腹をへこませよう」という願望を持つのはやめたほうがいい。「汗びっしょりかいてがんばれば、少しくらいは脂肪も減るだろう」と思っている人もいるかもしれないが、そういう希望的な観測も捨てたほうがいい。とにかく、筋トレ自体では脂肪は1グラムも減らないと考えるべきだ。
■筋トレで消費されているのは脂肪ではなく糖分
一応、脂肪が減らない理由を簡単に述べておこう。
その理由は、筋トレを行なうことで消費されるエネルギーが、脂肪ではなく糖分だからだ。筋力トレーニングのような無酸素運動では、体を動かすエネルギーとして、体内にストックされた糖分が使用される。
これらの糖分は普段グリコーゲンというかたちで肝臓や筋肉内に貯蔵されていて、わたしたちはこれらのグリコーゲンや、血中のブドウ糖を引き出して使うことで筋トレを行なっている。そして、この一連のエネルギー消費プロセスの中で脂肪が使用されることはほぼない。
すなわち、どんなに腹筋トレをがんばったところで、体内の糖分が減っていくだけで、脂肪が減ることはない。そのため、いくら腹筋トレをやっても一向におなかの脂肪は減らないのである。
ただし、筋トレ後の日常生活の時間帯では、糖分はグリコーゲンの再貯蔵のために使われるため、体はエネルギー源として体脂肪を優位に使いたがる。だから厳密に言うなら筋トレ後に脂肪が減少することは事実だが、「これだけがんばったんだからずいぶん脂肪が燃焼したはずだ」などとみなさんが期待するほどには、脂肪は減ってくれない。
■食事コントロールが8割で筋トレはプラスαでいい
話を元に戻そう。腹筋トレをいくらがんばっていても一向におなかが引っ込んでこないし腹筋も割れてこない。では、効率よく腹筋をタテ割れさせるには、どんな方法をとればいいのだろうか。
それには、とにかく体脂肪を落とさなくてはならない。体脂肪を減らすために必要となるのは、やはり食事コントロールと、体脂肪をエネルギーとして使う有酸素運動である。体内に入ってくるエネルギー量を減らし、体内から出ていくエネルギーを増やしていくのがいちばん効率的だ。
適度にバランスよく食事制限をしつつ、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動をしっかり行なっていけば、徐々に体脂肪が減っていくことだろう。そうすれば、おなかが引っ込み、だんだんと腹筋が浮き出てくるはずだ。
それと、強いて言うなら、体脂肪を減らすのと同時並行でクランチやレッグツイストなどの腹筋を強化するトレーニングを行なっていくといい。体脂肪を落とすのと同時進行で腹筋を太くしていけば、より腹筋の盛り上がりがくっきりしてくるようになる。
だいたい食事コントロール80%、有酸素運動20%、筋トレはプラスαという感じだ。そうすれば効率よくスピーディーに「タテ割れ」をゲットできることだろう。
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フィジカルトレーナー
1967年、群馬県出身。INSTRUCTIONS代表。企業や大学のクラブなどでの指導のほか、プロ野球選手の専属トレーナーなども務める。
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(フィジカルトレーナー 清水 忍)
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