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小山昇「就職氷河期が再来した今こそ、採用を増やすべきワケ」

プレジデントオンライン / 2021年5月10日 9時15分

武蔵野 代表取締役社長 小山 昇氏

コロナ禍は雇用情勢に大きな影響を与えている。2020年の有効求人倍率は1.18倍で、前年から大幅に悪化している。企業が人を雇うことに及び腰の中、今こそ採用の好機だと経営者たちに指南するのが「経営サポート事業」を展開する武蔵野の小山昇社長だ。なぜ中小企業は採用に力を入れるべきなのか。話を聞いた。

■中小企業が優良人材を採用するチャンス

今、私が経営する武蔵野は、コロナ以前にも増して新卒採用に力を入れています。また、武蔵野が経営コンサルティングを行っている中小企業で業績の良いところは、前年から倍以上、採用数を増やしています。雇い止めや休業問題が叫ばれる中で、なぜ採用をやめないのか説明しましょう。

コロナ以前は空前の売り手市場で、優秀な人材はみんな大企業に採用されてしまう状況が続いていましたが、今はコロナで打撃を受けている企業が新卒採用を見送っています。だからといって、今の学生が就職をしないわけではない。中小企業の経営者にとって、こんなチャンスはありません。これまでは採用できなかった、レベルの高い人材を採用できる機会です。

多くの経営者が間違えているのは、不景気になると採用をやめてしまうことです。今回のコロナだけでなく、歴史を遡れば就職氷河期のときも、リーマン・ショックのときもそうです。そういう社会の断層とも言えるタイミングで、多少無理をしてでも採用活動を続ければ、優秀な人材を集めることができます。

実際に、私の会社でも20年までなら内定が出ていたレベルの人にも、内定が出なくなっています。それは、今まで65点の人を採用していたのに、70点の人たちが武蔵野の求人に応募してくるようになったからです。リーマン・ショックのときも同様の現象が起こりました。不景気のときこそ、中小企業は新卒採用に力を入れるべきなのです。

新卒採用を続けるのはコストも労力もかかり大変だと言う人もいますが、全くわかっていません。新卒採用は、会社を成長させる源泉です。

新卒社員は「何色にも染まっていない」人材です。それは、自社の価値観や文化、仕事のやり方をすみやかに身につけさせられることを意味します。社長の決定や方針を素直に共有し、即座に行動できる人材が増える、それが新卒採用のメリットです。武蔵野も、新卒社員が全社員の50%を超えると、業務改善のスピードが格段に上がりました。

また、新卒採用を続けることで、新卒で入社した社員の成長を促すことができます。

新卒の社員は、新人が入ってきてから伸びるんです。後輩がいると、後から入ってきたあの子に負けたくないって奮起しますよね。また、お世話役なんかを任せると、「なんだ、この先輩は」って思われるのも嫌だから、ますます仕事を頑張るようになります。

別にその後輩が同じ部署にいる必要はないのです。同じ会社の中に後輩がいるということが、新卒社員にとって一番ですね。

■未来を考えるから、あえて利益を出さない

利益が出ているのならなおさら、採用活動を控えるべきではありません。絶好調の会社なら、お金を使って未来に備えるべきです。

業績が良いときこそ、未来に投資しなきゃいけません。それなのに、未来に投資しないで、今の利益を大事にしたがる経営者が多すぎます。利益が出ていても、どのみち半分近くは税金に持っていかれるわけですね。だから、前年並みに利益が出ていればいいのです。業績が良くて、前年よりも利益が残せそうなのであれば、その分は全部未来に投資するのが正しいと思っていますし、私はそうやってきました。

「武蔵野さんって、売り上げのわりには利益が少ないね」なんて言われることもありますが、わかってないな、こいつは、って思いますね(笑)。利益を少なくしているのと、少ないのとでは意味が違うんです。面倒だから、いちいち反論しませんが、そういう人は物事が見えていない。

■人件費はそのままに、経費を下げることができた

1つエピソードがあります。

武蔵野はここ数年、ずっと業績好調で、20年の2月には過去最高売上高、過去最高利益が見えていました。でも、そこにコロナがやってきた。売り上げがガクンと下がって、今のままでは駄目だということが目に見えてわかりました。そこで仕事の進め方を変えたのです。売り上げは下がって、粗利も下がりました。でも、人件費はそのままに、経費を下げることができたから、経常利益は前年並みを維持できました。

小山 昇・著『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』中小企業が生き残るために必要な、人材採用と育成について語る小山氏の最新著作。
小山 昇・著『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』中小企業が生き残るために必要な、人材採用と育成について語る小山氏の最新著作。

経費を激減できた理由は、今から3年半前に280人の社員全員にIPadとIPhoneを購入していたことが挙げられます。アルバイトの人たちにも渡していました。

私用で使っても構わないと言ってきましたから、社員はこれでインターネットもゲームもできると大喜びで自宅にネット回線を繋ぎました。緊急事態宣言で、リモートワークを一気に進めないといけないとなったとき、こうして事前に投資をしていたおかげで、すぐに在宅勤務の体制を整えることができたのです。

オフィスへの通勤手当がいらなくなり、お客様訪問で今まで使っていた新幹線代や、セミナー開催のために借りていたホテル代など、経費を大きく削減できました。効率化で、前よりも仕事のスピードも上がりました。

IPadとIPhoneを購入するのに、1億円ほどかかりましたが、経費として使ったその1億円が資産になっているから、このコロナ禍のピンチにも対応できたのです。

もちろん、上場している会社は株主のほうを向かないといけないから、利益を残さないとは言えない。上場しなければ、お客様や従業員のほうを向いて仕事ができます。だから、武蔵野は上場をしていません。

今、280人の社員全員に命じて、PCR検査を毎月受けさせています。それも会社の費用です。

今の時代は「安心・安全」が一番重要です。たしかにPCR検査を社員全員に毎月受けさせるとなれば、経費はかかります。でも、そういうことに使うお金は安いものです。

PCR検査をして、お客様のところへ「陰性です」と通知を持って訪問すれば、コロナに感染しているかわからない人が来るより安心できますよね。社員の家族にとっても、会社がそこまでやってくれるのかということで、また安心です。

ケチな人たちは、なかなかお金を使おうとしません。そんな経営者ほど「新卒採用は割に合わない」と語ります。しかし、新卒採用は企業が成長し続けるために不可欠な投資だと考えるべきなのです。

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小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野代表取締役社長
1948年、山梨県生まれ。89年より現職。赤字続きだった武蔵野を18年連続増収の優良企業に育てる。2001年より同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。

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(武蔵野代表取締役社長 小山 昇 構成=加藤圭悟 撮影=大槻純一)

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