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日韓関係を破壊した文在寅大統領の"逃げ得"を許してはいけない

プレジデントオンライン / 2021年4月14日 11時15分

ソウル市長選で勝利し、当選を祝う呉世勲候補=2021年4月8日 - 写真=EPA/時事通信フォト

■ソウルと釜山の市長選では「与党大敗、野党圧勝」

韓国の首都ソウルと第2都市釜山(プサン)の両市長選は4月7日に投開票が行われ、文在寅(ムン・ジェイン)政権を支える与党の「共に民主党」が大敗し、最大野党の「国民の力」が圧勝した。

両市長選は韓国を代表する2都市のトップを決める選挙だけに、来年3月の大統領選の前哨戦に位置付けられていた。これで大統領選でも与党の敗色が濃くなった。

文在寅氏は8日、両市長選について「惨敗という国民の叱責を重く受け止めたい。今後も姿勢を低くし、さらに強い責任感を持ちながら韓国国政の舵取りを続けていく覚悟だ」という内容のコメントを公表した。

しかしながら、すでに文在寅政権は外交力を失っている。これは4月10日付の記事<「北朝鮮の核武装と中国の台頭」2つの難題を一挙に解決できる“たったひとつの方法”>でも指摘した。内政面においても、これ以上文在寅氏が大統領を続けることは、韓国国民にとってマイナスしかない。

国民の信頼を失った文在寅氏は、大統領を続けるべきではない。人の上に立つ者には引き際が肝心である。

■補欠選挙の理由はどちらも前市長のセクハラ

今回の両市長選は、党所属の前市長がともにセクハラが原因で自殺や辞任したことに伴う補欠選挙だった。それだけに有権者の関心は高く、投票率はいずれも50%を超えた。

韓国の中央選挙管理委員会の最終集計結果によると、ソウルでは「国民の力」候補の呉世勲(オ・セフン)元ソウル市長(60)が279万878票(得票率57.50%)を獲得し、対抗馬の「共に民主党」の女性候補、朴映宣(パク・ヨンソン)前中小ベンチャー企業相(61)は190万7336票(得票率39.18%)だった。投票率は58.2%だった。

一方、釜山では李明博(イ・ミョンバク)大統領時代に高官を務めた「国民の力」の朴亨(パク・ヒョン)ジュン氏(61)が、96万1576票(得票率62.67%)を獲得。文在寅政権の元閣僚で「共に民主党」の金栄春(キム・ヨンチュン)氏(59)は、52万8135票(得票率34.42%)と低迷した。投票率は52.7%だった。

■かつて文在寅氏を支持した若い世代が、野党側に鞍替えした

なぜ与党は惨敗したのか。直接的には、文在寅氏を強く支持した若い世代の多くが野党側に回ったためだという。

文在寅政権下で兵役や大学入試、そして就職など若い人々が強い関心を持つところで不祥事が相次ぎ、これがソウルと釜山の市長選に大きく影響した。もちろん、こうした若い世代の支持離れは次期大統領選でも政権与党の足を強く引っ張ることになる。

韓国KBSなどテレビ3社の調査では、全年齢層で野党候補の得票率が与党候補を上回った。とくに野党支持が目立ったのが18歳~20歳の男性だった。この年齢層の男性は「兵役」「大学入試」「就職」の3要素のいずれにも関係している。

この3要素の観点から文在寅政権を見ると、たとえば、元法相の曺国(チョ・グク)氏は、娘が虚偽の経歴書を作るなどして大学に不正入学したとの疑いが浮上し、これが法相辞任の一因となった。曺氏はむいてもむいても出てくる疑惑の多さから韓国メディアから「たまねぎ男」と揶揄された。

後任の女性法相の秋美愛(チュ・ミエ)氏も、息子の兵役に絡んで不正行為があったとの疑惑が指摘された。ちなみに、秋氏は検察改革でつまずいて辞任に追い込まれている。

韓国は学歴社会である。それゆえ入試不正は国民の非難の的になる。就職は学歴社会と直結する。しかも若い人々の就職難は深刻で、失業率もかなり高い。韓国社会では不正入試と同様に兵役逃れも厳しく糾弾される。

ソウルの街並み
写真=iStock.com/GoranQ
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GoranQ

■土地投機疑惑と検察改革に対する世論の反発

さらに与党惨敗の原因としてはこんな分析もある。

そのひとつが宅地開発を担う韓国土地住宅公社(LH)の職員による土地投機疑惑。もうひとつが尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長を辞任に追い込んだ文在寅政権の強引な検察改革に対する世論の反発である。

実際、この2つの問題が浮上した3月初めごろから文在寅政権の支持率は落ち込み方が激しくなった。4月2日に発表された韓国ギャラップの世論調査によると、支持率は過去最低の32%まで急落した。

土地投機疑惑は、公社職員らが未公開の情報を入手して値上がり確実な土地を買いあさっていたというもので、3月初旬に市民団体の告発で発覚した。疑惑は国会議員や大統領府職員、地方公務員にも広がり、現在韓国の警察当局が600人以上を対象に捜査を進めている。

韓国では文在寅政権以降、物価が上昇している。ソウルのマンションの価格は文在寅政権前と比べて6割以上も高騰し、庶民が大都市でマイホームを手に入れることができなくなっている。国民が土地投機疑惑に強く反発したのは当然である。

ところで、尹氏は3月に検事総長を辞任し、野党から大統領選への出馬が期待されている。この尹氏が出馬して保守と中道勢力とが結集すれば、「共に民主党」などの与党は勢力を失い、政権交代への扉が開くことは確実だと、沙鴎一歩はにらんでいる。

■「行動が伴っていないことへの怒りが選挙に表れた」

4月9日付の読売新聞の社説は「残り任期が約1年となった韓国の文在寅大統領にとって大きな打撃だ。レームダック(死に体)化が避けられない中、山積する課題で成果を上げるのは容易ではあるまい」と書き出し、ソウルと釜山での大敗の理由をこう分析する。

「文政権が『公正な社会の実現』を目標に掲げながら、行動が伴っていないことへの有権者の怒りが選挙結果に表れたと言えよう」

見出しも「韓国与党惨敗 不公正への怒りが噴出した」である。

文在寅という大統領は口だけの行動が伴わない人間なのである。徴用工と慰安の問題への対応を見ればはっきりと分かる。

文在寅大統領は今年1月18日の新年記者会見で、この2つの問題に触れ、これまでと異なる発言を行った。

徴用工問題については「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくいない」と語り、初めて現金化を避けたいとの考えを示した。慰安婦問題では「日韓合意を公式的なものだったと認める」と述べた。日韓合意とは2015年12月の「慰安婦問題について最終的かつ不可逆的に解決される」とした合意である。日韓の外相がソウルで共同発表した後、安倍晋三首相(当時)が朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)に電話を入れ、謝罪と反省の気持ちを伝えた。

あの新年の記者会見から3カ月が経過する。しかし、文在寅氏は何ひとつ行動を起こそうとはしない。日本との協力関係を強く求めるアメリカに対し、良い顔をして見せるだけなのである。

■次期大統領には北朝鮮と中国の問題にきちんと対応できる人物を

読売社説は来年3月の大統領選の状況をこう推察する。

「国民生活の向上や格差是正、政治腐敗対策は、次期大統領選でも争点となるのは間違いない」
「与党側も野党側も、既存の政治家に抜きんでた候補は見当たらず、混戦模様となるのではないか」

韓国は、日本やアメリカと協力しながら北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の武力進出の問題の解決に尽力していかなければならない。日本やアジア、そして世界の国々にとって文在寅氏が退いた後の大統領にはそうしたことのできる人物が望ましいのは言うまでもない。

読売社説は「求心力が低下する中で元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)や元慰安婦を巡る訴訟問題の解決に動くのは一層困難になろう」と指摘したうえで、最後にこう主張する。

「対日関係を悪化させたまま、放置することは無責任だ。残り任期中、関係修復の手立てを尽くさねばならない」

まったくその通りだ。文在寅氏は日本と韓国の関係を悪化させた。大統領の職を辞する前にその過ちを認めて日本に謝罪し、日本と韓国の関係を正常化してほしい。文在寅氏には日韓関係を元に戻す責任がある。

■「反日政策を強化し、中国に傾斜する可能性がある」

産経新聞も読売新聞と同じ4月9日付で社説(主張)を掲載し、「留意すべきは文政権が支持層をつなぎとめるため反日政策を強化し、中国に傾斜する可能性があることだ」と指摘する。

反日政策と中国への傾斜。いずれも文在寅政権の元凶であり、日本やアメリカ、アジアの国々に大きな災いを及ぼす。

産経社説はこうも指摘する。

「任期の末期に求心力を失った大統領は何をするか。思い起こすのは2012年、当時の李明博大統領による竹島上陸である。任期を半年残した李氏は側近のスキャンダルにまみれており、反日強化で支持をつなぎとめようとした」

大統領による竹島(独島)への上陸。一部の韓国国民の反日思考を利用して自らの政治力を保とうとしてきた文在寅氏ならば、それもあり得る。

■韓国は民主主義の本流のはずなのに日米関係を軽視する

産経社説は「一部に関係改善の姿勢を示したとの見方もあったが、一切の行動は伴っていない」と前置きしたうえで、「いわゆる徴用工、慰安婦の問題でも今後、強硬姿勢に転じる恐れもあるが、国際法上無効な賠償要求などは、はねつければいい」と主張する。

日本政府は冷静に韓国文在寅政権の動きに注意し、強硬に出てきた場合には即座に強く国際社会に訴えるべきである。

産経社説は書く。

「懸念すべきは、対中傾斜に拍車がかかることだ。韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は今月、初の外遊先に中国を選び、王毅国務委員兼外相と会談した。米国に先んじての中国訪問は異例中の異例だった」
「対北朝鮮融和を最大の成果とする文政権は、残る任期中の対話再開を目指して中国を頼る姿勢を、より鮮明にする可能性がある」

沙鴎一歩も対中傾斜が強まると思う。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は必ず文在寅政権の脆弱さの隙を突いてくるからである。

最後に産経社説はこう主張する。

「バイデン米大統領は世界の現状を『民主主義勢力と専制主義勢力の戦い』と表現した。地勢的に中国と近く北朝鮮と接する韓国が民主主義勢力の弱点とならぬよう、注視しなくてはならない」

韓国は民主主義の本流のはずだ。それが日本やアメリカとの協力よりも、北朝鮮や中国という独裁国家との交流を重視しようというのだから最悪である。もはや、来年3月の大統領選で誕生する次期大統領に期待するしかない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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