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「性犯罪者になるかもしれない」それでも私が男性保育士を積極的に雇うワケ

プレジデントオンライン / 2021年4月16日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

男性保育士による性犯罪事件がたびたび報じられている。男性保育士は本当に必要なのか。埼玉県で認可保育園「元気キッズ」など23の事業所を運営するSHUHARIの中村敏也代表は「男性保育士は絶対に必要。人手不足を解消するだけでなく、子どもたちにとっても男女どちらもいたほうがいい」という――。

■男性保育士がいると心配ですか?

皆さんは男性保育士、と聞いてどんなイメージをもちますか?

残念ながら、男性保育士と児童への性的虐待を結びつける方は、少なくないのではないでしょうか。最近、そうした事件が相次いで報じられました。

たとえばベビーシッターと利用者のマッチングサイト「キッズライン」では、2019年と2020年にそれぞれ別の男性シッターによる強制わいせつ事件が起きました。また2020年2月には、千葉県内の保育所で男性保育士が園児に性的暴行を加えたなどとして逮捕されました。この事件は2021年3月に千葉地裁で判決が下り、男性保育士は懲役6年の実刑となりました。保育士は公判で、約10人の園児にわいせつ行為をしたと認めています。

こうした事件を聞けば、男性保育士に対して親御さんが不安になるのは当然です。それでも私は、埼玉県で保育園など23事業所を運営する経営者として、保育現場に男性保育士が必要だと感じて、積極的に採用しています。当園の取り組みを紹介させてください。

現在、保育所の運営で一番難しいことが何か、ご存じでしょうか。それは、保育士の確保です。ここ10年の間に、保育士の採用は年々難しくなっているのです。

■新規開所が増えて保育士獲得が困難に

平成24年に「子ども・子育て支援法」が制定され、平成27年から小規模保育園の実地などの具体的な待機児童対策が本格化したころより、新規開所の施設が急激に増えました。

その結果、今までの求人の窓口であった、学校求人、ハローワーク、新聞の折り込み広告、求人サイトなどで募集をしても、保育士を雇うことが難しくなりました(厳密にいうと望ましい保育士を雇用するのが難しい状況です)。

同時に、旧態依然とした保育業界の中では、新卒保育士の定着率が悪く、卒後2年目までに約3割が離職するというデータがあります(木曽陽子「保育者の早期離職に関する研究の動向:早期離職の実態、要因、防止策に着目して」2018-02-28社会問題研究. 67, p.11-22)。採用難になる施設が増えた結果、職員が一斉にやめて休園する施設もあらわれています。

そのような中でも、私が運営している保育園「元気キッズ」では、保育士の離職を防ぎ、安定した保育所運営を続けています。「8年間連続新卒離職0人」という記録を更新中で、離職の少ない園としてメディアでご紹介いただいたこともあります。

保育士の確保という点で、男性保育士の積極的活用というのは大変重要です。また、もちろん、私たちは、「人手が足りないから男性でも仕方ない」という理由で、男性保育士を採用しているわけではありません。男性保育士を採用するのは、いい保育をしていくために欠かせないと考えているからです。

■SNSや掲示板のリサーチは欠かせない

ただし、私たちも男性保育士の採用の際には、女性よりも慎重にならざるを得ません。例えばこんなことがありました。

ある男性が求人に応募してきました。私たちは採用の際、どの求職者に対しても、SNSなどで本人の公開情報を調べます。するとその男性は、YouTubeに半裸で絶叫する不可解な動画を投稿していたのです。

Youtube画面のクローズアップ
写真=iStock.com/TARIK KIZILKAYA
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TARIK KIZILKAYA

さらに詳しく調べてみると、その男性がある刑事事件にかかわっている疑いが浮上しました。私は不安を覚え、不採用とすることにしました。

本人に不採用の通知を送ったところ、「なぜ不採用なのか」などと執拗に電話をかけてくるようになりました。当初は女性の採用担当が応じていましたが、ある時点から私が引き継ぎ、YouTubeの動画のことなどを問い詰めました。案の定、明確な回答はなかったので、キッパリとお断りをしました。

それ以降は電話などがくることなくなりましたが、仮にもし採用まで至っていたらと思うと心の底からゾッとします。

この事例は必ずしも性別と関係がないかもしれませんが、男性保育士を採用する際には、女性保育士よりも一層慎重に人柄を調べるようにしています。親御さんが不安であるように、私たちにも不安があるからです。

さらに、採用後も事故を未然に防ぐ環境づくりに努めています。男性保育士に女児のおむつ替えはさせませんし、保育士と園児が二人だけの密室状態になることがないようにしています。

男性保育士にはさまざまなリスクがありますが、私はそれでも女性保育士だけの保育園にはしたくないと考えています。それは女性保育士だけになることにもリスクがあるからです。

■男性保育士がいると女子校ノリがおさまる

保育というのは、子どもの社会を形成する一部です。そこに、女性だけでなく男性が入ることで変化があります。子どもたちは偏りの少ない世界に触れることができます。

これは子どもたちだけでなく、大人の側も同じです。女性だけの職場になると、いわゆる”女子校のノリ”になることがあります。本来仕事には必要のない下ネタやうわさ話などが活発になるのです。これは男性が入ることで多少ブレーキがかかります。

保育士と子供たち
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

さらに男性保育士は、子供たちから人気があります。女性よりも力があるのでダイナミックな遊びができるからです。遊びだけでなく、女性よりも男性に安心する「パパっ子」も少なくありません。男性と女性の両方がいるほうが、絶対にいいのです。

運営面に関しても、男性保育士の存在は欠かせません。男性保育士はキャリア形成に貪欲です。女性よりも男性のほうが、収入面でシビアに考えがちだからでしょうか。新しいIT機器や保育理論などに対して、男性保育士のほうが積極的な印象があります。そうした男性保育士がいると、女性保育士も引っ張られることになり、園全体として新しい取り組みが進みやすくなります。

保育業界はまだまだ女性社会なので、男性というだけで冷たく扱われることが少なくありません。しかし私は、男性の良いところを積極的に評価することで、男女ともにのびのびと仕事のできる環境をつくっていきたいと思っています。

■信頼できる園を探すために必要な3カ条

これから保育園を探していく方は、信頼できる園を探すために、ぜひ行ってほしい3つのことがあります。

1.利用希望の保育園のホームページをくまなくチェックする。
2.見学の予約をとる。その際の対応が、気持ちの良いものがどうか、違和感がないかをチェックする。
3.実際に見学に行き、園の雰囲気を肌で感じる。挨拶しているか、職員が笑顔か、園長先生は信頼できそうか、などを確認する。

ネットのクチコミはあてになりません。実際にご自身で調べて、直接見て、肌で感じた情報こそが、正しい情報だと思います。お子さまを安心して預けることができる、温かく信頼できる保育士のいる保育施設に出会えることを、心から願っております。

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中村 敏也(なかむら・としや)
元気キッズ保育園 代表
1977年7月埼玉県生まれ。明治大学経営学部卒業後、企業勤務の傍ら待機児童問題に興味を持ち、保育学や法制度を学ぶ。2004年9月、埼玉県志木市にて「保育園 元気キッズ 志木園」を開園。2006年7月株式会社SHUHARI(シュハリ)設立し、以降地域のニーズに対応しながら小規模保育事業、認可保育所、児童発達支援事業所、保育所等訪問支援事業所、相談支援事業所を開設。埼玉県内に、保育園、児童発達支援(保育型)施設、保育所等訪問支援事業所と児童発達支援事業所(個別型)の多機能施設、病児保育室、放課後児童クラブ、相談支援事業所を開設・運営(2021年4月現在)。

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(元気キッズ保育園 代表 中村 敏也)

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