1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

「原発処理水の海洋放出」に反発する野党は、中国や韓国よりレベルが低い

プレジデントオンライン / 2021年4月16日 18時15分

廃炉作業が進められている東京電力福島第1原子力発電所の敷地内に並んだ処理水を保管するタンク=2021年2月14日、福島県[時事通信チャーター機より] - 写真=時事通信フォト

■トリチウムは世界各国でも海洋放出で処理している

東京電力福島第1原子力発電所の敷地内に溜まる「処理水」が海洋に放出されることが4月13日、正式に決まった。

処理水は吸着剤によってトリチウム以外の大半の放射性物質は除去されている。さらに海水で薄め、飲んでも無害とみなされる国際基準よりもさらに引き下げる。東電は2年後の2023年を目途に放出を開始し、放出の期間は30年以上となる。

トリチウムは原発の通常の運転でも発生し、取り除くのが難しいため、世界各国の原子力施設は海洋放出によって処理している。人体や魚介類などに与える影響は極めて少ないとみられている。それにもかかわらず、日本の海洋放出のニュースが伝わると、中国と韓国はすぐに強く反発した。

■海洋放出をあえて問題視する中国と韓国

中国外務省の趙立堅(ジャオ・リージエン)副報道局長は13日、記者会見で「無責任なやり方だ。日本の国内問題にとどまらない。周辺の国々の利益を大きく損なう」と述べ、対抗措置を取ることを示唆した。

韓国も具潤哲(ク・ユンチョル)国務調整室長が13日の記者会見で「絶対に容認できない。最も近い国であるわれわれ韓国との協議と了解がない。一方的な決定である」と語った。しかも韓国外交省はこの日、相星孝一・駐韓大使を呼びつけて憂慮の意まで伝えている。

しかも中韓は、事故直後から日本の農水産物の輸入を厳しく規制している。

一党独裁国家の中国は、習近平(シー・チンピン)政権が沖縄県尖閣諸島の領有権を巡って一方的に日本を非難し、領海への不法侵入を何度も続けている。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は徴用工や慰安婦の問題で日本との関係を悪化させたにもかかわらず、折り合いをつけようとはしない。沙鴎一歩は、こうした中韓の非常識な言動について何度も指摘してきた。

中国も韓国も、国際社会の中で自国の主張や立場を有利に展開しようと、日本の処理水の海洋放出をあえて問題視している。それはIAEA(国際原子力機関)やアメリカが日本の海洋放出を支持していることからも明らかだ。

■野党政治家の無責任な反発には驚かされるばかり

中国と韓国の反発は想定内ではある。外交では自国の利益を主張するのが当然だからだ。一方で、驚かされるのが、日本の野党政治家の反発だ。

下水処理場
写真=iStock.com/WangAnQi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/WangAnQi

海洋放出が決まった13日、立憲民主党の福山幹事長は記者団に「国民に十分な説明がなされていない。『海洋放出ありき』で進んだとしか言いようがない。環境への影響や風評被害対策が何も示されない状況での決定は遺憾だ」と政府を批判した。

しかし、10年前の福島第1原子力発電所の事故は、旧民主党の菅直人政権のときに発生した。菅政権は現在の立憲民主党の幹部らによって構成されていた。処理水をめぐる問題も旧民主党政権時から続いている。立憲民主党はこうした事実をどう考えているのか。本来ならば、海洋放出の政府決定を支持して原発事故の後処理に協力すべきではないか。

■「反発」は消費者の誤解を招き、風評被害を助長する

一方、与党である公明党の山口那津男代表は13日、「当時政権を担っていた方々には、もう少し事実の経過に対して責任を持って発言してもらいたい」と苦言を呈したが、まったくその通りだと思う。

山口氏は「海洋放出はやむを得ない対応だ。国民全体に理解が進むよう、政府に努力してもらいたい。国際社会に対しても科学的な根拠に基づいた発信に努めていくべきだ」とも述べている。

自民党も二階俊博幹事長が13日の記者会見で、「海洋放出は国際的にも広く認められたやり方だ。自民党としても支持したい。政府は地元の不安解消と風評被害の回避に万全を期してほしい」と語っている。

風評被害をできる限り食い止め、福島県産などの農水産物とその加工食品を保護することが政府と政権与党の大きな役目である。

福島県の漁業関係者が海洋放出を問題視するのは、消費者が放射性物質の存在を気にして購買を止めることにある。前述したようにトリチウムの出す放射線はかなり弱く、紙1枚で遮ることができる。地球上のどこにでも存在し、放射線が半分になる半減期は約12年と短い。しかも海洋放出では海水で薄められる。むやみに恐れる必要はないのである。こうした事実を政府は懇切丁寧に説明し、国民の理解を得る必要がある。

野党が中国や韓国と一緒になって反発するのも問題である。消費者が誤解をするからだ。

■「ようやく事態打開の可能性が見えてきた」と産経社説

これまで長い間、原発を前向きに扱ってきた産経新聞の社説(主張)は「処理水の海洋放出 『風評』に負けてはならぬ」との見出しを掲げ、「ようやく事態打開の可能性が見えてきた」と書き出す。

掲載日も他紙よりも早く、政府が海洋開発を決める2日前の4月11日付である。

産経社説は指摘する。

「7日の菅義偉首相と全国漁業協同組合連合会の岸宏会長との会談を受けて政府は13日にも関係閣僚会議を開き、トリチウム(三重水素)を含む処理水の海への放出を決断する見通しだ」

この産経社説の見通しは的中した。産経社説はさらに指摘する。

「だが、第1原発の場合は事故に伴う放射能汚染水を浄化処理したトリチウム水なので、危険性はなくても風評被害を招くとして漁業者の間に反対の声が強い」
「そのため、東電は第1原発の敷地内に千基を超えるタンクを建造してトリチウムを含む処理水をためてきたが、来年秋には限界に達する見通しだ。それに加えて廃炉作業の前進には専用地を確保しなければならず、そのためにはタンクの撤去が必要だ」

政府や東電の側に立つわけではないが、海洋放出は避けられないのである。

産経社説は「風評被害は漁業者と政府の共通の敵である」とも指摘し、「根拠のない噂に負けてはならない」と訴える。確かにデマが風評被害を生む。放射性物質に対する正しい知識がいかに重要であるかがよく分かる。

■「懸念を抱く国民は多く、納得と信頼欠けたままだ」と朝日社説

朝日新聞の社説(4月14日付)は「処理水の放出 納得と信頼欠けたまま」(見出し)と手厳しく、冒頭部分からこう主張する。

「懸念を抱く国民は多く、強い反対があるなかでの決定だ。政府や東電は社会の理解を得ぬまま放出することなく、対話を尽くす責務がある」

しかし、本当に懸念する国民は多いのか。前述してきたように反発の声はあるが、地元福島の一部の関係者を除けば、表立っているのは中国と韓国、それに野党ぐらいではないのか。

■なぜ海洋放出までに10年という長い時間がかかったのか

テレビの夜のニュース番組でコメンテーターが「政府は見切り発車した」と酷評していたが、今回の海洋放出という決断までに政府は10年という長い時間を掛けている。視聴者の多い番組では、事実関係をしっかりと把握したうえで責任ある発言を行ってもらいたい。

後半で朝日社説はこう書く。

「政府や東電は、納得が得られるまで対話を尽くすとともに、放出する場合は客観的で信頼できる放射性物質のモニタリング体制を整えるべきだ。何よりも、不都合なことが起きた時、制度上は公表が義務となっていなくても、積極的に情報公開する必要がある。怠れば不信が深まり、風評被害も拡大する」

もちろん、モニタリングは欠かせないし、情報公開という透明性の確保も必須である。ただ、この10年間、対話を通じて地元の大半は海洋放出の安全性には理解を示しているはずだ。彼らが心配するのは、消費者の理解不足から生まれる風評被害なのである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください