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「普通の人からの相談が増えた」コロナ禍で住宅ローン破綻する人の共通点

プレジデントオンライン / 2021年4月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Orthosie

新型コロナウイルスの影響で住宅ローンの支払いを延滞する人が増えている。住宅ローン破綻する人にはどんな特徴があるのか。NPO法人「住宅ローン問題支援ネット」の高橋愛子代表と司法書士の太田垣章子さんの対談をお届けしよう――。

※本稿は、太田垣章子『不動産大異変』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

■コロナ前の相談では原因や問題が明確にあったが…

【太田垣】高橋さんは本業以外に、土日祝日は住宅ローン問題に関する無料相談会をしているんですよね。

【高橋】そうなんです。ライフワークで、NPO法人住宅ローン問題支援ネットという法人を運営していて、住宅ローン問題や投資ローン問題の相談を受けています。今はコロナの影響で、オンライン相談がメインですが。

【太田垣】家賃が払えない個人の方や、飲食店の経営者など、コロナで無料相談がすごく増えたんじゃないですか?

【高橋】コロナの前までは、メールや電話、面談などの相談数が月平均で20~30件位だったのですが、2020年の3月と4月は、月100件を超えました。フリーダイヤルで、全国各地から問い合わせをいただきますが、コロナになってからは、都心よりも、少し郊外や地方の方からのご相談が多かったかもしれません。

【太田垣】月に100件はすごいですね。

【高橋】事務所にいないときはスマホに転送しているんですが、電話が鳴りっぱなしで、取り切れない電話もたくさんありました。

【太田垣】私も3月、4月は、電話が鳴りっぱなし。家賃の滞納や、管理会社からは、自殺対応の相談ばかりでした。高橋さんのところは、どういった方からの電話が多いんですか?

【高橋】私の場合は、コロナ前までの相談は、収入減や倒産、離婚等何かしらの原因や問題が明確にあって、住宅ローンが払えない人からのご相談が多かったんですね。それがコロナの今は、競売などとは無縁の、本当に普通の人からのご相談が増えています。

■コロナ禍以降、相談者の層が変わった

【太田垣】余裕はないけれども、普通にやりくりをして生活していた人、ということですよね?

貯金箱
写真=iStock.com/Christian Horz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Christian Horz

【高橋】はい、それまでは、働いていれば、とりあえず食べていくには困らない生活を送っていたと思うんですけど、そういう人が急に、奥さんのパート収入が途絶えて払えなくなってしまったとか、ご自身の仕事がなくなったとか……。

【太田垣】でもそれだけ、いざという時の貯えがないってことですよね。他にはどんな相談が増えましたか?

【高橋】ほかには、住居確保給付金の問い合わせも増えました。これは、私が自分のホームページのブログで、「コロナで家賃が払えない人は家賃給付金がありますよ」みたいな解説を書いたら、検索か何かで、その一文がすごくヒットしたみたいで、「住宅ローンにも適用されるのか」という相談が増えました。

【太田垣】そういった方には、どう対応されていたんですか?

【高橋】金融庁が全国の金融機関に、返済猶予などの相談には柔軟に応じるよう通達を出していたので、各金融機関のコロナ相談窓口に問い合わせをするようにアドバイスをしました。各金融機関では、比較的返済猶予のリスケジュールの相談に乗ってくれたりしていたので、何とかなったという人も多かったようですね。中には一定期間返済不要にしてもらって、立て直しができた人もいるようです。

【太田垣】コロナ禍でいつもと相談者の層が全然違ってきたんですね。

■少しでも収入が減っただけでローンが払えなくなる人が多い

【高橋】普段の相談は、売らなくてはいけないとか、競売になるかどうか、滞納が何カ月といった問題が多いのですが、コロナ禍においてはそこまで追い込まれてないような人たちが、ドバッと一気に相談に来た感じですね。

【太田垣】普段の生活は問題なくても、ぎりぎりの状態でローンを払っていて、少しでも収入が減っただけでローンが払えなくなる状態の人が、すごく多いということですね。

【高橋】今回、印象的だったのは40代、50代、そして高齢者の相談が多かったことです。住宅ローンは80歳まで組めるので、35年でギリギリ組んで、年金生活ではローンを払えず、アルバイトをしている人がけっこう多いのです。

【太田垣】70代で現役の時と同じローン額を支払うだなんて、そりゃ厳しくなりますよね。

【高橋】40代、50代の現役世代でも、コロナの影響で本人の収入が減ったり、奥さんのアルバイトやパート収入がなくなり、住宅ローンが払えなくなってしまい、売却したくてもオーバーローンで売れないというケースも増えました。

【太田垣】それは切ないなあ。

■低金利の中無理してローンを組んでしまった人の”低金利破綻”が増える

【高橋】金利の高い時代に家を買った人は、今でも3~4%の高金利で払っていたり、凄い人は6%位の金利をずっと払い続けていて、もう元金はとっくに払い終えているのに、利息分にお金を払っているという人も。

【太田垣】ここまで疑問とか抱かなかったのかしら。

【高橋】そこで、金融機関に金利を下げてもらえないだろうか? といった相談もありましたが、さすがに下げてもらえるところまでは無理だったようです。

【太田垣】高齢の方は大変ですよね。

【高橋】そうなんです。高齢の方は、昔のローンをそのまま引き継いで定年後も支払い続けている人がとても多いです。そのため、アルバイトやパートが出来なくなると破綻するというリスクを抱えています。

【太田垣】賃貸でも、高齢の方がアルバイトが減って家賃を支払えないというトラブルがありました。

【高橋】若い人でも、ギリギリでローンを組んでいる人がたくさんいますし、今は低金利なのでとりあえずフルローンで組む人が多いです。夫婦合算のペアローン等も目立ちますが、離婚のときは、このペアローン問題は本当に厄介です。

【太田垣】結局、皆さんギリギリ過ぎるのよね。

【高橋】今回のコロナのようなことが起こって、収入が減ったり途絶えたりしたら、一気に家計が回らなくなってしまうという人がとても多いと思いました。他にもサラリーマン時代にローンを組んで家を購入し、その後脱サラをしてフリーランスになって独立したけれども、コロナの影響で仕事がなくなったという人も少なくありませんでした。今後、低金利によって無理してローンを組んでしまった人の低金利破綻が必ず起こるでしょうね。

■買う側の知識不足も問題

【太田垣】やはり、みんな背伸びをして買い過ぎですよね。良い物件を見ちゃうと、そっちが欲しくなるのは分かるけど。

【高橋】本当にそう思います。私も任意売却の仲介をしているので、販売の現場や中古物件でも、仲介会社さんがエンドユーザーさんに勧めているのを見ますけど、返済比率がぎりぎりでも、銀行も貸しますし、不動産屋さんも勧めるんですよね。今は低金利なので、取りあえず35年のフルローンでという話をしているんですけど、絶対に破綻するだろうなという人をよく見ます。でも、貸しちゃうんですから、貸手責任と言いたくなるような現状があります。よくないですよね。

【太田垣】こういった状況は、何が原因だと思いますか? もちろん売るほうは、2000万円の物件を売るよりは6000万円の物件を売ったほうが、仲介手数料も入るからいいと思うんですよね。買う側からしてみれば、銀行が貸してくれるのだから、自分には買える能力があると単純に思ってしまう。やはり買う側に、お金の知識が足りないってことですかね?

【高橋】足りないと思いますね、圧倒的に。目の前で計算された毎月の住宅ローンを家賃と比較して、「払えるんだったらいい」という感じで、35年で何千万というすごい借金を負うことに対して、あまり現実味を帯びてないというか。賃貸物件より分譲のほうが、やはり同じ値段を払ってもスペックのいい物件に住むことができるわけですから、単純に毎月の返済額を見て、後先のことを考えず、「同じ値段で持ち家を持った。やった!」みたいな感じになっているんですよね。

【太田垣】単純に「毎月の家賃よりお得です!」って話じゃないですよね。

■投資破綻の相談も増えた

【高橋】コロナのように、未曾有の事態が起こることは誰もが想定していなかったとは思いますけど、ここまでの事態を想定しなくても、住宅ローンという借金は、少し厳しくなった時に一機に破綻に追い込まれるリスクがあるということを、もっとみなさんに知っていてほしいですよね。

【太田垣】本当にそう思います。

【高橋】賃貸だったら、解約して終わりですけど、住宅ローンは返済が滞ると信用情報にも傷がつきますし、うまく売れなかったら残債も残りますからね。

【太田垣】私がもし不動産売買の仕事をしていたら、返済能力に疑問があるような人に、高額な物件を売ったりしたくないなぁ。ただ不動産の仕事をしている人も、生活がかかっているわけですから、一概に非難はできませんけれど……。

【高橋】分かります。今は、コロナでお金を使うこともなくて、富裕層の中では不動産投資をする人が増えているのですが、一方で投資破綻の相談もすごく来るんですよね。

【太田垣】司法書士も、心の中では「これは、破綻するかもしれない」と思いながら登記しているんじゃないかなと思うもの。

■物件も見ずに電話1本で決める医師や大企業のサラリーマン

【高橋】不動産投資ローンの相談者さんは、物件も見ずにひどい物件をひどいローンの組み方で契約しているケースもよくあります。

【太田垣】特に医師や大企業のサラリーマンの中には、物件も見ずに電話1本で決める人もいましたよ。私の周りでも、エリート医師が、不動産投資ですごく変な物件を買ってしまって、破産もできずに大変でした。

【高橋】社会的には地位が高く、頭もいいはずなのに、なんでこんなのにひっかかるのかという案件がすごく多くてびっくりします。不動産の知識がないのは仕方がないですが、相場ぐらいネットでも調べられるし、もうちょっと勉強をしたほうがいいですよね。

【太田垣】私の親の世代は、金利も8%とかあって、貯金さえすれば老後も安泰と思われていましたけど、今の時代は、そうではないですから。

【高橋】それで、老後が不安になって、不動産投資を持ち掛けられてだまされたり。本来、不動産投資というものはきちんと行えば堅い投資ですので、正しい判断をするためにも知識を養わないといけないと思います。

■本当に今が家を買うラストチャンスか

【高橋】去年の夏以降、コロナの影響で収入が減った人が、どんどん増えています。飲食店の人は、本当に大変で、これから任意売却や破産が、急増すると思います。

【太田垣】住居確保給付金が切れたり、いろんな給付が切れて、実際に仕事も収入も失ったり。でも、そんな中、去年は登記の案件がすごく多かったんですよね。みんな、コロナ中に不動産をすごく買っていたんですよ。この先、たぶん年収が下がるだろうから、前の年の年収でローンを組めるのがギリギリで、このタイミングを逃すと家を買えなくなるからと言うんです。

【高橋】そういう人は多いですね。

【太田垣】もちろん、資産家の人たちは全然コロナの影響はないのですが、一般の人が、家を買うラストチャンスと言って、みんな35年ローンで買っているんですよね。なんだか近い将来、破綻するんじゃないかと心配になっちゃう。

【高橋】確かに不動産業界は、ホテル関係はダメージが大きかったようですが、それ以外の一般向けの物件は、そこまでの打撃はありませんでしたものね。お客様の中には今のうちに、源泉徴収が出るうちに買っておこうみたいな人もいました。

【太田垣】でも、それこそ怖くないでしょうか?

【高橋】本当に危ないですよね。もうオーバーローン確定ですよね。

【太田垣】なのに、そういう人たちは、滑り込みセーフで家を買えたと、無邪気に喜んでるわけです。

【高橋】家を買っておけば大丈夫みたいな安心感が彼らにはありますよね。

■「何とかなる精神」で駆け込み買い

【太田垣】ここから35年、ずっとローンを返済していかなきゃいけないのに。昔は、それこそ定年時に退職金がたくさん出たので、退職金で住宅ローンを全部完済して、年金の額も多いし、それなりに貯金もあったけど、今は退職金も出るかどうか分からないし、年金もどんどん削られているような経済状況の中で、35年を駆け込みで買うというのは……。

【高橋】何とかなる精神なんだと思います。実際、私のところに相談に来る人に、「どうして、この物件を買って、こんなローンを組んだんですか?」と聞くと、「その時は若くて(30代・40代で)、仕事もあるし体も元気だったから、何とかなるって思ったんです」って、絶対言うんです。

【太田垣】でも、全然何とかならなくなって、高橋さんのところに相談に来るわけですよね。

【高橋】買うときに、「頭金がなくても、フルローンで35年、長く組んで毎月の返済額を減らしておけば、何かあったら保険で返済がチャラになるし、繰り上げ返済すればいいし、退職金で完済すればいいんですよ」と言われると、「あ、そうか」ってなってしまうんですよね。

【太田垣】でも、繰り上げ返済って、普段の生活をしていると、なかなかできないですよね。

【高橋】夫婦合算でフルローンで組んで、奥さんが妊娠出産で産休や育休退職をして収入が下がったり、教育費もかかるし、家具や電化製品など何かと出費があったり、生活レベルを落とせずに何か買ってしまったり。自分たちの未来を見通したり、計算のできない人たちが、タワマンのような高値の物件を背伸びして買ったりするのは危ないです。

■何かあった時にリカバリーできる十分な貯えを

【太田垣】先の医師やエリートサラリーマン同様、不動産屋さんと銀行の言いなりでなく、自分で調べることも大切ですね。

太田垣章子『不動産大異変』(ポプラ新書)
太田垣章子『不動産大異変』(ポプラ新書)

【高橋】ちょっとの知識で何百万とか変わってきます。金利を下げる交渉ができたり、専門家に相談するだけでも人生が変わるので、勉強して賢くやってほしいと思います。

【太田垣】この先、さらに大変になってくるんじゃないでしょうか?

【高橋】厳しい人、何とかならない人、いちばん深刻な人たちが増えてくると思います。返済猶予のリスケジュールの問題ではなく、先が見えなくて、売却せざるを得ない人も増えるでしょうし、債務整理する人も今後は増えてくると思いますね。

【太田垣】最後に、アドバイスがあればぜひ。

【高橋】まず、持ち家を負債化させず資産化していくことが大切だと思います。住宅ローンのバランスシートを正常化させていれば、何かあった時に破綻に追い込まれることがありません。十分に身の丈にあったローンを組むことや資産価値の下がらなそうな物件を買うことをお勧めします。35年ローンを、80歳まで組んでも、70歳以上で払えなくなる人はたくさんいます。頭金を入れたほうがいいとよく言われますが、フルローンでも良いので、何かあった時にリカバリーできる十分な貯えをしておくことです。不動産屋さんの言いなりになったり、金融機関の「貸します」に簡単に乗らずに、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家にセカンドオピニオンを聞いてみることも重要です。

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太田垣 章子(おおたがき・あやこ)
OAG司法書士事務所法人代表
司法書士。OAGライフサポート代表。30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格。登記以外に家主側の訴訟代理人として、延べ2500件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。

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高橋 愛子(たかはし・あいこ)
不動産コンサルティングマスター
宅地建物取引士。NPO法人「住宅ローン問題支援ネット」代表理事。賃貸物件の仲介企業の店長を務める中、競売で家を強制退去させられてしまうお客様との出会いから任意売却を知り、その専門家として独立を決意し、任意売却コンサルティング会社を設立。その過程で、任意売却だけではなく、さまざまな悩みを抱える人々との出会いから、民間の総合的な相談窓口を作りたいという思いに至り、悩み相談を無料で行う「住宅ローン問題支援ネット」を立ち上げ、NPO法人を設立する。著書に『任意売却ってご存知ですか?』(ファーストプレス)、『「住宅ローンが払えない!」と思ったら読む本』(PHP研究所)、『離婚とお金どうなる? 住宅ローン!』(プレジデント社)、『【改訂版】老後破産で住む家がなくなる! あなたは大丈夫?』(日興企画)がある。

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(OAG司法書士事務所法人代表 太田垣 章子、不動産コンサルティングマスター 高橋 愛子)

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