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「男も女もジリ貧老後になりやすい」熟年離婚をした人が後悔する落とし穴

プレジデントオンライン / 2021年4月26日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

幸せな老後のためにはなにが必要なのか。老後問題解決コンサルタントの横手彰太さんは「熟年離婚を選ぶ人が増えているが、あまり勧められる選択肢ではない。男性も女性も、離婚をしてしまうと老後生活はジリ貧になる恐れが高い」という――。

※本稿は、横手彰太『老後の年表 人生後半50年でいつ、何が起きるの…? で、私はどうすればいいの??』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「夫婦の7割は夫に不満あり」熟年離婚は増加トレンド

夫婦の3組に1組が離婚をするという話も時々聞きますが、それはあくまでも形式上の離婚。別居をしていなくても心理的に二人の心が離れていれば、それは離婚状態にあるといえます。

30代の女性の7割は夫に対して不満を持っており、不満を抱えたまま老後を迎えます。実際、50代になっても変わらず女性の7割が夫に不満が多い。ですから心の離婚は、3組中2組という数字となってしまいます。

熟年になると突然、妻から離婚の宣告をされる可能性があります。しかし残念ながら夫は、妻からの離婚宣言をほぼ覆せません。

1960年代前半の離婚件数は年間約7万組だったものが年々上昇を続け、2002年にピークの約29万組に。以降減少を続けて今に至ります。

離婚数自体は減少トレンドにありますが、熟年離婚は実は増えているのです。

50歳以上の離婚件数は1990年に約2万組だったものが2000年には2倍以上に急増しています。

50歳以上の離婚件数の推移(男性・女性合算)

専業主婦が当たり前だった時代から、女性の社会進出が進み共働きが当たり前になったことで女性の生活力がついて、離婚件数を押し上げているものと考えられます。

夫からすれば、パート勤めや専業主婦だった妻がまさか離婚したいなんて思わないことが多いようです。離婚をしても一人では生活していけないと、タカをくくっているのでしょう。残念ですが、もうそのような時代ではないのです。

■3年別居すれば離婚が成立しやすくなる

ただ、熟年離婚をするといっても、相手方にも同じような意思があれば話もスムーズですが、一方が離婚を望んでいない場合や離婚条件で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。

裁判所が離婚を認めるためには、次の5つの「法定離婚事由」のいずれかを満たさないといけません。

1 相手に不貞行為(浮気)があった
2 相手から悪意をもって、夫婦の同居・協力・扶助の義務を放棄された
3 相手の生死が3年以上不明
4 相手が重度の精神病にかかり回復の見込みがない
5 その他、婚姻を継続しがたい重大な事由がある

熟年離婚では実際は5が多いようです。なお、3年別居していれば法定離婚事由として認められると聞いた人も多いかもしれませんが、相手に拒否されれば成立はしません。

とはいえ3年も別居をしていれば、お互いの気持ちはほぼ離婚の方向で固まっていきますから、離婚は成立しやすいのが実際のところです。

ちなみに慰謝料については、1の不倫がわかりやすいでしょう。一般的には、100万~300万円が相場です。不貞行為を含め不倫でなくても、家庭内暴力や生活費を入れないなどDVも有責行為とみなされ、慰謝料の対象となります。

日本のシニアカップル
写真=iStock.com/THEPALMER
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/THEPALMER

■離婚で財産分与したのにほとんどもらえない場合も…

離婚した場合、原則として夫婦で財産を分け合うことになります。ただし、「【民法768条3項】離婚に伴う財産分与」の対象となるのは、「婚姻期間中にその協力によって得た財産」です。

例えば、プロ野球選手であれば現役時代は大活躍すれば年俸数億円。CMでも収入があり、資産数十億円を築いたというスタープレイヤーもいるでしょう。でも現役を35歳で引退して翌年からコーチもせず無収入で、引退後に結婚したとしましょう。

この夫婦が離婚した場合、財産分与の計算は、現役時代に築き上げた数十億円の資産は対象にならず、あくまで結婚当時から得た財産がベースになります。つまり、無収入からの計算になるので、夫から妻に分与する財産はゼロとなってしまいます。ちなみに相続時の遺産分割においては、結婚前の財産も含めて対象となります。

ただし、結婚後の財産であっても、それが親からの相続または贈与を受けた財産である場合、その資産については離婚時の財産分与の対象とはなりません。

このように離婚したからといって、すべての財産が分与対象となるわけではないのです。財産分与の対象となる財産とそうではない財産をまとめると、次の通りになります。

財産分与の対象となるもの
● 現金・預貯金(婚姻後のものであれば、名義人はどちらでもよい)
● 有価証券(株券、債券など)
● 不動産(土地、建物など)
● 家具・電化製品
● 自動車
● 金銭的価値の高い品物(骨董品・絵画などの美術品、宝石、着物など)
● ゴルフなどの会員権
● 保険料(生保、損保、学資保険など)
● 退職金・年金
● 負債(住宅ローン、子どもの教育ローンなど)
財産分与の対象とならないもの
● 婚姻以前にそれぞれが取得した財産(負債を含む)
● それぞれの家族・親族から贈与された、または相続した財産(婚姻期間中を含む)
● 婚姻後、趣味・浪費・ギャンブルなどのために個人的に作った借金
● 別居後に各々が取得した財産

■退職金は受け取る前でも分与の対象になる

退職金がまだ支払われていない場合でも、将来的に支給されることがほぼ確実であると見込まれる場合は、財産分与の対象になると考えられます。しかし退職金の全額が対象になるわけではなく、あくまでも婚姻期間に応じた部分のみが対象になると考えられています。

また、財産分与で最も大きな問題になる財産が自宅。たいてい、最も資産価値が大きくなるからです。自宅を売却して、残債(ローン返済中の、まだ返済していない借入金の残額)を差し引いたのちに、二人で現金を分け合うのが通常です。売却価格が残債を上回る場合は問題ありません。二人で分け合えばよいからです。

札束を持つ手元
写真=iStock.com/Hanasaki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hanasaki

一方、残債が売却価格を上回っているケースでは、裁判所はそもそも財産分与の対象にならないと判断します。どちらかが住み続けるのを希望する場合は、相手の残債を受け持つことで名義変更することもできます。

購入時の価格が3000万円のケースで考えてみましょう。離婚時の売却価格は2000万円、ローンの残債は1000万円、財産分与の割合は夫50%・妻50%とします。

まず、財産分与の対象となる資産の評価額は、購入価格ではなく売却価格になりますから、2000万円です。

ただ、二人で分け合うのはなにもプラスの財産だけではありません。残債の1000万円も等しく半分ずつ分け合うのです。以上から夫も妻もそれぞれ、売却額2000万円の半分である1000万円がもらえ、残債1000万円の半分の500万円を抱えます。結局は夫も妻も各々、1000万円-500万円=500万円が手元に残るのです。

もし妻が自宅を自分だけの名義にしたい場合は、夫に対して500万円を支払い、夫が了承すれば、自宅は妻だけのものにすることが可能です。

■妻に味方し、夫には厄介な存在となる婚姻費用

熟年離婚では、婚姻費用の存在も大きいです。婚姻費用とは、通常の社会生活を維持するために必要な費用のこと。生活費だけでなく、居住費、学費までも含まれます。熟年離婚の場合、子育てが終わっていることから妻に別居される可能性が高く、となると離婚協議中の妻の居住費も夫は負担しないといけなくなります。

民法760条で、婚姻費用について次のように定めています。「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」。婚姻費用をはじき出す計算式は裁判所にあり、支払額が自動的に決まります。

しかも、仮に離婚協議が3年かかったとしても、その間も婚姻費用は払い続けなくてはいけません。離婚が成立すれば夫の財産は半分となり、プラス弁護士費用も加わると、定年退職以降は一気に生活費の計画は狂うことに。

妻側は、今まで何十年と続いてきた我慢が、弁護士とのタッグと民法の規定によって救われることができます。「法律は知っている人の味方になる」ということをお互い覚えておく必要があるのです。

■男性だけでなく女性も、ジリ貧生活が待ち構えている

男性の立場から見ていきます。

子育ても家事も、ほとんど妻に任せっきりにしていた男性が大半でしょう。ビジネスマンとしての段取りや立ち振る舞いだけは一流だったかもしれませんが、一歩台所に入りお茶を入れることにも右往左往するようでは、日常生活すらおぼつかなくなります。

外出が減り、栄養を十分に摂らず、社会的に孤立することによって、老化を早め、精神的なうつを引き起こす可能性も。

硬貨を数える男性の手元
写真=iStock.com/Irina Tiumentseva
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Irina Tiumentseva

女性のほうはどうでしょうか。

離婚で資産も年金も半分もらえるからと安心してはいけません。年金がもらえるといっても、その額はわずかです。

住居はどうでしょうか。別れた夫が、家にタダで住まわせてくれることはありません。そんな優しい夫であれば、そもそも離婚もしていないはずですから。一緒に暮らしてきた自宅を売却し、税金を払い、そして半分にして、手元に残った資金2000万円が手に入ったとしましょう。

この資金で部屋を借りた場合、家賃10万円×12カ月×20年だとすると、計2400万円。60歳で離婚したとすると、80歳の頃には資金がショートして、賃貸で住めなくなります。女性は二人に一人が90歳まで生きる時代なので、この先もまだまだあります。

なおこの話は、男性にも同じことがいえます。お互いの実家に住めるかどうか、実家を相続できるかどうかでまた状況も変わります。

■日々の思いやり、行動を大切に

夫婦といっても、元々は赤の他人。長い間一緒に暮らすには、お互いを理解するなど夫婦関係をよくする努力が必要です。この努力は、結婚記念日にだけ高級レストランに行くことではなく、思いやりを毎日重ねていくことが欠かせません。

コロナ禍となり、生活が次のように変わった家庭は多くなっているようです。

1.夫の収入がダウン
2.リモートワークで自宅にいるにもかかわらず、夫は家事・育児に全く参加してくれない
3.妻は夜ごはんに加え、昼ごはんまでも毎日作るのがしんどい
4.夫はストレスから、暴言や暴力が増えた
5.パートの仕事が減って精神的にも金銭的にも辛いのに、夫はわかってくれない

横手彰太『老後の年表 人生後半50年でいつ、何が起きるの…? で、私はどうすればいいの??』(かんき出版)
横手彰太『老後の年表 人生後半50年でいつ、何が起きるの…? で、私はどうすればいいの??』(かんき出版)

定年前にして既に、ひと足早く老後の姿が見えてきたパターンです。今の状況から、定年退職後も平日のランチは作ってくれないだろうと不安になる夫。私も同じ年代として、他人事とは思えません。このような状況で、老後の夫婦生活は続けられるのでしょうか。

一方で、夫婦仲がよくなった家庭もあります。コロナの影響で飲みに行ってしまう頻度が減った、子どもと一緒にいる時間が増えたなどは、家族にとってプラスに働くでしょう。

熟年離婚はとにかく、日々のお互いの思いやり、発言、行動の積み重ねが大きく関係するのは間違いありません。普段から夫婦の関係がよければ、コロナが原因で離婚することはないはずです。

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横手 彰太(よこて・しょうた)
老後問題解決コンサルタント
1972年生まれ。オランダ、スペイン、北海道のニセコなどを転々とし、現在は東京在住。不動産会社の日本財託に勤務し、老後問題解決コンサルタントとして活動している。NHK『クローズアップ現代+』、テレビ朝日『ワイド! スクランブル』などメディアに多数出演。著書に『老後の年表 人生後半50年でいつ、何が起きるの…? で、私はどうすればいいの??』(かんき出版)などがある。

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(老後問題解決コンサルタント 横手 彰太)

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